泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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勇者

空洞探索

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今日の報酬二十七万エルズを八人で精算する。

「一人三万三千七百五十エルズですね」
「僕は無理を言って着いて行かせてもらっただけなのでもらえないです」
「いいえ、一緒に仕事をしたのだから受け取ってもらいます。そうですよねセロさん?」
「そうだよ。遠慮しないで受け取ってくれ」
「はい。それじゃ……」

そう言って分けたお金を受け取るアル。

「折角だしみんなでご飯食べましょうよ。アル君も来るよね?」

リンが提案してくる。確かに食事をするには良い時間だ。

「アルさんは《雷鳴》のみんなとご飯食べなくていいの?」

芽依は不思議そうに聞いている。

「あーすまんアル。俺達さっき食って来ちまったんだ」
「みんなで食べて来てね」

リーダーが笑いながら言い、回復術師の少女も後押ししていた。

「そう言う事みたいなので、ご一緒させていただきます……」

申し訳無さそうに言うアル。

彼らがアルに気を遣っているのは本人も分かっているのだろう。

どこで食べるか話し合った結果、『白い蝙蝠亭』で食事をする事になった。

皆で『白い蝙蝠亭』に行き、ラティーシアに食事の準備をお願いして私達は先に荷物を降ろさせてもらう事にした。

私達が食堂に降りてくるとラティーシアとイシュリアが食事を並べ始めていた。

「急に言ってごめんなさいね」
「いえ、いつお帰りになられても良い様に準備はしてありますので」

食材は魔法で冷凍したりして保存しているそうだ。それに私が近くに帰って来ているのは何となく分かるらしい。

全員で出来立ての食事をいただいて楽しく話しもした。アルは少し遠慮気味だったが、私の隣に座っていたせいで緊張させてしまったかしら。

☆★☆★☆★☆★

次の日、私達は門で集合してエレに乗り北の森へ向かう。
どれくらいの距離を移動するか分からないのでラティーシアに頼んで全員分の食料5日分を用意してもらい芽依の指輪に入れてある。

洞窟に入り、昨日と同様に空洞でギョクリュウを召喚。ギョクリュウが眷属のアンヴァールを召喚して、光球を灯してから全員で空洞を移動する。

暫く進むと昨日ケイヴワームを倒した場所に到着したので、サヅチを呼んで土砂を撤去してもらい探索を再開。

そのまま進む事半日、そろそろ昼食休憩を取ろうかと思い全員で止まって食事の準備をしていた時、《遠隔視野》で遠くからやって来る一団を見つけた。

装甲を付けた大型の馬車を引くのは鎧を装備した馬が六頭。馬車には幌が無く荷台には大量の兵士が乗っていた。それが三台連なっている。人数は八十人程度だろうか。

彼らはライアッドの者ではなさそうだ。

「みんな、かなり遠くだけど兵士を大量に乗せた馬車がこちらに向かって来ています。食事の準備はやめて彼らに対応しましょう」
「兵士?セイランの兵な訳は無いから……ケフダユの?いやあの街に駐屯している兵は居なさそうだった」

セロは食事の準備を止めて闇の向こう側を見ながら言っている。

「装備がライアッドの物では無い感じです。ライアッドの北側にある国は……」
「トマクモの街……ソアニール王国ですよ。ライアッドとは中立の関係だったと思いますけど」

アルが教えてくれた。

「あれだけの兵士を連れての移動は異常です。ここで止めて話を聞きましょう」

全員念の為いつでも武器を抜ける様に構えながら馬車の到着を待つ。

馬車に付けられた明かりが見えて来たのでこちらの光球を左右に振りながら声を掛ける。

「止まってください!」

馬車は少しずつ速度を落としていき私達の手前十メートルの位置で停車した。

「何だ貴様ら」
「私はライアッド国セイラン所属の冒険者、泉の精のハルです。あなた方はライアッドの兵士ではありませんね?ここから先はライアッド国です。許可なく外国の兵士が入る事はできないはずです」

私が名乗ると先頭の御者の隣にいた男が驚きながらもゆっくりと馬車を降りてくる。

さて、彼らはどう出て来るだろうか?
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