どうかあなたが

五十嵐

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34 期待

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10時ちょっと前にかおるが次のミーティング用のファイルを取りに来ると、タイミング良く小峯がそこに現れた。
かおるに軽く会釈をした後、まっすぐとその先の恭祐のデスクへ向かう様はとても美しかった。無駄のない動きとでも言うのだろうか。
そして軽い会釈だけだと言うのに、小峯は自分の持つ華やかさ、優雅さ、更には自信をしっかりとかおるの目に焼き付けさせた。
きっと、向かった先にいる恭祐にもそれは伝わったことだろう。
「これから宜しくお願い致します。ご希望に沿うべく、最善を尽くします。」
「期待している。」
「はい。」

聞こえてきた短いやり取りはかおるを息苦しくするには十分なものだった。
恭祐から発せられた『期待している』という言葉。そう、恭祐からかおるには感謝や労いは元より、期待など今の今まで存在したことがない。
何年も恭祐の下で働いてきたが、小峯への期待を示す言葉はかおるのここでの全てを簡単に崩壊させた。


「小峯、来たか。」
「はい、今、若林さんにご挨拶をしていました。今日はこの後10時からのミーティング、宜しくお願いします。」
恭祐、樹、そして小峯有生。一緒にいて当然のような風貌の三人。かおるは二人とミーティングをするのがなんとなく嫌になった。

かおるが小峯に引き継ぐことと言ったら、日常のつまらないことばかりに思える。けれど恭祐が小峯に求めるものは、きっと彼の仕事にもっと関わることだろう。
これではまるで、小学校低学年の子供が大学生に何かを教えるようなものだ。
「おい、かおる、ミーティングルームへ行くぞ。」
「あ、はい。」

ミーティングはかおるが予想した通りだった。

小峯は飲み込みが早い。加えてスキームに対し、自分の意見やアイディアを適切に言うことが出来る。引き継ぎの大筋説明は予定していた時間の半分で終わった。

細かいことに関しては、かおるがこれから作成するであろうドキュメントに残せば十分だろう。
次の組織の話し合いも30分そこらで終了してしまった。

「では、わたしはこれで。新組織に関しては、これからのウィークリーミーティングで早めに三上さんの負担を減らすようにします。細かい事は三上さんが会社にいらっしゃる最後の2週間の実務引き渡し時に宜しくお願いします。」
「はい。実務に関しては、タイミング良くその時に発生するか定かではないので、全てドキュメントにも落とし込むようにします。新組織に関してはこれからのウィークリーミーティングの方が重要になってくるので、特にわたしが小峯さんに引き渡すことはないと思いますが、もし何か不明点がありましたら、その都度クリアにして下さい。」
「はい、分かりました。それと、ドキュメントですが、出来ればマンスリー、ウィークリー、デイリー、そして発生頻度が少ないものでまとめていただけると助かります。」
小峯はそう言うと、樹とかおるに礼をしミーティングルームを後にした。
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