気になるE子ちゃん!(E子ちゃん視点)

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気になるE子ちゃん!(E子ちゃん視点)

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あっつい……。頭痛い……。

時刻は23時。
熱がまあ高くてずっと頭がぼーっとしている。

私「はあ……」

熱がでて辛い中でも頭に浮かぶのは、先輩の顔。
私が2年も片想いをしている相手、K先輩。
お兄ちゃんの友達で、普段からよく家に遊びに来てくれる。
その時によく遊んでくれるから、気づいたら好きになってしまっていた。
その先輩がもう3日後には海外へ行ってしまうと、今朝お兄ちゃんから聞いた。
それがあまりにショックで熱が出てしまったんだと私は思う。

私「どんだけ好きなの」

自分がそれほどまでに先輩の事を想っていたなんて、今更後悔が押し寄せてくる。

私「好きって伝えたかったな」

コンコンッ

私「はーい」

兄「まだ起きてんのか?しっかり寝ないと、あいつに最後のお別れ言いに行けなくなるぞ」

私「分かってる~」

兄「……そういえばあいつチョコクッキー?ってやつ食べてみたいってこの前言ってたぞ」

私「……ふ~ん」

兄「もう寝ろよ」

私「はいはい」

そっか、先輩チョコクッキー食べてみたいんだ。
私は携帯でチョコクッキーの作り方を検索する。

うわ……意外と難しい。

自慢ではないけど、私はとんでもなく不器用だ。
フライドポテトを揚げるだけでも何故か、かりんとうが出来上がってしまう。
……そんな私でもできそうなのを探してみよう。


チュンチュン…
気がついたら朝になっていた。

私「寝落ちしちゃった」

私の携帯の画面には、『超簡単!初心者でもぼちぼち上手くできるチョコクッキーの作り方!』と書かれたサイトが開かれている。

バレンタインまであと2日。
私は体温計を脇に挟む。

私「37.1℃……」

うん、なんとか当日までに熱は落ち着きそうだ。
私は自分の部屋を出て、こっそりと台所まで行く。
棚と冷蔵庫を漁ってみると、器具と材料はなんとか揃いそうだった。
うちにお菓子作りする人なんていたっけ?
まあいい。そんな事より、私にはタイムリミットがある。
バレンタインデーまでになんとか食べられるくらいまで、チョコクッキーを練習しなくちゃならない。
お兄ちゃんが昔家庭科の授業で作ったエプロンが棚の奥にあったので、それを付け気合を入れる。

私「頑張るぞ!!」


それから日は立ち、ついにバレンタイン当日。

私「なんとか、間に合った~」

家族の目を盗んでコソコソと作っていたから、練習はそこまでできなかった。
でも、今私の目の前には確かにちゃんとしたチョコクッキーが出来上がっている。
私はひとつ食べてみる。

私「ん!おいひい!!」

私でもこんなに美味しくできるだなんて。SNSって最強だ。

兄「意外と上手くできてんじゃん」

私「へ!?いつのまに?!」

台所の入り口からお兄ちゃんが覗いていた。

兄「そんな甘い香り漂わせてたら、誰でも気づくって」

私「……熱は下がったよ。学校行っても大丈夫だよね?」

兄「良いんじゃねえの?とにかく、何も気にせずあいつに全部ぶつけてこい」

私「お兄ちゃん、分かってたの?」

兄「んー?何も知らねーよ」

ふふ、お兄ちゃんがこの人で良かった。

兄「てか、お前今の時間分かってんのか?」

私「時間?」

私は携帯を開く。11時10分。

やばい!!!!!!

私「行ってくる!!!」

兄「おーおー、チョコだけ持って鞄忘れんなよ~」

私は部屋に一度戻り鞄を持って急いで階段を降りる。

兄「この紙袋に入ってんのがあいつのか?」

私「そう!その横に置いてある箱はお兄ちゃんの!」

私は先輩へのチョコクッキーが入っている袋を取り、箱を兄の手に無理やり渡す。

兄「……おお、あんがと」

私「あれ?ていうか、お兄ちゃん学校は?」

兄「俺、熱でた」

私「はい?!」

テヘッと頭に手をやるお兄ちゃん。
それでマスクを付けているのか。

私「私のが移ったんだよね?お兄ちゃんも先輩と会うの最後なのに、ごめんね……」

兄「別に良いよ。どうせあいつ頻繁に連絡してくるんだろうし」

ほら、行った行ったと手を振るお兄ちゃん。

私「ちゃんと寝るんだよ!行ってきます!!!」


まずいまずい、大遅刻だ!
両親はどちらも夜勤やら早出やらで家にいない。
お兄ちゃんは多分、あえて言わずにクッキーが焼けるまで待ってくれていたんだろう。

今日は絶対、先輩に伝えるんだ。
私がどれくらい先輩の事想っているのか、分からせてやる!
そして、最後にはこのチョコクッキーを美味しいって食べてる先輩の笑顔を拝むんだ。

学校の門をくぐる。
そこで私は走っていた足を止め、早足で下駄箱へ向かう。
なんで走るのをやめたかって?
実は私、すんっっっごい人見知りで気にしいなのだ。
このまま走って行くと、窓から色んな人の注目を浴びてしまってとても恥ずかしい思いをしてしまう。
遅刻に関しては、熱が出ていたからそこまで悪いイメージは持たれないはず。

バッ

私「?」

急に視界が暗くなった。
顔を覆っているそれに触れてみると、ダンボールだった。
なんでダンボール?
多分、空から降ってきたよね?


