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2種族の栄華
導く者
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インベントリで作成していた武器と防具を装備する。
オリハルコンの小剣とブレストアーマー。戦う事にならなければ良いのだけど。
入り口の扉は閉まっていたから開けてみたけど誰一人として気付かなかった。
ステルスってホントスゴい。
建物の中には装飾らしいものはなく、簡素な照明があるだけ。廊下を行き交う人は兵士と研究者っぽい人が多い。
現代と違って如何にも貴族みたいな人は一人も居なかった。
お城の代わりという訳ではなさそう。
とにかくアンリさんのいる所まで直行だ。アンリさんはこの建物の最上階にいるらしい。階段を駆け上がる。
3階が最上階みたいで一番奥の部屋へ進む。両開きの大きな扉を開けて中に入る。中には1人のパンツスーツ姿の女性、この人がアンリさんだ。いる場所から推測するに彼女はこの時代のこの国でそれなりの地位に就いているのだと思う。
ステルスを解除して対話を試みる。
「アンリさんですね。私はミナと言います。」
突然現れた私に驚きもせずに笑顔を向けてきた。
「初めまして。あなたの事はアーリアーデ様から聞いています。よく来てくれました。」
見た目は20歳くらいかな。茶色のストレートロングヘア、見た目は普通の人。武器も持っていない。
口振りからして私な事を味方だと思っているのかな。
「アンリさんはこの時代の文明を存続させるおつもりですか?」
「そうです。ここまで発展した技術を失わせるのは勿体ないではありませんか。今は争いの絶えない状況ですが、彼らとて近いうちに過ちに気付くでしょう。そうすれば培ってきた技術をより良い方向に使えるのです。」
一見アンリさんの言っている事は良い事に聞こえる。でもそれって…
「その為にウルディザスターを倒そうとしているのですか?」
「そうです。圧倒的な力で文明ごと大陸を滅ぼすなど許す事はできません。」
「でもそれはこの世界の自浄作用です。邪竜などと呼ばれていますけど、世界の均衡を保つ為にやっている事なんですよ。」
ふう、と溜息をついてアンリさんが話し始める。
「ならば言ってくれれば良いでは無いですか。限界が来たから滅すね、では乱暴すぎるとは思いませんか?」
「言って止める事ができるんですか?人間と竜人族は今すぐ戦争を止められますか?」
「やってみなければ分からないでしょう。」
「ならやってみてください。言われなくても出来ますよね?もし言われないとできないって言うなら、限界までこの世界を酷使するつもりなんですよね?そんな人達が今の技術をより良い方向に使えるんですか?」
「つまりミナさんは今この大陸に住んでいる全ての者に死ねと言うんですか?」
言い分だけ聞いていると私が悪者みたいだね。未来を知らない人が聞けば間違っているのは私の方だと言うだろう。
でもアンリさんはウルちゃんが暴走して大陸を焦土に変える事を知っている。つまり未来を作り変えようとしているのは自覚しているんだ。
ただ、ウルちゃんが暴走しなくて済んで、より理性的に今の技術を使う事ができると言うなら未来が変わっても良い様な気もする。
「今すぐ戦争がやめられるなら滅びずに済む未来もあると思います。」
あくまで可能性の話。無理だったから私達の現代に行き着いているんだ。
「この時代の人間の技術は、世界が作った自浄作用に頼らなくても生きていく事ができます。」
「生きていく事ができるというのは人間だけの話ですよね?その他の種族の事は入っていませんよね。」
アンリさんはウルちゃんの様なシステムは要らないと言っている。でもそれは人間の都合の良い世界にしたい為だ。それはただの横暴だよ。
「人間がどの種族よりも優れているから当然です。他の種族は私達が管理すればいい。」
「…人間は神様にでもなるつもりですか?」
「そうですね。今の技術があれば人は神にでもなれるでしょう。」
技術で横暴を通して、自分達に都合の悪いものは淘汰して、それが神様だとしたら邪神だよ。この世界は人間だけのものじゃない。
