転生少女、運の良さだけで生き抜きます!

足助右禄

文字の大きさ
126 / 828
リアード王国

解放

「やめんか!騒々しい!」

その大声で全員の動きが止まる。見れば随分と体格の良い男性が立っていた。あの人は族長だろうか?

「若い連中が失礼をしたな。俺は獅子人族レオニアンの族長アサドレアだ。人族の娘達がこの村に何の様だ?」
「私達はリリエンタの解放を知らせに来ました。リアード王国の行いについては決して許される事ではないと思いますけど、今後の為にもまずは理性的に話し合いをしてもらいたいと思います。」
「なんだそんな事か。確かに奴らの事は許す事はできん。だが、そうだとしても我々はリアードに報復に行ったりはせんよ。」

おや…?意外と普通に対応してくれた。

「我々は今後の事を考えて各部族の繁栄の為に子供を増やさねばならんのだ。戦に負けた我々は一番頼りになる戦士達を失い、女達は連れて行かれた。このままでは一族が絶えてしまうからな。」

えぇ……。
何か変な方向にポジティブだよ…。

「連れて行かれた女性達が帰って来るかもしれないじゃない。」
「それはそれだ。お前達、我らの部族の子孫繁栄に協力してもらうぞ。」

…強引過ぎる。こんな所で好きでもない人の子供を産まされるのは絶対嫌だ。
やっぱり制圧しようか。

「申し訳ありません。こちら側の3部族は強い者に従わせる風習があるのです。それは男女であっても同じ事で、女性は無理矢理ものにしてしまおうとするのです。」

そうなんだ…。それにしてはお嫁さんに~とか付き合って~とか物凄く強引という訳じゃなかった気がするけど。

「戦士がやられてへタレの若者ばかり残ってしまったってトコかしらね?」

なるほど。リオさんの言葉に悔しそうにしている一同。

「同じ獣人族ケルヴィムでなくて良いのですか?普通は同種族と結ばれるものではないのですか?」
「居ないし俺達に拘りはねぇ!」

ユキさんの問いかけにすぐに返事が返ってくる。
拘りはなくてもソラちゃんに言い寄るのはどうかと思うよ?

「俺と一騎討ちをしろ。俺が勝ったらお前達はこの村でずっと暮らせ。まずは全員俺の子を産んでもらう。」
「そんな~好きでもない人の子を産むなんてできないわ~。」
「オッサン、キモい。帰って。」
「冗談で言ってるだけだって。それなら俺がやろうか。お嬢さん方をエスコートするのが俺の役目なんでね。」
「いえ、私達全員の未来を賭けるのには力不足です。ここは私がやりましょう。」

ユキさんもウェスターさんに意外と厳しい。まあ、負けたらここで暮らさなくちゃならなくなるんだもんね。

「そもそもなんで私達が一騎討ちなんてやらなくちゃいけないのよ?種の繁栄なんて知ったこっちゃないわ。今すぐ制圧よ。」

リオさんの言う通りだと思う。

「面白そう。私がやる。」

え、ソラちゃん…?

「ちょっと!何考えてるのよ!こんな馬鹿にわざわざ付き合う必要ないのよ!」
「でも、納得させた方が言う事を聞くと思う。だからどっちが上か分からせる。」

ソラちゃんの言いたい事も分かる。でもだからと言ってする必要の無い一騎討ちなんて…。

「よし!そこのチビが相手か!言っておくが手加減はせんぞ!!」
「死んでも恨みっこ無し。私が勝ったら全員言う事を聞く。」
「がははは!言うでは無いか!これを見ても同じことが言えるか!」

アサドレアさんが見る見るうちにライオンの姿に変わっていく。地球のライオンよりも一回り大きい。吼える姿は百獣の王そのものだ。ソラちゃんはハルバードをインベントリにしまって石を2つ取り出した。

