133 / 453
冒険者
若さ
しおりを挟む
初日の夕食は、エルザが手伝ってくれてスムーズに支度が出来た。
彼女は干し肉と干し野菜をお湯で戻して一口サイズに切り分けて煮込んでスープを作った。
温かい食べ物が一品とパンがあれば良いらしく、問題なのは量だそうだ。
作ったスープはかなりの量だったが全て無くなった。皆満足そうだ。
商人達は別で調理して食べている。護衛部隊とは同じ物を食べないらしい。
「量が足らないと機嫌が悪くなるから気をつけてね。何日かは私も手伝うから頑張ろう」
「はい。ありがとうございます」
エルザは面倒見の良いお姉さんといった感じだ。
夜の警備は交代制。だが、戦力面で劣ると見なされている私達のパーティは免除された。その代わり朝昼晩の食事の準備だ。
どちらが大変かは分からないが、同じ時間に眠れるのはセロ達も助かるだろう。
寝る時はテントを張ってその中で身を寄せ合って眠る。
「あの、さ。俺は外で寝るよ」
「なんで?」
テントを建て終わった時セロが言い出した。芽依はキョトンしながら聞き返している。
「いや、だって……俺だけ男だし……」
「駄目よ。風邪をひいてしまうわ」
「そうは言っても……」
セロは皆に気を遣って言っているのだが、私達は冒険者で今は仕事中なのだ。体調を崩す様な事はさせられない。
「リンさんとミラさんはセロさんと一緒は嫌?」
「い、嫌じゃないよ」
「私も。寧ろセロだけ他所で寝るのは心配です」
リンとミラは少し恥ずかしそうにしているが構わないと言う。
「それなら問題ないわね。セロさん、皆で一緒に寝ます。拒否は出来ません」
「はい……」
セロは大人しく頷いた。
テントと言っても地球のアウトドアで使う様な立派なものではない。所々隙間があったり狭かったりで使いにくい物だ。
それでも青空の下で夜を明かすより暖かいし、急な雨に慌てふためく必要もない。
野営なのだから、防具を外して横になるだけだ。髪を解かして寝る準備をしていた時、セロの隣で誰が寝るかで少しまごつく。
「私はお母さんの隣だったらどこでもいいよ」
芽依ったら甘えん坊なんだから。
いつまで経っても決まらなさそうだったのでセロは一番端、その隣に私、芽依、リン、ミラと並んで寝る事に。
一人一枚ずつ布に包まる。
「真ん中だー!」
芽依は楽しそうだ。
「さて、私達も寝ましょう。朝の食事の支度があるから早く起きないといけないわ」
「そうだね……」
「はい」
「おやすみー」
私の場合、眠らなくても特に支障はない。夜、皆が眠っている間も警戒はしておこう。
「ハルさんは……その、平気なのかい?」
横になって暫くしてセロが聞いてきた。
逆隣の芽依は私の腕に抱きついて既に寝息をたてている。
リンもミラもまだ寝ていない様だ。
確かに寝心地は決して良いものではない。隣のセロとは肩が触れている。
「私は平気よ。セロさんは寝心地が悪いでしょう。ごめんなさいね」
「い、いや。そんな事はないよ……」
気まずそうに口籠るセロ。
大して知りもしない女の子の横は緊張してしまうかしら。
「セロさんは紳士ね。気遣いの出来る人は好きよ」
私の言葉でセロは息を呑み、リンとミラが飛び起きた。
顔を赤くして私を見ている。
あらあら……驚かせてしまったみたい。
「好感が持てるという意味よ?」
「だ、だよねー……」
「そうですよね……」
「あはは……早く寝よう」
リンもミラも分かりやすいわ。でもいずれセロはどちらかを選ばないといけないのね。
ふふ、若いっていいわね。
「んにゃ……?どうしたの?」
私達の声を聞いて芽依が目を覚ます。
「な、何でもないよ。ささ、寝よう」
「起こしちゃってゴメンね。おやすみ」
「おかーさん……?」
片目だけ開けて眠たそうに聞いてくる。
「何でもないのよ。明日も沢山歩くから、もう休みましょう」
「んにゃ……」
再び寝息をたて始める芽依。
それを見てみんなで声を立てずに笑っていた。
彼女は干し肉と干し野菜をお湯で戻して一口サイズに切り分けて煮込んでスープを作った。
温かい食べ物が一品とパンがあれば良いらしく、問題なのは量だそうだ。
作ったスープはかなりの量だったが全て無くなった。皆満足そうだ。
商人達は別で調理して食べている。護衛部隊とは同じ物を食べないらしい。
「量が足らないと機嫌が悪くなるから気をつけてね。何日かは私も手伝うから頑張ろう」
「はい。ありがとうございます」
エルザは面倒見の良いお姉さんといった感じだ。
夜の警備は交代制。だが、戦力面で劣ると見なされている私達のパーティは免除された。その代わり朝昼晩の食事の準備だ。
どちらが大変かは分からないが、同じ時間に眠れるのはセロ達も助かるだろう。
寝る時はテントを張ってその中で身を寄せ合って眠る。
「あの、さ。俺は外で寝るよ」
「なんで?」
テントを建て終わった時セロが言い出した。芽依はキョトンしながら聞き返している。
「いや、だって……俺だけ男だし……」
「駄目よ。風邪をひいてしまうわ」
「そうは言っても……」
