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胎動・乱世の序章
第9話 皇帝と勇者
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皇国の会議室。衝撃的な情報を受けた皇国の重鎮たちは慌てていた。
「帝国はほぼ全戦力を差し向けてきたと考えていいでしょう」
「それに対抗できる力が我らにあるかが問題だ」
「流石に無茶だ! 三十万だぞ! 三国連合軍も入れれば四十五万以上の大軍だ!」
「そもそもこの戦、帝国が勝ったところで勢力を大きく削がれるのではないか?」
「目的があるはずだ」
「なんですか? 目的というのは」
「わかるはずないだろ!?」
「くそ、どうすれば」
会議は盛り上がっているが、具体的な策は決まっていない。宰相であるクリストファーや元帥シュナイダーも口を閉じており、じっくりと作戦を考えていた。
それは、皇帝であるレオンハルトも変わらない。
そして、決意したかのような眼差しで諸侯たちを見つめる。その瞬間、レオンハルトをよく観察していたクリストファーが言葉を発する。
「静粛に。陛下のお言葉だ」
「「「「「……」」」」」
一斉にレオンハルトに視線が集まる。全員の意識が自分に集中していることを確認したレオンハルトは、徐に口を開く。
「シュナイダー」
「っは」
「国軍七万を連れて、北へ向かえ」
「御意」
「東の貴族家以外から兵を集え。総数を十万以上にしろ。ドバイラスとローカムも連れて行け」
「……それで勝てると?」
「勝つ必要はない。時間を稼げ」
「理由を聞いても?」
「教国だ」
「……ああ、なるほどね」
教国が戦争を仕掛ける以上、帝国は大軍を長時間外には置けない。時間を稼げば必ず撤退する。そうレオンハルトは踏んでいる。
しかし、それはあくまで予想。教国の動きに頼った予想に過ぎないのだ。
「予想が外れたら?」
「お前に任せる」
「御意」
二人の間には信頼関係がある。もし帝国が軍を引かずに戦い続けたら、現場でしか対処はできない。自分が何か指示をするよりも、シュナイダーに任せた方がいいとレオンハルトは判断した。
しかし、帝国に戦力を割きすぎなようにも思える。
「お、恐れながら陛下、それでは三国連軍への対処がーー」
「余が出る」
「「「「「……え?」」」」」
レオンハルトが戦場に出る。すなわち皇帝自ら戦場に赴くことに他ならない。
皇帝の出陣。レオンハルトが即位して3年間、先帝の時代も含めれば30年以上、皇国の皇帝が戦場に出たことはない。帝国皇帝や教国の勇者たちと戦ってきたのは常に時の三騎士たちだ。
30年ぶりの皇帝の出陣である。
しかも、獣王国の時と違い視察ではないため、彼らを全員連れて行けるのだ。
皇下直属騎士団。大陸最強に数えられるの戦闘集団。全員が魔力による身体強化を可能とし、さらに魔力回路の開通により無詠唱魔法を習得している。戦力としては申し分ない。
しかし、それでも数が少なすぎるのだ。
「き、危険です! 相手は十五万の大軍! さらに勇者も居るのですよ!」
「問題ない。リンシアとシリア、それにシオンも連れていく。オルア、留守を頼む」
「了解!」
「ですがーー」
「くどいぞ」
貴族たちの意見をバッサリ切り捨てるレオンハルト。貴族たちからしたら危険かもしれないが、レオンハルトにとっては大したことではないのだ。
確かに兵力差は厄介だが、相手は寄せ集めの軍。いくらでもやりようはある。それに、総大将が勇者という戦闘力だけが高い戦の素人。負ける方が難しいだろう。
しかしーー
「匂いが、取れない」
きな臭さは、増していくのだった。
◆
「全速前進!」
「「「「っは!」」」」