は!!!!
これ、被ったまま教室まで行けば少なくとも他クラスの人たちには私だってバレないのでは……?
よく分かんないけど、ラッキーアイテムとしてこのまま被って行こう。

ガララッ

何とか教室まで無事に着けた。
なんとなく視線を感じる気がするけど、私は気にせず席に座る。
ダンボールを外すと、クラスの人達からの視線に気づいてしまい少し憂鬱になる。
やっぱり遅刻したのがまずかったかな?

S太くん「あ、あの!そのダンボール…」

私「!!」

珍しくクラスの男子が声をかけてきた。
私は声をかけてきたS太くんを見上げる。

僕「ごめんなさいーーー!!!!!」

……?
何故か謝られたし、何故かダンボールを回収されてしまった。

あ、まずい。また眉間にシワが。
いつも不安になったり、焦ったりするとつい眉間にシワを寄せてしまう。
この癖どうにかしろってお兄ちゃんに注意されてるんだけど、どうにもできなくて困っている。

キーンコーンカーン……

はあ、バレンタインだというのにもう半日が過ぎてしまった。
先輩にいつ告白しよう……。
授業中にも関わらず、私は先輩の事ばかり考えてしまう。
放課後、先輩の教室に行ってみよう。
そして伝えるんだ。私の気持ちを。
なんて答えてくれるのかな……。
優しい先輩の事だから、私の事好きじゃなくても我慢して付き合ってくれそうだな。

ん?

窓から見える校庭で、生徒達がサッカーをしていた。
あれは、3年生?
あ、今ゴール決めたの先輩だ。
かっこいいなあ。
私あの人に告白するのか。でも、不思議と緊張はしないな。

僕「はい!?」

ビクッ

先生「そんなに俺の授業面白くないか?」

びっくりした……。
S太くんが先生に注意されている。
私も危ないところだった、ちゃんと集中しなくちゃ。


そして放課後。
誰よりも早く教室を出て、3年生のクラスへと向かう。
階段を一段上がるたびに跳ねる鼓動が心地良くさえ感じる。
ドアから覗いて先輩を探す。
……どこにもいない。
もう帰っちゃったのかな。

「2年生?どうしたの?うちのクラスに用?」

3年生の女子が声をかけてきた。

私「あ、えっと、あの、K先輩を探してて……」

こういう時、スマートに話せないのが辛い。

「Kくんなら職員室に行ったよ~」

私「あ、ありがとうございます!」

「その袋チョコが入ってるんでしょ?頑張ってね」

立ち去ろうとする私に優しく笑顔を向けてくれた。
私は軽く会釈をし、早足で職員室へと向かう。

ガラガラッ

私「失礼します」

職員室に入って先輩を探すけど、どこにも姿が見当たらない。
私は通りすがりの先生の腕を掴む。

私「あの!K先輩ってもう帰られましたか?」

「ああ、さっき挨拶終わらせて校長室に行ったよ」

私「ありがとうございます!失礼します!」

職員室を出て、廊下の奥へ進む。
『校長室』
ここに先輩がいる。
思わず紙袋をぎゅっと握ってしまう。

ガチャッ

ドアを開けて先輩が出てきた。
私を見て驚いた顔をしている。

先輩「失礼します」

先輩が校長室のドアを閉める。

先輩「どうした?俺に用か?」

私「最後に挨拶をしたくて……」

その言葉を聞いて先輩は一旦教室に戻ろうと歩き出す。
その後ろを私は黙ってついて行く。
先輩だ。先輩の後ろ姿。
もう2度と見る事ができないかもしれない。
優しい瞳、暖かい声、大きな背中。
まだ答えを聞いてもいないのに、会えなくなる辛さで涙が出そうになる。
最後くらい笑顔でいたいから、我慢しなくちゃ。