セロは皆に気を遣って言っているのだが、私達は冒険者で今は仕事中なのだ。体調を崩す様な事はさせられない。
「リンさんとミラさんはセロさんと一緒は嫌?」
「い、嫌じゃないよ」
「私も。寧ろセロだけ他所で寝るのは心配です」
リンとミラは少し恥ずかしそうにしているが構わないと言う。
「それなら問題ないわね。セロさん、皆で一緒に寝ます。拒否は出来ません」
「はい……」
セロは大人しく頷いた。
テントと言っても地球のアウトドアで使う様な立派なものではない。所々隙間があったり狭かったりで使いにくい物だ。
それでも青空の下で夜を明かすより暖かいし、急な雨に慌てふためく必要もない。
野営なのだから、防具を外して横になるだけだ。髪を解かして寝る準備をしていた時、セロの隣で誰が寝るかで少しまごつく。
「私はお母さんの隣だったらどこでもいいよ」
芽依ったら甘えん坊なんだから。
いつまで経っても決まらなさそうだったのでセロは一番端、その隣に私、芽依、リン、ミラと並んで寝る事に。
一人一枚ずつ布に包まる。
「真ん中だー!」
芽依は楽しそうだ。
「さて、私達も寝ましょう。朝の食事の支度があるから早く起きないといけないわ」
「そうだね……」
「はい」
「おやすみー」
私の場合、眠らなくても特に支障はない。夜、皆が眠っている間も警戒はしておこう。
「ハルさんは……その、平気なのかい?」
横になって暫くしてセロが聞いてきた。
逆隣の芽依は私の腕に抱きついて既に寝息をたてている。
リンもミラもまだ寝ていない様だ。
確かに寝心地は決して良いものではない。隣のセロとは肩が触れている。
「私は平気よ。セロさんは寝心地が悪いでしょう。ごめんなさいね」
「い、いや。そんな事はないよ……」
気まずそうに口籠るセロ。
大して知りもしない女の子の横は緊張してしまうかしら。
「セロさんは紳士ね。気遣いの出来る人は好きよ」
私の言葉でセロは息を呑み、リンとミラが飛び起きた。
顔を赤くして私を見ている。
あらあら……驚かせてしまったみたい。
「好感が持てるという意味よ?」
「だ、だよねー……」
「そうですよね……」
「あはは……早く寝よう」
リンもミラも分かりやすいわ。でもいずれセロはどちらかを選ばないといけないのね。
ふふ、若いっていいわね。
「んにゃ……?どうしたの?」
私達の声を聞いて芽依が目を覚ます。
「な、何でもないよ。ささ、寝よう」
「起こしちゃってゴメンね。おやすみ」
「おかーさん……?」
片目だけ開けて眠たそうに聞いてくる。
「何でもないのよ。明日も沢山歩くから、もう休みましょう」
「んにゃ……」
再び寝息をたて始める芽依。
それを見てみんなで声を立てずに笑っていた。
2
あなたにおすすめの小説
青い鳥と 日記 〜コウタとディック 幸せを詰め込んで〜
Yokoちー
ファンタジー
もふもふと優しい大人達に温かく見守られて育つコウタの幸せ日記です。コウタの成長を一緒に楽しみませんか?
(長編になります。閑話ですと登場人物が少なくて読みやすいかもしれません)
地球で生まれた小さな魂。あまりの輝きに見合った器(身体)が見つからない。そこで新米女神の星で生を受けることになる。
小さな身体に何でも吸収する大きな器。だが、運命の日を迎え、両親との幸せな日々はたった三年で終わりを告げる。
辺境伯に拾われたコウタ。神鳥ソラと温かな家族を巻き込んで今日もほのぼのマイペース。置かれた場所で精一杯に生きていく。
「小説家になろう」「カクヨム」でも投稿しています。
【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
逢生ありす
ファンタジー
女性向け異世界ファンタジー(逆ハーレム)です。ヤンデレ、ツンデレ、溺愛、嫉妬etc……。乙女ゲームのような恋物語をテーマに偉大な"五大国の王"や"人型聖獣"、"謎の美青年"たちと織り成す極甘長編ストーリー。ラストに待ち受ける物語の真実と彼女が選ぶ道は――?
――すべての女性に捧げる乙女ゲームのような恋物語――
『狂気の王と永遠の愛(接吻)を』
五大国から成る異世界の王と
たった一人の少女の織り成す恋愛ファンタジー
――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。
この物語は悠久の王・キュリオの前に現れた幼い少女が主人公である。
――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され……すべてが大きく変わるだろう。そして……
その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない――
出会うはずのない者たちが出揃うとき……その先に待ち受けるものは?
最後に待つのは幸せか、残酷な運命か――
そして次第に明らかになる彼女の正体とは……?
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる