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第四章 パラレルワールド
第5話 意外な人物
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『クリスさん、サナさんお待ちください』
クリスたちがお城を下り始めたところで、男の声が頭に響いた。先を歩いていた紗奈が、振り返った。
眉間に皺を寄せ、訝しむような顔をしている。
ふたりは、どちらからともなくヘリコプターの方を振り返った。ヘリコプターのエンジンが切られると、轟音とともに吹き荒れていた風も少しずつ収まっていった。
ドアが開き、濃いサングラスをかけて黒スーツに身を包んだ男がひとり、地面に降り立った。手には黒い大きなボストンバッグを提げている。
男はお城の裏手までやってきてぴょんと飛び上がると、優に4mはあるお城の上に軽々と着地した。片膝を立てて着地した男は、バッグを下に置くと立ち上がってサングラスを外した。
銀色の髪をオールバックに撫でつけ、顔の小さなモデルのような体型をした男にクリスも紗奈も見覚えがあった。
以前、海底都市を訪れた際、ガイドを担当したセテオス中央部のマーティスだ。
もっとも、その後中央部を追放されたということだから、現在は中央部の人間ではないはずだった。
『ご無沙汰しております』
サングラスを胸ポケットにしまい、頭を下げたマーティスは相変わらずの無表情だった。
突然のマーティスの登場に、ふたりは戸惑いを隠せなかった。会釈はしたものの、なんと返すべきか分からず黙っていた。
くもった表情で紗奈がクリスに視線を向けた。
マーティスが親しくしていたローワンは闇の勢力に加担していた。そしてマーティスもセテオスを追放されている。そんなマーティスが、突然一体何をしにきたというのか。紗奈は警戒心を露わにした。
『突然お伺いしてすみません』
困惑するふたりに、マーティスが謝った。
『今回、どうしてもクリスさん方のお力をお借りしたくて、こうして伺いました』
相変わらずむっつりとした表情ながらも、頭を下げたままのマーティスからは申し訳なさが伝わってきた。
『一体、どういうご用件ですか?』
お城の上に戻ってクリスの横に並んだ紗奈が、問い詰めるように聞いた。あからさまに怪しんでいる様子が態度に現れている。
恐縮するように頭を下げると、マーティスは言った。
『単刀直入に申し上げますと、セテオス中央部で保管されていたクリスタルエレメントが何者かによってすり替えられた可能性があります。そのため、それを奪い返していただけないかというお願いに参りました』
思いがけないセリフに、クリスも紗奈も耳を疑った。
『本当ですか?』と聞き返したクリスに、マーティスは表情を変えることなくうなずいた。
『一体、誰に?』
『闇の勢力で間違いないでしょう』と、確信を得ているかのようにマーティスは断言した。
『でも、クリスタルエレメントは中央部でしっかりと保管されていたのでしょう?それに、ソレーテさんたちだって宇宙戦争に発展する可能性だってあるから、闇の勢力ももう手出しはしてこないって言っていましたよ?それなのに、どうしてですか?』
マーティスの話は疑わしいとばかりに、噛みつくように紗奈が質問した。
それに対して、マーティスは落ち着き払った様子で答えた。
『もちろん、クリスタルエレメントが中央部で厳重に保管されていれば、闇の勢力は手出しできないでしょう。武力行使するようなことになれば、宇宙戦争に発展する可能性も当然あります』
『じゃあ、厳重に保管されていなかったということですか?』
『いえ、保管は厳重にされていたはずです。外部の人間の触れられることのできない場所でしっかりと』
『それじゃあ、どうして?』と聞き返してから、紗奈ははっとした。そんな紗奈の目を見据えたまま、マーティスがうなずいた。
『つまり、中央部の人間の中に、闇の勢力に通じている者がいるということです』
クリスたちがお城を下り始めたところで、男の声が頭に響いた。先を歩いていた紗奈が、振り返った。
眉間に皺を寄せ、訝しむような顔をしている。
ふたりは、どちらからともなくヘリコプターの方を振り返った。ヘリコプターのエンジンが切られると、轟音とともに吹き荒れていた風も少しずつ収まっていった。
ドアが開き、濃いサングラスをかけて黒スーツに身を包んだ男がひとり、地面に降り立った。手には黒い大きなボストンバッグを提げている。
男はお城の裏手までやってきてぴょんと飛び上がると、優に4mはあるお城の上に軽々と着地した。片膝を立てて着地した男は、バッグを下に置くと立ち上がってサングラスを外した。
銀色の髪をオールバックに撫でつけ、顔の小さなモデルのような体型をした男にクリスも紗奈も見覚えがあった。
以前、海底都市を訪れた際、ガイドを担当したセテオス中央部のマーティスだ。
もっとも、その後中央部を追放されたということだから、現在は中央部の人間ではないはずだった。
『ご無沙汰しております』
サングラスを胸ポケットにしまい、頭を下げたマーティスは相変わらずの無表情だった。
突然のマーティスの登場に、ふたりは戸惑いを隠せなかった。会釈はしたものの、なんと返すべきか分からず黙っていた。
くもった表情で紗奈がクリスに視線を向けた。
マーティスが親しくしていたローワンは闇の勢力に加担していた。そしてマーティスもセテオスを追放されている。そんなマーティスが、突然一体何をしにきたというのか。紗奈は警戒心を露わにした。
『突然お伺いしてすみません』
困惑するふたりに、マーティスが謝った。
『今回、どうしてもクリスさん方のお力をお借りしたくて、こうして伺いました』
相変わらずむっつりとした表情ながらも、頭を下げたままのマーティスからは申し訳なさが伝わってきた。
『一体、どういうご用件ですか?』
お城の上に戻ってクリスの横に並んだ紗奈が、問い詰めるように聞いた。あからさまに怪しんでいる様子が態度に現れている。
恐縮するように頭を下げると、マーティスは言った。
『単刀直入に申し上げますと、セテオス中央部で保管されていたクリスタルエレメントが何者かによってすり替えられた可能性があります。そのため、それを奪い返していただけないかというお願いに参りました』
思いがけないセリフに、クリスも紗奈も耳を疑った。
『本当ですか?』と聞き返したクリスに、マーティスは表情を変えることなくうなずいた。
『一体、誰に?』
『闇の勢力で間違いないでしょう』と、確信を得ているかのようにマーティスは断言した。
『でも、クリスタルエレメントは中央部でしっかりと保管されていたのでしょう?それに、ソレーテさんたちだって宇宙戦争に発展する可能性だってあるから、闇の勢力ももう手出しはしてこないって言っていましたよ?それなのに、どうしてですか?』
マーティスの話は疑わしいとばかりに、噛みつくように紗奈が質問した。
それに対して、マーティスは落ち着き払った様子で答えた。
『もちろん、クリスタルエレメントが中央部で厳重に保管されていれば、闇の勢力は手出しできないでしょう。武力行使するようなことになれば、宇宙戦争に発展する可能性も当然あります』
『じゃあ、厳重に保管されていなかったということですか?』
『いえ、保管は厳重にされていたはずです。外部の人間の触れられることのできない場所でしっかりと』
『それじゃあ、どうして?』と聞き返してから、紗奈ははっとした。そんな紗奈の目を見据えたまま、マーティスがうなずいた。
『つまり、中央部の人間の中に、闇の勢力に通じている者がいるということです』
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