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59 偽物のシンデレラ
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恭祐に指定されたヘアーサロンへ行くと、先ずは今夜のドレスを見せるように言われた。まるでモデルのように美しいヘアメイクアーティストと名乗るジョーは、かおるの顔とドレスを何度も見比べてアシスタントのリサに何かを言い付ける。二人のやり取りはかおるに聞き取れる程の速度でない為、何を言っているのかさっぱり分からないのが救いに思えた。
しかし、そんなことは当に察していたのだろうリサがゆっくりとジェスチャーを交えてかおるにこれからの事を説明してくれた。
別室でジャケットを脱ぐように言われ、この場で下着だけはビスチェに変えるように指示される。リサはキャミソールのような被り物は髪をセットする都合もう脱いで欲しいと言っていたのだ。
上半身はビスチェにシャツだけ纏うという、何とも恥ずかしい状態でかおるはジョーの元へ戻らされた。ジョーの仕事道具が並べられたワゴンの上には既にいくつかの髪飾りも置いてある。鏡越しにジョーが髪色と肌色を確認しながらかおるに最終的に残った二つのうちどちらが良いか尋ねてきた。
どちらでも良いと言いたいところだが、それはここでは一番まずい解答に思えた。何となくだけれど、ジョーは主体性がないことを嫌うタイプに見えたのだ。選択肢を見せて聞いたということからもそれが窺える。
かおるは少し考えてから自分の心が惹かれる方を指差した。
それを見てからジョーは柔らかな笑みを見せ、かおるでも分かる速さの英語で素敵なレディになろうと言い仕事を開始した。
恭祐が依頼していたのはヘアメイクだけではなくメイクアップも。確かに、頭とドレスだけしっかりしていても顔が浮いていたらおかしなことになってしまう。
ジョーに変わって、メイクアップはサンドラという女性が行ってくれた。全てが終わると、もう一度ジョーが細かいところを確認。その後リサがタクシーが来るまでここで待っていてとかおるを案内してくれた。
流れからすると、今が支払いをするタイミングなんだろうとかおるは財布からクレジットカードを取り出そうとした。一体いくら請求されるのか。怖いけれど、まさしく怖いもの見たさ。こんな女王のような待遇にはいくらの対価が待っているのか。ドキドキしながらリサに拙い英語で支払いをしたい旨告げたのだった。
ところが、リサはgratuityも含めて全て終わっていると言う。
「gratuity?」
「service charge, um tip.」
本当に恭祐はスマートに全てを行ってくれていたらしい。リサが『彼は本当にあなたが大切なのね』と微笑んだ程だ。その言い方、表情からチップも弾んでいるのだろうし、髪飾りの予算だって上限は言われなかったということだろう。
最初の服装が原因なのは分かる。しかし、ドレスの購入代金から何から何まで、一体いくら恭祐に使わせてしまったのだろうか。考えるだけでも怖い。幸い、本当に使う暇がなかったから貯金はある。
物語のシンデレラは魔法使いが全て整えてくれるが、現実ではそんなことはあり得ない。ドレスにもメイクにも、カボチャの馬車ならぬタクシーの手配にもその対価が必要だ。かおるは、今夜食事に行く時に日本へ戻ってからまとめて支払うと恭祐に詫びなくてはいけないと思った。
ホテルへ戻るとサロンへ持っていったドレス以外のものが既に部屋へ運び込まれていた。
かおるは今夜着るべきエメラルドグリーンのドレスをベッドの上に広げまじまじと眺めた。ドレスは言うまでもなく、デザイン、素材、どれをとってもかおるの持ってきたワンピースと比べ物にならない程豪華だ。
豪華過ぎることが、かおるに己の見窄らしさを知らしめるように。
そう、ドレスは恭祐とかおるの住む世界の違いを教えてくれているのだ。
恭祐にとって今日の出費はかおるが足を引っ張ったからだとしても、痛くも痒くもない金額であることは明らか。対してかおるにとってはいくら貯金があるとは言え、大きな出費。天と地程の感覚の違いがある。
しかしこんな格好をしてまで行くダイニングルームはどんなところなんだろう。かおるにそんな店での恭祐の同伴者が務まるのだろうか。
髪型もメイクも出来上がってしまっているというのに、ここにきてかおるは食事を断ることは出来ないか考え込んでしまった。そして始まる負の連鎖。次第に様々な事を悩み出した。
