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53 分岐点*
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「わたし、何か、間違えましたか?」
「どうして?」
「怖い顔、しています。」
「緊張してるんだと思う。約束を守らないとって。それにさっき、かおるは良い子だって伝えただろ。」
緊張しているのは嘘ではない。けれど、表情に出る程考えていたのは恭祐の本心が何かだ。しかし、ふと思う。樹とてそんな簡単に感情を顔に浮かべないはず。これもかおるの知らず知らずのうちに身についてしまった癖なんだろう。誰かの、いや、支配者の顔色を窺うのは。
顔色を伺い、命令されることを望み、それに従う。かおるはそれで、充足感を味わうのだろう。
では、支配者は?
「かおる、これから命令するよ。どうしても従えない時は、オレの目を見て許して下さいって言うこと。分かった?」
「はい。」
「じゃあ、手、出して。」
「はい。」
「直接、包むように握って。」
「うっ、」
「ごめんなさい、」
「謝る必要はない。ただ、思っていたより、しっかり握るから驚いた。強さと動かし方を教えるために、上からオレの手を添えるよ。」
「はい。」
恭祐はもう何年もこの興奮を味わい続けているのだろう。しかも、あの口調でかおるの怯えを引きだしながら。
堪らないのは容易に想像がつく。何故なら恭祐は完全なサディストだ、樹が知る限り。
そして、かおるにはそれを焚きつけるものがある。恭祐の様なタイプではない樹すら、かおるに命令し従わせ、更には困らせたいと思うような。
恭祐は本当にかおるという逸材を手放せるのだろうか。
それとも小峯有生を次のかおるとして育てるつもりなのか…。いや、それは無理だろう。小峯有生はそういうタイプではない。
「かおる、触ってみてどう思う、答えて。」
「あの、」
「答えられるね。質問にはきっちり答えないと。命令には従うのと同様に。こういう時はかおるに出来ないはあってはいけない、分かっているだろうけど。」
「…はい。」
「いい子だ。じゃあ、触った感想を答えて。」
「…」
この間感じた性的興奮が樹に再びやってきた。繰り返しても飽きることのない興奮。やはりかおるは『それ』を持っている人間なのだ。恭祐はだから手放さなかったのだろうか。でも、一度もかおるの退社を引き留めていないのも事実。もっと違う位置から、違う視点で何かのタイミングを見計らっているのだろうか。
そして今、樹もタイミングを見計らっている。何も言えないかおるを責める為の。繰り返せば繰り返す程止められなくなるんだろう、この行為は。
「早く、言って。言えるね。」
「…中心はとっても硬そうなのに、周りは弾力があります。」
「知ってるだろ、これの役目。目的を考えたらどうしてそうなってるか分かるんじゃない。答えて、」
「…中に入る為に、硬くないと、」
「誰の中に誰の何が入るのか、答えないと。具体的にって常に言われてるだろ。あと、弾力に関しては?」
「ごめんなさい、弾力に関しては、よく分からないです。あと、具体的には、あの、」
「まあ、しょうがないか、かおる、経験がないんだから。弾力は…、かおるの中に入る時に、弾力があれば密着できるだろ。お互いが吸いつくように密着して、お互いを感じ合うことができる。どんなに外壁からの圧があっても。そして、硬いのは、」
樹は、わざとかおるの耳元で硬さの理由を呟いた。卑猥な単語を用いて。
それを聞いたかおるは、予想通り頬を赤くし戸惑いの表情を浮かべる。予想外だったのは、言葉に上気するだけでなく目に涙が溜まったことだった。
この間の泣いている姿も理由はともあれ扇情的だったが、潤んだ瞳は本当に多くの男の本能をくすぐる表情だ。
樹の中で不思議な高揚感が勢いを増す。そして始末が悪いことに、その高揚感は更なる興奮を求めろと本能に働きかける。
従えば『何もしない』は、ありふれた誘う為の嘘になり下がる。求めることを止めなければ。
自分の口をふさぐために、樹はかおるに優しく口付けた。けれど、簡単にそれは深く官能的になっていく。
「愛している。虐めて、ごめん。もう、泣かないで。」
樹の言葉にかおるが小さく頷いた。優しい言葉を掛ければ、不安そうな表情は消えていく。樹は思う、ここが恭祐との分岐点なんだろうと。自分は最後までサディスティックにはなれない。
泣かせ続けるよりは、かおるが見せる笑みを優先したい。
何が重要で、何が優先事項か。考えることで、樹は本能を抑えた。
約束を守り、かおるの気持ちを手に入れることが重要だと分かりきっているからだ。
お陰でその後も二人で密着しながら入浴する程度で済んだ。
樹が恭祐との分岐点と捉えたのは性癖に関して。しかし、本当の意味でこのタイミングが分岐点だったとはこの時の樹は知る由もなかった。
「わたし、何か、間違えましたか?」
「どうして?」
「怖い顔、しています。」
「緊張してるんだと思う。約束を守らないとって。それにさっき、かおるは良い子だって伝えただろ。」
緊張しているのは嘘ではない。けれど、表情に出る程考えていたのは恭祐の本心が何かだ。しかし、ふと思う。樹とてそんな簡単に感情を顔に浮かべないはず。これもかおるの知らず知らずのうちに身についてしまった癖なんだろう。誰かの、いや、支配者の顔色を窺うのは。
顔色を伺い、命令されることを望み、それに従う。かおるはそれで、充足感を味わうのだろう。
では、支配者は?
