41 / 90
41 同じこと*
*
建物が立派なら、部屋の中も素晴らしかった。
樹はこんなに広くて豪華な1LDKに一人で住んでいる、いや、住むことができる人なんだとかおるは改めて思った。
備え付けの家具や細部に渡るまで、デザイナーズマンションのモデルルームのようだ。更には、内装だけでなく間接照明の優しい光がこの空間をも特別なものになるよう演出している。
「おいで、そこに座ってて。ワイン、水、お茶、どれがいい?」
「変な選択肢ですね」
「ホントにこれしかないから、しょうがない」
「お茶でお願いします」
お茶が注がれたグラスは切子ガラス製で、覗き込むと優しい光を反射させている。
「綺麗」
「中身はペットボトルだけどね」
「樹さんはワインじゃなくて良かったんですか?」
「オレ、これ、結構好きなんだ」
「覚えておきます」
「ありがとう。もう一つ、覚えておいて。ペットボトルに入っている時も、このグラスに入っている時も中身は同じ飲み物だって」
樹の言葉の意味を考えながら、かおるは小さく頷いた。
「あ、風呂は、どっち派。浸かる、それともシャワー?」
「普段は浸かります。でも、今日は時間も時間だからシャワーで。」
「OK、じゃ、いつでもどうぞ。それとも一緒に使う?」
「え?」
「体、洗ってやろうか。仲を深めるには裸の付き合いが一番だろう」
「もう、からかってばかり。悪い冗談は止めて下さい」
「冗談は言ってないよ。…そう言えば、さっきのリクエストにまだちゃんと答えてなかったな」
「さっき、あ」
静かな部屋の中に、二人の唇が合わさり舌がからむ音が響く。
稚拙ながらもかおるは樹の口づけに応えようとした。送りこまれる樹の唾液を舌を絡めながら取りこみ、時には甘い吐息を漏らしながら。
徐々に体から力が抜けて、当然の流れと言わんばかりにかおるの体は心地良いソファへ沈んでいった。
「楽になっていい?」
質問しながらも答えを待つことなく、樹がシャツのボタンを外し、その下のTシャツを脱ぎ捨てた。かおるの目には、樹の逞しい均整の取れた体が惜しげもなく映り込んだ。
あまりの魅力的な体に、かおるは思わず触れてみたい、包まれてみたいと思った。
どうしてしまったのだろうか。密室にこの距離感で男性と共にいるのに、怖さを感じない。それどころか、男性器を受けいれるであろう場所が疼く。セックスの経験もないのに、性的な欲望を感じていると分かるくらいに。
だから、つい、言ってしまった。
「樹さん、…触れてみてもいいですか?」
「どうして?」
「どうして?…良く分からないけど、この手で樹さんを触ってみたいと思ったんです。駄目ですか?」
「こういう時は、名前だけで、呼んで」
「…いつ、き」
「そう、これからも出来る限りそう呼んで」
「…樹を、…触れてもいいですか」
「かおるに許可なんて必要ないよ。場所と時間さえ弁えてくれれば、いつでもどうぞ」
かおるはおずおずと出した手をそのまま樹へ伸ばした。それだけで精一杯で、手の行き先など全く考えてなかった。
「うっ、いきなりそこ?案外大胆なんだ」
「違うの、手を伸ばしたら、その」
「何も違わないよ。いいよ、オレも同じことするから」
「んんっ」
樹の手がおるの乳房に優しく置かれる。かおる同様本当に触れるだけ。
「わたしが、手、離したら、樹も、離す?」
「さあ、どうしようか。試してみる?」
そう言った樹の挑発的な表情は、かおるにある種の興奮を与えた。
つい、触れる手に力を込めてしまう程。口では離すことを仄めかし、その実指に力を込めて樹の乳首を押し潰した。
「なかなか面白いことをするんだ。」
「あ、だめ」
「何で?同じことだけど。ああ、そうか、同じじゃないな。オレだけ脱いでいるのはおかしい」
樹はかおるから離した手を迷うことなく背中へまわすと器用にブラジャーのホックを外した。かおるに抵抗する余裕を与えない速さで。更にはロングTシャツをそうするのが当たり前のように脱がしてしまう。
確かにこれで同じ。でも、歩は遥かにかおるの方が悪い。樹の視線を浴びるだけで体が火照り始めてしまう。
「隠さないで」
「無理です、恥ずかしいから」
「どうして?」
「そんな、聞かないで下さい。こんな格好」
「こんな格好じゃない、すごくきれいだ。だから恥ずかしがる必要なんてないよ」
樹はそう言うと、かおるが胸を隠そうと組んだ腕を優しく解いた。
建物が立派なら、部屋の中も素晴らしかった。
樹はこんなに広くて豪華な1LDKに一人で住んでいる、いや、住むことができる人なんだとかおるは改めて思った。
備え付けの家具や細部に渡るまで、デザイナーズマンションのモデルルームのようだ。更には、内装だけでなく間接照明の優しい光がこの空間をも特別なものになるよう演出している。
「おいで、そこに座ってて。ワイン、水、お茶、どれがいい?」
「変な選択肢ですね」
「ホントにこれしかないから、しょうがない」
「お茶でお願いします」
お茶が注がれたグラスは切子ガラス製で、覗き込むと優しい光を反射させている。
「綺麗」
「中身はペットボトルだけどね」
「樹さんはワインじゃなくて良かったんですか?」
「オレ、これ、結構好きなんだ」
「覚えておきます」
「ありがとう。もう一つ、覚えておいて。ペットボトルに入っている時も、このグラスに入っている時も中身は同じ飲み物だって」
樹の言葉の意味を考えながら、かおるは小さく頷いた。
「あ、風呂は、どっち派。浸かる、それともシャワー?」
