クズ男を完堕ちさせるまで【BL小説】

片羽セイ

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2話目 話が通じない

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「あ、起きた?」
 起きて最初に視界に入ったのは、あの憎たらしい男、カイトの笑顔だった。

「ユーサクさんね、ボクの中に突っ込んだまま気絶しちゃったんだよ。多分二十回くらい射精してたから、ボクの中ドロッドロだった!」

「やめろ!男の中でイッたとか……嘘だろ?」

「嘘じゃないよ?」

 カイトが差し出す端末のディスプレイには、腹の上に精液をぶちまけながら気絶する、間抜けな表情の藤村が映っていた。

「やめろ!なんてもん撮影してんだよ!今すぐ消せ!!」

「ヤダ!ボクとユーサクさんの、初めて繋がった記念なの!家宝にするの!!」

「黒歴史以外の何ものでもないわ!消せ、今すぐ消せ!じゃないと今すぐ死んでやる!!」

「そんなに死にたいなら、今からボクと死ぬまで……ヤル?」

 瞳孔の開いた目でニッコリとほほ笑みかけられれば、藤村はフルフルと首を横に振るしかなかった。

 体の拘束はそのままだが、汗や体液の気持ち悪さが無い。シャツにスウェット姿だったのが、バスローブに着替えさせられている。

「じゃ、次ね」

 カイトが白衣から取り出したリモコンを操作すると、藤村の両足を繋ぐ部分が左右に開き始めた。
 
 バスローブがおっぴろげられ、股間がスースーして落ち着かない。

「今からユーサクさんのここ、ボクと繋がれる練習するからね」

 カイトの指がバスローブに入ってきて、尻穴をツンツンとつついてくる。敏感な場所を触られ、ぶわっと全身に鳥肌が立った。

「や、やめろ…!」

「大丈夫、痛くしないから」

「そういう問題じゃな、うぐっ…」

 指はすんなりとフジムラの内部へ入ってきた。体をきれいにした時に、洗浄か何かを施していたのだろう。

 本来濡れるはずのない場所がヌルヌルとして、異物感と本能的な恐怖感で冷や汗が止まらない。

「やめてくれ…頼む、前立腺だけは、やめてくれ……!!」

「あとちょっとだけ、我慢してね。……ほら、ココだよ」

「イヤだっ、イヤ……アァッ……!」

 必死に抵抗しながら藤村は、ある一つの疑問を抱いた。

 ──何故俺は、触れたことのないはずのそこが、前立腺だと知っている?……誰から教わった?

 脳裏に、一人男の影がよぎって消える。

 見覚えのある面影。あれは──
 
 (思い出したくない。これ以上、こじ開けられたら、俺は……)
 
「あ、あぁっ、あ……」
 藤村の瞳は大きく開き、仰け反って遠く天井を見上げている。

 しかしカイトはそれに気づかず、藤村の体内を指で弄り続けていた。

「カイト、そこまで」
 知らない男の声によって、藤村の意識は現実に引き戻された。

 ウィーンという音と共に白い扉が開き、前髪を七三分けにした眼鏡男が入ってきた。

「休憩の時間だ。藤村さん、お疲れ様だったね」

 理性的な口調で話す男は、そう言って拘束台から藤村の体を解放した。
 
 体が自由になったら、カイトを殴り飛ばしてやる……そう思っていたはずなのに、今は体が石みたいに重くて、うまく動きそうにない。

「被験者から目を離さない、臨床実験の鉄則でしょ。カイト、夢中になりすぎ」
 
「ホントだ、脳波が大きく乱れてる。……ごめん、ユーサクさん」

 右腕に装着した機器を確認して、カイトが申し訳なさそうに眉を下げた。

 珍しくしおらしいその態度にすら、今の藤村の視界には入らなかった。

「なあ、あんた。ここの責任者か?」

「まあ一応、そうなるね。私は絹川。研究への協力、感謝しているよ」

「今すぐ、俺を帰してくれ」

「それはできない」

 思わず、大きくため息が出る。カイトよりは話が通じそうだと、期待したのがバカだった。

「……なんでだよ」

「キミ、同意書にサインしたよね?ここに『中途辞退はできませんので、予めご了承ください』って書いてあるの。読んでなかった?あ、もしかして老眼?」

 絹川が指し示した文字は、虫眼鏡では到底読めないほど小さく書かれていた。

「老眼じゃないわボケェ!んな小さな文字、顕微鏡でもなけりゃ読めねぇっての!!」

「「やっぱり老眼だね(ですね)」」

 絹川とカイトの声がハモる。

「クソが!!!」

 頭の中で、ブツンと何かがキレる音がした。

 カイトの顔面へ向けて、全力の拳を放った。しかし……

「あれ、ユーサクさん、喧嘩ごっこしたいの?」

 藤村の拳は、カイトの広い手のひらでパシリと軽く受け止められた。

「嘘だろ…?」

 その場にへなへなと崩れ落ちながら、藤村は自分が衰えたのかと思って、両手の拳を強く握った。

 しかし力の入り具合からして、別に衰えたのではないと分かる。

「やめておきなさい。いくら元刑事であろうと、カイトはキミより強い」

 絹川の無遠慮な忠告に、藤村は奥歯をギリリと噛み締めた。

 子供の頃から柔道をやっていた。

 生まれつき、そこそこ体格もいい。

 犯人逮捕の実績があった。逃げようとする輩を何人も組み伏せた。

 だから、自分はそこそこ強いと思っていた。

 根拠のある自信を完封され、深い絶望が心に影を落とす。
 
 床に座り込んだ藤村を、カイトが両腕で軽々と横抱きにした。

「さあ、食事にしよう。よい研究は、よい食事からだ」

 パンパンと手を叩いて、絹川が部屋の出口を指し示す。

 今の藤村にはもう、二人に盾突く気力は残されていなかった。
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