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67 とりとめもない思考
頭の中も、心の中もドロドロとしている。
このままここに居ても、今の恭祐には最適解を導き出すことは不可能だ。
全てを洗い流し、すっきりする為にシャワーを浴びようと肩にかけただけのローブ姿で恭祐はバスルームへ向かった。冷水だろうと熱湯だろうと頭がスッキリすることも、心に溜まった澱も流せないと分かっていながら。
これは程の良い言い訳に過ぎない。
目の前の現実から目を背ける為の。
現に、恭祐はカーテンを開けていない。室内は柔らかい間接照明が優しい光を放っているだけで、太陽光は遮られている。だからかおるはあのまま目を覚さないだろう。
気をやったかおるはまるで時が止まったかのように眠っていた。初めてであれだけ体を揺さぶられれば、疲れて当然。
しかも相手は上司である恭祐な上に、避妊はしないと宣言されての行為。肉体だけでなく、精神的にも疲れたことだろう。かおるにとって最悪などという言葉では片付けられない時間だったに違いない。
けれど、優しさが不要だと言ったのはかおる。恭祐はその通りにしただけだ。
しかし、それは詭弁。そんなことは恭祐だって分かりきっている。
正しくは、かおるが言ったのではなく、恭祐に言わされたのだ。
何も今朝のことだけではない。今までだってずっとそうだった。
恭祐は立場を利用し、早い段階でかおるを自分に都合良く躾けあげた。言葉や態度で追い込んで。辞めてもいい存在だと思うと、どうとでも扱えた。ところが、かおるは不思議と仕事をしっかりと身につけ恭祐に貢献するようになった。酷い扱いなのに既に五年以上一緒に働いている。
五年以上一緒に働いているのは、おかしなことにかおるがいつ辞めてもいいと思っている恭祐が原因だとは誰も思わないだろう。何年もかおるが転属願いを出していたのは知っていた。恭祐とて曲がりなりにも上司である以上、その情報はもたらされる。
大した評価もしないくせに、その転属願いを潰していたのも恭祐。冷遇しているというのに、気付けば手放せなくなっていた。
仕事がし易いというのもあるが、何よりかおるの怯えたり不安げな表情が恭祐の毎日に欠かせないものになっていたのだ。体の関係がある女よりも、不思議と性的興奮をかおるは与えてくれる存在だった。傍にいるだけで、恭祐にえも言われぬ喜びを与えてくれる。
だから、今朝も体の熱が下がったばかりだというのに、本能という熱が何度も暴れた。
体調不良から回復したばかりの勃ち方ではない程。何度も中に出し切った。出来てもおかしくないことは確かだ。意図的に最奥目掛けて放ったのだから。
意図的に…
やはり思考回路が乱れている。かおるのことを先ずは考えるべきなのに、恭祐は家族の中で一番交流のある大地のことを思い出した。
大地の生まれた日は不自然過ぎる。仮に咲良の目を盗んで秀一と奏絵が通じていたとしても、子供までは作らないだろう。立場的にも時期的にも。避妊の失敗も考えにくい。そういう相手だからこそ、注意をするはずだ。
だとしたら大地は、意図的に作られたのだろうか。
咲良が亡くなる前に奏絵に何かをお願いをしたと言っていたが、まさか恭祐の兄弟までなんてことは…
そこまで考えて、恭祐は自分が冷静になりきれないと感じた。いくら熱めのシャワーを浴びてもどうにもならない。かおると向き合わないことには一歩も前へ進めないだろう。
取り留めのないことを考えながらシャワーをだらだらと浴び続けていたのにも女々しい理由がある。その音でかおるが起きて隣の部屋に戻ってくれることを期待していたのだ。
短絡的過ぎる考えに恭祐は自分自身に嘲笑した。先送りするだけに過ぎない。それでは問題の解決にはならないと良く知っているというのに。
先ずはかおるに伝えなくてはいけないだろう、何もいけないことなどなかったと。いつ失っても良かったはずのかおるは、恭祐の言葉に何を思い、何を言うのだろう。
けれど、言葉にしたとしてその後、恭祐はどこへ向かって一歩を踏み出せばいいのだろうか。
