どうかあなたが

五十嵐

文字の大きさ
78 / 90

76 修正

しおりを挟む
計画に修正は付きもの。
尤もな理由を付けてかおるの出張申請を通したことは計画通り。二人を除いて誰もが気に留めない完璧なものだった。

全員ではないのに、何故完璧なのか。答えは簡単。漠然とした何かを感じた二人には、そうであって欲しかったからだ。一人は樹、そしてもう一人こそかおるだった。

いつもは恭祐の出張手配はかおるが行う。それが、全て為された後での連絡。しかもかおるは出張理由を知らされないまま。さぞかし戸惑ったことだろう。あの時の視線を思い出すだけで恭祐の性的嗜好が満たされる程だ。

かおるが恭祐に手配する航空券はもしものことを考え、日付が変えられるもの。対して恭祐は、敢えて日付が一切変えられないFIXチケットで発券を依頼した。それは一週間以上常にかおると恭祐は傍にいることを意味する。しかもかおるにとって、知り合いがいない土地勘もない場所で。
そう、恭祐はかおるを入れていた鳥籠を別の場所に持ってきたのだ。出入り口を開けっ放しにしても、恭祐以外手を差し伸べない場所へ。外に出す時は、常に恭祐がその手でしっかり掴み握りしめられる場所へ。

全ては上手くいっている気がしていた。しかし、自らの策に恭祐は足を掬われた。
到着日の夕食で、恭祐の好みではないアルコール度数の低めなロゼを注文したのには訳がある。かおるがどれくらいアルコールに強いか知りたかったのだ。グラスを口へ運ぶ回数が少ない割には、顔にはすぐに赤みが差した。だからこそ、翌日の夕食には重口赤ワインの中でもアルコール度数の高いものを選んだ。回れば足取りが覚束なくなると予想して。

ところが、それまでの無理が祟ったのか仕掛ける側の恭祐に先にアルコールが回ってしまった。普段はいくら飲んでも問題ないというのに。そこからは久し振りの失敗に苛立つしかなかった。けれど何も出来ない。かおるに何か言うのも億劫で、不本意ながら体を預けずにはいられなかった。

かおるは先程まで体を弄られていた相手である恭祐を、必死に部屋へ送り届けようとする。だとしたら、行き着く先でかおるをそのままベッドに引きずり込めば予定したプランとは違えど結果は同じになると思ったところまでで恭祐の気力は尽きた。それ以前の問題に勃つのも難しかったはずだ。

次に目覚めた時は、実に都合の良い状態だった。かおるがベッドの横に座り寝息を立てていたのだ。蛾の火に赴くが如し、と言ったところだろう。そして、日々の仕事、長いフライト、慣れない出張、強めのワインとどれを取ってもかおるに負担を強いることばかりでちょっとやそっとのことでは起きそうになかった。
だから、恭祐は思ったのだ、畳み込むなら今しかないと。目を開けないこの状況を利用し、最高のお膳立てをして目覚めさせればいい。そう思うと、えも言われぬ興奮が恭祐の体を駆け抜ける。どんな時でもかおるは恭祐を楽しませてくれる存在だ。今更、易々と手放すだなんて出来る筈がない。

恭祐はタイミングを見計らい、かおるに体の重みをかけ起こした。ところが、ベッドに組み敷いたかおるは看病に来ただけでそんなつもりはなかったと綺麗事を並べた。おまけに怯える表情に涙まで流して。どこまでも狡猾な女だと恭祐は思わずにはいられなかった。

そこからは、最終的にどう変貌するのか、結局のところ腰を振って善がるのかじっくり楽しませてもらおうと思ったのに…
土台が狂うだけだった。計画の元となる潰すべき問題が最初から存在しなかったのだ。

それなのに、恭祐は既に修正を始めている。目的がより明確になった以上、効果的な手段を取るだけだ。
かおるに精を止めどなく注ぐという手段で羽を毟り取り、飛べなくすればいい。
余計な理由、理屈、纏わりつく全てを取り払えば簡単なこと、恭祐はかおるが欲しいのだ。

貪っていた口腔内から舌を引き抜き、唇を離し尋ねてみる
「かおるは誰のものだ。」
と。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

惑う霧氷の彼方

雪原るい
ファンタジー
――その日、私は大切なものをふたつ失いました。 ある日、少女が目覚めると見知らぬ場所にいた。 山間の小さな集落… …だが、そこは生者と死者の住まう狭間の世界だった。 ――死者は霧と共に現れる… 小さな集落に伝わる伝承に隠された秘密とは? そして、少女が失った大切なものとは一体…? 小さな集落に死者たちの霧が包み込み… 今、悲しみの鎮魂歌が流れる… それは、悲しく淡い願いのこめられた…失われたものを知る物語―― *** 自サイトにも載せています。更新頻度は不定期、ゆっくりのんびりペースです。 ※R-15は一応…残酷な描写などがあるかもなので設定しています。 ⚠作者独自の設定などがある場合もありますので、予めご了承ください。 本作は『闇空の柩シリーズ』2作目となります。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...