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12.少年は悩み、試す。
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家路につくまで僕は考えた。僕は確かに鷹野が好きだ。それは鷹野“だから”好きなのか、もしくは、僕を独りにさせることのない、自分の存在意義を証明してくれるから、(もしそれは鷹野じゃなかったとしても)好きなのか。はっきりした答えが出せなかった。思案した末に、試してみようと思った。
次の日の朝、鷹野は学校に来た。だが僕とは話さず、颯爽と他のグループの方へ行ってしまった。やはり僕を試しているようであった。
「ねえ、美島君」
そこには杏がいた。
「僕…?僕に何か用?」
「この前の夏祭りではありがとう。鷹野君とは…まだ話してないようね。良かったらお昼一緒にしない?私達仲良くなれると思うの」
さっぱりとした調子で杏が言う。これはいい。鷹野への気持ちを推し量るまたとないチャンスだ。僕はその誘いを了解した。彼女は嬉しそうに微笑んでくれた。
昼休みを告げるチャイムの後、僕は彼女の誘いで中庭へ向かった。
「ねえ見て、赤蜻蛉が飛んでる。もうそんな季節なのね」
そう言いながら蜻蛉を見つめる彼女もまた美しかった。日に照らされて、彼女の肌の白さと、黒髪のコントラストが一層際立つ。
「なあに、そんなに見つめて、何かついてる?」
「いや…ただ綺麗だなと思って」
「あら、嫌。美島君って案外情熱的なのね。でもそんなところも好きよ」
ただ綺麗なものを綺麗といっただけだ、何がおかしいのだろう。…だけど鷹野に本当のことを言うのは、何故あれほどまでこそばゆいのだろう。杏に対しては何の躊躇もなく言えるのに。
「美島君のその卵焼き…美味しそうね。もしかして、自分で作ってるの?」
そうさ、これは鷹野の為の卵焼きだから。と口をついて出そうになったのをぐっと堪え、僕は頷いた。
「料理ができるなんて素敵ね」
と言われても上手く喜べず、ただ謙遜するだけだった。
次の日の朝、鷹野は学校に来た。だが僕とは話さず、颯爽と他のグループの方へ行ってしまった。やはり僕を試しているようであった。
「ねえ、美島君」
そこには杏がいた。
「僕…?僕に何か用?」
「この前の夏祭りではありがとう。鷹野君とは…まだ話してないようね。良かったらお昼一緒にしない?私達仲良くなれると思うの」
さっぱりとした調子で杏が言う。これはいい。鷹野への気持ちを推し量るまたとないチャンスだ。僕はその誘いを了解した。彼女は嬉しそうに微笑んでくれた。
昼休みを告げるチャイムの後、僕は彼女の誘いで中庭へ向かった。
「ねえ見て、赤蜻蛉が飛んでる。もうそんな季節なのね」
そう言いながら蜻蛉を見つめる彼女もまた美しかった。日に照らされて、彼女の肌の白さと、黒髪のコントラストが一層際立つ。
「なあに、そんなに見つめて、何かついてる?」
「いや…ただ綺麗だなと思って」
「あら、嫌。美島君って案外情熱的なのね。でもそんなところも好きよ」
ただ綺麗なものを綺麗といっただけだ、何がおかしいのだろう。…だけど鷹野に本当のことを言うのは、何故あれほどまでこそばゆいのだろう。杏に対しては何の躊躇もなく言えるのに。
「美島君のその卵焼き…美味しそうね。もしかして、自分で作ってるの?」
そうさ、これは鷹野の為の卵焼きだから。と口をついて出そうになったのをぐっと堪え、僕は頷いた。
「料理ができるなんて素敵ね」
と言われても上手く喜べず、ただ謙遜するだけだった。
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