年に一度の旦那様

五十嵐

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121 同時に届いた二通の手紙

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横取りされたものを取り返した。それは決して奪ったものではない。なぜなら、先に奪ったのはあの女で、アリッサはそれを本来のあるべき姿に戻しただけだからだ。
そうでなければ、あの頃親戚のクレアがアリッサを憐れむことなどなかっただろう。つまり、あの女、ベテルリナの横取りが悪いからこそ、クレアは特別な方法でアリッサに手を貸してくれたのだ。

「あの役立たずは何と?」
「嫁の立場でマクレナン侯爵様に意見を伝えることなど出来ないと、あの出来損ないめ」

コリンス伯爵は、レイチェルが王都へ戻ってきたと聞くやいなや、助けを求める手紙を出していた。けれどプライドからか、それは一見すると助けを求めるようには見えない、伯爵家の娘としてすべきことをしろという命令文だったのだが。
そしてレイチェルはその命令に従ったまで。父が嘗てレイチェルに説いたように『女はあまり賢くない方が可愛がられる』のだから、侯爵に何か意見をするよりは従順なほうが伯爵家の娘としては正解だろうと。

「本当に使えない子ね、あの女の娘なだけあって」
「ところでグルーバー子爵夫人からは?」

伯爵がレイチェルに助けを求めたように、アリッサもクレアに手紙を送っていた。あの時助けてくれたクレアだ、アリッサの現状を訴えればまた憐れに思い救いの手を差し伸べてくれるに違いないと。
けれど返ってきた手紙には、グルーバー子爵家の嫁となったクレアである以上他家を助けるには夫の許可がいるというものだった。しかし藁にも縋る思いだったアリッサは一度断られたくらいでは諦めなかった。否、諦めるわけにはいかなかったのだ、それ程コリンス伯爵家は絶望的状況に陥っているのだから。

恥をかくことよりも現状をどうにかする方が重要。アリッサは、クレアの個人資産からいくらか貸してもらえないか、若しくはまたアーミテージ子爵に来てもらえるよう取り計らってもらえないかと再度手紙を送ったのだった、躊躇うことなく。

返事を待つ間、アリッサには返す当てがないのにクレアが金を貸してくれるだろうかという疑問が何度も浮かんだ。そしてその度にアリッサはクレアとの今までの関係を思い出してそれを打ち消し続けたのだった。しかしそれも日が過ぎるにつれ諦めの気持ちの方に傾いていく。
ところが、いよいよ諦め始めたアリッサに、クレアからの待ちに待った手紙が届いた。そして時を同じくして、コリンス伯爵にもマクレナン侯爵から一通の手紙が。
二人は二通の手紙を見比べ希望が持てる方から開封したのだった。
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