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81 籠を用意するには
選りに選ってどうしてその色なのか。恭祐はかおるの唇を拭った。
どうせ食事へ行くのだから、もうグロスを付ける必要はない。そう伝えたのだから、出掛ければいいのに再び唇を合わせているのもおかしなことだ。分かっているのに、吸い寄せられてしまう。
だから強い意志で唇を解放すれば、今度は嫌でも見えてしまうかおるの本来の色。恭祐が強く吸ったせいか、赤みが増し口付け以上のことを強請っているように見えてしまう。
好きなのに遠ざけたい色を奪ったその下には、欲望を刺激する色が隠れているだなんて質が悪過ぎる。
「久し振りに行きたい店があるんだ」
食欲を満たすより、かおるの体を貪るほうが本能を満たすだろう。けれど、計画を進める為に恭祐はかおるを立ち上がらせた。
かおるを籠に閉じ込める為に、今夜は外へ連れ出す。矛盾した行動だが、これでいい。恭祐のものとして大切に扱われ、楽しい思いをし、そのまま何の疑問も持たず籠へ連れ帰る。籠の中の良さを知れば、鳥は出入り口が開いてようと出なくなる。人ならばずっとは閉じ込めておけないが、出る時には断るだろうし、決められたタイミングには必ず戻るようになるだろう。
あと少し。かおるは今までの躾からか既にその様相を呈している。恭祐が去った後、かおるは出掛けていた。そして、時間通りここに来た。それも恭祐も望むタイミングで。籠の扉はもう開けておいても、問題ないだろう。
計画を進める為、恭祐はかおるの華奢な腰を引き寄せエスコートするように歩きだした。
移動する人間が多い時間帯とあってホテル正面には多くのタクシーが控えていたようだ。恭祐がホテルロビーにいるベルスタッフにタクシーを依頼すると直ぐに案内された。
「Where to?]
「The corner of ー」
恭祐が目的地を告げると、運転手は頷いてだからイタリアンカラーなのかと言いタクシーを走らせた。
日中の空いている時間帯とは異なり、この時刻はどこへ行くにも通常より時間が掛かってしまう。その分、車窓からネオン煌めくニューヨークの夜景をのんびり見るという特典もあるのだが。しかし明るい街中とは対照的に車内は薄暗い。隣に座るかおるの腰に回した腕の先が乳房の質感を下から確かめるよう包み込んだところで誰の目にも留まらない。
かおるは逆らわずされるがまま。しかし、恭祐の行為を受け入れているようでもない。拒否はないだろうが、戸惑いが強いのだろう。仕方がない、今までの恭祐の接し方とはまるで違うのだから。
「嫌いなものや食べれないものを教えて欲しい」
共に食事へ向かうのだから知っているべき情報として恭祐は質問した。今まで何年も一緒に働いて来たが恭祐はかおるの個人的なことなど何も知らない。
不思議なのはかおるだ。気付けばかおるは恭祐の食の好みを何も言わずとも理解していた。食だけではない。恭祐の雰囲気から早い時間から会社にいる時なども理解する。うっかり日付を跨いで、家でシャワーだけ浴び、着替えを済ませ戻ってきた時には恭祐好みの朝食を買ってくるくらいだ。
「変な食べ物以外は大丈夫だと思います」
「具体的に変なとは?」
「あ、申し訳ございません」
仕事の上では抽象的ではなく具体的な説明をするように言われているかおるは、恭祐の言葉にすぐに謝った。
「仕事中ではないから、謝らなくていい。今はただ食事に行くだけだ。それでかおるの言う変な食べ物はとは?」
「昆虫とか爬虫類とか一般的なスーパーでは売っていないようなものです」
「そうか、分かった。まあ、オレもその手の食材は食べないから安心して欲しい。それと、…好きなものは?」
食事へ行くから聞いただけ。それなのに、『好き』という言葉をかおるに向けるのに恭祐は変な緊張を強いられた。
かおるの為の快適な籠を作る為には『好き』を知ることは重要事項。食べ物だけではない、様々な好きで囲めばかおるはそこから出れなくなるはず。
『じゃあ、オレを籠の中に入れればいい』
恭祐はここにいない樹の声を聞いた気がした。
「貝類とキノコ類が好きです」
「すまん、もう一度、言ってくれ」
いないはずの樹の声にかおるの声が打ち消されたようだった。
