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118 未来を現実にする為に
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マクレナン侯爵邸に戻ると、ロイは全ての感情に蓋をして、すぐに執事長の下へ向かった。北の邸へ向かう前と何一つ変わらない行動を心掛け。そして執事長の目を見ると小さく頷いた。
通常であれば、一使用人が仕事を終えて戻ってきたのだから、上司である執事長に何らかの報告があって当然だ。しかし、ロイが無言で用を済ませてきたと伝える時は、その仕事の出所がマクレナン侯爵であることを意味する。そのため執事長も何も言わず、侯爵の予定を確認しに行ったのだった。
執事長が戻るまでの数分間。ロイにはこの時間すら惜しかった。本当はレイチェルの下へ今すぐ向かいたい。ロイがカルセナに自分の気持ちを吐露したのは、不安があったからだ。同様に、レイチェルもまた様々な気持ちの揺れを抱えているだろう。勿論、フリカには伝えているだろうが、一番良いのはロイとレイチェルが語り合うことだ。それも北の邸で、夜な夜な言葉だけではなく体温を通して心を感じ合った時のように。
未来のために、自分たちが今の行動を取っていることは分かっている。見据えているのは、未来。けれど、未来の前に立ちはだかるレイチェルとロイの間にある見えない壁の厚さと高さが、見えないはずなのに心配を助長させる。滑稽なことに。
レイチェルの顔を見て、せめて手を取り言葉を交わしたい、ロイがそう思った時、ドアが開き、執事長が再び現れた。そして言葉少なに、ロイが向かうべき場所を伝えた。
「今すぐ向かうように」
どこへという指示がない言葉。だからこそ、向かう場所は決まっている。
ロイは、希望と現実の差という事実を虚しく感じながら、再び感情をしまい、執事長の言葉に頷いたのだった。
そして、到着した部屋の扉の向こうにいる人物に、自分の気持ちの揺れが少しでも気づかれることがないよう、再びマクレナン侯爵に従順な飼い犬を装い、中に入ったのだった。
「それで」
「アーミテージ子爵からはこちらを渡されました」
クレアと仕立て屋との一件があってから、ロイはマクレナン侯爵の使いでアーミテージ子爵家を何度か訪問していた。使いとは言っても、ただ用件を伝えに行くだけではない。もちろん、侯爵邸でクレアと仕立て屋が起こしたことを伝え、抗議をする手紙も持って行きはしたが、それは建前だ。重要なのは、アーミテージ子爵邸の内部を探ることだった。
アーミテージ子爵家は目立った事業をしていない。丈夫な木綿生地を仕入れて作るシャツ。それに質の良い木綿生地で作るドレスシャツ。テーラーとしての事業内容は主にこの二つだ。丈夫な生地で仕立てられたシャツは、貴族家で働く使用人用のもの。労働のためのものなのだから、丈夫で長持ちするシャツである。その割には、取引量が不思議と多い。
「アーミテージ子爵家が営むテーラーの顧客ですが、この三つの貴族家は怪しいと思われます。どこの家も使用人用のシャツをテーラーに納品させていますが、この三家の発注数は、実際にいる使用人の数よりも多めです」
「それは必要以上に発注して、わざと多めに支払いをしているということか。それとも発注数はどうでもよく、テーラーを何度も行き来する必要があるということか」
「両方でしょう。発注数は実数ではなく、金は多めに支払い、さらに何度も行き来する必要があるのだと思います」
「そうか。おまえのことだ、その理由にも当たりをつけ、既に調べ始めているのだろうな」
ロイは頷くと、事実にこれから自分たちに都合の良い脚色を加え、侯爵へ報告を始めたのだった。
通常であれば、一使用人が仕事を終えて戻ってきたのだから、上司である執事長に何らかの報告があって当然だ。しかし、ロイが無言で用を済ませてきたと伝える時は、その仕事の出所がマクレナン侯爵であることを意味する。そのため執事長も何も言わず、侯爵の予定を確認しに行ったのだった。
執事長が戻るまでの数分間。ロイにはこの時間すら惜しかった。本当はレイチェルの下へ今すぐ向かいたい。ロイがカルセナに自分の気持ちを吐露したのは、不安があったからだ。同様に、レイチェルもまた様々な気持ちの揺れを抱えているだろう。勿論、フリカには伝えているだろうが、一番良いのはロイとレイチェルが語り合うことだ。それも北の邸で、夜な夜な言葉だけではなく体温を通して心を感じ合った時のように。
未来のために、自分たちが今の行動を取っていることは分かっている。見据えているのは、未来。けれど、未来の前に立ちはだかるレイチェルとロイの間にある見えない壁の厚さと高さが、見えないはずなのに心配を助長させる。滑稽なことに。
レイチェルの顔を見て、せめて手を取り言葉を交わしたい、ロイがそう思った時、ドアが開き、執事長が再び現れた。そして言葉少なに、ロイが向かうべき場所を伝えた。
「今すぐ向かうように」
どこへという指示がない言葉。だからこそ、向かう場所は決まっている。
ロイは、希望と現実の差という事実を虚しく感じながら、再び感情をしまい、執事長の言葉に頷いたのだった。
そして、到着した部屋の扉の向こうにいる人物に、自分の気持ちの揺れが少しでも気づかれることがないよう、再びマクレナン侯爵に従順な飼い犬を装い、中に入ったのだった。
「それで」
「アーミテージ子爵からはこちらを渡されました」
クレアと仕立て屋との一件があってから、ロイはマクレナン侯爵の使いでアーミテージ子爵家を何度か訪問していた。使いとは言っても、ただ用件を伝えに行くだけではない。もちろん、侯爵邸でクレアと仕立て屋が起こしたことを伝え、抗議をする手紙も持って行きはしたが、それは建前だ。重要なのは、アーミテージ子爵邸の内部を探ることだった。
アーミテージ子爵家は目立った事業をしていない。丈夫な木綿生地を仕入れて作るシャツ。それに質の良い木綿生地で作るドレスシャツ。テーラーとしての事業内容は主にこの二つだ。丈夫な生地で仕立てられたシャツは、貴族家で働く使用人用のもの。労働のためのものなのだから、丈夫で長持ちするシャツである。その割には、取引量が不思議と多い。
「アーミテージ子爵家が営むテーラーの顧客ですが、この三つの貴族家は怪しいと思われます。どこの家も使用人用のシャツをテーラーに納品させていますが、この三家の発注数は、実際にいる使用人の数よりも多めです」
「それは必要以上に発注して、わざと多めに支払いをしているということか。それとも発注数はどうでもよく、テーラーを何度も行き来する必要があるということか」
「両方でしょう。発注数は実数ではなく、金は多めに支払い、さらに何度も行き来する必要があるのだと思います」
「そうか。おまえのことだ、その理由にも当たりをつけ、既に調べ始めているのだろうな」
ロイは頷くと、事実にこれから自分たちに都合の良い脚色を加え、侯爵へ報告を始めたのだった。
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