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第二章 クリスタルエレメント
第34話 海底都市の政策
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石造りの伝統的な趣のある外観とは対照的に、室内は近代的な造りだった。それに、外観から想像できる以上に広かった。
1階には広々としたリビングがあり、テーブルやソファが置かれていた。奥にはダイニングキッチンもあった。キッチンの左手には下へ下りる階段がある。床にはブルーのタイルが敷き詰められ、全体的に涼しげな雰囲気だった。
『おかえりなさい』
奥の階段から女性がひとり上がってきた。
『おかあさん、ただいま』
ラメクが駆けていって抱きついた。
『いつも主人がお世話になっております』
ラメクの頭を撫でながら、女性が挨拶した。色白で背が高く、伸ばした黒髪は腰までの長さがあった。
『妻のアリューシャです』
ローワンがその女性を紹介した。
それから、ちょっと話があるから下を使うとアリューシャに告げて、クリスたちを階下へと案内した。
階段を下りた先には廊下が伸びていて、左右にいくつか部屋が分かれていた。その一番奥の部屋に一同は案内された。
小ぢんまりとした部屋だった。隅に置かれたデスクには設計図や機材、それに工具類が乱雑に積み上げられている。
『ちょっとお待ちください』と言って、ローワンがデスクの上をかき分け始めた。
そして野球ボールのような白い玉を取り出すと、くるくるとそれを回した。
すると天井が開き、何脚かのクテアが上から降りてきた。クテアは円を描くように配置された。そしてその真ん中には、マンホールのようなクリスタルの小さな円盤が浮き上がっていた。
『さあ、どうぞおかけください』とローワンに言われ、一同は円盤を取り囲むようにクテアに座った。ベベはクリスが膝に抱えた。全員が椅子に座ると、マーティスが一人ひとりをローワンに紹介した。
『それで、ローワンは今アトライオスに住んでいるのね?』
ひと通りマーティスが紹介し終えると、クレアが早速質問した。
ローワンは『はい』と、うなずいた。
『なんでセテオスを出て、こっちに住むことにしたの?』
『アリューシャと出会ったものですから』
照れるように笑って、ローワンは鼻の頭をポリポリと掻いた。
『元々はマーティスと同様、セテオスとのパイプ役としてこちらへ駐在していました。地底都市と海底都市、お互いの優れたところを共有し合って、地球をより良い星にしていく目的です。ご存知だとは思いますが、そのようなやり取りはどの都市間でもかねてから行われています』
『それはもちろん知ってるよ。それで、奥さんと出会って、こっちに住むことにしたのね?』
ローワンはうなずいた。
『でも、今もセテオスの駐在員として仕事をしているのでしょう?』
『いえ。アリューシャと結婚し、こちらで市民権を得て、私はもう海底世界の人間となりました。そのため、地底人としてセテオス中央部の任務を遂行するようなことはなくなりました』
『へぇー。それじゃあなんでマーティスと連絡を取り合っているの?』
マーティスとローワンを交互に見て、クレアが追及した。
『それは・・・』
ちらっと一度マーティスを見てから、ローワンは続けた。
『私が海底人としてこちらで生活するようになってから、駐在員だった頃には見えていなかった部分が、色々と見え始めるようになったのです』
『ふーん。たとえば?』
『たとえば・・・そうですね。海底都市は、地底都市や風光都市などと同様に、地球の中でも高度な思想や意識を持った都市のひとつでした。だからこそ、地底都市も海底都市と深いつながりを持ち、関係を維持していました。
ところが、実際のところは低次元の意識を持った存在が多く、海底都市のあちこちで争いが起こっているのです。それをどうやら海底都市評議会は銀河連邦に報告することなく、もみ消してしまっているようなのです』
『えー本当?』
大げさなほど驚いて、クレアは聞き返した。
『そのことに、銀河連邦はずっと気づかなかったの?』
ローワンは黙ってうなずいた。それから額を拭うと、顔を上げてクレアを見た。
『正直なところ、闇の勢力によって情報が操作されていたことに気づくまで、銀河連邦も認識していませんでした。情報が操作されていることに気づくきっかけとなったのは、ここにいるみなさんのおかげだと伺っていますが』
ローワンがそう言って一同を見回すと、『まぁ、そうだけど』と得意気にクレアが答えた。
『でも、その前からローワンやマーティスはこっちに来ていたんでしょ?それでも気づかなかったの?』
『お恥ずかしながら』
クレアが問い質すと、ローワンは申し訳なさそうにうつむいた。
『しかし、マーティスは以前から確かに怪しんでいました。海底都市評議会から私たちに対する報告も、実際私たちが肌で感じている以上に品行方正、清廉潔白な内容でしたし。当時、私は気づきませんでしたが・・・』と言いながら、ローワンはマーティスに視線を向けた。
『そして、ちょうどその頃からクリスタルエレメントの話題が挙がったわけです。アセンションの時期が近づき、闇の勢力がそれを阻止すべくクリスタルエレメントを手に入れようと躍起になっているという。
当然、海底都市評議会も闇の勢力にクリスタルエレメントを奪われることのないよう、全都市あげて取り組んでいます。しかし、そもそも海底都市評議会自体信用ができないのではないか。そう、私たちは考えています。
