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62 悪魔の囁き*
*
「いい表情をしている。お陰で随分と楽しめそうだ。今まで役に立たなかった分、これくらいは当然だろうが。」
恐怖で竦むかおるの背に恭祐は手を伸ばすと、纏わり付いているだけで役割を成していないブラジャーのホックを簡単に外してしまった。力任せに掴まれたブラジャーは床へ投げ捨てられた。
「いや、もう止めて、」
「もっと泣き叫べよ。」
かおるがどんなに懇願しても、恭祐は聞く耳を持つ気はない。むしろ、かおるが願えば願う程、恭祐は愉悦を覚える。表情、声の震え、どれをとっても最上級の興奮を与えてくれる。
次はどんな興奮を与えてくれるのか。ただ剥ぎ取ってしまうだけでは詰まらないと、恭祐は最後の一枚のクロッチ部分に手を伸ばした。残念ながら全然湿り気はないが、ここからどう落としていくかを考えるとそれはそれで滾ってくる。体調が優れない時などは勃ち具合はいまいちだが、かおるという存在はそれを軽く上回らせてくれるのだから驚きだ。
「もう、止めて…、わたしの何がいけないの、」
「何が?簡単なことを聞くんだな。全てだ。全てに決まっているだろう。」
かおるは無意識のうちに、ずっと心にしまっていた質問を恭祐に投げかけた。そして、返ってきた言葉はかおるを深い闇に突き落すには十分なものだった。
絶望よりもはるか下にある深い闇。でも、突き落されたのではない。かおるはずっとそこにいたのだ。自分でも滑稽になる、そんなことに気付いてなかったとは。
深い闇に届く光は少ない。だから、少しでもそれを手繰り寄せる為にもがいていた。実際には掴みようのない光を。
樹もそうなのかもしれない。かおるにとって本来掴みようのない光だったのだ。このままいけば、二度と顔を合わせることなど出来なくなる。
「あと少しで、わたしは恭祐さんの前からいなくなるのに、どうして…。全てと言うなら見るのも触れるのも嫌でしょうに。だから、お願い、もう止めて下さい。」
「…どうしていなくなるんだ。」
恭祐が何か呟いたが、声が小さ過ぎてかおるには聞き取れなかった。
こんな状況でもかおるは兎に角逃げようと努力だけは続けた。何も着ていなくても、恭祐から逃げる為に、もぞもぞとひたすら後ろに手をつきベッドの上へ上へと。けれどあっけなく移動は終わる。ヘッドボードは無惨にも逃げ場がないことをかおるへ告げた。
「それ以上は無理だと分かっているだろう。」
「お願いします。確かに勝手にこの部屋に入ったのはわたしです。でも、本当にそんなつもりはなかったんです。」
「そんなつもりはなかった、か。被害者振る人間がよく口にする言葉だ。先ほども言ったが、オレの部屋に何の許可もなく入ってきたのはおまえだ。言うなれば、オレのルールが優先される空間に入ってきた以上、それに従うのは当然だろう。従わなければ、ネクタイでも何でも利用して縛り上げるまでだが。どうする、従うか、それとも拘束されるか?」
考えるまでもない。どちらを選んでも結果は同じ道を辿ることは明白。ただ、どちらの方が惨めさが少ないのかくらいだ、違いは。
「答えは?かおる、いつも言っているだろう、最適解をすぐに言えと。」
「…」
「従って善がるか、抵抗するくせに善がるか。どちらがおまえの好みなんだ。叶える義理はないが、選ばせてやろう。」
どちらも選ばずに、これ以上悪くならないようにするのがかおるにとっての最適解。でも、そんな答えはどうやっても出てきそうにない。
「Time's up. 時間は有限だ。いつまでもは待てない。」
恭祐がまるで怒りをぶつけるように、かおるの乳首を親指と人差し指で捻り上げた。質問に答えなかった罰を与えるかの如く。けれど、その行為は罰だけでは無かった。色が濃くなり立ち上がった乳首は、次に恭祐に吸い付かれ優しく舐られた。もう一方の乳房は強弱をつけながら揉みしだかれる。かおるの口からはどんなに我慢をしようと喘ぎ声が漏れ始めた。
「かおる、質問を変えよう。滅茶苦茶にされたい、それとも優しくされたい?ただし、優しくされるにはそれ相当の協力を強いるが。この質問ならば答えられるだろう。」
悪魔の囁き、かおるはそう思わずにはいられなかった。自ら無茶苦茶にされたいなどということは考えられない。けれど、優しくされるには…従い、受け入れることが必須だ。恭祐には仕事において但し書きを注意深く読み込むようかおるは教育されている。具体性に欠くそれ相当という言葉が危険なのは重々承知していると言うのに。
それでも、かおるは思ってしまった。どんな形であれ恭祐に優しくされてみたいと。
