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52 縺れる*
*
「今、触っているところ直接触れてみてもいいですか?」
「えっ…」
刺激を与えられれば、男性器がどうなるのか教えることで乳首への愛撫を止めさせようとした樹の思惑はまたもや裏切られた。
「触られたら、恐らく最終的に出さずにはいられなくなる。しかもかおるの前で。男の射精するところなんか見ても面白くないだろ。だから」
止めたほうがいい、と言えばいいだけなのに樹は言葉を敢えて飲み込んだ。決して自慰行為を見られたい欲求があるわけではない。けれど、見せつけることでもっとセックスという行為を具体的に感じてもらおうと思った。
言葉では既にセックスという行為がどこに何を挿入し、どういう状況になるのか口にさせている。そこに白濁液が勢い良く出るところを見せれば、自分の体の中にどういうことが起こるのかを思い描けるだろう。濃度が濃いのに、勢い良く出る精液を見せれば。見るだけではない。青臭い独特な男の匂いもある。
「かおるに選択権をあげるよ。途中でいつでも止められる。どんな状況にオレのがなっていてもいつでも手を離していい。オレも出す前には言うから、最後まで付き合う必要はない」
最終的な判断はかおるの正しく手中にあることを樹は言葉にした。かおるが恭祐から許されたことのない『逃げ』を最後の瞬間まで有していることを樹は伝え『安心』を与えたのだった。
「それと、直接触れるなら、手、貸そうか?」
「手?」
「オレの下着を一人で脱がすなり、ずらすなり出来る?」
命令に従うだけの日々だったかおるに、樹はわざと自らの意思で出来るのか聞いた。
「…」
「どうしたいかは、まず先に言わないと。何の協力も出来ない」
「直接、樹さんのを、直接…、触れたいから、手を貸して下さい」
「分かった。全裸の方がいい、それとも下着だけ付けた状態でずらしている方がいい?」
「わたし…」
答えがなかなか出ないときには少し圧を加えて促せば、怒りを買うことを嫌うかおるは辿々しくもちゃんと言葉にする。本質は命令されたいのだろう。かおるは常日頃から命令に対し意見を言ったり逆らうよりは、従う方が楽だと躾けられてしまっているのだから。
「答えられるね」
「樹さんはどっちの方がいいですか」
「自分で決められない?かおるがどっちが良いか選んで」
「でも…。じゃあ…、教えて、下さい。その、精液が出るとして下着はあった方がいいですか、それともないほうがいいんですか。」
「そんなことか。気にしなくていい、好きな方を選べば。かおるに選択権がある」
「わたしに…、では、お風呂に入るのだから先に全部脱いで下さい」
「分かった。かおるは?脱ぐ、それとも脱がせて欲しい?」
「わたしに与えられた選択は、樹さんのと違いませんか」
「違うけど、間違いではない。射精の時にコントロールを失ってかおるにぶち撒ける可能性があるから」
「…」
「どっち?」
「自分で…脱ぎます。でも、手伝ってもらえますか」
かおるだってあと少しで30代になる。当然、男の性に関して経験が無くても知っているだろう。男が性的に興奮すれば男性器の先端の鈴口から白濁した精液を出すことは。でも、現実を見ないとその勢いがどんなものか、その瞬間陰茎がどうしなるのかなどは分からない。そして、その時、樹がどんな表情を浮かべ吐息を漏らすのかも。
セックスへ向かって気分を高め合うならば、時折口づけを交わし合い交互に一枚ずつ脱ぐというのが樹の好みだ。下着姿になったのなら、互いに体を押し付け合い性的な興奮を伝えあうのも。しかし、今はそうあってはいけない。更には、かおるが怖気付いた時の為に逃げ道を与えるようにしなくては。
だったら、と考え樹は勢い良くベルトを外しスラックスを脱いだ。今日はビキニタイプの下着なので、布ごしに大きさと形までが強調された男性器がかおるの目にはしっかりと焼き付く。逃げるには最適なタイミングを与えることだろう。
「大丈夫?」
「えっ」
「怖くない?」
「その、前回も、見えてはいましたから」
「じゃあ、オレの最後の一枚を取るよ」
下着に手を掛けずらすと、解放を望んでいた陰茎が勢いよく臍へ向かって飛び出していった。雁首部分は大きく膨れているので皮膚が伸び艶やかに淫靡さを放つ。
「どうする、本当に触る?それに、手で触る、それとも、かおるのクリトリスで触ってみる?脱がす間にどうしたいか考えて」
