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第三章 悪魔の儀式
第47話 山小屋
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転移した先は、小屋の中だった。丸太でできた、小さな小屋だ。
木製のテーブルと椅子がセットされ、その横にソファが向かい合って並んでいる。そしてその向こうには暖炉があり、脇には薪が積まれていた。
室内の雰囲気はまるで、登山家が休憩のために立ち寄る山小屋のようだった。
窓の外は霧が立ち込め、視界が閉ざされている。
クリスと紗奈、そしてパオリーナはソファに腰かけ、スタンだけが椅子に座った。
ベベは小屋の匂いを嗅ぎまわっている。
「なんか、地表世界と雰囲気があまり変わらないね」とクリスが声をかけると、紗奈も小屋の中を眺め回して「そうだね」と返事をした。
すると転移装置の光がより明るさを増した。そしてその上で光の粒子が形を取り始めた。その後、一瞬で残りの三人が姿を現した。
「わたしたちの足跡を消したから、しばらく闇の勢力にもここが気づかれることはないわ」
スタンの向かいの椅子に腰かけると、田川先生が言った。エランドラはパオリーナの横に座り、優里は紗奈の隣に座った。
「さて、まずわたしたちが誰かっていうことだけど」
足を組んで先生が説明を始めた。
「わたしたちは、銀河連邦から直接クリスタルエレメントの取得を言い渡された選ばれし者よ。地のクリスタルエレメント“テラ”を入手したのもわたしたちよ」
紗奈がちらっとクリスの方を振り返って首を傾げた。訝しむように眉間に皺を寄せている。
「今回、ウェントゥスの取得に当たってはわたしたちが特別任されていたわけではないけど、風光都市が今このような状況になってしまっていることを受けて、上村君たちのサポートをするように命じられてこうしてやってきたのよ」
先生はそう言って、クリスに視線を向けた。目元にはかすかに笑みが浮かんでいる。
クリスは視線を外して、エランドラを見た。エランドラは、ゆっくりとうなずき返した。
どうやら、先生の話に嘘はないようだ。つまり、先生は闇の勢力の人間ではなかったということになる。
その事実を知って、クリスの頭をいくつかの疑問が渦巻いた。
なぜ先生は紗奈や優里を操って悪魔を召喚させたりしたのか。なぜ悪魔を見て驚き、気絶した挙句記憶を失ったような演技をしたのか。
それ以前に、なぜクリスの前に現れて身分を隠して教師をしていたのか。そんなクリスの疑問に答えるように、先生は説明を続けた。
「旧校舎裏の倉庫でのことだけれど、たしかにわたしは松木さんや桜井さん、それとナカジマ君やイトウ君にも手伝ってもらって悪魔召喚を行ったわ。でもそれは、上村君の適性を見るためよ」
ナカジマ君とイトウ君?演劇部に所属するクラスメイトだ。
悪魔召喚に立ち合っていたあのふたりは、サカモト先輩たちではなかったのか。クリスと紗奈は視線を交わした。
それから紗奈は、記憶を探るように地面を見つめた。
ナカジマユウタとイトウダイキ。
ある日の放課後、紗奈がクリスと一緒に帰るために教室へ寄ったとき残っていたふたりだ。はにかむ笑顔で「バイバイ」と手を振ったふたりの顔を紗奈は思い出した。
「なんでナカジマ君とイトウ君がって思っているでしょう?」
紗奈の思いを見透かすように、先生は紗奈の顔を覗き込んだ。
「あのふたりね、いつも呪詛や悪魔召喚まがいのことをして遊んでいたのよ。それで松木さんにイタズラしようと企んでいたの。でもふたりに能力はないから何かが起きるようなことはなかった。
でもね、何も起きなくてもそういうことをしていると悪霊や悪魔に取り憑かれて、行動に歯止めが利かなくなってしまうのよ」
それを聞いて紗奈はショックを受けた。あまりよく知らないクラスメイトのふたりが、自分に何かしようと企んでいたなんて想像もしていないことだった。
怯える紗奈を安心させるように、先生は微笑んだ。
「だから、一度懲らしめる意味もあってふたりにも手伝ってもらったの。少しだけ眠らせてね。それで意識を戻した時に、ふたりは予想通りアーマインを見て逃げ出したわ。本当はもうちょっと懲らしめるつもりだったのだけどね」と言って、先生は笑った。
「でも、十分お灸はすえられたわ。それに松木さんもその場に倒れていたから、それも自分たちの責任だと思ってる。だからもう、今後松木さんに何かをしようなんて考えは持ち合わせてないわよ」
紗奈はうなずきながらも、複雑な表情をした。
当然、自分に何か危害が加えられようとしていたのであれば、それを阻止してもらえたことは有難かった。しかし、だからと言って自分の身が生贄として捧げられて悪魔召喚が行われたなんてことは、許容されるべきではない。
