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第一章 不死鳥契約
15話 閑話・はじめの眷族
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リオンの契約の儀が無事終了した日の夜。
当主リカードは自身の宮殿――灼炎宮に帰還した。
炎に包まれた宮殿だが、リカードが降り立った途端炎は道へと変わる。
その奥には眷族騎士が整列し、当主の帰来を出迎えた。
「お帰りなさいませ。当主様」
その先頭に立つのが、古参のロルフ・アイヒベルクである。炎の道を進むリカードの三歩後ろに立ち、追従する。
そんなロルフに視線をやり、リカードはそのまま宮殿の奥深くにある自身の執務室へ戻る。
「ふぅ。全く厄介なことになった」
「…………」
椅子に腰かけるとポツリ、独り言をこぼすリカード。
その珍しい姿に、しかしロルフは口を出さない。出してはいけないのだ。
「聞かないのか? お前も気になっているのだろ?」
「ご冗談を」
「全く。真面目もここまでくると病気だぞ」
今一度椅子に深く座り込み、リオンの契約の儀の様子を語る。
契約の不調。
イリアとウィルヘルムの衝突。
クロノスの降臨。
かつて類を見ない出来事の数々に、さすがのロルフも表情を崩さずにはいられない
「そのようなことがあったとは……」
「意外だろ? あのリオンが契約に手こずるとはな」
「……それだけアンブロシアの血が、薄いということでしょうか?」
「さて、そうとも限らん」
机の上に肘を置き、頬杖を突きながらリカードは続ける。
「今回の契約で一番不可解なのは、クロノス様の目覚めだ。確かに、リオンが契約に手こずったのも意外だが、イリアとウィルヘルムが威嚇し合った程度の衝撃で鳳凰主様がお目覚めになる方がよほど異常だ」
「確かに、少し前にお目覚めになったシュヴェルト様は、山が3つほど消し飛んでもお目覚めになりませんでしたね。ライフォスとの小競り合いの最中でしたが……」
「あぁ。だからオレも、起きるはずがないと高をくくっていたが」
はぁ、とため息を零し、再度椅子に深く腰掛ける。
「だが、今回と前回には明確の違いがある」
「契約の儀の最中だったから、ということでしょうか?」
「あぁ。クロノス様は契約中だということをいたく気にされているご様子だったからな」
――『ソレイヌとノクスの契約者かな? 血気盛んなのは良いけど、契約中はダメだよ』
「リオンの契約の不調。クロノス様の目覚め。一見無関係のようだが、これで見えてくるものもある」
「とおっしゃいますと?」
「リオンの契約相手は、相当の大物ということだ。それも『天上の六座』と同等の」
「っ!?」
「系統としてはクロノス様と近いものだろう。つまり、『時の不死鳥』に準ずる誰かだ。その気配に当てられた結果、クロノス様が目を覚ました可能性が高い」
「時の不死鳥様の係累となりますと、流転の不死鳥様や空界の不死鳥様あたりでしょうか?」
「係累の契約がクロノス様に共鳴した、か。無くはないが、リオンがそれで手こずるとも思えんな」
「おっしゃる通りかと」
「一人だけ、思い当たる節があるが……そうなるとかなりの大物だぞ」
――輪廻の不死鳥
リカードの口から飛び出たのは、その名である。
「っ!? 『天上の六座』の第六座……!!」
「あいつの言動は大人び過ぎているからな。輪廻の不死鳥の契約者なら何ら不思議はないが……」
「何かご懸念でも?」
「『輪廻の不死鳥』は『魂の不死鳥』の近縁だ。クロノス様から少し離れる。そこに引っかかっているが……気配の強さならピカイチだ。これ以上の人選もそうないだろう」
いまいち核心に迫れていない感触に、リカードは少しばかり苛立つ。
しかし無理やり自身を納得させる。
「お前は一体何者だ? リオン」
遠くの珀永宮を見つめ、リカードはこぼすのだった。
◆
眷族契約。
アンブロシアの血族が血を分け与え、他者を眷族に加える行為。
血を与えられた眷属は主に以下の3点が禁じられている。
