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第四章 パラレルワールド
第9話 パスポート
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並行現実のメカニズムは理解できないが、とにかく今のこの現実はマーティスと一緒についていく選択をする並行現実であり、マーティスはその現実を選んでこうしてやって来たということなのだろう。つまり、マーティスと一緒に行くことはすでに決まっているということだ。
『それと、こちらもご用意しています』
マーティスがバッグから紺色の小冊子を3冊取り出した。
それを受け取った優里が「あ、パスポート」と言った。
たしかに、冊子の表紙には「JAPAN PASSPORT」と印字されている。旅券番号の記載されたページには、それぞれの顔写真がついていた。
さらに、自筆のサインまでもが印字されている。たしかに自分の字に相違なかった。いつの間にそんなものが用意されたのか、3人とも心当たりがなかった。
『そちらは、政府発行の正式なパスポートです』
訝しむ3人を安心させるように、マーティスが言った。
『もしかしてそのヘリコプターでイタリアまで行くのですか?』
空き地に停められたヘリを指差して優里が尋ねると、マーティスは首を振った。
『いえ、空港まではそちらのヘリコプターで移動しますが、イタリアまでは飛行機で移動します』
『飛行機?』
クリスが思わず聞き返すと、マーティスはうなずいた。
『アダマスカルみたいな宇宙船で移動しないのですか?』
アダマスカルならイタリアまでもあっという間だ。しかし飛行機だったら一体どれほど時間がかかるのか、クリスには見当もつかなかった。
『アダマスカルなどの宇宙船で移動したのでは、闇の勢力に察知されかねません。今回、クリスタルエレメントがすり替えられたことについては、あくまでもこちら側は気づいていないという姿勢で極秘に行動しますので』
クリスはなるほどと、うなずいた。それで、飛行機の手配ももう済ませてあるということなのだろう。最初から、もう行くことが決まっている世界だから当然だ。
『でも』と、紗奈が口を開いた。
『もしわたしたちが行って、奪い返せなかったらどうするのですか?』
紗奈のその質問に対し、少し沈黙した後『その時には、次の手を考えるしかないでしょう』と、うつむいたままマーティスは答えた。それから、顔を上げて言った。
『もしそのような結果になったとしても、皆さんが責任を感じる必要はもちろんありません。銀河連邦の指示に則って行動したまでですから』
そうだったと、クリスは紗奈に視線を向けた。
そもそもこれは、銀河連邦から指示された任務だ。地球をアセンドさせるために、クリスタルエレメントを闇の勢力から奪い返す。その任務を遂行する役目として、銀河連邦は地球を代表してぼくたちを任命した。
きっとこれは、この地球に生まれてきたぼくたちの使命なんだ。クリスタルエレメントを入手するために命を落としていった人たちのためにも、ぼくらはその責任を果たす必要がある。
そんなクリスの思いを察して、紗奈も決心したようにうなずいた。一方、優里は最初から行く気満々といった様子で嬉々としていた。
『マーティスさん、奪い返せるかは分かりませんが、ぼくたちにできることはしようと思います』
クリスが、マーティスに向き直って意思を表明した。
『ありがとうございます』と礼を述べると、マーティスは改めて深々と頭を下げた。
『それと、こちらもご用意しています』
マーティスがバッグから紺色の小冊子を3冊取り出した。
それを受け取った優里が「あ、パスポート」と言った。
たしかに、冊子の表紙には「JAPAN PASSPORT」と印字されている。旅券番号の記載されたページには、それぞれの顔写真がついていた。
さらに、自筆のサインまでもが印字されている。たしかに自分の字に相違なかった。いつの間にそんなものが用意されたのか、3人とも心当たりがなかった。
『そちらは、政府発行の正式なパスポートです』
訝しむ3人を安心させるように、マーティスが言った。
『もしかしてそのヘリコプターでイタリアまで行くのですか?』
空き地に停められたヘリを指差して優里が尋ねると、マーティスは首を振った。
『いえ、空港まではそちらのヘリコプターで移動しますが、イタリアまでは飛行機で移動します』
『飛行機?』
クリスが思わず聞き返すと、マーティスはうなずいた。
『アダマスカルみたいな宇宙船で移動しないのですか?』
アダマスカルならイタリアまでもあっという間だ。しかし飛行機だったら一体どれほど時間がかかるのか、クリスには見当もつかなかった。
『アダマスカルなどの宇宙船で移動したのでは、闇の勢力に察知されかねません。今回、クリスタルエレメントがすり替えられたことについては、あくまでもこちら側は気づいていないという姿勢で極秘に行動しますので』
クリスはなるほどと、うなずいた。それで、飛行機の手配ももう済ませてあるということなのだろう。最初から、もう行くことが決まっている世界だから当然だ。
『でも』と、紗奈が口を開いた。
『もしわたしたちが行って、奪い返せなかったらどうするのですか?』
紗奈のその質問に対し、少し沈黙した後『その時には、次の手を考えるしかないでしょう』と、うつむいたままマーティスは答えた。それから、顔を上げて言った。
『もしそのような結果になったとしても、皆さんが責任を感じる必要はもちろんありません。銀河連邦の指示に則って行動したまでですから』
そうだったと、クリスは紗奈に視線を向けた。
そもそもこれは、銀河連邦から指示された任務だ。地球をアセンドさせるために、クリスタルエレメントを闇の勢力から奪い返す。その任務を遂行する役目として、銀河連邦は地球を代表してぼくたちを任命した。
きっとこれは、この地球に生まれてきたぼくたちの使命なんだ。クリスタルエレメントを入手するために命を落としていった人たちのためにも、ぼくらはその責任を果たす必要がある。
そんなクリスの思いを察して、紗奈も決心したようにうなずいた。一方、優里は最初から行く気満々といった様子で嬉々としていた。
『マーティスさん、奪い返せるかは分かりませんが、ぼくたちにできることはしようと思います』
クリスが、マーティスに向き直って意思を表明した。
『ありがとうございます』と礼を述べると、マーティスは改めて深々と頭を下げた。
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