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第一章 過去世の記憶
第27話 消された情報
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『それでね』
ひと通り話し終えると、クレアは言った。
『消されてしまった情報なんかを何とか見に行かせてもらえないかなぁと思って、こうして相談しにきたんだ』
『ふーむ・・・』と、うなってラムザは腕を組んだ。
『確かに個人の情報が全部消されているとなると、よっぽどのことじゃな。いくら本人であっても、自分の情報をすべて消すとなると中央部の許可がいるのじゃよ。
仮に本人の希望ではなく中央部の判断で削除したということならば、母君の情報を残しておくことに何かよほどの不都合があるということじゃろう』
「よほどの不都合とはいったい何だ?」
質問したファロスの顔をじっと見てから、ラムザは答えた。
『君を前に言いにくいのじゃが、これまでに個人の情報が削除された人間は他にも例がある。そのほとんどが、この地底世界の秩序を乱すような大罪を犯した者のようじゃ。
あと、これは本当かどうかわからんのじゃが、中央部やどこかの機関からの特別な指令を受けた者がその任務を遂行するにあたって、危険分子からその身の安全を守るためにその者の情報を削除してしまうことがあるという話も、以前に聞いたことがある』
『危険分子って、闇の勢力のこと?』
カウンターに身を乗り出して、クレアが聞いた。
『まぁ、そういうことになるかの。ただし、それは風の噂で聞いた話じゃから、その真偽は分からんがの』
上体をカウンターに載せたクレアは、『ふーん』と言って足をぶらぶらと揺すった。
「ところで、この世界の秩序を乱すような大罪とはどういったものなんだ?」
ファロスの問いに、気まずそうにラムザはポリポリと頭を掻いた。
『たとえば、そうじゃの。主に闇の勢力に加担して、この地球を乗っ取ろうと企み、実際にその一員として行動するようなことじゃよ。
じゃが、まだ君の母君がそういうことをして情報が削除されたと決まったわけじゃないから、あまり気にせん方がよいかと思うがの』
『きっと、ファロスのおかあさんは何か理由があって、自分で情報を消すように中央部にお願いしたんだと思うよ』
なぐさめるようにクレアが言った。
『とにかく、それを確かめるためにも削除されたファロスのおかあさんの情報を見に行きたいのだけど、何か方法はないかな?』
『そうは言ってものう。一度削除された情報については、中央部の人間ですら見ることはできんからのう。
それに第一、削除されてしまった今となっては、ファロスの母君が誰なのかということがまずわからんからの。どの情報なのかということも調べようがない』
『えー、じゃあどうすればいいのー?』
テステクを握った拳でカウンターをどんどんと叩いて、ふてくされるようにクレアが言った。
『まぁ、残念かもしれんが諦めることじゃな』
ファロスに視線を向けて申し訳なさそうにラムザが言うと、ファロスは首を振った。
「いや、母親のことは別にいい。元々覚えていないからな。なぜ情報が削除されてしまっているのか気になったのと、どんな人だったのか何かわかることがあればいいと思っただけだ。
それよりも、エメルアの病が本当に呪いによるものなのか、それを知りたいのだがそれは調べられるのか?」
『それなら簡単だよ。それに関する地上の情報を見に行けばいいだけだから』
ラムザへの質問だったにも関わらず、横からクレアが口を挟んだ。
『誰の情報を見に行くのがいいのかな?王様かなぁ?アルタシアかなぁ?』
『イビージャとアルタシア、二人の情報を見に行くのがいいんじゃないかしら?』
黙って話を聞いていたエランドラが言った。
『地表世界での二人の情報を見に行けば二人それぞれの思惑が分かるし、もしかしたら二人のどちらかが闇の勢力に関与しているのかも分かるかもしれないわよ。
アルタシアは実際に予言者として地上に存在しているのだから、地上での情報が削除されているなんてことはないでしょうしね』
『うん、そうだね。そうとなったら、早速見に行ってみよう!』
クレアが振り返ってカウンターを離れると、『ちょっと待ちなされ』と、ラムザが声をかけた。
『それらのクルストンのルームは調べんでいいのかね?』
『いい。自分たちで調べるから。ラムザおじいさんありがとう。またあとでねー』
そう言ってテステクを振ると、クレアは奥の柱の方へさっさと移動していった。
ファロスもラムザに礼を言うと、クレアの後に従った。
「ところで、クルストンとはいったい何だ?」
クレアの後を歩きながら、ファロスはラマルに質問した。
『クリスタルの小さな石板です。その一つひとつに、それぞれの人の情報が入っているんです』
両手の親指と人差し指で小さな正方形を形作って、ラマルは答えた。
『このディマインダーで、まずは天望の間に行くよ』
クレアがそう言って奥の柱をテステクで指し示した。
“ディマインダー”という柱の前に立つと、壁に大きな入り口が出現した。
中は無人だった。大人が20人ほどは優に入れるくらいのスペースがある。
4人が中へ入ったところで、音もなく入り口が閉じられた。それと同時に、天井が青く光って柱の中を明るく照らした。
