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竜人族の島

ハウト氏

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合流地点にて敵中隊を撃破した私達は次のポイントに移動していた。

この小高い丘で暫く待機らしい。
ここはメルドガルビルの町からかなり離れていて、直接町の様子を見る事はできないけど、《クレアボイアンス》で確認してみた。

町にはすでにいくつかの部隊が到達していて大通りに布陣している味方部隊と交戦中だ。
今の所問題なく持ち堪えているけど、敵部隊の数によってはかなり厳しいんじゃないかな。

この丘で敵の様子を見るのなら、私が索敵や鑑定で敵の位置情報を知らせれば済むんじゃないだろうか?

「大丈夫ですよ。敵の指揮官は優秀ですが単調な様ですから。この程度なら私だけで読み勝てます」

レアさんに提案したらそんな答えが返って来た。

因みに今ここに待機しているのは敵部隊の補給部隊が進出してくるのを待っているのだとか。今大暴れすると兵站線が延び切る前に前線部隊が後退してしまうだろうからだそう。

つまり次は補給部隊を襲撃するのかな。

「さて、そろそろいいでしょう。今から敵勢力圏に縦深攻撃を行います」
「縦深攻撃?」
「つまり敵陣深くに切り込む攻撃を行うという事だよ」

何の事か分からなかったので聞き返したらメルドガルビルさんが教えてくれた。

一気に敵将を討ち取りに行くのかな?

「町の手前まで進出したら西へ転進、横列隊形で機動攻撃に移行します。敵はなるべく倒しますが深追いはしなくていいです。次の攻撃はかなり長くなりますので全員準備をしておいてください」

指示を出したあと各小隊長が呼ばれる。

「次の攻撃では少なからず犠牲者が出てしまいます。互いの連携を意識しつつ脱落者が4名を超えたら攻撃よりも目標地点到達を優先してください」

小隊長達は頷き各隊に戻っていく。

「さあ、これからはかなりの乱戦になります。ミナさんの《ソーティリア》頼りの無茶な作戦です。宜しくお願いします」
「分かりました!」

メルドガルビルさんの号令で敵陣に向かって突撃を開始する。この先は深い森ばかりだ。見通しが悪くかなり近くに来なければ敵を発見できない。

それでも勢い任せに全員が突撃していく。一見好き勝手に戦っている様にも見えるけど、全体で見ると三角形に隊形を維持して突き進んでいる。

私やレアさんは最後尾中央、メルドガルビルさんは最前列にいた。

「メルドガルビルさんの位置って一番危ないんじゃないですか?」
「そう説明したのですけど『ならば尚更そこに着く』と聞いてくれませんでした」
「メルドガルビルさんらしいですね」

森の中に怒号と悲鳴が響き渡る。
凄まじい突破力を発揮して随分と敵陣深くまで突き進んでいた。

「見ろ!ゼダンハウトの町が見えるぞ!」

声のした方に目をやると木々の隙間から港町が見えた。

「縦深攻撃は終了、横列隊形に移行して転進、西へ突撃をします」

レアさんの号令で全員が素早く一列に並ぶ。既に数人の脱落者が出ている様だ。

「ゆくぞ!我らの力を知らしめよ!」

メルドガルビルさんが吠えて全員が西の森へと突撃を開始する。

「ミナさん、背後から敵の追撃があると思います。それは私とミナさんで処理しましょう。少しは被害を抑えられると思います」
「分かりました」

レアさんも被害は少なく抑えたいんだね。私は大賛成だよ。

横列隊形のまま突き進んでいくガルビルの竜人族ドラゴニュート達。
私とレアさんは少し後ろに下がった所から支援を続ける。

「なんだぁ?ニンゲンのガキが2匹いるぞ」
「ガルビルの所のガキだ!ぶち殺せ!!」

早速後ろからやって来たね。

数は10。ドラーク3、バルード5、ヴォアル2の編成だ。

こんな木々の密集している所で大剣やソードランスを持って来ている。まあ、突き攻撃に限定すれば意外と立ち回れるのかもしれないけど。

私の所にはバルードの戦士が4人殺到する。
武器は全員大刀で、武器を使わずに捕まえに来た。それを木を使って巧みに躱していく。

「すばしっこいガキだ!」
「そっちに行ったぞ!」

バルードの戦士達はあまり連携が得意じゃないみたいだ。バラバラに私を捕まえに来ているから隙だらけ。

でも、悪いけどあまり手加減してあげられない。
ガルビルの戦士達から離れすぎると《ソーティリア》の効果が届かなくなってしまうからだ。

アリソンさんの技を使わせてもらおう。

インベントリからもう一本オリハルコンショートソードを取り出して抜き放ち、二刀を構えるとオーバーブーストを掛けた《回転葬舞》を放つ。

クルクルと回転しながら出来るだけ浅く斬り付けていく。

「ぐあぁぁぁっっ!!?」
「なんだ……!?何なんだコイツ!!」

木々も一緒に切り裂いて薙ぎ倒し、倒れていく木を蹴飛ばして他の戦士にぶつける。

バルードの戦士達は腕を失い、脚を失ってその場に倒れていく。

「強いぞ……気を付けろ!」

ドラークの戦士が声を上げる。
もう遅いよ。
私は更に攻撃を躊躇したドラークの戦士1人とヴォアルの戦士1人を斬り捨てた。

レアさんは魔法使いだから私が出来るだけ引き付けないとね。

さて、レアさんの方は…?

「ていっ!」

あまり気合いの入っていない様な掛け声と共に後ろ回し蹴りを繰り出すレアさん。

あれ?格闘術使えるの?

鋭くもなさそうな蹴りだけど、足先に何かを纏わせている。

蹴りを放ち終えた瞬間に凄まじい突風が起きてレアさんの周りの木々を全て薙ぎ倒していた。
近くにいたドラークの戦士2人とヴォアル、バルードの戦士は胴体から真っ二つに切り裂かれて地面に転がっている。

え?何それ…え?

「魔導格闘術です。魔法使いは接近戦に弱いですからね。対応を考えた結果、やっぱり魔法で対応する事にしました」

スカートの裾を直しながら恥ずかしそうに笑うレアさん。

「なので私の事は気にしなくて大丈夫ですよ。さあ、みんなの後を追いましょう!」
「は、はい!」

ガルビルの戦士達は私達の事には構わず前進を続けていた。
正面に現れた敵を次々と倒しながら進んで行く。途中何人かが脱落者しかけるけど回復魔法を掛けて戦列に戻していく。

想定よりも被害が少ないね。良い事だ。

後ろから敵の追ってが迫って来ている。数はおよそ20、さっきの倍だ。

私達の達む方向から雄叫びが聞こえる。挟まれた!?

「大丈夫、あれはドラーク氏の援軍です。私達はこのままドラーク氏の横を通り過ぎて森に隠れます」

タイミングバッチリで増援が来た。

「あとは俺達に任せろ!!」

入れ違いに突撃していくドラークの戦士達。
この戦場はレアさんの手の上だ。
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