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第四章 パラレルワールド
第50話 自暴自棄
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『そう。それなら、きっとあなたは選ばれし者なのね』
話を聞き終えると、圧倒されたようにアメリアは言った。
『だったら、わたしも養成校へ行ったところであなたのようにはなれないわね』
『まあ、そうね』
イビージャは、安心した。もしアメリアが学校へ来たら、誰よりも魔法が優れているともてはやされていた自分の立場が危ぶまれる。そう思ったからだ。
自分の方が優れているのは間違いない。なぜなら、自分は選ばれし者だから。でも、アメリアの魔法の腕前はたしかだった。
『でも、あなたの魔法もなかなかのものよ。だから、何も別に学校へ来て学ぶ必要なんてないと思うわ。わたしが保証する』
『本当?』
『うん。知りたいことがあればわたしが教えてあげるし』
『やった!ありがとう』
アメリアは、素直に嬉しかった。家族以外の人に褒められたことも嬉しかったし、同年代の女友達ができたことも嬉しかった。
それから、ふたりは仲良しになった。
イビージャは、アメリアに魔法の基礎だけじゃなく、学校で習ったあらゆることを教えた。
実際、イビージャは学校ではずば抜けて優秀だった。そのため、基礎的なことを教えるほどの能力は、すでに身についていた。
そして、アメリアの知らないことを教えることに、イビージャは何とも言えない優越感を覚えた。
アメリアは勉強熱心だったので、疑問に思うことは何でも質問した。それに答えられないことは何としても避けたかったので、イビージャも必死に勉強した。そのため、必然的にイビージャの能力も飛躍的に上がっていった。
さらに、イビージャの知らない魔法をアメリアが披露すれば、イビージャはその技を盗んで密かに修練した。それによって、養成校では生徒や教師からもイビージャはより一層もてはやされるようになった。
そのように切磋琢磨して、ふたりは養成校の教師になれる程の実力をあっという間に身に着けた。
その後、ふたりは守護ドラゴンと契約を交わすと、ドラゴンの石調達の仕事を始めるようになった。
地底都市の各地をふたりで一緒に巡っては、あらゆるドラゴンの石を手に入れた。
イビージャは仕事で依頼された石以外にも、密かに伝説の黒いドラゴンの石を探した。しかし、やはりそれはなかなか見つかるものでもなかった。
そして最初は黒いドラゴンの石を見つけることに執着していたイビージャも、いつしかどうでもよくなっていった。それより、アメリアとふたりでこうして仕事をすることをとても楽しく感じていた。
ある日、そんなふたりのもとへセテオス中央部の人間がやってきた。中央部で仕事をしないか、というヘッドハンティングだった。
願ってもいないことだった。いつかはセテオスに移り住んで中央部の仕事がしたいと、ふたりでよく話をしていたのだ。ふたりは、その申し出を二つ返事で引き受けた。
中央部では、ふたりは別々の部署に所属することとなった。それぞれの適性を判断され、アメリアは情報統制局へ。イビージャは監視局へと配属が決まった。
アメリアの情報統制局での仕事は、主に図書館に収められている宇宙のデータの整合性を確認するというものだった。
膨大なデータがある中、ズレが生じた場合にはそれを調整していき、ネットワークにアクセスがあれば、誰が何を調べているかについてまで調査した。
膨大なデータを前に気が遠くなるような仕事だったが、銀河連邦や銀河系の他文明の存在とも交流できるし、広大な宇宙の奥深さや神秘さについても触れることができて、アルタシアはとても魅力的な仕事だと感じていた。
それに直属の上司ソレーテは、とても優しく優秀だった。細かなことまで詳しく教えてくれるし、やるべきことを細かく指示してくれた。失敗しても怒ることなく、優しくフォローしてくれた。
そんな恵まれた環境で、アメリアは充実した日々を過ごしていた。
一方、イビージャは監視局で退屈な日々を過ごしていた。ドラゴンに乗って来る日も来る日もセテオスを訪問する人々をチェックしては、あいさつして回った。
闇の勢力が侵入することもあるから、中央部の監視が行き渡っていることを知らしめるための牽制だと、上司のネイゲルから説明があった。
でも正直あまり効果があるとは思えなかったし、何より退屈だった。こんなことなら、アメリアとドラゴンの石調達の仕事をしていた方がずっと良かった。
ある日、そのことをアメリアに打ち明けると、アメリアは今の仕事を続けたいと言った。とても充実している、と。
それに、これまで知らなかったけど宇宙では闇の勢力がかなり暗躍していて、いずれ地球も闇の勢力に消滅させられるかもしれない危機的状況にある。だから二人で一緒に地球を闇の勢力から救い出そう、とアメリアは熱く語った。
そのためにも、お互い今の仕事で知識と経験を積んでおこう。でも、もし今の部署が耐えられないなら、部署の異動をわたしからもかけ合ってみるとアメリアは言った。
イビージャは、その申し出を断った。なんだか仕事をする動機や心構えからして、アメリアとはまるで違っていた。部署異動をしても、そんな高尚な考えを持って仕事に取り組める自信がなかった。
イビージャは、卑屈になっていた。
自分は、自分なりに何とか仕事を楽しもう。それで続けられなくなったら、ホーソモスに戻って養成校で教師でもしよう。
それからは、イビージャは監視局の仕事をしながら男漁りをするようになった。別に仕事をさぼるわけでもないから、誰かに文句を言われる筋合いもない。気に入った男がいれば、観光案内と称して仕事の合間にデートをした。