けれど、悩んでばかりもいられない。確実に恭祐に指定された時間は近づいてしまっている。
物語のシンデレラが行くのは王子様がいる楽しそうな舞踏会。でも、シンデレラではないかおるがこんなにドレスアップをしてまで行くのは、一体どんなところなのだろうか。
しかし、そんなことは当に察していたのだろうリサがゆっくりとジェスチャーを交えてかおるにこれからの事を説明してくれた。
別室でジャケットを脱ぐように言われ、この場で下着だけはビスチェに変えるように指示される。リサはキャミソールのような被り物は髪をセットする都合もう脱いで欲しいと言っていたのだ。
上半身はビスチェにシャツだけ纏うという、何とも恥ずかしい状態でかおるはジョーの元へ戻らされた。ジョーの仕事道具が並べられたワゴンの上には既にいくつかの髪飾りも置いてある。鏡越しにジョーが髪色と肌色を確認しながらかおるに最終的に残った二つのうちどちらが良いか尋ねてきた。
どちらでも良いと言いたいところだが、それはここでは一番まずい解答に思えた。何となくだけれど、ジョーは主体性がないことを嫌うタイプに見えたのだ。選択肢を見せて聞いたということからもそれが窺える。
かおるは少し考えてから自分の心が惹かれる方を指差した。
それを見てからジョーは柔らかな笑みを見せ、かおるでも分かる速さの英語で素敵なレディになろうと言い仕事を開始した。
恭祐が依頼していたのはヘアメイクだけではなくメイクアップも。確かに、頭とドレスだけしっかりしていても顔が浮いていたらおかしなことになってしまう。
ジョーに変わって、メイクアップはサンドラという女性が行ってくれた。全てが終わると、もう一度ジョーが細かいところを確認。その後リサがタクシーが来るまでここで待っていてとかおるを案内してくれた。
流れからすると、今が支払いをするタイミングなんだろうとかおるは財布からクレジットカードを取り出そうとした。一体いくら請求されるのか。怖いけれど、まさしく怖いもの見たさ。こんな女王のような待遇にはいくらの対価が待っているのか。ドキドキしながらリサに拙い英語で支払いをしたい旨告げたのだった。
ところが、リサはgratuityも含めて全て終わっていると言う。
「gratuity?」
「service charge, um tip.」
本当に恭祐はスマートに全てを行ってくれていたらしい。リサが『彼は本当にあなたが大切なのね』と微笑んだ程だ。その言い方、表情からチップも弾んでいるのだろうし、髪飾りの予算だって上限は言われなかったということだろう。
最初の服装が原因なのは分かる。しかし、ドレスの購入代金から何から何まで、一体いくら恭祐に使わせてしまったのだろうか。考えるだけでも怖い。幸い、本当に使う暇がなかったから貯金はある。
物語のシンデレラは魔法使いが全て整えてくれるが、現実ではそんなことはあり得ない。ドレスにもメイクにも、カボチャの馬車ならぬタクシーの手配にもその対価が必要だ。かおるは、今夜食事に行く時に日本へ戻ってからまとめて支払うと恭祐に詫びなくてはいけないと思った。
ホテルへ戻るとサロンへ持っていったドレス以外のものが既に部屋へ運び込まれていた。
かおるは今夜着るべきエメラルドグリーンのドレスをベッドの上に広げまじまじと眺めた。ドレスは言うまでもなく、デザイン、素材、どれをとってもかおるの持ってきたワンピースと比べ物にならない程豪華だ。
豪華過ぎることが、かおるに己の見窄らしさを知らしめるように。
そう、ドレスは恭祐とかおるの住む世界の違いを教えてくれているのだ。
恭祐にとって今日の出費はかおるが足を引っ張ったからだとしても、痛くも痒くもない金額であることは明らか。対してかおるにとってはいくら貯金があるとは言え、大きな出費。天と地程の感覚の違いがある。
しかしこんな格好をしてまで行くダイニングルームはどんなところなんだろう。かおるにそんな店での恭祐の同伴者が務まるのだろうか。
髪型もメイクも出来上がってしまっているというのに、ここにきてかおるは食事を断ることは出来ないか考え込んでしまった。そして始まる負の連鎖。次第に様々な事を悩み出した。
けれど、悩んでばかりもいられない。確実に恭祐に指定された時間は近づいてしまっている。
物語のシンデレラが行くのは王子様がいる楽しそうな舞踏会。でも、シンデレラではないかおるがこんなにドレスアップをしてまで行くのは、一体どんなところなのだろうか。
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