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第三章 悪魔の儀式
第26話 優里のピューラ
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しばらくして、紗奈と優里がクワインダーに乗ってリビングへ上がってきた。クリスの隣に紗奈が座り、その隣に優里が座った。優里の手にはテステクが握られている。
クテイラに座るなり優里が『先ほどは、ありがとうございました』と、クレアに頭を下げた。クレアは『別に』と、肩をすくめた。
それから優里は落ち着かない様子でうつむきながら、エランドラとラマルを上目遣いにちらちらと見た。
それに気づいた紗奈が、「さっきドラゴンだったエランドラとラマルだよ」と二人を紹介した。
どうやら優里は、この場に座る金髪の女性と、青い髪の少年が誰だか分かっていなかったようだ。
改めて紹介されると、優里は「え?」と言って両手で口を押さえた。
「普段はこうやって、人間の姿にシェイプシフトしているの」
紗奈が説明すると、優里は驚きを隠せない様子で、口元を押さえたままラマルとエランドラに会釈した。
「ラマルがここまで優里を乗せて来てくれたんだよ」と紗奈が言うと、優里は頬を赤らめて『ありがとうございます』と、もう一度頭を下げた。
『そんなことより』と、クレアが口を挟んだ。
『とりあえず、あなたも一緒に行くからにはピューラに着替えるべきね』
「え?」
クレアに言われて、優里は戸惑うように紗奈を見た。
「ピューラって、わたしたちが今着ているこの服のことだよ」
紗奈がそう言って身に着けている白いワンピースのスカート部分を、指でつまんで少し持ち上げた。
キラキラと光沢を放つワンピースは、光の加減で七色に色を変えた。
「ドラゴンの生命エネルギーを封じ込めた糸を使って縫製したもので、この服を着るとその特定のドラゴンの特性に応じた効果が表れるの。ベベみたいに空を飛べるようになったり、クリスのなんて水の中で呼吸ができたりするみたい。ね?」
クリスは、うなずいた。
「わたしのは、まだどんな特性なのか分からないんだけどね。でも、気づいてるかもしれないけど、どのピューラも着ただけでこうやって少し宙に浮くんだよ」
紗奈はその場に立ち上がってみせた。紗奈の足は、床から5㎝ほど浮き上がっていた。
「えー、すごーい!いいなあ」と、優里は目を輝かせた。
そういうわけで、優里のピューラを仕立ててもらうためベスタメルナへ向かうことになった。
しかし全員連れ立って行くことでもないのでクレアと紗奈、優里の女子3人だけで行くことになった。
それ以外のメンバーはメシオナで留守番だ。
クテイラに座るクリスとエランドラのために、ラマルが水を持ってきてくれた。
それと“メリナムム”という丸いクッキーのようなお菓子も持ってきた。口の中に入れるとほろほろと溶ける、変わった口どけのお菓子だった。味はほんのりと甘く、少しだけシナモンの風味がした。
『そういえば、ぼくエランドラやラマルたちのことについてあまり詳しい話を聞いたことがなかったけど、ドラゴン族ってそもそもどういう存在なの?』
メリナムムをつまみながら、クリスが気になっていたことを質問した。
『どういう存在とは?』と、エランドラが聞き返した。メリナムムをもぐもぐ食べながら、ラマルもクリスを見た。
『さっき、地上へ転生するぼくをサポートするためにエランドラはぼくと契約したと言っていたけど、ドラゴン族とか他の守護獣って、人間をサポートするために存在しているの?』
質問の意図を理解すると、エランドラは優しく微笑んだ。
それから、ドラゴン族と人類の関係についてゆっくりと語り始めた。
クテイラに座るなり優里が『先ほどは、ありがとうございました』と、クレアに頭を下げた。クレアは『別に』と、肩をすくめた。
それから優里は落ち着かない様子でうつむきながら、エランドラとラマルを上目遣いにちらちらと見た。
それに気づいた紗奈が、「さっきドラゴンだったエランドラとラマルだよ」と二人を紹介した。
どうやら優里は、この場に座る金髪の女性と、青い髪の少年が誰だか分かっていなかったようだ。
改めて紹介されると、優里は「え?」と言って両手で口を押さえた。
「普段はこうやって、人間の姿にシェイプシフトしているの」
紗奈が説明すると、優里は驚きを隠せない様子で、口元を押さえたままラマルとエランドラに会釈した。
「ラマルがここまで優里を乗せて来てくれたんだよ」と紗奈が言うと、優里は頬を赤らめて『ありがとうございます』と、もう一度頭を下げた。
『そんなことより』と、クレアが口を挟んだ。
『とりあえず、あなたも一緒に行くからにはピューラに着替えるべきね』
「え?」
クレアに言われて、優里は戸惑うように紗奈を見た。
「ピューラって、わたしたちが今着ているこの服のことだよ」
紗奈がそう言って身に着けている白いワンピースのスカート部分を、指でつまんで少し持ち上げた。
キラキラと光沢を放つワンピースは、光の加減で七色に色を変えた。
「ドラゴンの生命エネルギーを封じ込めた糸を使って縫製したもので、この服を着るとその特定のドラゴンの特性に応じた効果が表れるの。ベベみたいに空を飛べるようになったり、クリスのなんて水の中で呼吸ができたりするみたい。ね?」
クリスは、うなずいた。
「わたしのは、まだどんな特性なのか分からないんだけどね。でも、気づいてるかもしれないけど、どのピューラも着ただけでこうやって少し宙に浮くんだよ」
紗奈はその場に立ち上がってみせた。紗奈の足は、床から5㎝ほど浮き上がっていた。
「えー、すごーい!いいなあ」と、優里は目を輝かせた。
そういうわけで、優里のピューラを仕立ててもらうためベスタメルナへ向かうことになった。
しかし全員連れ立って行くことでもないのでクレアと紗奈、優里の女子3人だけで行くことになった。
それ以外のメンバーはメシオナで留守番だ。
クテイラに座るクリスとエランドラのために、ラマルが水を持ってきてくれた。
それと“メリナムム”という丸いクッキーのようなお菓子も持ってきた。口の中に入れるとほろほろと溶ける、変わった口どけのお菓子だった。味はほんのりと甘く、少しだけシナモンの風味がした。
『そういえば、ぼくエランドラやラマルたちのことについてあまり詳しい話を聞いたことがなかったけど、ドラゴン族ってそもそもどういう存在なの?』
メリナムムをつまみながら、クリスが気になっていたことを質問した。
『どういう存在とは?』と、エランドラが聞き返した。メリナムムをもぐもぐ食べながら、ラマルもクリスを見た。
『さっき、地上へ転生するぼくをサポートするためにエランドラはぼくと契約したと言っていたけど、ドラゴン族とか他の守護獣って、人間をサポートするために存在しているの?』
質問の意図を理解すると、エランドラは優しく微笑んだ。
それから、ドラゴン族と人類の関係についてゆっくりと語り始めた。
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