アンリさんは笑みを浮かべながら言う。
「邪竜ウルディザスターが絶対的な強者である世界は間も無く終わります。人間が技術で打ち勝つからです。」
アンリさんの後ろに映像が現れる。ビジョンだろうか。初めに訪れた人間の要塞よりもずっと大きい建物。その中央部には巨大な大砲の様なものが備わっていた。縮尺がイマイチ掴めないけど、大砲のサイズはドラゴンバスターの比ではない。とにかく巨大なものだった。
「見てください。これはライブ映像です。竜人族との争いを終わらせる究極の力です。」
映像は大砲が向いている方へと向けられる。地平線から迫ってきているのは竜人族の大群。千や二千ではない。物凄い数が平原を押し寄せてきていた。
「まさか…」
そのまさかだった。
大砲は眩い光を放って地平線の彼方までを焼き尽くす。光の通った大地は大きく抉られ真っ赤に燃え盛り、周囲も衝撃波で地表部分を吹き飛ばし、何も残っていなかった。
「どうですか?これで戦争は無くなりますよ。」
「なんて事をするんですか!戦争が無くなるって、相手を滅ぼして終わりにするんじゃ意味が全然違います!」
アンリさんは不敵に笑う。
この人、初めから私と話し合う気なんてなかったんだ…。
「残念ですがミナさんとは分かり合えない様です。私達の邪魔をするのならここで死んでもらいます。」
アンリさんは右手に細身の剣、左手に拳銃を召喚した。恐らくインベントリから出したんだろう。
銃をこちらに向けると躊躇いもなく撃ってきた。
ラッキーシュートを敏捷に付与して銃弾を躱す。そのまま低い姿勢でオリハルコンショートソードを抜き放つとアンリさんに詰め寄って薙払いを放つ。
刃がアンリさんに届く前に床から雷撃が迸り私の身体を撃った。床に罠でもしかけてあったのだろう、でも私には雷属性無効のギフトがある。痛みどころか何も感じない。構わず剣を振り抜いた。
アンリさんは右手の剣で攻撃を防ぎ、左手の拳銃をこちらに向けてくる。
すぐに左にステップして射線から逃れる。弾丸が私のすぐ横を掠めていく。
やりにくい。
ステルスを作動させて間合を外す事にした。
オリハルコンの小剣とブレストアーマー。戦う事にならなければ良いのだけど。
入り口の扉は閉まっていたから開けてみたけど誰一人として気付かなかった。
ステルスってホントスゴい。
建物の中には装飾らしいものはなく、簡素な照明があるだけ。廊下を行き交う人は兵士と研究者っぽい人が多い。
現代と違って如何にも貴族みたいな人は一人も居なかった。
お城の代わりという訳ではなさそう。
とにかくアンリさんのいる所まで直行だ。アンリさんはこの建物の最上階にいるらしい。階段を駆け上がる。
3階が最上階みたいで一番奥の部屋へ進む。両開きの大きな扉を開けて中に入る。中には1人のパンツスーツ姿の女性、この人がアンリさんだ。いる場所から推測するに彼女はこの時代のこの国でそれなりの地位に就いているのだと思う。
ステルスを解除して対話を試みる。
「アンリさんですね。私はミナと言います。」
突然現れた私に驚きもせずに笑顔を向けてきた。
「初めまして。あなたの事はアーリアーデ様から聞いています。よく来てくれました。」
見た目は20歳くらいかな。茶色のストレートロングヘア、見た目は普通の人。武器も持っていない。
口振りからして私な事を味方だと思っているのかな。
「アンリさんはこの時代の文明を存続させるおつもりですか?」
「そうです。ここまで発展した技術を失わせるのは勿体ないではありませんか。今は争いの絶えない状況ですが、彼らとて近いうちに過ちに気付くでしょう。そうすれば培ってきた技術をより良い方向に使えるのです。」
一見アンリさんの言っている事は良い事に聞こえる。でもそれって…
「その為にウルディザスターを倒そうとしているのですか?」
「そうです。圧倒的な力で文明ごと大陸を滅ぼすなど許す事はできません。」
「でもそれはこの世界の自浄作用です。邪竜などと呼ばれていますけど、世界の均衡を保つ為にやっている事なんですよ。」
ふう、と溜息をついてアンリさんが話し始める。
