どうかあなたが

五十嵐

文字の大きさ
64 / 90

62 悪魔の囁き*

しおりを挟む



「いい表情をしている。お陰で随分と楽しめそうだ。今まで役に立たなかった分、これくらいは当然だろうが。」

恐怖で竦むかおるの背に恭祐は手を伸ばすと、纏わり付いているだけで役割を成していないブラジャーのホックを簡単に外してしまった。力任せに掴まれたブラジャーは床へ投げ捨てられた。

「いや、もう止めて、」
「もっと泣き叫べよ。」
かおるがどんなに懇願しても、恭祐は聞く耳を持つ気はない。むしろ、かおるが願えば願う程、恭祐は愉悦を覚える。表情、声の震え、どれをとっても最上級の興奮を与えてくれる。

次はどんな興奮を与えてくれるのか。ただ剥ぎ取ってしまうだけでは詰まらないと、恭祐は最後の一枚のクロッチ部分に手を伸ばした。残念ながら全然湿り気はないが、ここからどう落としていくかを考えるとそれはそれで滾ってくる。体調が優れない時などは勃ち具合はいまいちだが、かおるという存在はそれを軽く上回らせてくれるのだから驚きだ。

「もう、止めて…、わたしの何がいけないの、」
「何が?簡単なことを聞くんだな。全てだ。全てに決まっているだろう。」

かおるは無意識のうちに、ずっと心にしまっていた質問を恭祐に投げかけた。そして、返ってきた言葉はかおるを深い闇に突き落すには十分なものだった。

絶望よりもはるか下にある深い闇。でも、突き落されたのではない。かおるはずっとそこにいたのだ。自分でも滑稽になる、そんなことに気付いてなかったとは。
深い闇に届く光は少ない。だから、少しでもそれを手繰り寄せる為にもがいていた。実際には掴みようのない光を。
樹もそうなのかもしれない。かおるにとって本来掴みようのない光だったのだ。このままいけば、二度と顔を合わせることなど出来なくなる。

「あと少しで、わたしは恭祐さんの前からいなくなるのに、どうして…。全てと言うなら見るのも触れるのも嫌でしょうに。だから、お願い、もう止めて下さい。」
「…どうしていなくなるんだ。」
恭祐が何か呟いたが、声が小さ過ぎてかおるには聞き取れなかった。

こんな状況でもかおるは兎に角逃げようと努力だけは続けた。何も着ていなくても、恭祐から逃げる為に、もぞもぞとひたすら後ろに手をつきベッドの上へ上へと。けれどあっけなく移動は終わる。ヘッドボードは無惨にも逃げ場がないことをかおるへ告げた。

「それ以上は無理だと分かっているだろう。」
「お願いします。確かに勝手にこの部屋に入ったのはわたしです。でも、本当にそんなつもりはなかったんです。」
「そんなつもりはなかった、か。被害者振る人間がよく口にする言葉だ。先ほども言ったが、オレの部屋に何の許可もなく入ってきたのはおまえだ。言うなれば、オレのルールが優先される空間に入ってきた以上、それに従うのは当然だろう。従わなければ、ネクタイでも何でも利用して縛り上げるまでだが。どうする、従うか、それとも拘束されるか?」

考えるまでもない。どちらを選んでも結果は同じ道を辿ることは明白。ただ、どちらの方が惨めさが少ないのかくらいだ、違いは。

「答えは?かおる、いつも言っているだろう、最適解をすぐに言えと。」
「…」
「従って善がるか、抵抗するくせに善がるか。どちらがおまえの好みなんだ。叶える義理はないが、選ばせてやろう。」

どちらも選ばずに、これ以上悪くならないようにするのがかおるにとっての最適解。でも、そんな答えはどうやっても出てきそうにない。
「Time's up. 時間は有限だ。いつまでもは待てない。」

恭祐がまるで怒りをぶつけるように、かおるの乳首を親指と人差し指で捻り上げた。質問に答えなかった罰を与えるかの如く。けれど、その行為は罰だけでは無かった。色が濃くなり立ち上がった乳首は、次に恭祐に吸い付かれ優しく舐られた。もう一方の乳房は強弱をつけながら揉みしだかれる。かおるの口からはどんなに我慢をしようと喘ぎ声が漏れ始めた。

「かおる、質問を変えよう。滅茶苦茶にされたい、それとも優しくされたい?ただし、優しくされるにはそれ相当の協力を強いるが。この質問ならば答えられるだろう。」

悪魔の囁き、かおるはそう思わずにはいられなかった。自ら無茶苦茶にされたいなどということは考えられない。けれど、優しくされるには…従い、受け入れることが必須だ。恭祐には仕事において但し書きを注意深く読み込むようかおるは教育されている。具体性に欠くそれ相当という言葉が危険なのは重々承知していると言うのに。
それでも、かおるは思ってしまった。どんな形であれ恭祐に優しくされてみたいと。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

惑う霧氷の彼方

雪原るい
ファンタジー
――その日、私は大切なものをふたつ失いました。 ある日、少女が目覚めると見知らぬ場所にいた。 山間の小さな集落… …だが、そこは生者と死者の住まう狭間の世界だった。 ――死者は霧と共に現れる… 小さな集落に伝わる伝承に隠された秘密とは? そして、少女が失った大切なものとは一体…? 小さな集落に死者たちの霧が包み込み… 今、悲しみの鎮魂歌が流れる… それは、悲しく淡い願いのこめられた…失われたものを知る物語―― *** 自サイトにも載せています。更新頻度は不定期、ゆっくりのんびりペースです。 ※R-15は一応…残酷な描写などがあるかもなので設定しています。 ⚠作者独自の設定などがある場合もありますので、予めご了承ください。 本作は『闇空の柩シリーズ』2作目となります。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...