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三ヶ月
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花火のあと、ユウとワタシはラブホへ泊まった。ベッドの上で、
「美人になれよ、美人に」ユウは言ったし。
「ふぅ~ん」ワタシがこたえたコトバ。
ユウっていつも強調するコトバを二回言う。
「美人になれよ、美人に」、「ハクチョウになれるさ、ハクチョウに」
その時は、
「バックになれよ、バックに」とユウは言ったし。
ワタシはお尻を高く突き出す。好きな男に犯されるって最高の至福の瞬間。
いつもは想像でワクワク感、今は被虐的な快感を味わう。ユウ流に言えば、
「いつまでもこうしていたいよ、いつまでも」
セックスのあとユウは、
「美人の条件は」、「身長から体重をマイナスして一〇〇から一一五の間やったら美人や」、「一七三から六五をひいて」、「えっーー と、俺も美人やんか」
ユウは自分でいって自分でかぶせるし。
「俺たち何年付き合ったろうか」ユウは歌のフレーズみたいに言ったし。
「一年半やし」
「だから、三ヶ月間、空白の時間をもとう」、「だから、その間にアイはハクチョウになれよ、ハクチョウに。ファニィなアヒルでもハクチョウになれる」ユウは立て続けに言ったし。
「だから、だから? 意味不明」ワタシはご機嫌斜めやし。
三ヶ月って、百日紅が咲いて散る期間、相続の熟慮期間、四半期ワンクール、妊娠三ヶ月って悪阻がピークやし、乳房だって熟れる前の無花果みたいに張ってくるし。梅田花月、難波花月に、三ヶ月。京都花月もあるし。笑ってられないし。
「人の細胞って三ヶ月で生まれ変わる」、「俺も変わる、男を磨く」ユウはそんなことも言ったし。
氏神神社の蝉は激しく鳴いていくし。暑さ一層やし。まるで真夏の貢ぎ物みたい。蝉の心が夏を支えていくし。ワタシは蝉に関する言葉について手探りで思い浮かぶまま羅列してみた。蝉、蝉しぐれ、蝉ドン、セミ、セミナー、セミヌード、セミダブル、セミロング。そうしたもののーー なんか哀しいよ。真夏の切なさが沸き立っていく。ユウに三ヶ月も会えないなんて。
蟻んこにとっては三ヶ月って? 一生もの? いやいや三生もの!
ワタシは全身に蝉しぐれを浴びるし。ユウの愛撫みたいに。もっと、もっとその鳴き声でワタシを励まして。ワタシを癒して。なおも、ユウの愛撫みたいに、蝉ドンのなか、もう抜け切れないし。なのにそんなワタシを放置して、ユウは三ヶ月会わないでおこうって?
なんの実験? なんの下り? テーマはなんなん?
蟻んこたちがいつの間にか一匹の蝉の亡骸へ細かい砂を運んで蝉の墓を作り始めた。蟻んこは自分と同じ背丈ほど、同じ体重ほどの砂を運ぶし。力持ちやね。気の遠くなるような共同作業、社会的に生きるってこういうことなん。アヒルからハクチョウに変わるってこんな地道な作業なん。
神社の横の三角公園に少年ケニアのジャングルジムやらギリシャ彫刻のシーソーやらドミニカ人のブランコやら森末の鉄棒やらがある。遊具の名付け親はユウ。老婆が草をむしっている。
「おはよう」
「おはようございます」
老婆の挨拶にワタシはハクチョウになるための儀式みたいな声で丁寧に答えたし。
ワタシはブランコに腰かける。足元を蝉が羽をバタつかせているし。もう飛べへんのやワ。蝉にとって地上は楽園どころか、もしかして彼岸? じゃ、地中は此岸やし。
ユウに蝉ドンされたワタシ、それでもハクチョウになれ! って、飛べ! って。
「俺は飛ぶ、アイも飛べ」
ハクチョウは渡り鳥やし、アヒルは数メートルしか飛べないし、宿命やし。
≺老婆先生、アヒルはハクチョウになれるの? >