先輩「どうぞ」

先輩が3年生の教室のドアを開けて先にどうぞとしてくれる。

私「……失礼します」

先輩「わざわざ挨拶に来てくれてありがとうな」

向かい合う2人の間には少しだけ距離がある。

私「いえ、それは良いんです。ただ、転校って急過ぎませんか?」

先輩は少し困った表情になる。

先輩「仕方ないさ。親父がどうしても海外に着いて来いって言って聞かないんだから」

確か先輩のお父さんは通訳の仕事をしていたはずだ。

私「……私、兄から3日前に聞いてショック過ぎて熱でたんですよ?」

先輩「悪い悪い。言わなくても良いと思っていたから。てか、俺の事好き過ぎでしょ」

ハハッと先輩は笑う。
なんで笑えるの?
これで最後になるのに。

私「言わなくて言い訳ないじゃないですか!好きですよ。先輩の言うように、好き過ぎてるんです!」

思わず感情が溢れてしまった。
こんな告白するつもりなかったのに。

先輩「……そうだったのか。すまんな、気づいてやれなくて」

先輩は何故か少し寂しそうな顔をしている。

私「別に気づいてくれなかったのを怒ってる訳じゃないです。ただ、気持ちを知って欲しくて」

先輩「うん、ありがとう。でもごめんな、それは受け取れない」

優しい先輩からの意外な返事に私は少し驚く。

私「私の事好きじゃないから?」

先輩「好きだよ。でも、それはあくまで妹に対する気持ちと同じで……。それに、これから海外に行くのに中途半端に付き合う事はしてあげられない」

私「そんな……」

先輩「せっかくの手作りだろうが、すまんな」

私「……ずるいです。先輩はいつもいつもそうやって優しくてずる過ぎます」

先輩「大丈夫か?」

私「別に泣いたりしませんよ。……海外に行っても寂しがりな兄の為に連絡くらいして下さいね?」

先輩「ああ、E子ちゃんにもその時海外の話を沢山してあげるよ」

ほんと優しい人。
それが一番辛いんだけどな。

私「じゃあ、私もう帰ります。さようなら」

ガララッ

私は走って学校を出る。
門を出てすぐ涙が溢れてきた。
我慢していた分、全部。
思わずそこで座り込んでしまう。

先輩、私本当はもっと人見知り酷かったんですよ?
店員にも、先生にも声がかけられなくて、震えて泣いてしまうくらい酷かったんです。
でも、そんな時貴方が家に遊びに来るようになって。
人見知りの激しかった私は貴方の事を避けてましたよね?
それでも、気にせずあの暖かい声で私に話しかけ続けてくれた。
そのおかげで私はここまで話せるようになったんです。
そんな事、知らないでしょう。
きっと、それを伝えたらさっきの告白も少しくらい悩んでくれたんだろうけど、それは絶対にしたくなかった。
過去の私じゃなくて、今の私を選んで好きになって欲しかった。
ポロポロと涙が流れ続ける。
このまま脱水で倒れてしまうんじゃないかってくらい溢れてくる。

「お菓子~、お菓子を持っていないかね?そこのお嬢さん?」

突然の声に私は驚いて顔を上げる。
あのダンボールを被った人がそこには立っていた。

私「S太くん?」

S太くん「S太?はて?僕はバレンタインデーに現れし妖怪。チョコメグミンだ!」

そう言って変なポーズをとるS太くん。

私「ふっ、メグミンってなによ。ちょっとだけ可愛いじゃない」

思わず笑ってしまう。

僕「で?その手に握られているお菓子は行く当てがあるのでしょうか?」

そう言って両手を前に出すS太くん。
仕方ないな。

私「どこにもありませんよ!」

先輩を想って作ったチョコクッキーだけれど、もう私には必要ない。
それなら必要としてくれてる人に食べて貰える方が、クッキーも嬉しいだろうし私も助かる。

S太くん「行く当てがないのに、随分と凝っておりますね」

私「何も言わないで食べて」

S太くんがクッキーを口に入れる。

S太くん「ん!美味しい!E子ちゃんこういうの得意なの?」

私の気持ちが届いていたなら、きっと今目の前にいるのは先輩だったんだろう。
そして、こんな風に美味しいって言って貰えたんだろう。
止まっていた涙がまたポロポロと出てくる。
ああ、振られたのに、転校しちゃうのに、もう先輩に会いたくなっている。
こんなんでこれから生きていけるのかな。
目の前にクラスの子がいるにも関わらず、私は泣き続ける。

S太くん「ね、僕と友達になってくれない?」

私「へ?」

思わず目を擦っていた手が止まる。

S太くん「実は前からE子ちゃんの事が気になっててさ。あ!もちろん、人としてだよ?」

泣いてる私の為についた嘘だろうか。
S太くんって優しいんだな。
涙を2回も止めてくれた。

私「……良いよ」

S太くん「ほんと!?やった!よろしくね!」

彼は大袈裟に、私の手を無理やり取って握手をする。

S太くん「あ、来年はチョコプリンが良いな」

私「気早過ぎない?」

S太くん「1番に予約とっておかないとね!」

ふふ、ほんとS太くんって面白いな。
チョコプリンは難易度が高そうだなあ。

私「じゃあ、私今年のホワイトデーは丸柴ちゃんのぬいぐるみで、来年は丸柴ちゃんの食器セットで!」

頑張って作ったんだから、それぐらいして貰わなきゃね。

S太くん「丸柴ちゃんって誰!???」

どうやら丸柴ちゃんはマイナーなキャラだったみたいだ。人と話すって意外と楽しいかも。
憧れの先輩に振られたけれど、人生で初めての友達ができた。

バレンタイン、来年はもっと楽しませてね?
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