このままここに居ても、今の恭祐には最適解を導き出すことは不可能だ。
全てを洗い流し、すっきりする為にシャワーを浴びようと肩にかけただけのローブ姿で恭祐はバスルームへ向かった。冷水だろうと熱湯だろうと頭がスッキリすることも、心に溜まった澱も流せないと分かっていながら。
これは程の良い言い訳に過ぎない。
目の前の現実から目を背ける為の。
現に、恭祐はカーテンを開けていない。室内は柔らかい間接照明が優しい光を放っているだけで、太陽光は遮られている。だからかおるはあのまま目を覚さないだろう。
気をやったかおるはまるで時が止まったかのように眠っていた。初めてであれだけ体を揺さぶられれば、疲れて当然。
しかも相手は上司である恭祐な上に、避妊はしないと宣言されての行為。肉体だけでなく、精神的にも疲れたことだろう。かおるにとって最悪などという言葉では片付けられない時間だったに違いない。
けれど、優しさが不要だと言ったのはかおる。恭祐はその通りにしただけだ。
しかし、それは詭弁。そんなことは恭祐だって分かりきっている。
正しくは、かおるが言ったのではなく、恭祐に言わされたのだ。
何も今朝のことだけではない。今までだってずっとそうだった。
恭祐は立場を利用し、早い段階でかおるを自分に都合良く躾けあげた。言葉や態度で追い込んで。辞めてもいい存在だと思うと、どうとでも扱えた。ところが、かおるは不思議と仕事をしっかりと身につけ恭祐に貢献するようになった。酷い扱いなのに既に五年以上一緒に働いている。
五年以上一緒に働いているのは、おかしなことにかおるがいつ辞めてもいいと思っている恭祐が原因だとは誰も思わないだろう。何年もかおるが転属願いを出していたのは知っていた。恭祐とて曲がりなりにも上司である以上、その情報はもたらされる。
大した評価もしないくせに、その転属願いを潰していたのも恭祐。冷遇しているというのに、気付けば手放せなくなっていた。
仕事がし易いというのもあるが、何よりかおるの怯えたり不安げな表情が恭祐の毎日に欠かせないものになっていたのだ。体の関係がある女よりも、不思議と性的興奮をかおるは与えてくれる存在だった。傍にいるだけで、恭祐にえも言われぬ喜びを与えてくれる。
だから、今朝も体の熱が下がったばかりだというのに、本能という熱が何度も暴れた。
体調不良から回復したばかりの勃ち方ではない程。何度も中に出し切った。出来てもおかしくないことは確かだ。意図的に最奥目掛けて放ったのだから。
意図的に…
やはり思考回路が乱れている。かおるのことを先ずは考えるべきなのに、恭祐は家族の中で一番交流のある大地のことを思い出した。
大地の生まれた日は不自然過ぎる。仮に咲良の目を盗んで秀一と奏絵が通じていたとしても、子供までは作らないだろう。立場的にも時期的にも。避妊の失敗も考えにくい。そういう相手だからこそ、注意をするはずだ。
だとしたら大地は、意図的に作られたのだろうか。
咲良が亡くなる前に奏絵に何かをお願いをしたと言っていたが、まさか恭祐の兄弟までなんてことは…
そこまで考えて、恭祐は自分が冷静になりきれないと感じた。いくら熱めのシャワーを浴びてもどうにもならない。かおると向き合わないことには一歩も前へ進めないだろう。
取り留めのないことを考えながらシャワーをだらだらと浴び続けていたのにも女々しい理由がある。その音でかおるが起きて隣の部屋に戻ってくれることを期待していたのだ。
短絡的過ぎる考えに恭祐は自分自身に嘲笑した。先送りするだけに過ぎない。それでは問題の解決にはならないと良く知っているというのに。
先ずはかおるに伝えなくてはいけないだろう、何もいけないことなどなかったと。いつ失っても良かったはずのかおるは、恭祐の言葉に何を思い、何を言うのだろう。
けれど、言葉にしたとしてその後、恭祐はどこへ向かって一歩を踏み出せばいいのだろうか。
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