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一章
第23話 奴隷に寝込みを襲われた
しおりを挟む食事の後は寝る部屋を案内する。
客室は30室有り全員で寝られる大部屋もあるが、敢えて全員で寝る必要もないだろう。
俺は客室が並ぶ廊下で皆に部屋割りを話す。
各部屋の扉には花の名前が付いていて、組み合わせは以下のようになった。
〈キクの間〉アストレナ、ヒルデビア、レモニカ
〈ツバキの間〉ウィスタシア、ラウラ
〈スミレの間〉ティアニー、ヒオリ
〈サクラの間〉モモ、ココノ、フォン、タマ
ココノは明日家に帰るからサクラの間は明後日から三人で使う。
部屋は8畳和室が2部屋と板の間の広縁が付いている。
俺はモモの部屋、サクラの間で布団の敷き方をレクチャーすることにした。
皆の前で押入の襖を開ける。
中には敷布団、掛布団、シーツ、枕等が積まれている。
「これは布団って言うんだけど、これから使い方を教える。今日から自分でやってもらうから覚えるように」
この世界に布団や柔らかいベッドはない。貴族は重い布や羊毛の様な生地を重ねて寝ているし、貧乏人は藁に包まって寝る。
だから、この世界で最も多い死因は冬の凍死なのだ。
日本も江戸時代まではそんな感じだったらしいから似ている。
俺は手際よく布団3組を敷く。その間モモも自分の分を敷いた。
モモは自分でできるけど、布団は大人用だから病み上がりで華奢なタマとフォンは暫く自分でできないかもしれない。
毎晩様子を見てあげた方がいいな。
「よし。じゃあタマ、寝てみてくれ」
「うん」
タマが横になり俺は掛布団を掛けてあげた。軽くて温かい羽毛布団だ。
「ふにゃ~」
「こんな感じで上から掛けて寝るんだ。まだ夜は冷えるからちゃんと掛けて寝るんだぞ。風邪を引くからな」
季節は5月初旬、ここは日本で例えると青森県と同じ北緯にある。
「アッチも寝てみる!よいしょ……、うわーフカフカ~。んー気持ちいい~!」
そう言ってフォンは布団の中に潜っていった。
あれ?タマが眠っているぞ。布団に入ってまだ1分も経ってないのに。
「各自、自分の部屋でやってみてくれ。俺は廊下にいるから、わからないことは聞いてくれよ」
その後皆の部屋を見て回り全員ちゃんと敷けていることを確認した。
それから他にも色々説明したかったのだが、布団に入った数名が寝てしまい、他のメンバーも眠そうなので明日にすることにした。
この星は宇宙から飛来した強大な魔力を持った白龍が衝突した世界線の地球だ。
故に時間の経過は地球と全く同じで1年は365日、1日は24時間なのだ。
現在時刻は19時。この世界の人は基本的にこの時間には寝てしまう。朝は午前3時くらいに起きる。
俺も子供達に合わせて生活習慣を変えないとな。せめて4時には起きないと……。
自室へ向かいながらそんな事を考える。
俺の部屋の隣の部屋を開けると大きな魔法陣が青白く輝いていた。その周りにはゴロウズの頭に使われているボーリング玉サイズの赤い魔石が大量に積まれている。
魔石に手を当てて魔力充電を行った。魔法陣起動を維持する為の魔力だ。
因みにこの魔法陣に乗ると世界線を超えて日本に行ける。
それと、この部屋には調べ物担当のゴロウズが3体。彼等はタブレットやパソコンを見ている。
魔法陣の中にLANケーブルを通していて日本からネットを引いているから、この部屋だけWi-Fiが使えるのだ。
彼等は現場で働く297体のゴロウズが疑問に思ったことを調べたり、必要な物をネットで注文したりしている。
こっちの世界で俺の仕事は何も無い。魔力さえ供給しておけば、全部ゴロウズがやってくれる。
俺は自分のディスクに座り、今後の方針を纏めた。そして今日は早目に眠ることにした。
◆
深夜0時を回った頃、ゴロウの枕元に足音を立てず忍び寄る女の影が……。
仰向けでぐっすり眠るゴロウに女は跨る。それからゆっくり両腕を振り上げた。何も持たないその手に鋭利な金属が出現する。女が土魔法で生成したのだ。
女は刃を強く握るとゴロウの喉元に狙いを定め勢いよく振り下ろした。
キンッ!
刃の先端がゴロウの首に刺さることはなく、彼が寝ながら発動させていた防御魔法に弾かれた。
「本当に化物だな」
女はぼやく。
それからゴロウの浴衣の紐を解き、胸元をはだけさせると、今度は自分の浴衣を脱いでゴロウの上に寝そべり彼の胸に顔を埋めた。
◆
えええええー!?ちょ!なになに?どういうこと!?
戦場の習慣で、ウィスタシアが俺の部屋に近付いてきた時点で目を覚ました。で、寝た振りをしていたけど、いきなり刺してきたぞ!?
ただ、殺気がないんだよな。俺を殺す気ではないのか?
つか、何で脱ぐんだ?
彼女、全然動かないぞ……、こ、このまま俺の上で寝るつもりなのか?
いい匂いするし、柔らかい胸が当たってるし……、いやなんだ、この状況!?
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