Re:征服者〜1000年後の世界で豚公子に転生した元皇帝が再び大陸を支配する〜

鴉真似≪アマネ≫

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動乱・生きる理由

第1話 武闘大会

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「ーーというわけで、私たちが住むこの世界には、人間以外の種族も存在します」

 ラインクール皇国皇立学院高等部1年A組の教室。本日は座学の講義。教壇で教鞭を取っているのはA組副担任であるミネルヴァ先生である。

 今日の授業は人類史。その中でも種族問題に触れている。

「では、レオンハルト君。人間以外の種族を五つ、特徴も踏まえて答えなさい」
「はい」

 そう言ってレオンハルトは徐に立ち上がる。

「エルフ族。長い耳と長大な寿命が特徴的。エルフのおよその平均寿命は500年と言われている。魔法や弓の適性が高い傾向がある。

 ドワーフ族。鍛治を得意とし、酒を好む傾向がある。力が強く、寿命も人間と比べてかなり長い。平均300年ほどと言われている。

 獣人族。体の一部、主に耳や尻尾が動物と同化している。人間よりもはるかに高い身体能力を有する。その代わり、魔法適性は低い。

 ヴァンパイア族。強靭な身体能力と高い魔法適性を有する代わりに、日光への耐性が極めて弱い。ただし、真祖と呼ばれるものの直系は該当しない。

 竜人族。竜種と人間のハーフと言われているが、詳しくは知られていない。全体的なスペックはその他の種族を大きく上回るが、絶対数はかなり少ない。

 以上です」

「お見事です。座っていいですよ。亜人は、今レオンハルト君があげてくれた5つの種族に大きく分けることができます。ただし、その中でも細かい区分があるため、一概には言えません。さて、次は現在の亜人の立ち位置についてです」

 ここでミネルヴァは一旦話を止める。生徒たちの顔を見回し、再び口を開く。

「現在の亜人への対応は、お世辞にも良いものとは言えません。三大国の一つである神聖アルテミス教国が亜人を差別することが大きな原因となっています。我が国では、亜人の人権は皇国法にて保証されていますが、残念ながらそれを守るものは少数はです。取り締まる側である騎士たちの中でも、亜人差別を高らかに掲げているものもいるほどです。皆さんには是非、そういった差別の払拭に尽力してもらいたいですね」

 そうはいったものの、それを真剣に受け取っている生徒は少ない。皆にとって、この座学の授業は単位さえ取れればいいものと考えているからである。

 それをわかっているのか、ミネルヴァの表情が明るくない。

 キンコンカンコン。授業の終わりを告げる鐘が鳴る。

「では、今日の授業はここまでです。お疲れ様でした」

 そういってミネルヴァは退室する。

 次の授業までには余裕があるため、緑の短髪をした青年、ディールがレオンハルトの元へやってくる。

「よう、レオ。さっきは凄かったな。亜人の種族なんて、一つも覚えてねーよ、俺は」
「なに、大したことじゃない。うちの領では亜人を積極的に登用しているからな。彼らから聞いてた話だ」
「マジか。領主ってみんなそうなのか?」
「そんなわけないでしょ」

 そういって話に入ってきたのは、金髪金眼の女子生徒、エルサだった。

「亜人を積極的に登用する領なんて、聞いたことないわ。レオンハルトのとこが特別なんでしょ」
「そうなのか? じゃあ、なんでレオは亜人を積極的に登用するんだ?」
「ああ、さっきのは語弊があったな。亜人を積極的に登用してるのではなく、有能なものを探していったら亜人が多かったというだけだ」
「亜人の方が優秀?」
「あんまり聞かない話ね」
「特定の分野においてはな。例えばエルフは魔法と弓が得意なものが多いから、うちでは魔弓騎士に多く在籍している。鍛治においても、人間がドワーフ勝ることは難しい。適材適所というわけだ」

 レオンハルトは話さなかったが、領内では他にも多くの亜人が在籍している。

 レオンハルトお抱えの隠密部隊は、ヴァンパイアと人間のハーフ、ダンピールのみで構成しているし、魔戦騎士の中でも、強襲部隊に位置する部隊は獣人と竜人のみで構成されている。

 ライネル領は他の領とは、亜人の在籍数が天と地ほど違う。なんなら、他の領では亜人が一人もいない、なんてこともある。

 ライネルは国内、いや大陸的に見ても亜人の待遇が段違いにいい。噂が噂を呼んで、さらに亜人が集まる。

 だからと言って、人間との確執があるかと言われれば、そうでもない。もともと辺境と都会では、亜人に対する考え方は大きく異なる。貴族ならともかく、一般市民が亜人を敵視することはない。

