クリスの物語

daichoro

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第二章 クリスタルエレメント

第39話 海賊一掃

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 ウミガメを象る大きな花火が打ち上がったのと同時だった。クリスが闇の海へと飲み込まれてしまった。



「いやー!クリスーーー!」

 海賊に腕を取られたまま、紗奈が叫び声を上げた。

 暗闇の中、目を凝らしてもクリスの姿は見えなかった。“選ばれし者”を失い海賊たちも戸惑っていたが、ルークが「仕方ねえ」と吐き捨てた。

「報酬は諦めるしかねえがな」



「こいつはどうしますか?」

 紗奈の腕を掴んでいた痩せぎすの海賊が、興奮を隠しきれない表情でルークの前に紗奈を突き出した。吟味するように紗奈の体を上から下まで眺め回してから、ルークは興味がなさそうに顔を背けた。



「用はねえな。お前らの好きにしろ」

 ルークの言葉に嬉しそうにうなずき返すと、痩せぎすの海賊は紗奈を手繰り寄せて舌なめずりをした。

 そこへ「こらー!」という、少女の怒号が聞こえてきた。声がした方を全員が振り返った。するとそこにはドラゴンに姿を変えたラマルと、その上に乗るクレアの姿があった。



「なんだ!?なんでこんなところにドラゴンがいるんだ!?」

「いいから撃て!」

 うろたえる海賊たちに、ルークが命じた。



「やめなさーい!」とクレアが叫ぶも、海賊たちはラマルに向かって弾丸を放った。しかし、ラマルに当たった弾丸はことごとく跳ね返った。

「ダメだ!効かねぇ!」

「えーい!そしたら、大砲だ!大砲をぶっ放せ!」



「フェレシーノデクスタール!」

 向けられた大砲に向かってクレアが手をかざすと、砲身がぐにゃりと曲がった。大砲を構えた海賊は「うわ」と目を丸くした。



『ラマル、もういい!やっちゃって!』

 クレアが命じると、ラマルが海賊たちに向かって口から水砲を放った。そしてそれが命中した海賊たちは泡に取り込まれ、ふわふわと宙に浮かび上がった。



「うわ!なんだこりゃ!?」

「抜けられねぇ」

 海賊全員がその膜に取り込まれた。あちこちで銃声が響き渡った。

「ダメだ!銃もまったく効かねぇ!」



「てめぇらふざけるな!これを何とかしろ!」

 膜を手で叩きながら、クレアに向かってルークが怒鳴り声を上げた。

「ひぃぃぃ。たふけてくれー」

 操縦士のネロも、叫び声を上げている。そうして、海賊たちはふわふわとどこかへ飛んで行ってしまった。



『ケガはない?』

 ラマルから降りて、クレアが紗奈に問いかけた。紗奈は返事をせず、ただ泣きじゃくっていた。



『何があったの?』

 紗奈のそばに近づいてクレアが聞いた。

『オーラムルスの反応がないから、おかしいと思って来てみたの』

 黒船に落ちているオーラムルスに気づいたクレアは、それを拾い上げた。それから船上を見回した。



『クリスは?』

『・・・撃たれた』



『え?』

『撃たれて、落ちちゃった』

 紗奈はそう言って泣き崩れた。




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