「…はい」
脱がしている間も、かおるは逃げるという選択をしなかった。樹は自らの手を陰茎の根元に伸ばし下を向かせては手を放すを繰り返す。その度に陰茎は臍へ向かって戻り、皮膚と皮膚をぶつけ合う音を立てた。
「どこで触りたいか、決めた?」
「はい、…手で、触り、ます」
「分かった。じゃあ、手での触り方、教えるから。ところで、優しく教えられたい?それとも」
樹は剥き出しになったかおるの胸の先端をきつく摘みながら質問した。
「命令された方が、しやすい?かおるが望んだこととは言え、後の行為は俺の命令に従ったっていうほうが楽かもしれない」
「楽?」
「そ、命令は絶対だろ、逆らってはいけないんだから」
今の世では理不尽な命令に背くことは当然の権利として出来る。それが普通だ。
けれども、かおるが過ごしてきた日々、恭祐のみが支配者だった小さな世界では背く等という言葉は存在しない。支配者によってそんなことはできないように躾けあげられている。命令された以上はどんなことにも従うように。
それが恭祐だけではなく、樹にもそうであるように敢えて言葉にした。いや、近い内に、恭祐を追い出す為にも。
「かおるの希望をオレにお願いしてごらん」
「わたしに…、樹さんが、命令して、ううん、…命令して下さい」
「いい子だ」
自らの支配者を、かおる自身の意思で樹は選ばせた。
ひよこの刷り込みのように、かおるの中に植えつけられた恭祐という支配者。それを排除するためには、更なる強い印象と意思が必要だ。
優しくしたいのに、命令し厳しくしなくてはいけない。かおるの全裸という姿を前に樹の心は独占欲と矛盾で覆われ始めた。
ただ僅かに残るかおるへの約束を守るという気持ちだけが、樹を留まらせているにすぎない。体を差し出せという命令をしてはいけないと。
恭祐は…、不意に樹にもっと早くに気付くべき疑問がわき上がった。
何故そんなにまでも恐怖の支配者になる必要があったのだろうか。気に入らなくて『辞めろ』という一言を突きつけるための支配者ならば、こんな年月は必要としないはずだ。
本当に従わせたい命令は…。何かある。その何かが先日感じた深い部分での絡まりの一つのような気がしてならないと樹は感じた。
「今、触っているところ直接触れてみてもいいですか?」
「えっ…」
刺激を与えられれば、男性器がどうなるのか教えることで乳首への愛撫を止めさせようとした樹の思惑はまたもや裏切られた。
「触られたら、恐らく最終的に出さずにはいられなくなる。しかもかおるの前で。男の射精するところなんか見ても面白くないだろ。だから」
止めたほうがいい、と言えばいいだけなのに樹は言葉を敢えて飲み込んだ。決して自慰行為を見られたい欲求があるわけではない。けれど、見せつけることでもっとセックスという行為を具体的に感じてもらおうと思った。
言葉では既にセックスという行為がどこに何を挿入し、どういう状況になるのか口にさせている。そこに白濁液が勢い良く出るところを見せれば、自分の体の中にどういうことが起こるのかを思い描けるだろう。濃度が濃いのに、勢い良く出る精液を見せれば。見るだけではない。青臭い独特な男の匂いもある。
「かおるに選択権をあげるよ。途中でいつでも止められる。どんな状況にオレのがなっていてもいつでも手を離していい。オレも出す前には言うから、最後まで付き合う必要はない」
最終的な判断はかおるの正しく手中にあることを樹は言葉にした。かおるが恭祐から許されたことのない『逃げ』を最後の瞬間まで有していることを樹は伝え『安心』を与えたのだった。
「それと、直接触れるなら、手、貸そうか?」
「手?」
「オレの下着を一人で脱がすなり、ずらすなり出来る?」
命令に従うだけの日々だったかおるに、樹はわざと自らの意思で出来るのか聞いた。
「…」
「どうしたいかは、まず先に言わないと。何の協力も出来ない」
「直接、樹さんのを、直接…、触れたいから、手を貸して下さい」
「分かった。全裸の方がいい、それとも下着だけ付けた状態でずらしている方がいい?」
「わたし…」
答えがなかなか出ないときには少し圧を加えて促せば、怒りを買うことを嫌うかおるは辿々しくもちゃんと言葉にする。本質は命令されたいのだろう。かおるは常日頃から命令に対し意見を言ったり逆らうよりは、従う方が楽だと躾けられてしまっているのだから。
「答えられるね」
「樹さんはどっちの方がいいですか」
「自分で決められない?かおるがどっちが良いか選んで」
「でも…。じゃあ…、教えて、下さい。その、精液が出るとして下着はあった方がいいですか、それともないほうがいいんですか。」
「そんなことか。気にしなくていい、好きな方を選べば。かおるに選択権がある」
「わたしに…、では、お風呂に入るのだから先に全部脱いで下さい」
「分かった。かおるは?脱ぐ、それとも脱がせて欲しい?」
「わたしに与えられた選択は、樹さんのと違いませんか」
「違うけど、間違いではない。射精の時にコントロールを失ってかおるにぶち撒ける可能性があるから」
「…」
「どっち?」
「自分で…脱ぎます。でも、手伝ってもらえますか」
かおるだってあと少しで30代になる。当然、男の性に関して経験が無くても知っているだろう。男が性的に興奮すれば男性器の先端の鈴口から白濁した精液を出すことは。でも、現実を見ないとその勢いがどんなものか、その瞬間陰茎がどうしなるのかなどは分からない。そして、その時、樹がどんな表情を浮かべ吐息を漏らすのかも。
セックスへ向かって気分を高め合うならば、時折口づけを交わし合い交互に一枚ずつ脱ぐというのが樹の好みだ。下着姿になったのなら、互いに体を押し付け合い性的な興奮を伝えあうのも。しかし、今はそうあってはいけない。更には、かおるが怖気付いた時の為に逃げ道を与えるようにしなくては。
だったら、と考え樹は勢い良くベルトを外しスラックスを脱いだ。今日はビキニタイプの下着なので、布ごしに大きさと形までが強調された男性器がかおるの目にはしっかりと焼き付く。逃げるには最適なタイミングを与えることだろう。
「大丈夫?」
「えっ」
「怖くない?」
「その、前回も、見えてはいましたから」
「じゃあ、オレの最後の一枚を取るよ」
下着に手を掛けずらすと、解放を望んでいた陰茎が勢いよく臍へ向かって飛び出していった。雁首部分は大きく膨れているので皮膚が伸び艶やかに淫靡さを放つ。
「どうする、本当に触る?それに、手で触る、それとも、かおるのクリトリスで触ってみる?脱がす間にどうしたいか考えて」
「…はい」
脱がしている間も、かおるは逃げるという選択をしなかった。樹は自らの手を陰茎の根元に伸ばし下を向かせては手を放すを繰り返す。その度に陰茎は臍へ向かって戻り、皮膚と皮膚をぶつけ合う音を立てた。
「どこで触りたいか、決めた?」
「はい、…手で、触り、ます」
「分かった。じゃあ、手での触り方、教えるから。ところで、優しく教えられたい?それとも」
樹は剥き出しになったかおるの胸の先端をきつく摘みながら質問した。
「命令された方が、しやすい?かおるが望んだこととは言え、後の行為は俺の命令に従ったっていうほうが楽かもしれない」
「楽?」
「そ、命令は絶対だろ、逆らってはいけないんだから」
今の世では理不尽な命令に背くことは当然の権利として出来る。それが普通だ。
けれども、かおるが過ごしてきた日々、恭祐のみが支配者だった小さな世界では背く等という言葉は存在しない。支配者によってそんなことはできないように躾けあげられている。命令された以上はどんなことにも従うように。
それが恭祐だけではなく、樹にもそうであるように敢えて言葉にした。いや、近い内に、恭祐を追い出す為にも。
「かおるの希望をオレにお願いしてごらん」
「わたしに…、樹さんが、命令して、ううん、…命令して下さい」
「いい子だ」
自らの支配者を、かおる自身の意思で樹は選ばせた。
ひよこの刷り込みのように、かおるの中に植えつけられた恭祐という支配者。それを排除するためには、更なる強い印象と意思が必要だ。
優しくしたいのに、命令し厳しくしなくてはいけない。かおるの全裸という姿を前に樹の心は独占欲と矛盾で覆われ始めた。
ただ僅かに残るかおるへの約束を守るという気持ちだけが、樹を留まらせているにすぎない。体を差し出せという命令をしてはいけないと。
恭祐は…、不意に樹にもっと早くに気付くべき疑問がわき上がった。
何故そんなにまでも恐怖の支配者になる必要があったのだろうか。気に入らなくて『辞めろ』という一言を突きつけるための支配者ならば、こんな年月は必要としないはずだ。
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