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第65話 忍び寄る彼女達の策略 ACT2
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カタンカタン。電車は陸橋を渡り始める。
この陸橋から先に行くことは久しぶりだ。父さんと母さんがまだいた時。そう、事故で亡くなる前、僕はこの陸橋を電車で渡っていた。孝義と共に。
あれから三浦家に引き取られ、下校時もうこの陸橋を渡ることはないと思っていた。
確か戸鞠の降りる駅はまだっと先だ。
この陸橋を渡り切り、二つ目の駅。そこは僕が住んでいたあの町の駅だ。
車窓に流れ込む風景。なんとなく今になれば懐かしさがこみあげてくる。
あの頃は何も感じなかった風景もこうして久しぶりに見れば、なんだかとても新鮮だ。
そんな僕に戸鞠は「いいの?」と問いかけた。
『いいの?』って、その意味はどこか別な意味を持つように思える。
手を放して降りようと思えば、降りることは出来た。
でもその手を放さなかったのは僕でもあったからだ。
「別に……」
特に意味があるようには思っていないように返す。
そのまま、僕らは会話はなかった。
しかし、戸鞠の降りるべく駅は学校からはかなりの距離になる。
すでに都心と言われるエリアまで来ていた。ここからなら、わざわざ今の高校に来ることもないというのに。
近場にはもっと、有名な名の通った高校もある。
成績的なことからと言うのには、戸鞠には疑問視が付く。彼女の生成なら、吊架着く進学校であれば確かに難関であろうが、無理なことではないくらいの生成を学校では取っている。
それなのになぜ、こんなにも離れた土地の高校にこんなに時間をかけて通っているのか。
そう言うところは、つい考えてしまうのが僕の悪い癖なんだろうけど。
まぁ確かにそれぞれ、事情ということはあるんだろう。
森ケ崎高校を選んだのは、どういう理由からでもいいんじゃないか。それが、僕らの出会いになったんだから。
……友人としての――――出会いとして。
電車のスピードが落ち始めた。
そして、戸鞠は話した僕の手を再び握った。
「ここだから」
そう言い、座席から立ち上がる。
ガタン。と、電車揺れた拍子に戸鞠はバランスを崩した。その体を抱きしめた。
サラッとした髪の毛からやっぱり桃のような甘い香りが多々寄ってくる。
「ご、ごめん」
「べ、別に」
ドアが開き電車を降りると、なんとなく空気が違うような感じがする。
どことなく漂う都会の空気。
その空気感は少し僕の心を重くさせた。
そんな僕に戸鞠はぐっと逃げる手に力を込めて「来ちゃったね」と言う。
確かに来てしまった。
知らない街。そして戸鞠の住む街に。
そして僕らは人の流れに逆らうことなく、沿うように動き始めた。
ずっと手は繋いだままだった。
そのまま、何も言わず駅を出て、歩き。気が付けば、駅からさほど離れていないタワマンの入口の前にいた。
「ここ、私の住んでいるところ」
都心の駅からさほど離れていないこのマンション。立地からすればものすごくいいところだ。
「戸鞠って結構なお嬢様だったりする?」
「へぇっ? 何そのお嬢様って。べつに普通だと思うんだけど。マンションだよ。一戸建ての家に住んでいた笹崎君の方がお坊ちゃまじゃないの?」
「そう言うもんか?」
「どうだか、よくわかんないんだけど私」とニコッと笑う戸鞠。エントランスのガラス張りの入口が開いて、すぐにエレベータに乗り込んだ。
ちょうど真ん中あたりでエレベーターは止まり、ドアが開く。
彼女が動くその後ろをついていく。
そしてあるドアの前で彼女歯足を止めた。
カードキーと暗証番号を入力して、鍵を開けた。
「どうぞ、笹崎君」と戸鞠はこの家の中へと僕をいざなう。
意外と広い三和土にドア横のスイッチをぱちぱちと戸鞠がつけると、まっすぐに伸びる廊下に明りが灯された。
靴を脱ぎ「あ、スリッパ適当に使っていいから」と言い、その廊下を彼女と一緒に数歩歩いていくと、広いダイニングの空間が広がった。
「適当に座っていていいよ。べつに気使うことなんかないから。親は多分今日もかなり遅いからね」
そう言い、キッチンに向かい冷蔵庫から取り出したジュースをグラスに注ぎ「はいどうぞ。あったかい飲み物の方がよかったんだろうけど、とりあえずはこれで我慢してね」
にっこりとしながら、僕の前のテーブルにそのグラスを置いた。
「あ、ありがとう」
「うふふ、なんだか可愛い。緊張しちゃってるみたいだね」
「あはは、さすがにね。初めてだから、戸鞠んところに来るの」
「うん、そうだね。初めてだね。それじゃ、初めてついでに一緒に来てよ」
「どこに?」
「ん、私の部屋」
「えっ!」
「何驚いてんのよ。愛華の部屋にも入っているんでしょ」
「で、でも」
確かに愛華の部屋にはもうまるで自分の部屋のように今では出入りしている。
それでも、愛華だから。愛華だから、彼女のすべてをすでに知っている仲だから。
まだ知らぬ戸鞠の部屋。
