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第二章 クリスタルエレメント
第29話 ポセイドーン
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『あれがポセイドーンですわ』
前方にひときわ高くそびえ立つ、石造りの建造物をオエノボスが指差した。
円柱形の巨大な建物で、屋上には大きな神殿がある。神殿の周りは円を描くように水堀で囲われ、何隻もの船がそこに停泊していた。船を堀に着水させてから、オエノボスは神殿へと案内した。
神殿の入り口では、両脇に兵士が一人ずつ立っていた。それぞれ、フォークのような三叉の大きな槍を手に持っている。オエノボスに案内されるクリスたちに、二人の兵士はお辞儀をした。
神殿の中は、大勢の人で賑わっていた。その中には、言葉を発して喋っている人たちもいる。言葉を発しているのは、明らかに地表人だった。がっちりとした体には刺青を入れ、まるで海賊のような風貌をしていた。
エランドラにジロジロと視線を向け、大声で言葉を交わし笑い合っていた。言葉は外国語だったが、思念を通してクリスたちにも内容は理解できた。
話の内容からして、どうやら皆エランドラに夢中になっているようだ。
『彼らはね。海の秩序を乱していた人間なんですよ』
前を歩きながら、オエノボスが言った。
『でもね。こっちの世界のことを知られてしまったのもあったし、地表世界の情報を仕入れてもらうのに都合が良かったのもあってね。取り引きすることにしたんですよ。そっちでもそういうのあるでしょ?』
そっちというのは、地底世界のことを指しているのだろう。オエノボスは、クリスも紗奈も地底人だと思っているのだ。クリスは何も言わずに、ただうなずき返した。
建物の中央には受付カウンターがあり、そこでは女性が二人座っていた。左右の壁にはそれぞれ数台のエレベーターが並び、ドアが開けば我先にと人々が乗り込んでいた。
クリスたち一行が案内されたのは、一番奥のエレベーターだった。その前には、一人の兵士が番をしていた。手には三つ又の槍を持っている。
兵士はオエノボスに一礼すると、エレベーターの前から退いた。そして、左手のカウンターで何かを操作した。すると、間もなくしてエレベーターのドアが開いた。
オエノボスに続き、皆エレベーターに乗り込んだ。ところが、クリスだけがなぜか中に入れなかった。足を踏み入れようとしても、見えないバリアのようなもので弾き出されてしまう。まるで、磁石の同じ極同士を近づけたような反発があった。
『腰に提げてるやつですね』と言って、オエノボスがクリスの短剣を指差した。
『ちょっと、よろしいですか』
エレベーター前で番をしていた兵士が手を差し出した。クリスは、短剣を外して兵士に渡した。
『それは、クリスタルエレメントを探し出すための導きの石“ルーベラピス”よ。セテオス中央部から進呈されたもので、武器として持ち込んでいるわけではないわ』
不安そうな表情をするクリスをかばって、エランドラが説明した。兵士が確認するようにオエノボスを見た。
『まあ、問題ないでしょ。解除してやってよ』
兵士はうなずき、クリスに短剣を返した。それから、またカウンターで操作した。
『どうぞ』
下を向いたまま兵士が言った。
クリスはお辞儀をして、恐る恐るエレベーターに足を踏み入れた。すると今度は弾き出されることなく、問題なく中に入れた。
クリスが入ってすぐにドアが閉められた。エレベーター内は十分な広さがあるが、壁や天井がほのかに青く光っているだけで少し薄暗い。
エレベーターはどんどんスピードを上げて下降した。スピードが緩むと、今度は止まることなく前進した。それからぐるっと円を描くように移動するとまた下へ下がり、それから今度は後退した。
そんな風にして上がったり下がったり、前後左右に向きを変えてエレベーターは移動した。