「ならば言ってくれれば良いでは無いですか。限界が来たから滅すね、では乱暴すぎるとは思いませんか?」
「言って止める事ができるんですか?人間と竜人族は今すぐ戦争を止められますか?」
「やってみなければ分からないでしょう。」
「ならやってみてください。言われなくても出来ますよね?もし言われないとできないって言うなら、限界までこの世界を酷使するつもりなんですよね?そんな人達が今の技術をより良い方向に使えるんですか?」
「つまりミナさんは今この大陸に住んでいる全ての者に死ねと言うんですか?」
言い分だけ聞いていると私が悪者みたいだね。未来を知らない人が聞けば間違っているのは私の方だと言うだろう。
でもアンリさんはウルちゃんが暴走して大陸を焦土に変える事を知っている。つまり未来を作り変えようとしているのは自覚しているんだ。
ただ、ウルちゃんが暴走しなくて済んで、より理性的に今の技術を使う事ができると言うなら未来が変わっても良い様な気もする。
「今すぐ戦争がやめられるなら滅びずに済む未来もあると思います。」
あくまで可能性の話。無理だったから私達の現代に行き着いているんだ。
「この時代の人間の技術は、世界が作った自浄作用に頼らなくても生きていく事ができます。」
「生きていく事ができるというのは人間だけの話ですよね?その他の種族の事は入っていませんよね。」
アンリさんはウルちゃんの様なシステムは要らないと言っている。でもそれは人間の都合の良い世界にしたい為だ。それはただの横暴だよ。
「人間がどの種族よりも優れているから当然です。他の種族は私達が管理すればいい。」
「…人間は神様にでもなるつもりですか?」
「そうですね。今の技術があれば人は神にでもなれるでしょう。」
技術で横暴を通して、自分達に都合の悪いものは淘汰して、それが神様だとしたら邪神だよ。この世界は人間だけのものじゃない。
アンリさんは笑みを浮かべながら言う。
「邪竜ウルディザスターが絶対的な強者である世界は間も無く終わります。人間が技術で打ち勝つからです。」
アンリさんの後ろに映像が現れる。ビジョンだろうか。初めに訪れた人間の要塞よりもずっと大きい建物。その中央部には巨大な大砲の様なものが備わっていた。縮尺がイマイチ掴めないけど、大砲のサイズはドラゴンバスターの比ではない。とにかく巨大なものだった。
「見てください。これはライブ映像です。竜人族との争いを終わらせる究極の力です。」
映像は大砲が向いている方へと向けられる。地平線から迫ってきているのは竜人族の大群。千や二千ではない。物凄い数が平原を押し寄せてきていた。
「まさか…」
そのまさかだった。
大砲は眩い光を放って地平線の彼方までを焼き尽くす。光の通った大地は大きく抉られ真っ赤に燃え盛り、周囲も衝撃波で地表部分を吹き飛ばし、何も残っていなかった。
「どうですか?これで戦争は無くなりますよ。」
「なんて事をするんですか!戦争が無くなるって、相手を滅ぼして終わりにするんじゃ意味が全然違います!」
アンリさんは不敵に笑う。
この人、初めから私と話し合う気なんてなかったんだ…。
「残念ですがミナさんとは分かり合えない様です。私達の邪魔をするのならここで死んでもらいます。」
アンリさんは右手に細身の剣、左手に拳銃を召喚した。恐らくインベントリから出したんだろう。
銃をこちらに向けると躊躇いもなく撃ってきた。
ラッキーシュートを敏捷に付与して銃弾を躱す。そのまま低い姿勢でオリハルコンショートソードを抜き放つとアンリさんに詰め寄って薙払いを放つ。
刃がアンリさんに届く前に床から雷撃が迸り私の身体を撃った。床に罠でもしかけてあったのだろう、でも私には雷属性無効のギフトがある。痛みどころか何も感じない。構わず剣を振り抜いた。
アンリさんは右手の剣で攻撃を防ぎ、左手の拳銃をこちらに向けてくる。
すぐに左にステップして射線から逃れる。弾丸が私のすぐ横を掠めていく。
やりにくい。
ステルスを作動させて間合を外す事にした。
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