「御託はいいから始めよう?」
「この姿を見て臆さぬとは大した子供よ!」

その姿でも喋れるんだね。
アサドレアさんは低い姿勢から一気に加速して真っ直ぐソラちゃんに突っ込んでいく。対するソラちゃんはほぼ真上に石を一つ放り投げた。巨大な獅子がソラちゃんに襲い掛かる。もう片方の石を前に突き出すと、結界が形成されてアサドレアさんの突進を受け止めた。

「ぐぅっ…!小癪な!!こんな結界引き裂いてやる!」

そう言って爪で結界を引っ掻いている。
と、先程上に投げた石が落ちて来て背中に当たる。

次の瞬間アサドレアさんの背中にはソラちゃんが跨っていた。初めに投げたのは転移石だったんだ。

「な、何!?」
「ライオンさん、フカフカ~。」

ソラちゃんが首に腕を回すと力無く倒れ伏すアサドレアさん。一瞬の出来事だった。

「嘘だろ…アサドレアが負けた…?」
「何をした?何が起こった?」

これには獣人族たちも驚いている。

「ちょっと、あの男って族長なんでしょ?呼び捨てでいの?」
「あ、ああ。元の族長が全員死んで、生き残った俺達の中から一番強い奴を族長にしただけなんだ。」

リオさんが聞いたら側にいた半獣人レグスケルヴィムが素直に教えてくれた。

正式な族長じゃなかったんだ…。

「くそっ!諦められるか!こんな美人と可愛い子達を諦めてたまるか!」

ちょ、ちょっと…!まさか暴徒化するの?

「やめんか見苦しい!」

地響きの様な声で制したのは竜の姿に戻ったオル君だった。

「仮とはいえお前達が選んだ族長が負けたのだ。潔くソラ様に従え!それが出来ぬのなら今すぐ我が喰ってやろう!」

全員跪いて伏せている。降参の仕草なのだろうか。みんな同じ格好をしたまま動かない。

「ライオン起きる。」

ソラちゃんが獣化形態のままのアサドレアさんを揺り起こす。

「うっ……俺は…負けたのか…?」
「約束守る。」
「ああ。お前は俺より強い。全てお前に従おう。」

人の姿に戻りソラちゃんに跪いて首を垂れるアサドレアさん。

「うん。じゃあ、説明はミナに任せた。」
「はい。」

ソラちゃんからバトンタッチされて、村に来た主旨をもう一度全員に説明する。
連れて行かれた同胞についても無事だった人達はもうすぐ帰ってくるということも合わせて伝えておいた。

「分かった。俺達は元通りに暮らせるように復興を全力でやっていく。」

素直に言う事を聞いてくれた。力の上下関係がはっきりしたからかな。話は済んだので村を去ろうとすると、まだ言い寄ってくる人が居て帰る時もちょっと大変だった。
感想 1,520

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

異世界でとんかつ屋さんを開く!〜看板娘とネコ型魔獣のほっこりキッチン〜

藤沢春
ファンタジー
十五歳で異世界に転生した『さくら』の中身は、お料理上手な「元おばあちゃん」。 相棒のネコ型魔獣『キャット・シー』のきなこと一緒に、王都の片隅で小さな食堂『とんかつ さくら』をオープンします。 さくらが試行錯誤して作る、どこか懐かしくて優しい料理。 その味と、包み込むような不思議な安心感はじわじわと評判を呼び、気づけば街の人々だけでなく、王族や貴族までもがその一皿を求めて集まるように……。 様々な人と出会い、触れ合う心。 地球で抱いていた「小さな夢」を、異世界で大きな形に変えていく。 大好きなしっぽの相棒と共に、みんなのお腹と心を満たす、異世界ほっこりキッチンライフ!

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

転生したら魔王の乳母だったので、全力で育児をします!

氷桜 零
ファンタジー
日本のブラック企業で過労死した主人公・ミリア。 気がつけば、魔族として異世界転生していた。 魔王城にて、災害級のギャン泣きベビーである生後3ヶ月の魔王ルシエルと遭遇。 保育士経験を活かして抱っこした瞬間、暴走魔力が静まり、全魔族が驚愕。 即座に「魔王の乳母」に任命され、育児を全面的に任されることに!?