「いい表情をしている。お陰で随分と楽しめそうだ。今まで役に立たなかった分、これくらいは当然だろうが。」
恐怖で竦むかおるの背に恭祐は手を伸ばすと、纏わり付いているだけで役割を成していないブラジャーのホックを簡単に外してしまった。力任せに掴まれたブラジャーは床へ投げ捨てられた。
「いや、もう止めて、」
「もっと泣き叫べよ。」
かおるがどんなに懇願しても、恭祐は聞く耳を持つ気はない。むしろ、かおるが願えば願う程、恭祐は愉悦を覚える。表情、声の震え、どれをとっても最上級の興奮を与えてくれる。
次はどんな興奮を与えてくれるのか。ただ剥ぎ取ってしまうだけでは詰まらないと、恭祐は最後の一枚のクロッチ部分に手を伸ばした。残念ながら全然湿り気はないが、ここからどう落としていくかを考えるとそれはそれで滾ってくる。体調が優れない時などは勃ち具合はいまいちだが、かおるという存在はそれを軽く上回らせてくれるのだから驚きだ。
「もう、止めて…、わたしの何がいけないの、」
「何が?簡単なことを聞くんだな。全てだ。全てに決まっているだろう。」
かおるは無意識のうちに、ずっと心にしまっていた質問を恭祐に投げかけた。そして、返ってきた言葉はかおるを深い闇に突き落すには十分なものだった。
絶望よりもはるか下にある深い闇。でも、突き落されたのではない。かおるはずっとそこにいたのだ。自分でも滑稽になる、そんなことに気付いてなかったとは。
深い闇に届く光は少ない。だから、少しでもそれを手繰り寄せる為にもがいていた。実際には掴みようのない光を。
樹もそうなのかもしれない。かおるにとって本来掴みようのない光だったのだ。このままいけば、二度と顔を合わせることなど出来なくなる。
「あと少しで、わたしは恭祐さんの前からいなくなるのに、どうして…。全てと言うなら見るのも触れるのも嫌でしょうに。だから、お願い、もう止めて下さい。」
「…どうしていなくなるんだ。」
恭祐が何か呟いたが、声が小さ過ぎてかおるには聞き取れなかった。
こんな状況でもかおるは兎に角逃げようと努力だけは続けた。何も着ていなくても、恭祐から逃げる為に、もぞもぞとひたすら後ろに手をつきベッドの上へ上へと。けれどあっけなく移動は終わる。ヘッドボードは無惨にも逃げ場がないことをかおるへ告げた。
「それ以上は無理だと分かっているだろう。」
「お願いします。確かに勝手にこの部屋に入ったのはわたしです。でも、本当にそんなつもりはなかったんです。」
「そんなつもりはなかった、か。被害者振る人間がよく口にする言葉だ。先ほども言ったが、オレの部屋に何の許可もなく入ってきたのはおまえだ。言うなれば、オレのルールが優先される空間に入ってきた以上、それに従うのは当然だろう。従わなければ、ネクタイでも何でも利用して縛り上げるまでだが。どうする、従うか、それとも拘束されるか?」
考えるまでもない。どちらを選んでも結果は同じ道を辿ることは明白。ただ、どちらの方が惨めさが少ないのかくらいだ、違いは。
「答えは?かおる、いつも言っているだろう、最適解をすぐに言えと。」
「…」
「従って善がるか、抵抗するくせに善がるか。どちらがおまえの好みなんだ。叶える義理はないが、選ばせてやろう。」
どちらも選ばずに、これ以上悪くならないようにするのがかおるにとっての最適解。でも、そんな答えはどうやっても出てきそうにない。
「Time's up. 時間は有限だ。いつまでもは待てない。」
恭祐がまるで怒りをぶつけるように、かおるの乳首を親指と人差し指で捻り上げた。質問に答えなかった罰を与えるかの如く。けれど、その行為は罰だけでは無かった。色が濃くなり立ち上がった乳首は、次に恭祐に吸い付かれ優しく舐られた。もう一方の乳房は強弱をつけながら揉みしだかれる。かおるの口からはどんなに我慢をしようと喘ぎ声が漏れ始めた。
「かおる、質問を変えよう。滅茶苦茶にされたい、それとも優しくされたい?ただし、優しくされるにはそれ相当の協力を強いるが。この質問ならば答えられるだろう。」
悪魔の囁き、かおるはそう思わずにはいられなかった。自ら無茶苦茶にされたいなどということは考えられない。けれど、優しくされるには…従い、受け入れることが必須だ。恭祐には仕事において但し書きを注意深く読み込むようかおるは教育されている。具体性に欠くそれ相当という言葉が危険なのは重々承知していると言うのに。
それでも、かおるは思ってしまった。どんな形であれ恭祐に優しくされてみたいと。
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