ボーイミーツメイト

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序曲 -平凡な-

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太陽は今日も当たり前に東から登り、そのあまりにも眩い光で僕らを叩き起こす。
いつも変わらない和食の朝ごはん。お椀の米と同じ色の糊の効いたシャツ。きっかり36度を示す体温計。
今日もフッ素入りの歯磨き粉はミント臭いし、無香料の筈のワックスからは薄らと花の香りがする。
「それじゃあ、いってきます」
そんなゼンマイ仕掛けの、日々の繰り返し。



「あ、屋島君、おはよう!」
「おはよう」
小さな身体がぴょん、と跳ねた。副会長の福田絹だ。
「昨日お願いした資料、来週の会議に間に合いそう?」
俺はA4の分厚いリングファイルを鞄から取りだした。彼女の手に渡るといっそう大きく見える。
「はい、これ。一応全部目通しておいてくれるかな。夜中にやったから誤字がありそうで」
そう言って笑いつつ、手を合わせる。彼女は丸い目をさらに丸くして、
「うそ、一日でまとめるなんて...!うわあ、それに凄く見やすくなってる。本当にありがとう。ごめんね、私副会長なのに、いつも任せきりで」
そう言ってコロコロと表情を変えた後、申し訳なさそうにファイルを撫でる。
「全然。俺だっていつも福田さんのアイデアに助けられてるから」
俺は感じの良い三日月型に口を結んだ。
「そんなこと...」
福田さん、という響きに彼女は一瞬表情を曇らせる。けれどすぐに笑顔になって、
「あっ、いけない、私日直だからもう行かないと!それじゃあ、放課後までに資料確認しておくね」
と言ってぱたぱたと教室へ駆けていった。小柄な彼女を皆は小動物のようだと言うけれど、俺は柴犬に似ていると思う。
「ああ、じゃあまた」
彼女が無理をしているのは分かる。首下で切り揃えられたあの髪も、少し前までは高く括られて、元気に揺れていたのにな、なんて考える。申し訳なさを感じているのは、嘘じゃない。



パソコンに資料を打ちこんでいると、一年生が俺の肩を叩いた。何か言っているけれど、声が小さい。放課後の生徒会室は騒がしくて、俺は聞き取れずに耳を近づけた。彼女は作業中の画用紙を広げる。
「あの、この掲示物はマスキングテープを使った方が綺麗に仕上がるかなって思うんですが」
「あぁ、じゃあ俺美術部から借りてくるよ」
「え?いえ、私が行きます。美術室、どこでしたっけ」
「ううん大丈夫」
パソコンを閉じて、俺は早足で美術室へ向かった。
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