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願いと約束3ー6
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「レイヴァン…さま?」
支えられて立ったアルメリアはどうして良いか分からず、レイヴァンの顔を見詰めた。
支えられている背中に熱が集中する。
「捕まっていろ。」
アルメリアの戸惑いを気付いてか、アルメリアを一目すると、滝の方向に顔を向けたレイヴァンの口から聞いた事が無い言葉が唱えられた。
普段話している言語とは掛け離れている。
多分レイヴァンが使っている呪文の一つなのだろう。
唱えるレイヴァンを見上げた継、アルメリアは何が起こるのか見守った。
無意識に飲み込んだ空気に、喉がゴクッと小さく音を立てた。
レイヴァンが呪文を唱え終わった瞬間、アルメリアとレイヴァンが立つ地面が水面下へ急に沈み込む。
―――ザッ……ッ…………
「―――え…っ!?」
その継、一気にアルメリアの体は水の中へと沈んだ。同じくレイヴァンの体も。
ボコボコ…ッ…ボコ……ボコッ……
アルメリアの背中からレイヴァンは手を離す事無く、共に水中に浸かった。
急な事にビックリしたアルメリアは、レイヴァンの腕を掴んだ。
水中に髪が海月の足のように広がる。体が丸ごと水に浸かると、アルメリアの脚は尾へ変化した。
着ていた衣類は水を吸い込み重みが増した。
レイヴァンは水中で黙った継、アルメリアを見詰めていた。
一瞬の出来事に驚いたアルメリアだが、元々人魚である。
本来の人魚の姿へと戻ったアルメリアは、沈み込んだ瞬間こそ左右に首を動かし辺りを見回したが、瞬きを繰り返しながら、レイヴァンへと首を戻した。
(水……心地良い……)
(…レイヴァン様……何を考えているの?)
レイヴァンの意図が分からず、アルメリアはレイヴァンを見詰めた。
《レイヴァン様、何故こんな……》
《……………》
水中でアルメリアが話し掛けるが、レイヴァンは口を開かない。
答えを待つアルメリア。
(どういう事?)
意味が分からず、もう一度聞こうとレイヴァンの腕を掴んでいない左腕上げて、口を開けた時、アルメリアは自身の動きを止めた。
目に映った自分の左腕が光っていた。
それは腕だけでは無い。
自分の体を見ると、全身が光を帯びて光っていた。
レイヴァンの方へ顔を上げると、レイヴァンは微かに微笑んだ。
(―――何…?……暖かい。)
光を帯びたアルメリアは、体全体に自分の温もりとは違う暖かさを感じた。
まるで、胸元から力が湧くような体力が回復するようなそんな暖かさだった。
―――ポコポコポコ…ッ……
レイヴァンの口から、小さな空気の泡が漏れていた。
泡は水面へと上に流れて行く。
二人は黙った継、暫く水中に漂った。
―――ザバッ…………ッ…ッ………
「―――はっ……」
レイヴァンとアルメリアが水中から顔を出し、岩場の水面に戻ると、立った継見守る護衛騎士達が居た。
(……まだ、夜は明けてはいないのね。)
どの位潜っていたか分からないが、アルメリアは割りと長く水中に居たように感じていた。
体には、足りなかった水分が全身に行き渡った気がした。
両手の掌を上にして胸元まで上げ、指を握り締めてみる。強張りは感じ無かった。
泉に来た時とは違い、明らかに体調が良くなった。
ただ、戻ったのは水分だけでは無いと思った。
「…レイヴァン様」
アルメリアは水面から石場へと上がろうとしているレイヴァンに声を掛けた。
近寄って来るジェラルドの方を見ていたレイヴァンは、アルメリアへと振り向いた。
レイヴァンの髪から水滴が落ちる。
「…体は平気か?」
「あ、はい。」
「なら、良かった。」
「あの………」
「顔色も良さそうだな。」
レイヴァンからは安堵の表情が伺えた。
アルメリアをカイスに載せて来た時と比べていたのだ。
アルメリアの頬などを見て頷いた。
「あの、レイヴァン様…」
(水ならレイヴァン様の家でも良かった筈……それに、)
水分だけでは無く、力というか生命力のようなものも体に戻った気がしたアルメリア。
この泉には何かあると思った。
水に濡れた髪を掻き上げて、レイヴァンはアルメリアの言葉の続きを待った。
「この泉の水は、単なる水では無い…ですよね?」
「……確かに。“単なる水”では無いな。」
「それは…つまり」
「―――レイヴァン様」
アルメリアの言葉は、先程から此方へ歩いて来ていたジェラルドに遮られた。
口を閉じるアルメリア。
呼ばれたレイヴァンは、ジェラルドの方へ視線を向けた。
「着替えを持って参りますので、一度お上がり下さい。人魚様も。」
ジェラルドは話しながら何時の間にか持って来たタオルをレイヴァンに差し出した。
―――ずっと浸かっているのは流石に危険かと……ジェラルドの言葉に、レイヴァンは頷きアルメリアの方へ視線を戻した。
「アルメリア、一度上がろう。説明は上がった後だ。」
レイヴァンの言葉に、アルメリアは内心仕方無いと思いつつ頷いた。
ジェラルドはアルメリアにもタオルを差し出した。
が、アルメリアは首を振り、その場ではタオルの受け取りを拒否した。
アルメリアの様子からジェラルドはタオルを引っ込めたが…
「あの、上がってから…使わせて下さい。」
アルメリアは迷ったが、ジェラルドへタオルを使う事を告げた。
レイヴァンがザバザバッと勢いよく水音を立てながら石の上へと先に戻る。
直ぐにアルメリアへと手を差し出した。
レイヴァンから差し出された手に、アルメリアは自分の手を重ねた。
アルメリアの尾が、脚へと変化するには少し時間がかかると分かっているレイヴァン。
濡れて重さを増した服を纏った継のアルメリアを服ごと上げる為、重ねた手をしっかり掴み、腕に力を入れてアルメリアを思い切り引き上げた。
水面から引き上げられたアルメリアの体は、下から風に押し上げられた。
レイヴァンのピアスが光り揺れる。
アルメリアの服を纏った尾が地上に浮いた瞬間、レイヴァンはアルメリアを自身にグッと引き寄せ抱き止めた。
(………風…魔法…?)
レイヴァンに対して殆ど知らないアルメリアだが、今使われた魔法はレイヴァンのものだと分かった。
「平気か?」
「―――!……あ、、大丈夫です…っ。」
押し上げられた風と、それがレイヴァンの魔力に因るものだという事に気を取られていたアルメリア。
片手を握りレイヴァンの腕の中、腰元を支えられ、レイヴァンに下から見上げられながら、その近さにドキッとした。
何度経験しても、アルメリアはレイヴァンとの至近距離に慣れる事が出来なかった。
「下ろして…ください。」
「…良いのか?脚は、」
レイヴァンはアルメリアの尾が脚にきちんと変わっているか心配していた。
脚の状態で無ければ、アルメリアが石に頭を打つけてしまうと思った為。
アルメリアが空いている手をレイヴァンの肩に載せて、首を傾けて自分の腰から下を見ると、濡れた服からチラッと足首が見えた。
「レイヴァン様、大丈夫です。脚に変わってます。」
首をレイヴァンへ向けてアルメリアが言うと、レイヴァンはアルメリアをゆっくりと自分の立っている石へ下ろした。
「ラファル―――」
―――パンッ!
アルメリアから手を離したレイヴァンが、一言呟くと、レイヴァンの濡れていた体から空中に水滴が一気に吹き飛び散らばった。
アルメリアはビックリして目を見張った。
「アルメリア」
「…っはい」
(水が…粒になって吹き飛んだ…!?)
人魚のアルメリアには水は生命の源に近い。
瞬間レイヴァンの様子が、アルメリアには少し怖かった。
呼ばれて返事をしたものの、口が閉じてしまう。
濡れた瞳は瞬きを繰り返し、レイヴァンをただ見ていた。
「安心しろ、アルメリアの水分を全て吹き飛ばすつもりは無い。」
「―――あっ」
アルメリアの思っている事を気付いているようなレイヴァンは、そう言いつつ「失礼」とアルメリアの肩に手を置くと、先程、水滴を飛ばした時と同じ言葉を発した。
思わずギュッと目を瞑ったアルメリアだが、目を開けると体の水分は飛んでいないと分かった。
(え……?)
支えられて立ったアルメリアはどうして良いか分からず、レイヴァンの顔を見詰めた。
支えられている背中に熱が集中する。
「捕まっていろ。」
アルメリアの戸惑いを気付いてか、アルメリアを一目すると、滝の方向に顔を向けたレイヴァンの口から聞いた事が無い言葉が唱えられた。
普段話している言語とは掛け離れている。
多分レイヴァンが使っている呪文の一つなのだろう。
唱えるレイヴァンを見上げた継、アルメリアは何が起こるのか見守った。
無意識に飲み込んだ空気に、喉がゴクッと小さく音を立てた。
レイヴァンが呪文を唱え終わった瞬間、アルメリアとレイヴァンが立つ地面が水面下へ急に沈み込む。
―――ザッ……ッ…………
「―――え…っ!?」
その継、一気にアルメリアの体は水の中へと沈んだ。同じくレイヴァンの体も。
ボコボコ…ッ…ボコ……ボコッ……
アルメリアの背中からレイヴァンは手を離す事無く、共に水中に浸かった。
急な事にビックリしたアルメリアは、レイヴァンの腕を掴んだ。
水中に髪が海月の足のように広がる。体が丸ごと水に浸かると、アルメリアの脚は尾へ変化した。
着ていた衣類は水を吸い込み重みが増した。
レイヴァンは水中で黙った継、アルメリアを見詰めていた。
一瞬の出来事に驚いたアルメリアだが、元々人魚である。
本来の人魚の姿へと戻ったアルメリアは、沈み込んだ瞬間こそ左右に首を動かし辺りを見回したが、瞬きを繰り返しながら、レイヴァンへと首を戻した。
(水……心地良い……)
(…レイヴァン様……何を考えているの?)
レイヴァンの意図が分からず、アルメリアはレイヴァンを見詰めた。
《レイヴァン様、何故こんな……》
《……………》
水中でアルメリアが話し掛けるが、レイヴァンは口を開かない。
答えを待つアルメリア。
(どういう事?)
意味が分からず、もう一度聞こうとレイヴァンの腕を掴んでいない左腕上げて、口を開けた時、アルメリアは自身の動きを止めた。
目に映った自分の左腕が光っていた。
それは腕だけでは無い。
自分の体を見ると、全身が光を帯びて光っていた。
レイヴァンの方へ顔を上げると、レイヴァンは微かに微笑んだ。
(―――何…?……暖かい。)
光を帯びたアルメリアは、体全体に自分の温もりとは違う暖かさを感じた。
まるで、胸元から力が湧くような体力が回復するようなそんな暖かさだった。
―――ポコポコポコ…ッ……
レイヴァンの口から、小さな空気の泡が漏れていた。
泡は水面へと上に流れて行く。
二人は黙った継、暫く水中に漂った。
―――ザバッ…………ッ…ッ………
「―――はっ……」
レイヴァンとアルメリアが水中から顔を出し、岩場の水面に戻ると、立った継見守る護衛騎士達が居た。
(……まだ、夜は明けてはいないのね。)
どの位潜っていたか分からないが、アルメリアは割りと長く水中に居たように感じていた。
体には、足りなかった水分が全身に行き渡った気がした。
両手の掌を上にして胸元まで上げ、指を握り締めてみる。強張りは感じ無かった。
泉に来た時とは違い、明らかに体調が良くなった。
ただ、戻ったのは水分だけでは無いと思った。
「…レイヴァン様」
アルメリアは水面から石場へと上がろうとしているレイヴァンに声を掛けた。
近寄って来るジェラルドの方を見ていたレイヴァンは、アルメリアへと振り向いた。
レイヴァンの髪から水滴が落ちる。
「…体は平気か?」
「あ、はい。」
「なら、良かった。」
「あの………」
「顔色も良さそうだな。」
レイヴァンからは安堵の表情が伺えた。
アルメリアをカイスに載せて来た時と比べていたのだ。
アルメリアの頬などを見て頷いた。
「あの、レイヴァン様…」
(水ならレイヴァン様の家でも良かった筈……それに、)
水分だけでは無く、力というか生命力のようなものも体に戻った気がしたアルメリア。
この泉には何かあると思った。
水に濡れた髪を掻き上げて、レイヴァンはアルメリアの言葉の続きを待った。
「この泉の水は、単なる水では無い…ですよね?」
「……確かに。“単なる水”では無いな。」
「それは…つまり」
「―――レイヴァン様」
アルメリアの言葉は、先程から此方へ歩いて来ていたジェラルドに遮られた。
口を閉じるアルメリア。
呼ばれたレイヴァンは、ジェラルドの方へ視線を向けた。
「着替えを持って参りますので、一度お上がり下さい。人魚様も。」
ジェラルドは話しながら何時の間にか持って来たタオルをレイヴァンに差し出した。
―――ずっと浸かっているのは流石に危険かと……ジェラルドの言葉に、レイヴァンは頷きアルメリアの方へ視線を戻した。
「アルメリア、一度上がろう。説明は上がった後だ。」
レイヴァンの言葉に、アルメリアは内心仕方無いと思いつつ頷いた。
ジェラルドはアルメリアにもタオルを差し出した。
が、アルメリアは首を振り、その場ではタオルの受け取りを拒否した。
アルメリアの様子からジェラルドはタオルを引っ込めたが…
「あの、上がってから…使わせて下さい。」
アルメリアは迷ったが、ジェラルドへタオルを使う事を告げた。
レイヴァンがザバザバッと勢いよく水音を立てながら石の上へと先に戻る。
直ぐにアルメリアへと手を差し出した。
レイヴァンから差し出された手に、アルメリアは自分の手を重ねた。
アルメリアの尾が、脚へと変化するには少し時間がかかると分かっているレイヴァン。
濡れて重さを増した服を纏った継のアルメリアを服ごと上げる為、重ねた手をしっかり掴み、腕に力を入れてアルメリアを思い切り引き上げた。
水面から引き上げられたアルメリアの体は、下から風に押し上げられた。
レイヴァンのピアスが光り揺れる。
アルメリアの服を纏った尾が地上に浮いた瞬間、レイヴァンはアルメリアを自身にグッと引き寄せ抱き止めた。
(………風…魔法…?)
レイヴァンに対して殆ど知らないアルメリアだが、今使われた魔法はレイヴァンのものだと分かった。
「平気か?」
「―――!……あ、、大丈夫です…っ。」
押し上げられた風と、それがレイヴァンの魔力に因るものだという事に気を取られていたアルメリア。
片手を握りレイヴァンの腕の中、腰元を支えられ、レイヴァンに下から見上げられながら、その近さにドキッとした。
何度経験しても、アルメリアはレイヴァンとの至近距離に慣れる事が出来なかった。
「下ろして…ください。」
「…良いのか?脚は、」
レイヴァンはアルメリアの尾が脚にきちんと変わっているか心配していた。
脚の状態で無ければ、アルメリアが石に頭を打つけてしまうと思った為。
アルメリアが空いている手をレイヴァンの肩に載せて、首を傾けて自分の腰から下を見ると、濡れた服からチラッと足首が見えた。
「レイヴァン様、大丈夫です。脚に変わってます。」
首をレイヴァンへ向けてアルメリアが言うと、レイヴァンはアルメリアをゆっくりと自分の立っている石へ下ろした。
「ラファル―――」
―――パンッ!
アルメリアから手を離したレイヴァンが、一言呟くと、レイヴァンの濡れていた体から空中に水滴が一気に吹き飛び散らばった。
アルメリアはビックリして目を見張った。
「アルメリア」
「…っはい」
(水が…粒になって吹き飛んだ…!?)
人魚のアルメリアには水は生命の源に近い。
瞬間レイヴァンの様子が、アルメリアには少し怖かった。
呼ばれて返事をしたものの、口が閉じてしまう。
濡れた瞳は瞬きを繰り返し、レイヴァンをただ見ていた。
「安心しろ、アルメリアの水分を全て吹き飛ばすつもりは無い。」
「―――あっ」
アルメリアの思っている事を気付いているようなレイヴァンは、そう言いつつ「失礼」とアルメリアの肩に手を置くと、先程、水滴を飛ばした時と同じ言葉を発した。
思わずギュッと目を瞑ったアルメリアだが、目を開けると体の水分は飛んでいないと分かった。
(え……?)
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