クリスがオーラムルスで現在地の確認を試みるも、ポセイドーン内にいることまでしか表示されず詳細は示されなかった。どうやら建物内はセキュリティがかかっているようだ。
前方にひときわ高くそびえ立つ、石造りの建造物をオエノボスが指差した。
円柱形の巨大な建物で、屋上には大きな神殿がある。神殿の周りは円を描くように水堀で囲われ、何隻もの船がそこに停泊していた。船を堀に着水させてから、オエノボスは神殿へと案内した。
神殿の入り口では、両脇に兵士が一人ずつ立っていた。それぞれ、フォークのような三叉の大きな槍を手に持っている。オエノボスに案内されるクリスたちに、二人の兵士はお辞儀をした。
神殿の中は、大勢の人で賑わっていた。その中には、言葉を発して喋っている人たちもいる。言葉を発しているのは、明らかに地表人だった。がっちりとした体には刺青を入れ、まるで海賊のような風貌をしていた。
エランドラにジロジロと視線を向け、大声で言葉を交わし笑い合っていた。言葉は外国語だったが、思念を通してクリスたちにも内容は理解できた。
話の内容からして、どうやら皆エランドラに夢中になっているようだ。
『彼らはね。海の秩序を乱していた人間なんですよ』
前を歩きながら、オエノボスが言った。
『でもね。こっちの世界のことを知られてしまったのもあったし、地表世界の情報を仕入れてもらうのに都合が良かったのもあってね。取り引きすることにしたんですよ。そっちでもそういうのあるでしょ?』
そっちというのは、地底世界のことを指しているのだろう。オエノボスは、クリスも紗奈も地底人だと思っているのだ。クリスは何も言わずに、ただうなずき返した。
建物の中央には受付カウンターがあり、そこでは女性が二人座っていた。左右の壁にはそれぞれ数台のエレベーターが並び、ドアが開けば我先にと人々が乗り込んでいた。
クリスたち一行が案内されたのは、一番奥のエレベーターだった。その前には、一人の兵士が番をしていた。手には三つ又の槍を持っている。
兵士はオエノボスに一礼すると、エレベーターの前から退いた。そして、左手のカウンターで何かを操作した。すると、間もなくしてエレベーターのドアが開いた。
オエノボスに続き、皆エレベーターに乗り込んだ。ところが、クリスだけがなぜか中に入れなかった。足を踏み入れようとしても、見えないバリアのようなもので弾き出されてしまう。まるで、磁石の同じ極同士を近づけたような反発があった。
『腰に提げてるやつですね』と言って、オエノボスがクリスの短剣を指差した。
『ちょっと、よろしいですか』
エレベーター前で番をしていた兵士が手を差し出した。クリスは、短剣を外して兵士に渡した。
『それは、クリスタルエレメントを探し出すための導きの石“ルーベラピス”よ。セテオス中央部から進呈されたもので、武器として持ち込んでいるわけではないわ』
不安そうな表情をするクリスをかばって、エランドラが説明した。兵士が確認するようにオエノボスを見た。
『まあ、問題ないでしょ。解除してやってよ』
兵士はうなずき、クリスに短剣を返した。それから、またカウンターで操作した。
『どうぞ』
下を向いたまま兵士が言った。
クリスはお辞儀をして、恐る恐るエレベーターに足を踏み入れた。すると今度は弾き出されることなく、問題なく中に入れた。
クリスが入ってすぐにドアが閉められた。エレベーター内は十分な広さがあるが、壁や天井がほのかに青く光っているだけで少し薄暗い。
エレベーターはどんどんスピードを上げて下降した。スピードが緩むと、今度は止まることなく前進した。それからぐるっと円を描くように移動するとまた下へ下がり、それから今度は後退した。
そんな風にして上がったり下がったり、前後左右に向きを変えてエレベーターは移動した。
クリスがオーラムルスで現在地の確認を試みるも、ポセイドーン内にいることまでしか表示されず詳細は示されなかった。どうやら建物内はセキュリティがかかっているようだ。
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