ドキドキと心臓の鼓動が高鳴ってくる。
いいのか、愛華以外の女の子の部屋に入っても……。
この陸橋から先に行くことは久しぶりだ。父さんと母さんがまだいた時。そう、事故で亡くなる前、僕はこの陸橋を電車で渡っていた。孝義と共に。
あれから三浦家に引き取られ、下校時もうこの陸橋を渡ることはないと思っていた。
確か戸鞠の降りる駅はまだっと先だ。
この陸橋を渡り切り、二つ目の駅。そこは僕が住んでいたあの町の駅だ。
車窓に流れ込む風景。なんとなく今になれば懐かしさがこみあげてくる。
あの頃は何も感じなかった風景もこうして久しぶりに見れば、なんだかとても新鮮だ。
そんな僕に戸鞠は「いいの?」と問いかけた。
『いいの?』って、その意味はどこか別な意味を持つように思える。
手を放して降りようと思えば、降りることは出来た。
でもその手を放さなかったのは僕でもあったからだ。
「別に……」
特に意味があるようには思っていないように返す。
そのまま、僕らは会話はなかった。
しかし、戸鞠の降りるべく駅は学校からはかなりの距離になる。
すでに都心と言われるエリアまで来ていた。ここからなら、わざわざ今の高校に来ることもないというのに。
近場にはもっと、有名な名の通った高校もある。
成績的なことからと言うのには、戸鞠には疑問視が付く。彼女の生成なら、吊架着く進学校であれば確かに難関であろうが、無理なことではないくらいの生成を学校では取っている。
それなのになぜ、こんなにも離れた土地の高校にこんなに時間をかけて通っているのか。
そう言うところは、つい考えてしまうのが僕の悪い癖なんだろうけど。
まぁ確かにそれぞれ、事情ということはあるんだろう。
森ケ崎高校を選んだのは、どういう理由からでもいいんじゃないか。それが、僕らの出会いになったんだから。
……友人としての――――出会いとして。
電車のスピードが落ち始めた。
そして、戸鞠は話した僕の手を再び握った。
「ここだから」
そう言い、座席から立ち上がる。
ガタン。と、電車揺れた拍子に戸鞠はバランスを崩した。その体を抱きしめた。
サラッとした髪の毛からやっぱり桃のような甘い香りが多々寄ってくる。
「ご、ごめん」
「べ、別に」
ドアが開き電車を降りると、なんとなく空気が違うような感じがする。
どことなく漂う都会の空気。
その空気感は少し僕の心を重くさせた。
そんな僕に戸鞠はぐっと逃げる手に力を込めて「来ちゃったね」と言う。
確かに来てしまった。
知らない街。そして戸鞠の住む街に。
そして僕らは人の流れに逆らうことなく、沿うように動き始めた。
ずっと手は繋いだままだった。
そのまま、何も言わず駅を出て、歩き。気が付けば、駅からさほど離れていないタワマンの入口の前にいた。
「ここ、私の住んでいるところ」
都心の駅からさほど離れていないこのマンション。立地からすればものすごくいいところだ。
「戸鞠って結構なお嬢様だったりする?」
「へぇっ? 何そのお嬢様って。べつに普通だと思うんだけど。マンションだよ。一戸建ての家に住んでいた笹崎君の方がお坊ちゃまじゃないの?」
「そう言うもんか?」
「どうだか、よくわかんないんだけど私」とニコッと笑う戸鞠。エントランスのガラス張りの入口が開いて、すぐにエレベータに乗り込んだ。
ちょうど真ん中あたりでエレベーターは止まり、ドアが開く。
彼女が動くその後ろをついていく。
そしてあるドアの前で彼女歯足を止めた。
カードキーと暗証番号を入力して、鍵を開けた。
「どうぞ、笹崎君」と戸鞠はこの家の中へと僕をいざなう。
意外と広い三和土にドア横のスイッチをぱちぱちと戸鞠がつけると、まっすぐに伸びる廊下に明りが灯された。
靴を脱ぎ「あ、スリッパ適当に使っていいから」と言い、その廊下を彼女と一緒に数歩歩いていくと、広いダイニングの空間が広がった。
「適当に座っていていいよ。べつに気使うことなんかないから。親は多分今日もかなり遅いからね」
そう言い、キッチンに向かい冷蔵庫から取り出したジュースをグラスに注ぎ「はいどうぞ。あったかい飲み物の方がよかったんだろうけど、とりあえずはこれで我慢してね」
にっこりとしながら、僕の前のテーブルにそのグラスを置いた。
「あ、ありがとう」
「うふふ、なんだか可愛い。緊張しちゃってるみたいだね」
「あはは、さすがにね。初めてだから、戸鞠んところに来るの」
「うん、そうだね。初めてだね。それじゃ、初めてついでに一緒に来てよ」
「どこに?」
「ん、私の部屋」
「えっ!」
「何驚いてんのよ。愛華の部屋にも入っているんでしょ」
「で、でも」
確かに愛華の部屋にはもうまるで自分の部屋のように今では出入りしている。
それでも、愛華だから。愛華だから、彼女のすべてをすでに知っている仲だから。
まだ知らぬ戸鞠の部屋。
ドキドキと心臓の鼓動が高鳴ってくる。
いいのか、愛華以外の女の子の部屋に入っても……。
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