そして間もなくして、壁に出口が出現した。
ひと通り話し終えると、クレアは言った。
『消されてしまった情報なんかを何とか見に行かせてもらえないかなぁと思って、こうして相談しにきたんだ』
『ふーむ・・・』と、うなってラムザは腕を組んだ。
『確かに個人の情報が全部消されているとなると、よっぽどのことじゃな。いくら本人であっても、自分の情報をすべて消すとなると中央部の許可がいるのじゃよ。
仮に本人の希望ではなく中央部の判断で削除したということならば、母君の情報を残しておくことに何かよほどの不都合があるということじゃろう』
「よほどの不都合とはいったい何だ?」
質問したファロスの顔をじっと見てから、ラムザは答えた。
『君を前に言いにくいのじゃが、これまでに個人の情報が削除された人間は他にも例がある。そのほとんどが、この地底世界の秩序を乱すような大罪を犯した者のようじゃ。
あと、これは本当かどうかわからんのじゃが、中央部やどこかの機関からの特別な指令を受けた者がその任務を遂行するにあたって、危険分子からその身の安全を守るためにその者の情報を削除してしまうことがあるという話も、以前に聞いたことがある』
『危険分子って、闇の勢力のこと?』
カウンターに身を乗り出して、クレアが聞いた。
『まぁ、そういうことになるかの。ただし、それは風の噂で聞いた話じゃから、その真偽は分からんがの』
上体をカウンターに載せたクレアは、『ふーん』と言って足をぶらぶらと揺すった。
「ところで、この世界の秩序を乱すような大罪とはどういったものなんだ?」
ファロスの問いに、気まずそうにラムザはポリポリと頭を掻いた。
『たとえば、そうじゃの。主に闇の勢力に加担して、この地球を乗っ取ろうと企み、実際にその一員として行動するようなことじゃよ。
じゃが、まだ君の母君がそういうことをして情報が削除されたと決まったわけじゃないから、あまり気にせん方がよいかと思うがの』
『きっと、ファロスのおかあさんは何か理由があって、自分で情報を消すように中央部にお願いしたんだと思うよ』
なぐさめるようにクレアが言った。
『とにかく、それを確かめるためにも削除されたファロスのおかあさんの情報を見に行きたいのだけど、何か方法はないかな?』
『そうは言ってものう。一度削除された情報については、中央部の人間ですら見ることはできんからのう。
それに第一、削除されてしまった今となっては、ファロスの母君が誰なのかということがまずわからんからの。どの情報なのかということも調べようがない』
『えー、じゃあどうすればいいのー?』
テステクを握った拳でカウンターをどんどんと叩いて、ふてくされるようにクレアが言った。
『まぁ、残念かもしれんが諦めることじゃな』
ファロスに視線を向けて申し訳なさそうにラムザが言うと、ファロスは首を振った。
「いや、母親のことは別にいい。元々覚えていないからな。なぜ情報が削除されてしまっているのか気になったのと、どんな人だったのか何かわかることがあればいいと思っただけだ。
それよりも、エメルアの病が本当に呪いによるものなのか、それを知りたいのだがそれは調べられるのか?」
『それなら簡単だよ。それに関する地上の情報を見に行けばいいだけだから』
ラムザへの質問だったにも関わらず、横からクレアが口を挟んだ。
『誰の情報を見に行くのがいいのかな?王様かなぁ?アルタシアかなぁ?』
『イビージャとアルタシア、二人の情報を見に行くのがいいんじゃないかしら?』
黙って話を聞いていたエランドラが言った。
『地表世界での二人の情報を見に行けば二人それぞれの思惑が分かるし、もしかしたら二人のどちらかが闇の勢力に関与しているのかも分かるかもしれないわよ。
アルタシアは実際に予言者として地上に存在しているのだから、地上での情報が削除されているなんてことはないでしょうしね』
『うん、そうだね。そうとなったら、早速見に行ってみよう!』
クレアが振り返ってカウンターを離れると、『ちょっと待ちなされ』と、ラムザが声をかけた。
『それらのクルストンのルームは調べんでいいのかね?』
『いい。自分たちで調べるから。ラムザおじいさんありがとう。またあとでねー』
そう言ってテステクを振ると、クレアは奥の柱の方へさっさと移動していった。
ファロスもラムザに礼を言うと、クレアの後に従った。
「ところで、クルストンとはいったい何だ?」
クレアの後を歩きながら、ファロスはラマルに質問した。
『クリスタルの小さな石板です。その一つひとつに、それぞれの人の情報が入っているんです』
両手の親指と人差し指で小さな正方形を形作って、ラマルは答えた。
『このディマインダーで、まずは天望の間に行くよ』
クレアがそう言って奥の柱をテステクで指し示した。
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中は無人だった。大人が20人ほどは優に入れるくらいのスペースがある。
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そして間もなくして、壁に出口が出現した。
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