アメリアほどじゃないにしても美貌には自信があったし、実際にイビージャはモテた。いつしか、複数の男と関係を持つようになった。
話を聞き終えると、圧倒されたようにアメリアは言った。
『だったら、わたしも養成校へ行ったところであなたのようにはなれないわね』
『まあ、そうね』
イビージャは、安心した。もしアメリアが学校へ来たら、誰よりも魔法が優れているともてはやされていた自分の立場が危ぶまれる。そう思ったからだ。
自分の方が優れているのは間違いない。なぜなら、自分は選ばれし者だから。でも、アメリアの魔法の腕前はたしかだった。
『でも、あなたの魔法もなかなかのものよ。だから、何も別に学校へ来て学ぶ必要なんてないと思うわ。わたしが保証する』
『本当?』
『うん。知りたいことがあればわたしが教えてあげるし』
『やった!ありがとう』
アメリアは、素直に嬉しかった。家族以外の人に褒められたことも嬉しかったし、同年代の女友達ができたことも嬉しかった。
それから、ふたりは仲良しになった。
イビージャは、アメリアに魔法の基礎だけじゃなく、学校で習ったあらゆることを教えた。
実際、イビージャは学校ではずば抜けて優秀だった。そのため、基礎的なことを教えるほどの能力は、すでに身についていた。
そして、アメリアの知らないことを教えることに、イビージャは何とも言えない優越感を覚えた。
アメリアは勉強熱心だったので、疑問に思うことは何でも質問した。それに答えられないことは何としても避けたかったので、イビージャも必死に勉強した。そのため、必然的にイビージャの能力も飛躍的に上がっていった。
さらに、イビージャの知らない魔法をアメリアが披露すれば、イビージャはその技を盗んで密かに修練した。それによって、養成校では生徒や教師からもイビージャはより一層もてはやされるようになった。
そのように切磋琢磨して、ふたりは養成校の教師になれる程の実力をあっという間に身に着けた。
その後、ふたりは守護ドラゴンと契約を交わすと、ドラゴンの石調達の仕事を始めるようになった。
地底都市の各地をふたりで一緒に巡っては、あらゆるドラゴンの石を手に入れた。
イビージャは仕事で依頼された石以外にも、密かに伝説の黒いドラゴンの石を探した。しかし、やはりそれはなかなか見つかるものでもなかった。
そして最初は黒いドラゴンの石を見つけることに執着していたイビージャも、いつしかどうでもよくなっていった。それより、アメリアとふたりでこうして仕事をすることをとても楽しく感じていた。
ある日、そんなふたりのもとへセテオス中央部の人間がやってきた。中央部で仕事をしないか、というヘッドハンティングだった。
願ってもいないことだった。いつかはセテオスに移り住んで中央部の仕事がしたいと、ふたりでよく話をしていたのだ。ふたりは、その申し出を二つ返事で引き受けた。
中央部では、ふたりは別々の部署に所属することとなった。それぞれの適性を判断され、アメリアは情報統制局へ。イビージャは監視局へと配属が決まった。
アメリアの情報統制局での仕事は、主に図書館に収められている宇宙のデータの整合性を確認するというものだった。
膨大なデータがある中、ズレが生じた場合にはそれを調整していき、ネットワークにアクセスがあれば、誰が何を調べているかについてまで調査した。
膨大なデータを前に気が遠くなるような仕事だったが、銀河連邦や銀河系の他文明の存在とも交流できるし、広大な宇宙の奥深さや神秘さについても触れることができて、アルタシアはとても魅力的な仕事だと感じていた。
それに直属の上司ソレーテは、とても優しく優秀だった。細かなことまで詳しく教えてくれるし、やるべきことを細かく指示してくれた。失敗しても怒ることなく、優しくフォローしてくれた。
そんな恵まれた環境で、アメリアは充実した日々を過ごしていた。
一方、イビージャは監視局で退屈な日々を過ごしていた。ドラゴンに乗って来る日も来る日もセテオスを訪問する人々をチェックしては、あいさつして回った。
闇の勢力が侵入することもあるから、中央部の監視が行き渡っていることを知らしめるための牽制だと、上司のネイゲルから説明があった。
でも正直あまり効果があるとは思えなかったし、何より退屈だった。こんなことなら、アメリアとドラゴンの石調達の仕事をしていた方がずっと良かった。
ある日、そのことをアメリアに打ち明けると、アメリアは今の仕事を続けたいと言った。とても充実している、と。
それに、これまで知らなかったけど宇宙では闇の勢力がかなり暗躍していて、いずれ地球も闇の勢力に消滅させられるかもしれない危機的状況にある。だから二人で一緒に地球を闇の勢力から救い出そう、とアメリアは熱く語った。
そのためにも、お互い今の仕事で知識と経験を積んでおこう。でも、もし今の部署が耐えられないなら、部署の異動をわたしからもかけ合ってみるとアメリアは言った。
イビージャは、その申し出を断った。なんだか仕事をする動機や心構えからして、アメリアとはまるで違っていた。部署異動をしても、そんな高尚な考えを持って仕事に取り組める自信がなかった。
イビージャは、卑屈になっていた。
自分は、自分なりに何とか仕事を楽しもう。それで続けられなくなったら、ホーソモスに戻って養成校で教師でもしよう。
それからは、イビージャは監視局の仕事をしながら男漁りをするようになった。別に仕事をさぼるわけでもないから、誰かに文句を言われる筋合いもない。気に入った男がいれば、観光案内と称して仕事の合間にデートをした。
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