40 / 66
第40話 アターシャ
しおりを挟む【パンティー視点】
ドゴゴゴゴゴゴンッ!!
私の目の前まで迫っていたロックワームの大群が轟音と共に消滅した。 いや、ロックワームだけじゃない。
ヤツ等がいた場所は地面が抉られ、それがずっと先まで続いている。
だけど、ロックワームはまだたくさんいる――――ッ!
ドゴゴゴゴゴゴンッ!!
ドゴゴゴゴゴゴンッ!!
ドゴゴゴゴゴゴンッ!!
そう思ったのは一瞬、ロックワームの群れが次々に消滅していく。 周りには大きな岩がたくさんあったのに、全て削られ何もない更地になった。
伝説級の圧倒的な力……。勇者ビッグベニスがやったとでもいうの!?
さらに――――、
ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ!
私達の周囲に散っていたロックワームも、何かがぶつかる衝撃音ともに、黒霧になって消えていく。
一体一体、正確に核が破壊されているんだ。いったい何が起きているのよ!?
【ゼツ視点】時を同じくして。
パンティー達の周りに散らばっていたロックワームは〈種強化Lv5〉で核だけを破壊した。〈種強化Lv29〉だと威力が強すぎて人を巻き込んでしまうからだ。
「どうなってるの?」
「ち、地形が……、変わったニャン」
地面にへたり込み驚愕しているティッシュがノエルの問に答えた。
「ロックワームは全部倒した。……けど、けが人が多いようだ。助けに行こう。 距離約2キロ。岩の上を飛んでいくからティッシュは荷物に乗って」
「うん!」
「了解ニャン!」
ティッシュは特大リュックの上に座り、僕の肩に両足を乗せる。彼女が振り落とされないように足首をしっかり掴んだ。
「しっかり掴まってろよ」
「んっにゃ~~ッ!」
僕は大きな岩山をジャンプで飛び移りながら移動していく。
ノエルは飛ぶことはできないが〈グラビティ〉で重力を軽減して、高くジャンプし落下しながら飛翔する。ちゃんと僕の後についてきている。
◇
酷い有り様だ。無傷の者は殆いない。
「ゼツ様……、どうしてここに?」
地面に力無く座るパンティーは今にも気絶しそうな程、疲労していた。
「助けに来たよ。よく頑張ったね」
そう言うとパンティーは「ありがとう」と呟いて崩れ落ちた。
彼女の華奢な体は傷だらけで流血も激しいが、その傷が白い光に包まれ徐々に塞がっている。勇者のパッシブスキル〈超回復〉だ。
僕はベスト脱ぎ折り畳むと、彼女の頭に下に敷いてあげた。
「これは坊っちゃんがやったのですか?」
アナルは無傷だ。まだ余力を残しているな。
「ああ。 それより彼らを治療するが、構わないな?」
「……はい。お願いいたします」
「アナル、お前も力を貸せ」
「御意」
アナルは胸に手を当て流麗なお辞儀をする。騎士の礼だ。
ノエルやティッシュにも協力してもらい。こちらのローションを惜しみなく使って、負傷者を回復させていく。 初めは誰だコイツ等?みたいな顔をされたが、皆疲労しているようで介抱すると静かに礼を言うだけだった。
◇
手当てをして回っていると――、アレプニヒトがアナルに報告にきた。
「生き埋めになっているメンバーがいます。その者以外は全員無事です」
「もう助からないでしょうねぇ」
「ええ、ただ家族に報告する際に遺留品だけは渡したいのですが、捜索してもよろしいでしょうか?」
「この中から探すのは不可能です。残念ですが諦めなさい」
大地は割れ、岩が崩れ落ちている。
どこに埋まっているかわからないのか……、なら――。
「アクティブスキル〈Gスポット〉」
僕の右目の瞳に”G”の文字が浮かび上がった。
地面を注視すると岩が透けて見える。
…………いた!あそこだ。
「あの岩の下いる。まだ生きてるぞ」
僕が岩をどかすと人が出てきた。出発前ティッシュに忠告したポーターの男だ。
息はあるがこれは酷い。もうローションでどうにかなる状態じゃない。
「虫の息ですねぇ。これはもう……」
アナルが怪我人を見ながらそう言うとアレプニヒトは近くにいたアターシャの元へ駆け寄った。
「アターシャ様、どうか、彼に〈リバイバル〉を」
〈リバイバル〉……と言ったのか?なら彼女の加護は【HR大聖女】だ。
「なりませんわ。常識的に考えなさいな。あの者は平民ですよ?私は〈ヒール〉すら使う気はありません」
僕はアターシャに歩み寄る。
「〈リバイバル〉を使えば彼は助かります。僕からもお願いします」
怪我した男は、知り合いでも何でもないが、助けられる命を見す見す落とすのは寝覚めが悪い。
横から僕に声を掛けられたアターシャはこちらへ振り向くと、顎を上げ地べたを這いつくばるゴミ虫を見下ろすような冷たい目で睨んできた。
「貴方、リンダナ家の嫡男でしたわよね?」
「”元”ですが」
「元? よくわかりませんが、貴方如きが私に意見するなど以ての外ですわ。身の程を弁えなさいな」
彼女はこの王国で最も身分の高い貴族、四大公爵家が一家ヤリマン公爵家の令嬢――、アターシャ・ヤリマン嬢だ。
僕の元実家、リンダナ侯爵家を管轄している家で、子供のころ何度か見掛けたことがある。
アナル以外、僕達がロックワームを倒したことを知らないとはいえ、ここまで蔑まれた態度を取られるとはな。
「アターシャ様、王国民は国の財産であり国を動かす原動力、その国民に自慰をかけるのもまた貴族の務めと存じますが」
僕が伏して進言すると、アターシャは右手を振り上げた。
「顔をお上げなさい」
パシッ!
僕が顔を上げると頬を叩かれた。 手の動きは止まって見えるほど遅く余裕でかわせたが、僕は敢えて平手打ちを受けた。
気の強い美小女に頬を叩かれるのはご褒美だと豪語する男もいるそうだが、僕が避けなかったのはそんな理由ではない。
こういうタイプは避けたり、受け止めたりすると更に機嫌を悪くするからだ。
「意見するなと申しましたわよね?気色悪い方。下がりなさい」
そう言われても僕は引き下がらない。
「アターシャ様、彼に〈リバイバル〉を掛けてあげてください」
アターシャの目付きが変わった。苛立ちを帯びた冷たい視線からは僅かに殺意すら感じる。
アターシャは再び右手を振り上げ、先ほどよりも早く強く僕の頬めがけて振り下ろす、が――――、
アターシャの手がぴたりと止まった。
「な、なんですの? これ? 体が動きませんわ」
僕はハッとし後ろへ振り返る。
そこにはアターシャに向かって右手を掲げたノエルがいた。
「そこの女、これはお前がやっているのですか?」
「そうよ。これ以上、ゼツ君を叩かせない!」
ノエルが〈グラビティ〉でアターシャの手を止めたのだ。
ノエル、不味いぞ!
コイツは平民の命を虫ケラ同然と考えているタイプの貴族だ。敵に回すと何をするかわからない。
アターシャはヒステリックに怒鳴り散らす。
「貴公子団ッ!その女を、捕らえなさいッ! 早くッッ!」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる