どうかあなたが

五十嵐

文字の大きさ
42 / 90

42 プロセス*




「このまま見ていたい」
見られているだけなのに、樹からの行為で興奮した時と同じ何かがかおるに再びこみ上げてきた。今はもう手が離れたというのに、胸の先端が激しい興奮でこわばる。

「もう、止めて下さい」
「止めようがない、何もしていないんだから。ただ、見えているだけ。約束は守っているつもりだけど、何もしないっていう」
「さっきは、触りました、胸」
「俺にかおるがしたことと同じことをしただけ。かおるがする程度のことなら、問題ないと思って」
「…同じこと」
「そ、同じこと」

樹の声と表情にかおるの思考力がおかしくなる。危険な罠に仕掛けられた餌は熟れてとても甘い果実。正常な判断力があれば、何の為にそんな餌が置かれたか分かるはずなのに。

かおるは自ら簡単に罠に掛かることを選んだ。
さっきは無意識だった手、けれども今度は確かな意思と共に樹へと伸ばした。今、最も触れて欲しい場所へ。

「うっ、直球だね、いいの、ここ、許可してもらったって理解するけど」
「意地悪、言わないで下さい」
「意地悪じゃないよ、大切なことだから」
かおるが小さく頷くと、樹は尖った胸の先端をきつく摘みあげた。

「んん、あっ」
「今よりもっと強い刺激になると思うけど、ホントに大丈夫?」
「分かりません、大丈夫かどうかは、でも」
「でも?」
「嫌じゃないです、触れられてみたい」

樹は摘む指に更に力を込めた。承諾の意を表すように。
「ああん、痛いです」
「これは痛いんじゃない。気持ち良くなる為に必要なことだよ。この先には気持ち良いことが沢山待ってるから。ほら」
「ううん、あ」
「返事は?」
「あっ、はい」

恭祐はかおるを言葉と態度で躾けた。威圧と恐怖で、必ず従うように。
それに対し、樹は優しさと快楽で躾けようと思った。男を知らないかおるに、未知の、それも強い快楽を与えることで。

かおると言う旅人の太陽になりたかった。北風ではなく。
「まだ、痛い?」
「分からないです、ただ、おかしいんです、体が」
「オレに分かるように説明して」
「説明なんて、無理です」
「出来るよ」
「…」

説明を求められたのに、答えられないなんてことは許されなかった、恭祐の前では。そんなことをしてしまえば蔑んだ目で見られる。勉強不足だと、職務怠慢だと。樹は恭祐ではない。現に話口調も態度も違う。でも、かおるには見えてしまう、樹を通して恭祐が。
説明しなくては。何かは、言わなくては。

「あの」
「じゃあ、どうおかしいか、ゆっくりで良いから考えて、それを教えて。オレがすることにかおるがどう反応するのか、どうされたいのか。二人で答えを探そう」
「二人で?」
「そう、二人で」

自分は恭祐のようにはなれない、違う、なりたくないと樹は思った。
高圧的な態度、物言いで接すればかおるは緊張と恐怖で従う。そう躾けられてしまっている。恐らく分からないなりに体の反応を説明するだろう。しかも、はっきりと答えられない部分が多い為に不安に駆られながら。恭祐ならば、そこを突いて更に甚振り楽しむだろう。涙が溢れる落ちる寸前まで追い詰めながら。

でも、それは違う。樹が求めるものではない。
樹は与えたいのだ。体と体が触れ合う快楽を。だから説明を要求した。快楽を得るまでのプロセスを口にすることで、どうしたら更なる悦びを受けることが出来るか知らしめるために。

「じゃあ、始めようか。二人で」
「…はい」
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】泡になった約束

山田森湖
恋愛
三十九歳、専業主婦。 夫と娘を送り出し、静まり返ったキッチンで食器を洗う朝。 洗剤の泡が立っては消えるその繰り返しに、自分の人生を重ねながら、彼女は「ごく普通」の日常を受け入れている。 愛がないわけではない。けれど、満たされているとも言い切れない。 そんな午前中、何気なく出かけたスーパーで、背後から名前を呼ばれる。 振り返った先にいたのは、かつて確かに愛した男――元恋人・佐々木拓也。 平穏だったはずの毎日に、静かな波紋が広がり始める。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】

remo
恋愛
どんなに好きになっても、彼は絶対に私を愛さない。 佐倉ここ。 玩具メーカーで働く24歳のOL。 鬼上司・高野雅(がく)に叱責されながら仕事に奔走する中、忘れられない元カレ・常盤千晃(ちあき)に再会。 完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な彼には、悲しい秘密があった。 【完結】ありがとうございました‼

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

お前が愛おしい〜カリスマ美容師の純愛

ラヴ KAZU
恋愛
涼風 凛は過去の恋愛にトラウマがあり、一歩踏み出す勇気が無い。 社長や御曹司とは、二度と恋はしないと決めている。 玉森 廉は玉森コーポレーション御曹司で親の決めたフィアンセがいるが、自分の結婚相手は自分で決めると反抗している。 そんな二人が恋に落ちる。 廉は社長である事を凛に内緒でアタックを開始するが、その事がバレて、凛は距離を置こうとするが・・・ あれから十年、凛は最悪の過去をいまだに引き摺って恋愛に臆病になっている。 そんな凛の前に現れたのが、カリスマ美容師大和颯、凛はある日スマホを拾った、そのスマホの持ち主が颯だった。 二人は惹かれあい恋に落ちた。しかし凛は素直になれない、そんなある日颯からドライブに誘われる、「紹介したい人がいるんだ」そして車から降りてきたのは大和 祐、颯の息子だった。   祐は颯の本当の息子ではない、そして颯にも秘密があった。