レオンハルトが出陣すると決まれば動きが早かった。各地に散らばる直属騎士に大至急で伝令をよこし、東に集結するように伝えた。
そして、西側にいた直属騎士たちが皇都に到着するや否や、レオンハルトも出陣した。
急な戦に不安を募らせている民ももちろんいるが、レオンハルト帝が率いる精強な兵を見て敗北すると考える者は少ないだろう。
そして今、電光石火の速さで東部へ進むレオンハルトたち。敵は未だに国境を超えていないのに、すでに戦力は集結しつつあるのだ。
「む?」
「どうなさいましたか?」
「……避難民の集団か?」
「……そのようですね」
レオンハルトたちが向かう先に見える一団。大量の荷物を持っており、若者だけでなく老人や子供もいるため、戦士の集団とはとても思えない。
となれば答えは一つ。戦場となる東の国境から中央へ避難をする民たちだろう。
「スピードを落とせ」
「「「「「っは」」」」」
レオンハルトの号令に直属騎士たちは一斉にスピードを落とす。そして、すぐさま避難民と合流し、停止する。
突然現れた騎士の一団に戸惑う避難民たち。騎士というのはこの世界ではそこそこ高い地位にいる。貴族ほどではないが、一応特権階級になる。
その一団が現れたことで、民たちは一斉に膝をつく。当然、皇帝がこの場にいるとは思っていない。
「楽にして良い」
「「「「は、っは!」」」」
何やら一番偉そうな人が『楽にしていい』と言ったので、避難民たちは姿勢を崩す。
「この先にある領都へ向かえ。衣食住は保証するように手配した」
「っは、ありがとう存じます」
代表っぽい男がそう返事をする。
レオンハルトは避難民たちの顔を見渡す。するとそこには、どことなく不安な表情を浮かべていた。
「不安か?」
「い、いえ、決してそのようなことは。ただ……」
「ただ?」
「……あの! 東だけでなく、帝国からも攻められているというのは本当でしょうか」
「事実だ」
「!?……その、騎士様たちを疑うわけではないのですが、万が一負けるようなことがあったら……」
『我々はどうなるのでしょうか』
その言葉が聞こえたような気がした。普段なら騎士に対してこのようなことは決して言わないのだが、大きな戦を前に民も不安がっているのだろう。
戦争というのは、ただ兵士が死ぬだけではないのだ。民の生活にも多大な影響を与える。長引けば長引くほど、いつも通りの生活には戻れなくなる。
これほど大きな戦は久しぶりだ。年長者は経験があるかもしれないが、殆どの者にとって初めての経験である。不安に思うのも無理はないだろう。
「案ずることはない。負けはせぬ」
「「「「……」」」」
そう言われても、納得できないだろう。だからーー
「皇帝レオンハルト・ラインクールの名において宣言しよう! 余の目が黒いうちは、皇国の民には決して辛酸を舐めさせはせぬと!」
「「「「「……え?」」」」」
「進軍を再開する!」
「「「「「っは!」」」」」
レオンハルトの号令とともに、再び凄まじい速さで駆け始める騎士たち。取り残された民たちは皆呆然とするだけ。
しばらく経つと、ある青年がぽつりと呟く。
「皇帝陛下自ら前線に……」
「……なんと」
青年の呟きをきっかけに、避難民たちは次々とレオンハルトたちが去っていった方向に向かって膝をつく。一部の老人は涙を流しているほどだ。
そして若い世代の子供たちはというと、
「かっこいい!」
そう両目を輝かせるのであった。
そして、変化が起こったのは避難民たちだけではない。騎士たちの心境にも変化はあったのだ。自分たちの勝敗が国の、民の運命を左右するのだと、改めて実感することとなる。
◆
皇国侵攻前の教都。鎧を纏った勇者四人が馬に跨っていた。
「皇国皇帝からシオンを取り戻すぞ」
覚醒勇者ケイスケがそう意気込んでいた。
「面倒くせぇ。なんで俺まで」