木製のテーブルと椅子がセットされ、その横にソファが向かい合って並んでいる。そしてその向こうには暖炉があり、脇には薪が積まれていた。
室内の雰囲気はまるで、登山家が休憩のために立ち寄る山小屋のようだった。
窓の外は霧が立ち込め、視界が閉ざされている。
クリスと紗奈、そしてパオリーナはソファに腰かけ、スタンだけが椅子に座った。
ベベは小屋の匂いを嗅ぎまわっている。
「なんか、地表世界と雰囲気があまり変わらないね」とクリスが声をかけると、紗奈も小屋の中を眺め回して「そうだね」と返事をした。
すると転移装置の光がより明るさを増した。そしてその上で光の粒子が形を取り始めた。その後、一瞬で残りの三人が姿を現した。
「わたしたちの足跡を消したから、しばらく闇の勢力にもここが気づかれることはないわ」
スタンの向かいの椅子に腰かけると、田川先生が言った。エランドラはパオリーナの横に座り、優里は紗奈の隣に座った。
「さて、まずわたしたちが誰かっていうことだけど」
足を組んで先生が説明を始めた。
「わたしたちは、銀河連邦から直接クリスタルエレメントの取得を言い渡された選ばれし者よ。地のクリスタルエレメント“テラ”を入手したのもわたしたちよ」
紗奈がちらっとクリスの方を振り返って首を傾げた。訝しむように眉間に皺を寄せている。
「今回、ウェントゥスの取得に当たってはわたしたちが特別任されていたわけではないけど、風光都市が今このような状況になってしまっていることを受けて、上村君たちのサポートをするように命じられてこうしてやってきたのよ」
先生はそう言って、クリスに視線を向けた。目元にはかすかに笑みが浮かんでいる。
クリスは視線を外して、エランドラを見た。エランドラは、ゆっくりとうなずき返した。
どうやら、先生の話に嘘はないようだ。つまり、先生は闇の勢力の人間ではなかったということになる。
その事実を知って、クリスの頭をいくつかの疑問が渦巻いた。
なぜ先生は紗奈や優里を操って悪魔を召喚させたりしたのか。なぜ悪魔を見て驚き、気絶した挙句記憶を失ったような演技をしたのか。
それ以前に、なぜクリスの前に現れて身分を隠して教師をしていたのか。そんなクリスの疑問に答えるように、先生は説明を続けた。
「旧校舎裏の倉庫でのことだけれど、たしかにわたしは松木さんや桜井さん、それとナカジマ君やイトウ君にも手伝ってもらって悪魔召喚を行ったわ。でもそれは、上村君の適性を見るためよ」
ナカジマ君とイトウ君?演劇部に所属するクラスメイトだ。
悪魔召喚に立ち合っていたあのふたりは、サカモト先輩たちではなかったのか。クリスと紗奈は視線を交わした。
それから紗奈は、記憶を探るように地面を見つめた。
ナカジマユウタとイトウダイキ。
ある日の放課後、紗奈がクリスと一緒に帰るために教室へ寄ったとき残っていたふたりだ。はにかむ笑顔で「バイバイ」と手を振ったふたりの顔を紗奈は思い出した。
「なんでナカジマ君とイトウ君がって思っているでしょう?」
紗奈の思いを見透かすように、先生は紗奈の顔を覗き込んだ。
「あのふたりね、いつも呪詛や悪魔召喚まがいのことをして遊んでいたのよ。それで松木さんにイタズラしようと企んでいたの。でもふたりに能力はないから何かが起きるようなことはなかった。
でもね、何も起きなくてもそういうことをしていると悪霊や悪魔に取り憑かれて、行動に歯止めが利かなくなってしまうのよ」
それを聞いて紗奈はショックを受けた。あまりよく知らないクラスメイトのふたりが、自分に何かしようと企んでいたなんて想像もしていないことだった。
怯える紗奈を安心させるように、先生は微笑んだ。
「だから、一度懲らしめる意味もあってふたりにも手伝ってもらったの。少しだけ眠らせてね。それで意識を戻した時に、ふたりは予想通りアーマインを見て逃げ出したわ。本当はもうちょっと懲らしめるつもりだったのだけどね」と言って、先生は笑った。
「でも、十分お灸はすえられたわ。それに松木さんもその場に倒れていたから、それも自分たちの責任だと思ってる。だからもう、今後松木さんに何かをしようなんて考えは持ち合わせてないわよ」
紗奈はうなずきながらも、複雑な表情をした。
当然、自分に何か危害が加えられようとしていたのであれば、それを阻止してもらえたことは有難かった。しかし、だからと言って自分の身が生贄として捧げられて悪魔召喚が行われたなんてことは、許容されるべきではない。
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