闇の勢力の介入を否定できないのです。そこで、海底人となった今、石工職人として働きながら私が探れる範囲で探り、マーティスに情報を提供しているのです』
ローワンが説明するとクレアは『ふーん』と言って腕を組み、黙り込んだ。
1階には広々としたリビングがあり、テーブルやソファが置かれていた。奥にはダイニングキッチンもあった。キッチンの左手には下へ下りる階段がある。床にはブルーのタイルが敷き詰められ、全体的に涼しげな雰囲気だった。
『おかえりなさい』
奥の階段から女性がひとり上がってきた。
『おかあさん、ただいま』
ラメクが駆けていって抱きついた。
『いつも主人がお世話になっております』
ラメクの頭を撫でながら、女性が挨拶した。色白で背が高く、伸ばした黒髪は腰までの長さがあった。
『妻のアリューシャです』
ローワンがその女性を紹介した。
それから、ちょっと話があるから下を使うとアリューシャに告げて、クリスたちを階下へと案内した。
階段を下りた先には廊下が伸びていて、左右にいくつか部屋が分かれていた。その一番奥の部屋に一同は案内された。
小ぢんまりとした部屋だった。隅に置かれたデスクには設計図や機材、それに工具類が乱雑に積み上げられている。
『ちょっとお待ちください』と言って、ローワンがデスクの上をかき分け始めた。
そして野球ボールのような白い玉を取り出すと、くるくるとそれを回した。
すると天井が開き、何脚かのクテアが上から降りてきた。クテアは円を描くように配置された。そしてその真ん中には、マンホールのようなクリスタルの小さな円盤が浮き上がっていた。
『さあ、どうぞおかけください』とローワンに言われ、一同は円盤を取り囲むようにクテアに座った。ベベはクリスが膝に抱えた。全員が椅子に座ると、マーティスが一人ひとりをローワンに紹介した。
『それで、ローワンは今アトライオスに住んでいるのね?』
ひと通りマーティスが紹介し終えると、クレアが早速質問した。
ローワンは『はい』と、うなずいた。
『なんでセテオスを出て、こっちに住むことにしたの?』
『アリューシャと出会ったものですから』
照れるように笑って、ローワンは鼻の頭をポリポリと掻いた。
『元々はマーティスと同様、セテオスとのパイプ役としてこちらへ駐在していました。地底都市と海底都市、お互いの優れたところを共有し合って、地球をより良い星にしていく目的です。ご存知だとは思いますが、そのようなやり取りはどの都市間でもかねてから行われています』
『それはもちろん知ってるよ。それで、奥さんと出会って、こっちに住むことにしたのね?』
ローワンはうなずいた。
『でも、今もセテオスの駐在員として仕事をしているのでしょう?』
『いえ。アリューシャと結婚し、こちらで市民権を得て、私はもう海底世界の人間となりました。そのため、地底人としてセテオス中央部の任務を遂行するようなことはなくなりました』
『へぇー。それじゃあなんでマーティスと連絡を取り合っているの?』
マーティスとローワンを交互に見て、クレアが追及した。
『それは・・・』
ちらっと一度マーティスを見てから、ローワンは続けた。
『私が海底人としてこちらで生活するようになってから、駐在員だった頃には見えていなかった部分が、色々と見え始めるようになったのです』
『ふーん。たとえば?』
『たとえば・・・そうですね。海底都市は、地底都市や風光都市などと同様に、地球の中でも高度な思想や意識を持った都市のひとつでした。だからこそ、地底都市も海底都市と深いつながりを持ち、関係を維持していました。
ところが、実際のところは低次元の意識を持った存在が多く、海底都市のあちこちで争いが起こっているのです。それをどうやら海底都市評議会は銀河連邦に報告することなく、もみ消してしまっているようなのです』
『えー本当?』
大げさなほど驚いて、クレアは聞き返した。
『そのことに、銀河連邦はずっと気づかなかったの?』
ローワンは黙ってうなずいた。それから額を拭うと、顔を上げてクレアを見た。
『正直なところ、闇の勢力によって情報が操作されていたことに気づくまで、銀河連邦も認識していませんでした。情報が操作されていることに気づくきっかけとなったのは、ここにいるみなさんのおかげだと伺っていますが』
ローワンがそう言って一同を見回すと、『まぁ、そうだけど』と得意気にクレアが答えた。
『でも、その前からローワンやマーティスはこっちに来ていたんでしょ?それでも気づかなかったの?』
『お恥ずかしながら』
クレアが問い質すと、ローワンは申し訳なさそうにうつむいた。
『しかし、マーティスは以前から確かに怪しんでいました。海底都市評議会から私たちに対する報告も、実際私たちが肌で感じている以上に品行方正、清廉潔白な内容でしたし。当時、私は気づきませんでしたが・・・』と言いながら、ローワンはマーティスに視線を向けた。
『そして、ちょうどその頃からクリスタルエレメントの話題が挙がったわけです。アセンションの時期が近づき、闇の勢力がそれを阻止すべくクリスタルエレメントを手に入れようと躍起になっているという。
当然、海底都市評議会も闇の勢力にクリスタルエレメントを奪われることのないよう、全都市あげて取り組んでいます。しかし、そもそも海底都市評議会自体信用ができないのではないか。そう、私たちは考えています。
闇の勢力の介入を否定できないのです。そこで、海底人となった今、石工職人として働きながら私が探れる範囲で探り、マーティスに情報を提供しているのです』
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