「普段は浸かります。でも、今日は時間も時間だからシャワーで。」
「OK、じゃ、いつでもどうぞ。それとも一緒に使う?」
「え?」
「体、洗ってやろうか。仲を深めるには裸の付き合いが一番だろう」
「もう、からかってばかり。悪い冗談は止めて下さい」
「冗談は言ってないよ。…そう言えば、さっきのリクエストにまだちゃんと答えてなかったな」
「さっき、あ」
静かな部屋の中に、二人の唇が合わさり舌がからむ音が響く。
稚拙ながらもかおるは樹の口づけに応えようとした。送りこまれる樹の唾液を舌を絡めながら取りこみ、時には甘い吐息を漏らしながら。
徐々に体から力が抜けて、当然の流れと言わんばかりにかおるの体は心地良いソファへ沈んでいった。
「楽になっていい?」
質問しながらも答えを待つことなく、樹がシャツのボタンを外し、その下のTシャツを脱ぎ捨てた。かおるの目には、樹の逞しい均整の取れた体が惜しげもなく映り込んだ。
あまりの魅力的な体に、かおるは思わず触れてみたい、包まれてみたいと思った。
どうしてしまったのだろうか。密室にこの距離感で男性と共にいるのに、怖さを感じない。それどころか、男性器を受けいれるであろう場所が疼く。セックスの経験もないのに、性的な欲望を感じていると分かるくらいに。
だから、つい、言ってしまった。
「樹さん、…触れてみてもいいですか?」
「どうして?」
「どうして?…良く分からないけど、この手で樹さんを触ってみたいと思ったんです。駄目ですか?」
「こういう時は、名前だけで、呼んで」
「…いつ、き」
「そう、これからも出来る限りそう呼んで」
「…樹を、…触れてもいいですか」
「かおるに許可なんて必要ないよ。場所と時間さえ弁えてくれれば、いつでもどうぞ」
かおるはおずおずと出した手をそのまま樹へ伸ばした。それだけで精一杯で、手の行き先など全く考えてなかった。
「うっ、いきなりそこ?案外大胆なんだ」
「違うの、手を伸ばしたら、その」
「何も違わないよ。いいよ、オレも同じことするから」
「んんっ」
樹の手がおるの乳房に優しく置かれる。かおる同様本当に触れるだけ。
「わたしが、手、離したら、樹も、離す?」
「さあ、どうしようか。試してみる?」
そう言った樹の挑発的な表情は、かおるにある種の興奮を与えた。
つい、触れる手に力を込めてしまう程。口では離すことを仄めかし、その実指に力を込めて樹の乳首を押し潰した。
「なかなか面白いことをするんだ。」
「あ、だめ」
「何で?同じことだけど。ああ、そうか、同じじゃないな。オレだけ脱いでいるのはおかしい」
樹はかおるから離した手を迷うことなく背中へまわすと器用にブラジャーのホックを外した。かおるに抵抗する余裕を与えない速さで。更にはロングTシャツをそうするのが当たり前のように脱がしてしまう。
確かにこれで同じ。でも、歩は遥かにかおるの方が悪い。樹の視線を浴びるだけで体が火照り始めてしまう。
「隠さないで」
「無理です、恥ずかしいから」
「どうして?」
「そんな、聞かないで下さい。こんな格好」
「こんな格好じゃない、すごくきれいだ。だから恥ずかしがる必要なんてないよ」
樹はそう言うと、かおるが胸を隠そうと組んだ腕を優しく解いた。
あなたにおすすめの小説
【完結】泡になった約束
山田森湖
恋愛
三十九歳、専業主婦。
夫と娘を送り出し、静まり返ったキッチンで食器を洗う朝。
洗剤の泡が立っては消えるその繰り返しに、自分の人生を重ねながら、彼女は「ごく普通」の日常を受け入れている。
愛がないわけではない。けれど、満たされているとも言い切れない。
そんな午前中、何気なく出かけたスーパーで、背後から名前を呼ばれる。
振り返った先にいたのは、かつて確かに愛した男――元恋人・佐々木拓也。
平穏だったはずの毎日に、静かな波紋が広がり始める。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】
remo
恋愛
どんなに好きになっても、彼は絶対に私を愛さない。
佐倉ここ。
玩具メーカーで働く24歳のOL。
鬼上司・高野雅(がく)に叱責されながら仕事に奔走する中、忘れられない元カレ・常盤千晃(ちあき)に再会。
完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な彼には、悲しい秘密があった。
【完結】ありがとうございました‼
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
お前が愛おしい〜カリスマ美容師の純愛
ラヴ KAZU
恋愛
涼風 凛は過去の恋愛にトラウマがあり、一歩踏み出す勇気が無い。
社長や御曹司とは、二度と恋はしないと決めている。
玉森 廉は玉森コーポレーション御曹司で親の決めたフィアンセがいるが、自分の結婚相手は自分で決めると反抗している。
そんな二人が恋に落ちる。
廉は社長である事を凛に内緒でアタックを開始するが、その事がバレて、凛は距離を置こうとするが・・・
あれから十年、凛は最悪の過去をいまだに引き摺って恋愛に臆病になっている。
そんな凛の前に現れたのが、カリスマ美容師大和颯、凛はある日スマホを拾った、そのスマホの持ち主が颯だった。
二人は惹かれあい恋に落ちた。しかし凛は素直になれない、そんなある日颯からドライブに誘われる、「紹介したい人がいるんだ」そして車から降りてきたのは大和 祐、颯の息子だった。
祐は颯の本当の息子ではない、そして颯にも秘密があった。