泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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竜の国

受付

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初めは絡まれるのかと思っていたが前に立つ大男は意外と気さくな性格だった。

順番待ちの間大会のルールを詳しく教えてくれている様だ。

「それで、一つのブロックに全員で入るか?」
「ううん。みんなバラバラでいいよね?」
「そうだね。いや……二人一組ぐらいの方が本戦出場の確率が……」

芽依が聞くとセロが答えるが、いまいちはっきりしない。

「何言ってるのよ!私達は全員本戦狙いでしょ?同じブロックなんてあり得ないんどから!」

リンがセロを叱りつける。

「わ、分かってるよ!その為に訓練してきたんだもんな」

それを見て大男は笑っていた。

「それならそれで良いが一つアドバイスだ。個人参加の者は予選開始直後に狙われやすい。チーム同士が戦う様に仕向けるか、同じ個人出場者同士で一旦共闘するのが良いだろう。という事だからもしも同じブロックになった時はよろしくな!」

そう言って歯を見せて笑う大男。

「オジサンそれが目的だったの?呆れた……」
「オジサンって、姉ちゃん俺はまだ二十四だぜ?」
「えー?ロイドおじさんより年上だと思ってたのに」

ロイドは三十過ぎているわね。

「ロイドってのが誰なのか知らねえが、俺はゼムロスってんだ。よろしく頼むぜ」
「同じブロックになったら私が勝つんだから本戦は諦めてね?」
「そいつはどうだろうな?ま、最後の二人になるまでは協力しようや」

ゼムロスは芽依の肩をバンバンと叩いて笑っていた。
芽依は不満そうに口を尖らせている。

悪い人ではなさそうね。

話しているうちに列は進んで受付へ。
受付は六つに分かれていて目の前にいたゼムロスは別の所でエントリーをしている。

「被らない様に私がAでいくね。あとは順番にBCDってエントリーして」
「分かった」

打ち合わせをしてからそれぞれ受付に向かう。予定通り全員別々のブロックに入った様だ。

「今年の大会は規模を縮小する予定だったのだけど、参加者が例年よりも多いらしくて結果的に規模が拡大してしまったらしいよ」
「あんな事件があった後だけど、人は集まるのね」

颯太が教えてくれたのだが、テロ事件からそんなに時間は経っていない。前例の無い事件だったそうだが、その後でも人が集まって来るのは何故だろうか。

「母さんが居るからだよ。大きな事件があっても精霊様が居る限り大丈夫だって噂なんだ。それに事件を起こしたアドラス王国を軍と共に倒した事も大きいみたいだね」

この国と関わる事を決めた事が良い方向に向いているのなら嬉しい。

などと話をしていたら受付を終了させて芽依達が戻ってきた。

「おまたせ」
「みんな別々のブロックにしたのね?」
「うん!全員で本戦出場が目標だからね!」

本戦出場は十六人、パーティからの出場者が芽依、エレ、マイ、ライブラ、セロ、リン、ミラの7人だから役半数の出場枠を私達だけで狙おうとしている。

「そんなに上手くいくわけねーだろ」

そう言って来たのは受付を済ませてやって来た青年。芽依の話を聞いて絡んできた様だ。

「やってみなくちゃ分からないよ」
「俺達みたいにパーティで同じブロックに出るチームがどれだけいると思ってるんだ?」
「私達は一人でも充分強いもん」

負けじと反論する芽依。

「それにお前はAブロックだったよな?あそこは駄目だ。出場者はほぼ決まってる」
「そんなの分からないって言ってるじゃない!」
「分かるんだよ。あそこは剣聖と名高いセブレス・レンブランがいるからな」
「……誰それ?」
「知らねえのかよ……この国一の剣の達人だぞ。そんな事も知らねえって事は素人だな?」
「剣の達人!強そう!」

そう言って目を輝かせる芽依。

「だからお前には勝ち残る道がねえんだよ」
「お兄さんありがと!明日が楽しみになったよ!」
「お、おう……」

嫌味を言いに来た青年は逆に感謝されて困惑していた。
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