 よって、ライネル領は現在、大陸で唯一亜人と人間が共存できる理想郷となっている。

「へー。色々考えるんだな」
「あんなはもう少し考えなさい。でも、まあおもしろい話ではあったよ。適材適所、ね」

 そういってエルサは思考を走らせる。これから領地に帰ってたら、亜人を登用してみようかなぁ、なんて考えていた。

「お、次の授業の先生がきたぞ」

 今日も学園生活は平和である。



「武闘大会?」
「そ、夏休み明けにあるの。といってもほとんどの生徒は関係ないけどねぇ」

 時は7月半ば。レオンハルトが学園へやってきてすでに3ヶ月以上たっていた。

 もうじきに夏休みがやってくる。その前に、伝えておかなければいけない連絡事項があるということで、今絶賛ホームルーム中である。

 銀髪にアメジスの瞳をした色男、シュナイダーが教卓の上に座っていた。生徒一同プラス副担のミネルヴァ先生は、心を通わせていた。
 すなわち、「降りてから話せ!」である。

 そんなみんなの心情を知ってか知らずか、シュナイダーは話を続ける。

「武闘大会に参加できるのは1年2人、2年2人、3年4人で計8人のみ。そこからくじでトーナメントが組まれて、その中で優勝を目指すゲームだよ」
「ゲームって」
「武闘大会へ参加するのは、毎年A組からってなってるの。つまり、A組担任である僕の推薦で出場者がかり決定するんだけど……」

 そういって、シュナイダーは教室中を見渡す。

「例年通りだと、クラスでトーナメントなり、総当たり戦なりで決めるらしいよ。とうする? やる?」
「「「……」」」

 生徒一同は押し黙る。蘇るは入学初日のこと。圧倒的な実力差を見せつけられ、心も体もズタボロにされた苦い記憶。

 あれから3ヶ月たったとはいえ、その差を埋められるとは微塵も思っていない。

 むしろやればやるほど、二人との距離が遠くなっている気がしてならなかった。

 沈黙が広がる中、それを破ったのは茶髪茶目の少年、バースである。

「んなもんやらなくても結果は見えてんだろうが。もうレオンハルトとリンシアでいいだろ」
「僕も賛成かな」

 相槌を打ったのは、銀髪で眼鏡をかけた青年、フレデリックだった。

「いずれは追いつきたいとは考えてるけど、まだ僕らには二人とやりあうだけの実力はない。今回は二人に譲ろう」
「今回は、ねー」

 それをおもしろそうに眺めていたシュナイダー。話も一段落ついたと判断したのか、パンと手を叩き、

「じゃあ、今年の代表はレオくんとリンシアで決定!」
「待て」

 それに待ったをかけたのは、まさかのレオンハルト本人であった。

「俺は辞退する。魔力回路も開通してない学生が集まる大会に、俺が出る訳にはいかない。面白みのない大会になるぞ」
「……レオが出ないなら、私も、でない」

 そういって、リンシアが出場を辞退しようとする。

「うーん、残念ながら辞退という制度はないかなぁ」
「いえ、生徒が希望するなら辞退は可能ーー」
「シャラップ!! ミネルヴァ先生、今は僕のターンですよ」

 ミネルヴァが何か言おうとしたが、それはシュナイダーによって憚られる。もっとも、内容はほとんど聞こえたので、レオンハルトのシュナイダーを見る目は冷たい。

「ごっほん。えーと、まあ。ぶっちゃけ辞退は可能だけど……教師命令! レオくんは武闘大会に出場するように!」
「横暴だな」
「横暴ね」
「横暴ですね」

 生徒からのブーイングが巻き起こる。しかし、シュナイダーは気にしない。

「まあ、正直に言うと、レオくんには出てもらわないと困るんだよねぇ」
「困る? なぜだ?」
「それはまだ内緒。でもねー、レオくんが出てもつまらない大会になるってことはないと思うよ。僕が保証しよう」
「お前のどこにそんな信用がーー」
「レオくん、出なさい」
「……わかったよ。たまにはお前を信用してみるとするよ」
「……じゃあ、私も、出る」

 シュナイダーの必殺技「急に真剣になる」を受けたレオンハルトは、武闘大会に出場を決意した。普段はチャランポランのシュナイダーだが、真剣な時にはうそをついたことはないのだ。

こうして、レオンハルトの武闘大会出場が決定した。

「あ、言い忘れてたけど、その出場枠、奪われるかもしれないから気をつけてね」
「……は?」

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