泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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冒険者

若さ

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初日の夕食は、エルザが手伝ってくれてスムーズに支度が出来た。
彼女は干し肉と干し野菜をお湯で戻して一口サイズに切り分けて煮込んでスープを作った。
温かい食べ物が一品とパンがあれば良いらしく、問題なのは量だそうだ。
作ったスープはかなりの量だったが全て無くなった。皆満足そうだ。

商人達は別で調理して食べている。護衛部隊とは同じ物を食べないらしい。

「量が足らないと機嫌が悪くなるから気をつけてね。何日かは私も手伝うから頑張ろう」
「はい。ありがとうございます」

エルザは面倒見の良いお姉さんといった感じだ。

夜の警備は交代制。だが、戦力面で劣ると見なされている私達のパーティは免除された。その代わり朝昼晩の食事の準備だ。
どちらが大変かは分からないが、同じ時間に眠れるのはセロ達も助かるだろう。

寝る時はテントを張ってその中で身を寄せ合って眠る。

「あの、さ。俺は外で寝るよ」
「なんで?」

テントを建て終わった時セロが言い出した。芽依はキョトンしながら聞き返している。

「いや、だって……俺だけ男だし……」
「駄目よ。風邪をひいてしまうわ」
「そうは言っても……」

セロは皆に気を遣って言っているのだが、私達は冒険者で今は仕事中なのだ。体調を崩す様な事はさせられない。

「リンさんとミラさんはセロさんと一緒は嫌?」
「い、嫌じゃないよ」
「私も。寧ろセロだけ他所で寝るのは心配です」

リンとミラは少し恥ずかしそうにしているが構わないと言う。

「それなら問題ないわね。セロさん、皆で一緒に寝ます。拒否は出来ません」
「はい……」

セロは大人しく頷いた。

テントと言っても地球のアウトドアで使う様な立派なものではない。所々隙間があったり狭かったりで使いにくい物だ。
それでも青空の下で夜を明かすより暖かいし、急な雨に慌てふためく必要もない。

野営なのだから、防具を外して横になるだけだ。髪を解かして寝る準備をしていた時、セロの隣で誰が寝るかで少しまごつく。

「私はお母さんの隣だったらどこでもいいよ」

芽依ったら甘えん坊なんだから。

いつまで経っても決まらなさそうだったのでセロは一番端、その隣に私、芽依、リン、ミラと並んで寝る事に。
一人一枚ずつ布に包まる。

「真ん中だー!」

芽依は楽しそうだ。

「さて、私達も寝ましょう。朝の食事の支度があるから早く起きないといけないわ」
「そうだね……」
「はい」
「おやすみー」

私の場合、眠らなくても特に支障はない。夜、皆が眠っている間も警戒はしておこう。

「ハルさんは……その、平気なのかい?」

横になって暫くしてセロが聞いてきた。
逆隣の芽依は私の腕に抱きついて既に寝息をたてている。
リンもミラもまだ寝ていない様だ。
確かに寝心地は決して良いものではない。隣のセロとは肩が触れている。

「私は平気よ。セロさんは寝心地が悪いでしょう。ごめんなさいね」
「い、いや。そんな事はないよ……」

気まずそうに口籠るセロ。
大して知りもしない女の子の横は緊張してしまうかしら。

「セロさんは紳士ね。気遣いの出来る人は好きよ」

私の言葉でセロは息を呑み、リンとミラが飛び起きた。
顔を赤くして私を見ている。

あらあら……驚かせてしまったみたい。

「好感が持てるという意味よ?」
「だ、だよねー……」
「そうですよね……」
「あはは……早く寝よう」

リンもミラも分かりやすいわ。でもいずれセロはどちらかを選ばないといけないのね。

ふふ、若いっていいわね。

「んにゃ……?どうしたの?」

私達の声を聞いて芽依が目を覚ます。

「な、何でもないよ。ささ、寝よう」
「起こしちゃってゴメンね。おやすみ」
「おかーさん……?」

片目だけ開けて眠たそうに聞いてくる。

「何でもないのよ。明日も沢山歩くから、もう休みましょう」
「んにゃ……」

再び寝息をたて始める芽依。
それを見てみんなで声を立てずに笑っていた。
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