泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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勇者

尖兵の竜

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テントに入ると横たわっている巨人が一人。左足の膝から下と左腕が丸ごと無く、布を巻き付けて止血しているが血が滲んでいた。

カクカミ達は入れないので外で待ってもらう事になった。

『父よ、泉の精霊さまが来てくださったぞ』
『おお……精霊さま、この様なお見苦しい格好で申し訳ありません。私はザムドと申します』

そう言いながら身体を起こそうとしている。

「そのままで構いません。それよりもまずは怪我の治療を行いましょう」

ザムドを寝かせると泉の水を掛けて治療を行う。
身体のサイズが大きいが、水の量を増やすだけで四肢の再生は簡単に行う事ができた。

『これは……精霊さまのお力がこれ程までとは……父祖の言い伝え通りだったか』

ザムドは元に戻った左腕と左足を見ながら呟く。

「あなた達の祖先を救ったアインという者は私の家族です。私達の事を何か言っていましたか?」
『言い伝えでは、西には心優しき泉の精霊さまが守護する大森林があると。我らが住処を追われる様な事があればそこを目指せと教えられました』

言い伝え通りに巨人の領域を出ようとしたのだろうか。それで人間に見つかってしまい領域から出る事もできないと。

「その怪我は竜にやられたのですか?」
『はい。あれは恐ろしく強く、我らの力では全く歯が立ちませんでした』
「その竜は何か言っていましたか?」
『名前はガルムンド。竜の国より来た使いであると言っていました』

ルドガイアから来た竜か。
各地に竜や占領した国の兵を使って行う侵略の一つなのだろう。

「それで、あなた達はどうするの?その竜は降るか戦って死に絶えるかの選択を迫ってきたのでしょう?」
『我らは戦う事を選びましたが、敵わずにここまでにげてきました。既に半数以上がガルムンドに殺されています』

私が来た以上、不当な占領はさせないわ。

「分かりました。ガルムンドは私達が討伐します」
『ありがとうございます』
「一つ聞かせて。竜の国が狙う様な物がこの地にあるのかしら?」
『分かりません。あるのは聖域と言われる場所だけです』

ザムドが言うには聖域と呼ばれる地に何があるかは聞かされていないそうだ。
それが目的でここに来たのなら阻止した方がいいだろう。

「ハルさん俺達も戦うよ」
「セロさん、今回の戦いは人の手には余るものです。カクカミ達を連れて私だけで行ってきます。芽依もお留守番よ」
「うん分かった。気を付けてね」

芽依も今回は素直に言う事を聞いてくれた。

『俺が案内します』
「いいえ、大凡の場所を教えてくれれば結構よ。あとは向こうが見つけてくれるでしょう。それにもうすぐトコヤミが戻って来ると思うわ」

ガンドにそう話していたら風の吹く轟音と共に外で騒ぐ声が聞こえた。

『安心せよ。我らの仲間の竜だ』

カクカミが他の巨人達に告げている。
どうやらトコヤミが戻ってきたみたいね。

「トコヤミ、ご苦労様。フランシス達は無事に届けられた?」

テントから出てやって来たトコヤミに聞く。

『はい。城の庭に置いていました。それから街に行く前に冒険者達に話をすると言ったので森の外にいた冒険者達の所に寄っておりました』

ヨアンと合流してフランシスの救助に向かおうとしていた冒険者達の所に向かい、フランシスが無事である事を説明。
私達を追撃しよつとしていた部隊は撤収したそうだ。

これで彼らと戦わずに済みそうだ。
あのギルドで仕事をする事はもう出来ないかもしれないが。

「お母さん、もしかして殿下は戦わないつもりなのかな?」
「その可能性は高いわね。あとは国王にどう説明するかね」

国と私が敵対する事が不利益だとはんどんしたか、国王がその判断を下して処分される事を恐れたか。
こちらが片付いたら国王には私から話をするのは変わらないが。
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