「かおる、これから命令するよ。どうしても従えない時は、オレの目を見て許して下さいって言うこと。分かった?」
「はい。」
「じゃあ、手、出して。」
「はい。」
「直接、包むように握って。」
「うっ、」
「ごめんなさい、」
「謝る必要はない。ただ、思っていたより、しっかり握るから驚いた。強さと動かし方を教えるために、上からオレの手を添えるよ。」
「はい。」
恭祐はもう何年もこの興奮を味わい続けているのだろう。しかも、あの口調でかおるの怯えを引きだしながら。
堪らないのは容易に想像がつく。何故なら恭祐は完全なサディストだ、樹が知る限り。
そして、かおるにはそれを焚きつけるものがある。恭祐の様なタイプではない樹すら、かおるに命令し従わせ、更には困らせたいと思うような。
恭祐は本当にかおるという逸材を手放せるのだろうか。
それとも小峯有生を次のかおるとして育てるつもりなのか…。いや、それは無理だろう。小峯有生はそういうタイプではない。
「かおる、触ってみてどう思う、答えて。」
「あの、」
「答えられるね。質問にはきっちり答えないと。命令には従うのと同様に。こういう時はかおるに出来ないはあってはいけない、分かっているだろうけど。」
「…はい。」
「いい子だ。じゃあ、触った感想を答えて。」
「…」
この間感じた性的興奮が樹に再びやってきた。繰り返しても飽きることのない興奮。やはりかおるは『それ』を持っている人間なのだ。恭祐はだから手放さなかったのだろうか。でも、一度もかおるの退社を引き留めていないのも事実。もっと違う位置から、違う視点で何かのタイミングを見計らっているのだろうか。
そして今、樹もタイミングを見計らっている。何も言えないかおるを責める為の。繰り返せば繰り返す程止められなくなるんだろう、この行為は。
「早く、言って。言えるね。」
「…中心はとっても硬そうなのに、周りは弾力があります。」
「知ってるだろ、これの役目。目的を考えたらどうしてそうなってるか分かるんじゃない。答えて、」
「…中に入る為に、硬くないと、」
「誰の中に誰の何が入るのか、答えないと。具体的にって常に言われてるだろ。あと、弾力に関しては?」
「ごめんなさい、弾力に関しては、よく分からないです。あと、具体的には、あの、」
「まあ、しょうがないか、かおる、経験がないんだから。弾力は…、かおるの中に入る時に、弾力があれば密着できるだろ。お互いが吸いつくように密着して、お互いを感じ合うことができる。どんなに外壁からの圧があっても。そして、硬いのは、」
樹は、わざとかおるの耳元で硬さの理由を呟いた。卑猥な単語を用いて。
それを聞いたかおるは、予想通り頬を赤くし戸惑いの表情を浮かべる。予想外だったのは、言葉に上気するだけでなく目に涙が溜まったことだった。
この間の泣いている姿も理由はともあれ扇情的だったが、潤んだ瞳は本当に多くの男の本能をくすぐる表情だ。
樹の中で不思議な高揚感が勢いを増す。そして始末が悪いことに、その高揚感は更なる興奮を求めろと本能に働きかける。
従えば『何もしない』は、ありふれた誘う為の嘘になり下がる。求めることを止めなければ。
自分の口をふさぐために、樹はかおるに優しく口付けた。けれど、簡単にそれは深く官能的になっていく。
「愛している。虐めて、ごめん。もう、泣かないで。」
樹の言葉にかおるが小さく頷いた。優しい言葉を掛ければ、不安そうな表情は消えていく。樹は思う、ここが恭祐との分岐点なんだろうと。自分は最後までサディスティックにはなれない。
泣かせ続けるよりは、かおるが見せる笑みを優先したい。
何が重要で、何が優先事項か。考えることで、樹は本能を抑えた。
約束を守り、かおるの気持ちを手に入れることが重要だと分かりきっているからだ。
お陰でその後も二人で密着しながら入浴する程度で済んだ。
樹が恭祐との分岐点と捉えたのは性癖に関して。しかし、本当の意味でこのタイミングが分岐点だったとはこの時の樹は知る由もなかった。
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