それに対し、覇拳勇者はそうぼやく。
「何をいうんだリョウタ。シオンが心配じゃないのか?」
「だーかーら、それはお前一人で十分だろ? この世界の劣等人相手に、四人も行く必要があるのかよ」
「油断禁物だよ。戦場では何が起こるかわからない」
リョウタのあまりの物言いに対して、ケイスケは窘めるのではなく、逆に付和したようにも思える。
この世界の人間をとことんバカにしたような態度。ケイスケも、油断禁物と言いつつも、自信に溢れているようだった。ギフトの存在が、彼らの自尊心を膨れ上がらせたのだろう。
「わかったよ。ったく……まあケイスケはシオンにご執心だもんな」
「そうなのケイスケくん!?」
リョウタがそうやってケイスケを茶化し、それに魔導勇者レイカが反応する。
「違う、そういうのじゃないから!」
「本当に?」
「ああ、彼女である君を差しおいて、僕が他の女性に執着するわけないじゃないか」
「ケイスケくん」
「レイカ」
「二人とも、兵士たちの前ですよ。謹んでください」
今にもラブコメ展開に発展しそうな雰囲気を邪魔したのは、聖癒勇者ハルカである。
「もう、ハルカちゃんはお堅いんだから」
「あなたたちが適当すぎるのですよ」
「そんなこと言いつつ、ケイスケくんのハーレムに加わってるくせに~」
「ご、郷に入っては郷に従え。この世界では一夫多妻制が普通のようですからね」
ーーッチ。
そうやってワイワイやっている3人を見て、覇拳勇者リョウタは、密かに舌打ちをするのだった。
そして、馬上の四人に近づく一人の男の子。四人と同じく黒い髪をしているが、男子にしては髪の毛は長めだ。前髪でほとんど目が隠れており、一見しただけで気が弱そうなことが見て取れる。
身長はそれほど低くはないのだが、如何せん雰囲気のせいで周りに弱々しい印象を与えてしまう。
「よ、四人とも、頑張って」
「おうおうおう! 偉くなったな、リク。オレらに頑張れって言える立場になったのかよ」
先ほどのイラつきをぶつけるかの如く、リョウタはリクと呼ばれる青年に絡む。
「やめろ、リョウタ」
ケイスケがそうリョウタを窘める。
「っち、わかったよ。失せろハイエナ野郎」
「リョウタ!」
「うるせーな、もう」
そう言ってリョウタは一人去っていく。残されたのは、雰囲気の悪い勇者四人だけだった。
「帝国はほぼ全戦力を差し向けてきたと考えていいでしょう」
「それに対抗できる力が我らにあるかが問題だ」
「流石に無茶だ! 三十万だぞ! 三国連合軍も入れれば四十五万以上の大軍だ!」
「そもそもこの戦、帝国が勝ったところで勢力を大きく削がれるのではないか?」
「目的があるはずだ」
「なんですか? 目的というのは」
「わかるはずないだろ!?」
「くそ、どうすれば」
会議は盛り上がっているが、具体的な策は決まっていない。宰相であるクリストファーや元帥シュナイダーも口を閉じており、じっくりと作戦を考えていた。
それは、皇帝であるレオンハルトも変わらない。
そして、決意したかのような眼差しで諸侯たちを見つめる。その瞬間、レオンハルトをよく観察していたクリストファーが言葉を発する。
「静粛に。陛下のお言葉だ」
「「「「「……」」」」」
一斉にレオンハルトに視線が集まる。全員の意識が自分に集中していることを確認したレオンハルトは、徐に口を開く。
「シュナイダー」
「っは」
「国軍七万を連れて、北へ向かえ」
「御意」
「東の貴族家以外から兵を集え。総数を十万以上にしろ。ドバイラスとローカムも連れて行け」
「……それで勝てると?」
「勝つ必要はない。時間を稼げ」
「理由を聞いても?」
「教国だ」
「……ああ、なるほどね」
教国が戦争を仕掛ける以上、帝国は大軍を長時間外には置けない。時間を稼げば必ず撤退する。そうレオンハルトは踏んでいる。
しかし、それはあくまで予想。教国の動きに頼った予想に過ぎないのだ。
「予想が外れたら?」
「お前に任せる」
「御意」
二人の間には信頼関係がある。もし帝国が軍を引かずに戦い続けたら、現場でしか対処はできない。自分が何か指示をするよりも、シュナイダーに任せた方がいいとレオンハルトは判断した。
しかし、帝国に戦力を割きすぎなようにも思える。
「お、恐れながら陛下、それでは三国連軍への対処がーー」
「余が出る」
「「「「「……え?」」」」」
レオンハルトが戦場に出る。すなわち皇帝自ら戦場に赴くことに他ならない。
皇帝の出陣。レオンハルトが即位して3年間、先帝の時代も含めれば30年以上、皇国の皇帝が戦場に出たことはない。帝国皇帝や教国の勇者たちと戦ってきたのは常に時の三騎士たちだ。
30年ぶりの皇帝の出陣である。
しかも、獣王国の時と違い視察ではないため、彼らを全員連れて行けるのだ。
皇下直属騎士団。大陸最強に数えられるの戦闘集団。全員が魔力による身体強化を可能とし、さらに魔力回路の開通により無詠唱魔法を習得している。戦力としては申し分ない。
しかし、それでも数が少なすぎるのだ。
「き、危険です! 相手は十五万の大軍! さらに勇者も居るのですよ!」
「問題ない。リンシアとシリア、それにシオンも連れていく。オルア、留守を頼む」
「了解!」
「ですがーー」
「くどいぞ」
貴族たちの意見をバッサリ切り捨てるレオンハルト。貴族たちからしたら危険かもしれないが、レオンハルトにとっては大したことではないのだ。
確かに兵力差は厄介だが、相手は寄せ集めの軍。いくらでもやりようはある。それに、総大将が勇者という戦闘力だけが高い戦の素人。負ける方が難しいだろう。
しかしーー
「匂いが、取れない」
きな臭さは、増していくのだった。
◆
「全速前進!」
「「「「っは!」」」」
レオンハルトが出陣すると決まれば動きが早かった。各地に散らばる直属騎士に大至急で伝令をよこし、東に集結するように伝えた。
そして、西側にいた直属騎士たちが皇都に到着するや否や、レオンハルトも出陣した。
急な戦に不安を募らせている民ももちろんいるが、レオンハルト帝が率いる精強な兵を見て敗北すると考える者は少ないだろう。
そして今、電光石火の速さで東部へ進むレオンハルトたち。敵は未だに国境を超えていないのに、すでに戦力は集結しつつあるのだ。
「む?」
「どうなさいましたか?」
「……避難民の集団か?」
「……そのようですね」
レオンハルトたちが向かう先に見える一団。大量の荷物を持っており、若者だけでなく老人や子供もいるため、戦士の集団とはとても思えない。
となれば答えは一つ。戦場となる東の国境から中央へ避難をする民たちだろう。
「スピードを落とせ」
「「「「「っは」」」」」
レオンハルトの号令に直属騎士たちは一斉にスピードを落とす。そして、すぐさま避難民と合流し、停止する。
突然現れた騎士の一団に戸惑う避難民たち。騎士というのはこの世界ではそこそこ高い地位にいる。貴族ほどではないが、一応特権階級になる。
その一団が現れたことで、民たちは一斉に膝をつく。当然、皇帝がこの場にいるとは思っていない。
「楽にして良い」
「「「「は、っは!」」」」
何やら一番偉そうな人が『楽にしていい』と言ったので、避難民たちは姿勢を崩す。
「この先にある領都へ向かえ。衣食住は保証するように手配した」
「っは、ありがとう存じます」
代表っぽい男がそう返事をする。
レオンハルトは避難民たちの顔を見渡す。するとそこには、どことなく不安な表情を浮かべていた。
「不安か?」
「い、いえ、決してそのようなことは。ただ……」
「ただ?」