どうせ食事へ行くのだから、もうグロスを付ける必要はない。そう伝えたのだから、出掛ければいいのに再び唇を合わせているのもおかしなことだ。分かっているのに、吸い寄せられてしまう。
だから強い意志で唇を解放すれば、今度は嫌でも見えてしまうかおるの本来の色。恭祐が強く吸ったせいか、赤みが増し口付け以上のことを強請っているように見えてしまう。
好きなのに遠ざけたい色を奪ったその下には、欲望を刺激する色が隠れているだなんて質が悪過ぎる。
「久し振りに行きたい店があるんだ」
食欲を満たすより、かおるの体を貪るほうが本能を満たすだろう。けれど、計画を進める為に恭祐はかおるを立ち上がらせた。
かおるを籠に閉じ込める為に、今夜は外へ連れ出す。矛盾した行動だが、これでいい。恭祐のものとして大切に扱われ、楽しい思いをし、そのまま何の疑問も持たず籠へ連れ帰る。籠の中の良さを知れば、鳥は出入り口が開いてようと出なくなる。人ならばずっとは閉じ込めておけないが、出る時には断るだろうし、決められたタイミングには必ず戻るようになるだろう。
あと少し。かおるは今までの躾からか既にその様相を呈している。恭祐が去った後、かおるは出掛けていた。そして、時間通りここに来た。それも恭祐も望むタイミングで。籠の扉はもう開けておいても、問題ないだろう。
計画を進める為、恭祐はかおるの華奢な腰を引き寄せエスコートするように歩きだした。
移動する人間が多い時間帯とあってホテル正面には多くのタクシーが控えていたようだ。恭祐がホテルロビーにいるベルスタッフにタクシーを依頼すると直ぐに案内された。
「Where to?]
「The corner of ー」
恭祐が目的地を告げると、運転手は頷いてだからイタリアンカラーなのかと言いタクシーを走らせた。
日中の空いている時間帯とは異なり、この時刻はどこへ行くにも通常より時間が掛かってしまう。その分、車窓からネオン煌めくニューヨークの夜景をのんびり見るという特典もあるのだが。しかし明るい街中とは対照的に車内は薄暗い。隣に座るかおるの腰に回した腕の先が乳房の質感を下から確かめるよう包み込んだところで誰の目にも留まらない。
かおるは逆らわずされるがまま。しかし、恭祐の行為を受け入れているようでもない。拒否はないだろうが、戸惑いが強いのだろう。仕方がない、今までの恭祐の接し方とはまるで違うのだから。
「嫌いなものや食べれないものを教えて欲しい」
共に食事へ向かうのだから知っているべき情報として恭祐は質問した。今まで何年も一緒に働いて来たが恭祐はかおるの個人的なことなど何も知らない。
不思議なのはかおるだ。気付けばかおるは恭祐の食の好みを何も言わずとも理解していた。食だけではない。恭祐の雰囲気から早い時間から会社にいる時なども理解する。うっかり日付を跨いで、家でシャワーだけ浴び、着替えを済ませ戻ってきた時には恭祐好みの朝食を買ってくるくらいだ。
「変な食べ物以外は大丈夫だと思います」
「具体的に変なとは?」
「あ、申し訳ございません」
仕事の上では抽象的ではなく具体的な説明をするように言われているかおるは、恭祐の言葉にすぐに謝った。
「仕事中ではないから、謝らなくていい。今はただ食事に行くだけだ。それでかおるの言う変な食べ物はとは?」
「昆虫とか爬虫類とか一般的なスーパーでは売っていないようなものです」
「そうか、分かった。まあ、オレもその手の食材は食べないから安心して欲しい。それと、…好きなものは?」
食事へ行くから聞いただけ。それなのに、『好き』という言葉をかおるに向けるのに恭祐は変な緊張を強いられた。
かおるの為の快適な籠を作る為には『好き』を知ることは重要事項。食べ物だけではない、様々な好きで囲めばかおるはそこから出れなくなるはず。
『じゃあ、オレを籠の中に入れればいい』
恭祐はここにいない樹の声を聞いた気がした。
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いないはずの樹の声にかおるの声が打ち消されたようだった。
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