一つ、主の意に逆らってはならない。
一つ、主に虚偽を告げてはならない。
一つ、主に危害を加えてはならない。
実質の隷属契約だが、その引き換えに得る力は絶大である。
アンブロシアの血族でない者が、一部とは言え不死鳥の力を引き出せるのだから。
間接的な不死はもちろんだが、その力だけで絶対的な位階の差さえひっくり返すことができる。
それが御三家の中では比較的第九位階到達者の数が少ないアンブロシア家が、それでも御三家最強と謂われる所以である。
◆
リオン・アンブロシアの契約から五日が経過した。
ある程度回復したリオンは、ついに眷族契約に臨んだ。
初期段階とはいえ、ハリヴァス式を持つリオンがこうも回復に時間を要した理由として、魔力の欠乏があげられる。
理由は不明だが、契約後のリオンの魔力回復はひどくゆっくりとなっていた。
普段であれば一日程度で完全に回復する魔力だが、五日が経過した今でもまだ完全に回復できていない。
契約の際に、ジファが何か無茶をしたのではないかとリオンは思っているが、呼びかけても返事は全くない。
どうやら眠り込んでしまったようだ。
それはさておき、眷族契約には何の支障もない。
「始めよう。順番は二人に任せる」
アイリスとリーナを前に、リオンはそう呼びかける。
二人は視線を合わせるが、すぐさまリーナの方が一歩下がる。
「アイリス嬢が先でしょう」
「良いのです? わたしが言うのもあれですが、坊ちゃまの最初の眷族ですよ」
「勿論、惜しい念はあります。ですが……リオン坊ちゃまの初めの眷族はアイリス嬢が相応しいかと」
「え? そ、そうです?」
一歩下がったリーナは、少しばかり目を伏せる。
「あの日、血族の方々の前で、私は委縮してしまいました。眷族として、誰よりも真っ先に坊ちゃまをお守りすべき立場にありながら……悔しいですが、アイリス嬢には敵いませんでした。ですので、初めの眷族はアイリス嬢が適任でしょう」
少し落ち込んだ様子で、リーナは心中を吐き出す。
「リーナさん……」
「リーナ。あの場でのお前の行動は間違っていない。ウィルヘルム相手に啖呵を切れる人間など早々いるはずもないからな。アイリスが考え無しなだけだ」
「リオン坊ちゃま!? ひどいです!?」
「それにリーナ。お前の場合はアイヒベルクも背負っているのだ。一族のことを考えても、お前はあの場で動くべきではない」
「無視です!?」
落ち込むリーナを慰めるようにリオンは言葉をかけ、アイリスは場を和ませていた。
それを見たリーナは少しばかり笑顔を見せる。
「フフッ、リオン坊ちゃま、アイリス嬢。どうぞお気遣いなく。」
悔しそうに下唇をかみしめながらも、視線を前へ向けるリーナ。
その瞳には、過去への後悔ではなく未来への覚悟が宿っていた。
「では、遠慮なく、です」
一歩下がったリーナとは反対に、アイリス一歩前へ踏み出した。
そしてリオンの前に跪き、手を取る。軽く、手の甲に口づけをする。
すると、応じるようにリオンは契約の誓いを口にする。
『我は汝であった。汝は我となろう』
途端、序列戦の前と同様、リオンの体から赤い糸が浮かぶ。
それの糸の正体は、アンブロシアの血である。
家門の誓いに応じたアンブロシアの血糸は、眷族契約の対象であるアイリスにまとわりつく。
そして、吸い込まれるようにアイリスの体へ消えていった。
「っ!?」
瞬間、アイリスの心臓は鼓動する。自身とは異なる鼓動であることを、アイリスは本能的に察していた。
「これが、坊ちゃまの……」
リオンに呼応するように、心臓が脈を打つ。
離れていようとも、リオンの鼓動だけは感じ取れる。
これにて、眷族契約は成立した。
「おめでとうございます。リオン坊ちゃま、アイリス嬢。気分はいかがですか?」
「…………」
「アイリス嬢?」
「世界が、二つに見える……」
「世界が、二つ? それが、坊ちゃまの力ですか?」
リオン自身も、まだジファの力を完全には引き出せずにいた。
故に、アイリスがもらい受ける力も微々たるものだが、それでも彼女には十分すぎる衝撃だった。
