Re:征服者〜1000年後の世界で豚公子に転生した元皇帝が再び大陸を支配する〜

鴉真似≪アマネ≫

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転生・蘇る大帝

SIDE 帝国

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 大陸の北西に位置するとある都市。
 
 ラインクール皇国の皇都に負けず劣らずの華やかさがあり、人々の表情が活気に満ち溢れている。ルドマリア帝国の帝都である。

 その中心に位置する宮殿。白亜の宮殿と称するにふさわしいその建物は、皇帝がおわす城の役割を果たしている。皇国の赤と金色がおり混ざった豪勢さはないが、これはこれで高貴さを醸し出している。

 その一室。会議室のようだ。

 上座には金髪の若い男性と、帝国式の白い騎士の装束を纏った大柄の男性、そして眼鏡をかけた初老の男性が報告を受けていた。

「なんという失態! これほど準備をして結果が惨敗とは! いつも威張り散らかしている軍部は何をしているのだ! 惨めを通り越して笑えてくるわ!」

 怒鳴り声をあげたのは、意外にも一番大人しそうな眼鏡をかけた初老の男性だった。

 実際彼がここまで取り乱すのは珍しいこと。なぜなら、彼はこの帝国において、宰相の位についている人物なのだから。

「ふぅ~いかんいかん。深呼吸深呼吸……どうやら私は気がおかしくなっていたようですね。君に当たっても仕方ありません。報告を続けてくれたまえ」

「……はっ。我が軍1万が皇国軍1万の奇襲を受けて、壊滅的な大ダメージを受けたのち、一部の逃走兵をのぞき、帝都に帰還いたしたました。状況的に総司令官であるケッツェル様が敵に討たれたと判断しましたので、指揮権を引継ぎ、私が撤退を指示しました」

「……何度聞いても信じられませんね。軍部は何をしていたのですか? 1万の兵が動いたのに気づかなかったとは、これでは皇国の無能共以下ではありませんか? 話によりますと皇宣魔導士まで出張ってきたそうではありませんか? その動向も探れないとは、諜報部はどいつもこいつもお飾りですか」

「諜報部に確認した。皇国が軍を動かした気配はない。ましてや皇宣魔導士など」

 これに対して返事をしたのは大柄な男の方である。金色の髪を無造作にかき揚げたこの男は、帝国軍元帥である。

「ではなんですか? 我が軍はありもしない幽霊に打ちのめされ、挙げ句の果てに総司令官の首を取られたと? はは、言い訳なら他にもあるでしょうに。こういうことしかできないからお飾りなどと言われるのですよ」
「言い訳などではないが、この状況では何を言っても言い訳になるか」
「この際言い訳でもいいので私を納得させられる理由が欲しいものですね」
「2人ともその辺にしておけ」

 威厳たっぷりの声である。若くしてその威厳とは全くもって末恐ろしい。

 しかし、彼は実際見た目ほど若くはない。その見た目では想像もできないほど長く生きている。特異体質である。

 この金髪碧眼の青年のような見た目をしたものこそが、この帝国の頂点に君臨する存在。皇帝へガンドウルム・ルドマリアである。

「トゥースといったか。一つ聞きたい……その大軍というのはお前が実際に目にしたのか?」
「いいえ、伝令の者からそのような報告を受けました。濃霧で遠くも見えず、しかし地響きもしていましたので事実と判断しました」
「ふむ。ではその伝令のものをここに呼べ」
「へ? あ、いえ、しかし。乱戦の中でどの伝令兵までかは確認できなかったので」
「……なるほど、してやられたか」
「どういうことでしょうか、陛下」
「大軍など最初から存在しなかったということだ」
「「なっ!」」

 戦争に詳しくない宰相や報告に来た兵士は信じられないといった様子で唖然となるが、元帥はそうでもなかった。

「なるほど、そういうことでしたか。中々にやり手ですな」
「ああ、少数で戦場を突っ切り大将首をとる。言うは易し行うは難し。武勇も中々。その霧とやらも意図的に作られたとみるべきだろう。いやはや完敗だな」
「ライネル領には獅子がいましたか……倅も報われんな」

 今回の総大将であるケッツェルは元帥の息子である。

 元帥の三人いる息子のうちの末っ子であった。元帥の顔に悲しげな表情を浮かべる。しかし、それも一瞬のこと。すぐに一戦士、一軍人の顔に戻る。

「そうでもないだろう。強敵との激戦の末果てたのなら、これ以上の喜びはないだろう」
「それは陛下ぐらいものです」
「し、しかし陛下! それでは極大魔法の説明がつきません。これは偽りの大軍とは違い、多くの兵士が目にしたことです。皇宣魔導士がいたことは明白!」
「そんなの、皇宣魔導士以外にも極大魔法が使えたというだけのことだろう。中々に多芸ではないか」
「なっ!」
「ふふふ、面白くなってきたな」

 そう言っていたへガンドウルムの口もとが綻ぶ。その間に、元帥は報告に来た兵士を下がらせる。

 その兵士はを失っていた。レオンハルトの極大魔法に巻き込まれたせいである。直撃ではなかったものの、あの天変地異のような魔法を受けた割にはダメージが少ないのは、きっとただならぬ生への執着のおかげだろう。

(ケッツェル様。おいらが絶対仇を討ってやるっすからね!)

「作戦は延期する。そう通達せよ」
「はっ!」
「今回の損害を補いつつ、次の戦の準備を進めよ。次に攻めるのはライネル領以外にしよう。あそこを食らうのは最後がいい。くっくっく」

 知らず知らずのうちに帝国皇帝に目をつけられたレオンハルトであった。

 ◆

 大陸三強に数えられる国はラインクール皇国、ルドマリア帝国、そして神聖アルテミス教国。どの国も、戦争において独自の切り札を保有している。

 皇国なら護国の三騎士や皇宣魔導士。

 神聖アルテミス教国なら神聖騎士団や勇者。

 そして、帝国にも幾つもの騎士団が存在し、その団長たちはどれも一騎当千の猛者である。

 しかし、それだけではない。帝国の武の象徴は決して騎士団などではない。

 帝国皇帝へガンドウルム・ルドマリア。

 又の名をーー大陸最強

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