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新しい時代
魔族
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森の入り口でアンヴァールから降りて待機していた魔族達は、私達を見つけると跪いた。
全員端正な顔立ちをしていて、銀髪の者と黒髪の者が半分ずつ位か、目は全員赤かった。
「お初にお目に掛かります。私は魔族の国ディアブレルの王を務めるブランザハーンと申す者です」
戦闘で跪いている二十代半ばの男性が名乗る。
「私は泉の精霊のハルです。何用でここに来たのですか?」
私が名乗ると全員が顔を上げて私を見る。
その様子を見て確信した。彼らの目的は私の様だ。
カクカミとギョクリュウが私を庇う様に前に出る。颯太も私の横にピタリと付いた。
「お願いがあって参りました。泉の水を少し分けてはいただけないでしょうか?」
伏したまま言うブランザハーン。その声は震えていて、強制や交渉ではなく懇願している様だった。
「訳がある様ですね。聞かせていただけますか?」
「はい。実は……」
ブランザハーンが言うには、妻と子が毒に冒されて死にかけているのだと言う。その毒は国にあるどんな薬でも解く事ができず、死を待つばかりという所に旅の者が現れて、東の高地にある泉の水ならばどんな毒でも癒す事が出来ると教えてくれたのだと言う。
「その旅人は人間の男性でしたか?」
「いえ、有翼種の女性でした」
アインではないが、彼から話を聞いた者かも知れない。
「分かりました。泉の水を分けましょう」
彼の持っていた動物の皮でできた空の水筒に《過剰分泌》を使って泉の水を一杯に注ぐ。
「これを飲ませてあげれば良くなります。お急ぎなさい」
「ありがとうございます!この礼は必ず!」
恭しく受け取って下がっていくブランザハーン。それに従い他の者も西へとアンヴァールを走らせて行く。
『宜しかったのですか?』
カクカミが聞いてくる。
「ええ。本当に困っている様子だったもの。それにエルフ達が言っていた程悪い種族には見えなかったわ」
「母さんは優しいね。でも、その優しさに付け込んでくる輩もいるから注意しないとね」
「勿論分かっているわ。一度だけ情けをかけただけよ。危害を加えてくる様なら戦うわ」
颯太の言う通りだ。あの者達が良くても他の者が下心を持って近付いてくる可能性もある。気を許してはいけない。
泉に戻って普段の生活に戻る。
一週間程経ったある日、再び魔族がやって来たとヤトから知らせを受ける。
前回と同様に森の手前で待っているので会いに行く。
今回は更に人数が少なく十人程度、前回同様私達を見つけると跪いた。
ブランザハーンのすぐ後ろに女性と十歳位の子供がいる。
「精霊様、お陰様で妻と子は快復しました。本日はその御礼に参りました。これが妻と子にございます」
「精霊様、お会いできて光栄にございます。この度は生命の水を分けて下さりありがとうございました」
「ありがとうございました」
魔族の間では生命の水なんて呼ばれているのね。二人はすっかり元気になった様だ。
「それは良かったわ」
「是非とも何か御礼をさせていただきたく思うのですが、私達に何か出来る事はございませんか?」
そう言われても不自由のない生活が送れているので思いつかない。
「そうね……アインと名乗る人間の男性があなたの国に来たら教えてもらえないかしら?私の家族なの」
「畏まりました。そのお方が来られましたら直ぐにお知らせ致します。国を挙げて歓待いたしましょう」
そんな大袈裟にしなくても良いのだけど、好意は受け取っておこう。
「それともう一つ、ここより北側の山に昔あなた達と争ったエルフが住んでいるのだけど、攻撃を加えないでほしいのだけど」
「仰せのままに致しましょう」
ブランザハーンは快く了解してくれた。
これでエルフの住む森が荒らされる事もないだろう。
全員端正な顔立ちをしていて、銀髪の者と黒髪の者が半分ずつ位か、目は全員赤かった。
「お初にお目に掛かります。私は魔族の国ディアブレルの王を務めるブランザハーンと申す者です」
戦闘で跪いている二十代半ばの男性が名乗る。
「私は泉の精霊のハルです。何用でここに来たのですか?」
私が名乗ると全員が顔を上げて私を見る。
その様子を見て確信した。彼らの目的は私の様だ。
カクカミとギョクリュウが私を庇う様に前に出る。颯太も私の横にピタリと付いた。
「お願いがあって参りました。泉の水を少し分けてはいただけないでしょうか?」
伏したまま言うブランザハーン。その声は震えていて、強制や交渉ではなく懇願している様だった。
「訳がある様ですね。聞かせていただけますか?」
「はい。実は……」
ブランザハーンが言うには、妻と子が毒に冒されて死にかけているのだと言う。その毒は国にあるどんな薬でも解く事ができず、死を待つばかりという所に旅の者が現れて、東の高地にある泉の水ならばどんな毒でも癒す事が出来ると教えてくれたのだと言う。
「その旅人は人間の男性でしたか?」
「いえ、有翼種の女性でした」
アインではないが、彼から話を聞いた者かも知れない。
「分かりました。泉の水を分けましょう」
彼の持っていた動物の皮でできた空の水筒に《過剰分泌》を使って泉の水を一杯に注ぐ。
「これを飲ませてあげれば良くなります。お急ぎなさい」
「ありがとうございます!この礼は必ず!」
恭しく受け取って下がっていくブランザハーン。それに従い他の者も西へとアンヴァールを走らせて行く。
『宜しかったのですか?』
カクカミが聞いてくる。
「ええ。本当に困っている様子だったもの。それにエルフ達が言っていた程悪い種族には見えなかったわ」
「母さんは優しいね。でも、その優しさに付け込んでくる輩もいるから注意しないとね」
「勿論分かっているわ。一度だけ情けをかけただけよ。危害を加えてくる様なら戦うわ」
颯太の言う通りだ。あの者達が良くても他の者が下心を持って近付いてくる可能性もある。気を許してはいけない。
泉に戻って普段の生活に戻る。
一週間程経ったある日、再び魔族がやって来たとヤトから知らせを受ける。
前回と同様に森の手前で待っているので会いに行く。
今回は更に人数が少なく十人程度、前回同様私達を見つけると跪いた。
ブランザハーンのすぐ後ろに女性と十歳位の子供がいる。
「精霊様、お陰様で妻と子は快復しました。本日はその御礼に参りました。これが妻と子にございます」
「精霊様、お会いできて光栄にございます。この度は生命の水を分けて下さりありがとうございました」
「ありがとうございました」
魔族の間では生命の水なんて呼ばれているのね。二人はすっかり元気になった様だ。
「それは良かったわ」
「是非とも何か御礼をさせていただきたく思うのですが、私達に何か出来る事はございませんか?」
そう言われても不自由のない生活が送れているので思いつかない。
「そうね……アインと名乗る人間の男性があなたの国に来たら教えてもらえないかしら?私の家族なの」
「畏まりました。そのお方が来られましたら直ぐにお知らせ致します。国を挙げて歓待いたしましょう」
そんな大袈裟にしなくても良いのだけど、好意は受け取っておこう。
「それともう一つ、ここより北側の山に昔あなた達と争ったエルフが住んでいるのだけど、攻撃を加えないでほしいのだけど」
「仰せのままに致しましょう」
ブランザハーンは快く了解してくれた。
これでエルフの住む森が荒らされる事もないだろう。
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