同時に、その感覚を世界のだれよりも早く感じ取れたことをアイリスは誇らしく思った。
これをもって、リオンの初めての眷族契約が成ったのだ。
◆
アイリスに続いて、リーナも眷族契約を行う。
二重に見える世界。
それは、僅か先の未来を示している。
二人とも初めはジファの力に戸惑っていたが、徐々に慣れ始めていった。
「これは……凄まじいですね」
「本当に、未来が見えますです」
寸刻先の未来だが、それもリオンの成長とともに伸びていくだろう。
そして何より――
「坊ちゃま。これが坊ちゃまが仰っていた『まだ言えないこと』ですか? 坊ちゃまは、未来を知っている」
「そうだ。契約上内容は伝えられないが、私はこの世界が辿るべき運命を見た」
分かっていた答えだが、それでもリーナは衝撃を受けずにはいられなかった。
しかし、同時に納得できる部分もあった。
溢れて余りある天才性。
年齢にそぐわない知識量。
驕らず真っすぐ自身を鍛える精神性。
そのどれもが、リオンの言葉を裏付ける。
そして何より、目の前に広がる二重の世界。眷族となった二人は、思いのほかすんなりとそれを受け入れた。
「坊ちゃま。釈迦に説法かと思いますが、この力は他の方には……」
「無論、伝えるつもりはない。父上にも、イリア姉上にも」
世界の運命を知るジファの力は唯一無二の物だ。
無暗に話せば、それだけで身を滅ぼしかねない。
「さて、眷族契約も無事に済んだことだし、少し出かけるか。せっかく幼鳳宮を出たんだ。下町でも回ってみるか」
「やったぁです!! 案内はこのアイリスにお任せくださいです! 美味しい屋台沢山知ってますです!!」
「……アイリス嬢。宮殿の運営に予算案、掃除もまだ完全には終わっていません。仕事は山積みですよ。貴女は残って――」
「いやですぅ!! 坊ちゃまとお出かけするです~!!」
「……そんな子供みたいな」
「まあまあ、いいじゃないか、リーナ。たまには息抜きも必要だ。それに、運営方針と予算案は私が先ほど採択したから問題はない」
「坊ちゃまがそうおっしゃるのなら」
「やったぁです!! ありがとうございますぅ、坊ちゃま!!」
「アイリス嬢。まったく、貴女という人は……」
当主リカードは自身の宮殿――灼炎宮に帰還した。
炎に包まれた宮殿だが、リカードが降り立った途端炎は道へと変わる。
その奥には眷族騎士が整列し、当主の帰来を出迎えた。
「お帰りなさいませ。当主様」
その先頭に立つのが、古参のロルフ・アイヒベルクである。炎の道を進むリカードの三歩後ろに立ち、追従する。
そんなロルフに視線をやり、リカードはそのまま宮殿の奥深くにある自身の執務室へ戻る。
「ふぅ。全く厄介なことになった」
「…………」
椅子に腰かけるとポツリ、独り言をこぼすリカード。
その珍しい姿に、しかしロルフは口を出さない。出してはいけないのだ。
「聞かないのか? お前も気になっているのだろ?」
「ご冗談を」
「全く。真面目もここまでくると病気だぞ」
今一度椅子に深く座り込み、リオンの契約の儀の様子を語る。
契約の不調。
イリアとウィルヘルムの衝突。
クロノスの降臨。
かつて類を見ない出来事の数々に、さすがのロルフも表情を崩さずにはいられない
「そのようなことがあったとは……」
「意外だろ? あのリオンが契約に手こずるとはな」
「……それだけアンブロシアの血が、薄いということでしょうか?」
「さて、そうとも限らん」
机の上に肘を置き、頬杖を突きながらリカードは続ける。
「今回の契約で一番不可解なのは、クロノス様の目覚めだ。確かに、リオンが契約に手こずったのも意外だが、イリアとウィルヘルムが威嚇し合った程度の衝撃で鳳凰主様がお目覚めになる方がよほど異常だ」
「確かに、少し前にお目覚めになったシュヴェルト様は、山が3つほど消し飛んでもお目覚めになりませんでしたね。ライフォスとの小競り合いの最中でしたが……」
「あぁ。だからオレも、起きるはずがないと高をくくっていたが」
はぁ、とため息を零し、再度椅子に深く腰掛ける。
