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49 何の為の支配
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「家に着いたら、明日からの支度、全て車に運ぶから」
「え?」
「ゆっくり気持ちを整理するために。うちにおいで。いや、そんな不安そうな顔をしているかおるを一人には出来ない。傍にいたいんだ」
樹はかおるにこんな不安そうな表情をさせてしまう恭祐に怒りを覚えながらも、極力優しいトーンで言葉を紡いだ。
事実、かおるに対する怒りは何もない。あるのは愛おしさだけ。
「大丈夫です。ただ、不安になってしまっただけです。もしもわたしと樹さんのことで、お二人の関係や仕事に支障をきたしてしまったらと思うと」
「仮にそうなったとしても、かおるの責任じゃない。だから」
「違うんです、迷惑を掛けることは許されないんです」
「どうしてそこまで恭祐に支配される必要があるんだ」
「支配?、そうなのかもしれません。でも、そうしないとわたしは失敗してしまう。わたしは…蛇に睨まれた蛙、なんです、きっと。見ないようにしていたのに、一旦見えてしまったら、もう、動けない…。睨まれないようにしないと」
明日からはその蛇と共に出張するというのに…、尚更今晩は一人に出来ないと樹は思った。
「動けないなら、抱きかかえて部屋まで連れていってあげるよ。それで、オレに教えて、どの荷物を持っていけばいいかを。かおるはそうするだけでいい」
「違うんです、動けないっていうのは、そういう意味じゃなくて。もう、どうしていいのか、分からなくなりそうなんです」
「オレはかおるを大好きで守りたい。愛しているってことなんだと思う。かおるは?」
「わたしは、…大好きです。愛してるって、まだ良く分からなくて、だから、大好き、です」
「その気持ちは分かるんだから、大丈夫。後はオレの気持ちを信じて。そうすれば、動ける、いや、前へ進める。かおるの心の中までは誰にも支配されていないし、立ち止まる必要はない」
樹の言葉に、かおるからは何の返事もなかった。
車の運転がまどろっこしいと樹は思った。両手が使えれば、今、すぐにでもかおるを抱きしめてあげられるのに。
そして、これからのスケジュールにも苛立った、まるで恭祐に仕組まれたようなタイミングに。だからこそ、かおるの不安をどうにかしてあげなくてはいけない。
恭祐はかおるを強烈に支配するためしっかり躾上げた。立場上、仕事での支配はまだなんとか許せる部分はある。
けれども、支配は仕事だけではない、心の中や考え方にまで入り込んでいる。なぜそこまでする必要があったのだろうか。
かおるには心の中まで支配されていないと樹は言ったが、それは嘘。この優しい嘘をつかなければ、かおるは不安と恐怖に飲み込まれてしまう。
残念ではあるが、気持ちを落ち着かせる為にプロポーズの返事を今夜は聞かなかったことにするのも一つだ。そうすれば、恭祐が反対するという心配がかおるからなくなる。これからの数日は出張中ということもあり、今まで以上に恭祐の傍にいるであろうかおるからは出来る限りの不安要素を取り払ってあげたい。
「さ、降りて」
助手席の扉を開けると、かおるの驚いた表情が樹には見て取れた。きっともう家に着いたことに驚いているのだろう。
事実、樹は速度を少しあげていた。今日も自分の住まいに連れて帰ろうと決めた瞬間から。送るだけならば共に過ごす時間を増やす為にゆっくり走らせただろうが。
「樹さん、あの」
「大丈夫。手をつないで行こうか、前へ楽しく進めるように。ほら、幼稚園の時って確か2列で、隣と手をつないで、振りながら歩いたろ。歌が必要なら、下手だけど何か口遊むよ」
なかなか前に出て来ないかおるの手を、優しく握り引き寄せると樹はゆっくり歩き始めた。
何を話す訳でもなく、ただ手を握り歩幅を合わせた、かおるの気持ちが落ち着くように。
「え?」
「ゆっくり気持ちを整理するために。うちにおいで。いや、そんな不安そうな顔をしているかおるを一人には出来ない。傍にいたいんだ」
樹はかおるにこんな不安そうな表情をさせてしまう恭祐に怒りを覚えながらも、極力優しいトーンで言葉を紡いだ。
事実、かおるに対する怒りは何もない。あるのは愛おしさだけ。
「大丈夫です。ただ、不安になってしまっただけです。もしもわたしと樹さんのことで、お二人の関係や仕事に支障をきたしてしまったらと思うと」
「仮にそうなったとしても、かおるの責任じゃない。だから」
「違うんです、迷惑を掛けることは許されないんです」
「どうしてそこまで恭祐に支配される必要があるんだ」
「支配?、そうなのかもしれません。でも、そうしないとわたしは失敗してしまう。わたしは…蛇に睨まれた蛙、なんです、きっと。見ないようにしていたのに、一旦見えてしまったら、もう、動けない…。睨まれないようにしないと」
明日からはその蛇と共に出張するというのに…、尚更今晩は一人に出来ないと樹は思った。
「動けないなら、抱きかかえて部屋まで連れていってあげるよ。それで、オレに教えて、どの荷物を持っていけばいいかを。かおるはそうするだけでいい」
「違うんです、動けないっていうのは、そういう意味じゃなくて。もう、どうしていいのか、分からなくなりそうなんです」
「オレはかおるを大好きで守りたい。愛しているってことなんだと思う。かおるは?」
「わたしは、…大好きです。愛してるって、まだ良く分からなくて、だから、大好き、です」
「その気持ちは分かるんだから、大丈夫。後はオレの気持ちを信じて。そうすれば、動ける、いや、前へ進める。かおるの心の中までは誰にも支配されていないし、立ち止まる必要はない」
樹の言葉に、かおるからは何の返事もなかった。
車の運転がまどろっこしいと樹は思った。両手が使えれば、今、すぐにでもかおるを抱きしめてあげられるのに。
そして、これからのスケジュールにも苛立った、まるで恭祐に仕組まれたようなタイミングに。だからこそ、かおるの不安をどうにかしてあげなくてはいけない。
恭祐はかおるを強烈に支配するためしっかり躾上げた。立場上、仕事での支配はまだなんとか許せる部分はある。
けれども、支配は仕事だけではない、心の中や考え方にまで入り込んでいる。なぜそこまでする必要があったのだろうか。
かおるには心の中まで支配されていないと樹は言ったが、それは嘘。この優しい嘘をつかなければ、かおるは不安と恐怖に飲み込まれてしまう。
残念ではあるが、気持ちを落ち着かせる為にプロポーズの返事を今夜は聞かなかったことにするのも一つだ。そうすれば、恭祐が反対するという心配がかおるからなくなる。これからの数日は出張中ということもあり、今まで以上に恭祐の傍にいるであろうかおるからは出来る限りの不安要素を取り払ってあげたい。
「さ、降りて」
助手席の扉を開けると、かおるの驚いた表情が樹には見て取れた。きっともう家に着いたことに驚いているのだろう。
事実、樹は速度を少しあげていた。今日も自分の住まいに連れて帰ろうと決めた瞬間から。送るだけならば共に過ごす時間を増やす為にゆっくり走らせただろうが。
「樹さん、あの」
「大丈夫。手をつないで行こうか、前へ楽しく進めるように。ほら、幼稚園の時って確か2列で、隣と手をつないで、振りながら歩いたろ。歌が必要なら、下手だけど何か口遊むよ」
なかなか前に出て来ないかおるの手を、優しく握り引き寄せると樹はゆっくり歩き始めた。
何を話す訳でもなく、ただ手を握り歩幅を合わせた、かおるの気持ちが落ち着くように。
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