「……あの! 東だけでなく、帝国からも攻められているというのは本当でしょうか」
「事実だ」
「!?……その、騎士様たちを疑うわけではないのですが、万が一負けるようなことがあったら……」
『我々はどうなるのでしょうか』
その言葉が聞こえたような気がした。普段なら騎士に対してこのようなことは決して言わないのだが、大きな戦を前に民も不安がっているのだろう。
戦争というのは、ただ兵士が死ぬだけではないのだ。民の生活にも多大な影響を与える。長引けば長引くほど、いつも通りの生活には戻れなくなる。
これほど大きな戦は久しぶりだ。年長者は経験があるかもしれないが、殆どの者にとって初めての経験である。不安に思うのも無理はないだろう。
「案ずることはない。負けはせぬ」
「「「「……」」」」
そう言われても、納得できないだろう。だからーー
「皇帝レオンハルト・ラインクールの名において宣言しよう! 余の目が黒いうちは、皇国の民には決して辛酸を舐めさせはせぬと!」
「「「「「……え?」」」」」
「進軍を再開する!」
「「「「「っは!」」」」」
レオンハルトの号令とともに、再び凄まじい速さで駆け始める騎士たち。取り残された民たちは皆呆然とするだけ。
しばらく経つと、ある青年がぽつりと呟く。
「皇帝陛下自ら前線に……」
「……なんと」
青年の呟きをきっかけに、避難民たちは次々とレオンハルトたちが去っていった方向に向かって膝をつく。一部の老人は涙を流しているほどだ。
そして若い世代の子供たちはというと、
「かっこいい!」
そう両目を輝かせるのであった。
そして、変化が起こったのは避難民たちだけではない。騎士たちの心境にも変化はあったのだ。自分たちの勝敗が国の、民の運命を左右するのだと、改めて実感することとなる。
◆
皇国侵攻前の教都。鎧を纏った勇者四人が馬に跨っていた。
「皇国皇帝からシオンを取り戻すぞ」
覚醒勇者ケイスケがそう意気込んでいた。
「面倒くせぇ。なんで俺まで」
それに対し、覇拳勇者はそうぼやく。
「何をいうんだリョウタ。シオンが心配じゃないのか?」
「だーかーら、それはお前一人で十分だろ? この世界の劣等人相手に、四人も行く必要があるのかよ」
「油断禁物だよ。戦場では何が起こるかわからない」
リョウタのあまりの物言いに対して、ケイスケは窘めるのではなく、逆に付和したようにも思える。
この世界の人間をとことんバカにしたような態度。ケイスケも、油断禁物と言いつつも、自信に溢れているようだった。ギフトの存在が、彼らの自尊心を膨れ上がらせたのだろう。
「わかったよ。ったく……まあケイスケはシオンにご執心だもんな」
「そうなのケイスケくん!?」
リョウタがそうやってケイスケを茶化し、それに魔導勇者レイカが反応する。
「違う、そういうのじゃないから!」
「本当に?」
「ああ、彼女である君を差しおいて、僕が他の女性に執着するわけないじゃないか」
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ーーッチ。
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「よ、四人とも、頑張って」
「おうおうおう! 偉くなったな、リク。オレらに頑張れって言える立場になったのかよ」
先ほどのイラつきをぶつけるかの如く、リョウタはリクと呼ばれる青年に絡む。
「やめろ、リョウタ」
ケイスケがそうリョウタを窘める。
「っち、わかったよ。失せろハイエナ野郎」
「リョウタ!」
「うるせーな、もう」
そう言ってリョウタは一人去っていく。残されたのは、雰囲気の悪い勇者四人だけだった。
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