「だが、今回と前回には明確の違いがある」
「契約の儀の最中だったから、ということでしょうか?」
「あぁ。クロノス様は契約中だということをいたく気にされているご様子だったからな」
――『ソレイヌとノクスの契約者かな? 血気盛んなのは良いけど、契約中はダメだよ』
「リオンの契約の不調。クロノス様の目覚め。一見無関係のようだが、これで見えてくるものもある」
「とおっしゃいますと?」
「リオンの契約相手は、相当の大物ということだ。それも『天上の六座』と同等の」
「っ!?」
「系統としてはクロノス様と近いものだろう。つまり、『時の不死鳥』に準ずる誰かだ。その気配に当てられた結果、クロノス様が目を覚ました可能性が高い」
「時の不死鳥様の係累となりますと、流転の不死鳥様や空界の不死鳥様あたりでしょうか?」
「係累の契約がクロノス様に共鳴した、か。無くはないが、リオンがそれで手こずるとも思えんな」
「おっしゃる通りかと」
「一人だけ、思い当たる節があるが……そうなるとかなりの大物だぞ」
――輪廻の不死鳥
リカードの口から飛び出たのは、その名である。
「っ!? 『天上の六座』の第六座……!!」
「あいつの言動は大人び過ぎているからな。輪廻の不死鳥の契約者なら何ら不思議はないが……」
「何かご懸念でも?」
「『輪廻の不死鳥』は『魂の不死鳥』の近縁だ。クロノス様から少し離れる。そこに引っかかっているが……気配の強さならピカイチだ。これ以上の人選もそうないだろう」
いまいち核心に迫れていない感触に、リカードは少しばかり苛立つ。
しかし無理やり自身を納得させる。
「お前は一体何者だ? リオン」
遠くの珀永宮を見つめ、リカードはこぼすのだった。
◆
眷族契約。
アンブロシアの血族が血を分け与え、他者を眷族に加える行為。
血を与えられた眷属は主に以下の3点が禁じられている。
一つ、主の意に逆らってはならない。
一つ、主に虚偽を告げてはならない。
一つ、主に危害を加えてはならない。
実質の隷属契約だが、その引き換えに得る力は絶大である。
アンブロシアの血族でない者が、一部とは言え不死鳥の力を引き出せるのだから。
間接的な不死はもちろんだが、その力だけで絶対的な位階の差さえひっくり返すことができる。
それが御三家の中では比較的第九位階到達者の数が少ないアンブロシア家が、それでも御三家最強と謂われる所以である。
◆
リオン・アンブロシアの契約から五日が経過した。
ある程度回復したリオンは、ついに眷族契約に臨んだ。
初期段階とはいえ、ハリヴァス式を持つリオンがこうも回復に時間を要した理由として、魔力の欠乏があげられる。
理由は不明だが、契約後のリオンの魔力回復はひどくゆっくりとなっていた。
普段であれば一日程度で完全に回復する魔力だが、五日が経過した今でもまだ完全に回復できていない。
契約の際に、ジファが何か無茶をしたのではないかとリオンは思っているが、呼びかけても返事は全くない。
どうやら眠り込んでしまったようだ。
それはさておき、眷族契約には何の支障もない。
「始めよう。順番は二人に任せる」
アイリスとリーナを前に、リオンはそう呼びかける。
二人は視線を合わせるが、すぐさまリーナの方が一歩下がる。
「アイリス嬢が先でしょう」
「良いのです? わたしが言うのもあれですが、坊ちゃまの最初の眷族ですよ」
「勿論、惜しい念はあります。ですが……リオン坊ちゃまの初めの眷族はアイリス嬢が相応しいかと」
「え? そ、そうです?」
一歩下がったリーナは、少しばかり目を伏せる。
「あの日、血族の方々の前で、私は委縮してしまいました。眷族として、誰よりも真っ先に坊ちゃまをお守りすべき立場にありながら……悔しいですが、アイリス嬢には敵いませんでした。ですので、初めの眷族はアイリス嬢が適任でしょう」
少し落ち込んだ様子で、リーナは心中を吐き出す。
「リーナさん……」
「リーナ。あの場でのお前の行動は間違っていない。ウィルヘルム相手に啖呵を切れる人間など早々いるはずもないからな。アイリスが考え無しなだけだ」
「リオン坊ちゃま!? ひどいです!?」
「それにリーナ。お前の場合はアイヒベルクも背負っているのだ。一族のことを考えても、お前はあの場で動くべきではない」
「無視です!?」
落ち込むリーナを慰めるようにリオンは言葉をかけ、アイリスは場を和ませていた。
それを見たリーナは少しばかり笑顔を見せる。
「フフッ、リオン坊ちゃま、アイリス嬢。どうぞお気遣いなく。」
悔しそうに下唇をかみしめながらも、視線を前へ向けるリーナ。
その瞳には、過去への後悔ではなく未来への覚悟が宿っていた。
「では、遠慮なく、です」
一歩下がったリーナとは反対に、アイリス一歩前へ踏み出した。
そしてリオンの前に跪き、手を取る。軽く、手の甲に口づけをする。
すると、応じるようにリオンは契約の誓いを口にする。
『我は汝であった。汝は我となろう』
途端、序列戦の前と同様、リオンの体から赤い糸が浮かぶ。
それの糸の正体は、アンブロシアの血である。
家門の誓いに応じたアンブロシアの血糸は、眷族契約の対象であるアイリスにまとわりつく。
そして、吸い込まれるようにアイリスの体へ消えていった。
「っ!?」
瞬間、アイリスの心臓は鼓動する。自身とは異なる鼓動であることを、アイリスは本能的に察していた。
「これが、坊ちゃまの……」
リオンに呼応するように、心臓が脈を打つ。
離れていようとも、リオンの鼓動だけは感じ取れる。
これにて、眷族契約は成立した。
「おめでとうございます。リオン坊ちゃま、アイリス嬢。気分はいかがですか?」
「…………」
「アイリス嬢?」
「世界が、二つに見える……」
「世界が、二つ? それが、坊ちゃまの力ですか?」
リオン自身も、まだジファの力を完全には引き出せずにいた。
故に、アイリスがもらい受ける力も微々たるものだが、それでも彼女には十分すぎる衝撃だった。
同時に、その感覚を世界のだれよりも早く感じ取れたことをアイリスは誇らしく思った。
これをもって、リオンの初めての眷族契約が成ったのだ。
◆
アイリスに続いて、リーナも眷族契約を行う。
二重に見える世界。
それは、僅か先の未来を示している。
二人とも初めはジファの力に戸惑っていたが、徐々に慣れ始めていった。
「これは……凄まじいですね」
「本当に、未来が見えますです」
寸刻先の未来だが、それもリオンの成長とともに伸びていくだろう。
そして何より――
「坊ちゃま。これが坊ちゃまが仰っていた『まだ言えないこと』ですか? 坊ちゃまは、未来を知っている」
「そうだ。契約上内容は伝えられないが、私はこの世界が辿るべき運命を見た」
分かっていた答えだが、それでもリーナは衝撃を受けずにはいられなかった。
しかし、同時に納得できる部分もあった。
溢れて余りある天才性。
年齢にそぐわない知識量。
驕らず真っすぐ自身を鍛える精神性。
そのどれもが、リオンの言葉を裏付ける。
そして何より、目の前に広がる二重の世界。眷族となった二人は、思いのほかすんなりとそれを受け入れた。
「坊ちゃま。釈迦に説法かと思いますが、この力は他の方には……」
「無論、伝えるつもりはない。父上にも、イリア姉上にも」
世界の運命を知るジファの力は唯一無二の物だ。
無暗に話せば、それだけで身を滅ぼしかねない。
「さて、眷族契約も無事に済んだことだし、少し出かけるか。せっかく幼鳳宮を出たんだ。下町でも回ってみるか」
「やったぁです!! 案内はこのアイリスにお任せくださいです! 美味しい屋台沢山知ってますです!!」
「……アイリス嬢。宮殿の運営に予算案、掃除もまだ完全には終わっていません。仕事は山積みですよ。貴女は残って――」
「いやですぅ!! 坊ちゃまとお出かけするです~!!」
「……そんな子供みたいな」
「まあまあ、いいじゃないか、リーナ。たまには息抜きも必要だ。それに、運営方針と予算案は私が先ほど採択したから問題はない」
「坊ちゃまがそうおっしゃるのなら」
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