≺生あるででのの意思を超えたところ、そーだそーだクリームソーダ、天の意志が働けばアヒルだってもあさってもないハクチョウになれる。アンドロ・アンドロの宿命だっつー の! >
老婆先生は『阿比留(アヒル)』のなかで答えたし。
ユウ、知ってた? コンビニの出会い、ワタシはハナからユウ目当てで通っていたし。店長に気のあるような素振りで本当はユウよ、そう、あなた、あなた、あなたをユウ、ユウ、ユウワク。だからユウがワタシに粉かけるように仕掛けた。アイはユウが欲しかったし、アイはユウを必要としていたし。アイ、ウオント、ユウ。アイ、ニード、ユウ。そうやん。
新しい傘を買った時、わざと500円玉を2枚渡したんよ。チャリン、チャリンとユウの鼓動が鳴り響くのを確かめたかったんよ。一回目のチャリンはユウがアイマジックの虜になった音、そのあとのチャリンはユウの本当の鼓動。その音はワタシの耳に心地良く響いたし。あとは決まった時間にユウの前に姿を現わすだけ。
バレンタインの日は店長が来ないってーー 知っていたよ。
「明日店長は?」
「休み」
「何人? チョコ持って来るかな?」
[十人は来る」
「ワァ、大変や」
バイト同志でコソコソ話しているの聞いたし。
ワタシはユウに掠われたかったんよ。
「あの、これ、てんちょ」といいかけた時、ユウ、よくぞ掻っ攫ってくれたし。筋書きは、
「あの、これ、店長にーー」
「店長は休みなんです」
「じゃ、あなたに」
「あの、これ、てんちょ」、すかさず「ありがとう」ってさすが脚本家のユウやし。プレミア付きで好きになっちゃった。
しばらくして真っ黒に日焼けした子供たちがやって来た。首からラジオ体操のカードぶら下げてやって来たし。子供たちが飛び回っていくし。
「アイよ、ホップ、ステップ、ジャンプだよ」ユウは言ったし。
「俺はアヒルが好きだ、でもそれ以上にハクチョウが好きだ」
また、ユウの脚本『阿比留(アヒル)』のなかのコトバが静電気をおこしたようにワタシに纏わり付いてくる。ビビビッ、ビビビッやし。
「三ヶ月後にこの公園で会おうーー 」って? なんか涙が出て来ちゃったよ。
「美人になれよ、美人に」ユウは言ったし。
「ふぅ~ん」ワタシがこたえたコトバ。
ユウっていつも強調するコトバを二回言う。
「美人になれよ、美人に」、「ハクチョウになれるさ、ハクチョウに」
その時は、
「バックになれよ、バックに」とユウは言ったし。
ワタシはお尻を高く突き出す。好きな男に犯されるって最高の至福の瞬間。
いつもは想像でワクワク感、今は被虐的な快感を味わう。ユウ流に言えば、
「いつまでもこうしていたいよ、いつまでも」
セックスのあとユウは、
「美人の条件は」、「身長から体重をマイナスして一〇〇から一一五の間やったら美人や」、「一七三から六五をひいて」、「えっーー と、俺も美人やんか」
ユウは自分でいって自分でかぶせるし。
「俺たち何年付き合ったろうか」ユウは歌のフレーズみたいに言ったし。
「一年半やし」
「だから、三ヶ月間、空白の時間をもとう」、「だから、その間にアイはハクチョウになれよ、ハクチョウに。ファニィなアヒルでもハクチョウになれる」ユウは立て続けに言ったし。
「だから、だから? 意味不明」ワタシはご機嫌斜めやし。
三ヶ月って、百日紅が咲いて散る期間、相続の熟慮期間、四半期ワンクール、妊娠三ヶ月って悪阻がピークやし、乳房だって熟れる前の無花果みたいに張ってくるし。梅田花月、難波花月に、三ヶ月。京都花月もあるし。笑ってられないし。
「人の細胞って三ヶ月で生まれ変わる」、「俺も変わる、男を磨く」ユウはそんなことも言ったし。
氏神神社の蝉は激しく鳴いていくし。暑さ一層やし。まるで真夏の貢ぎ物みたい。蝉の心が夏を支えていくし。ワタシは蝉に関する言葉について手探りで思い浮かぶまま羅列してみた。蝉、蝉しぐれ、蝉ドン、セミ、セミナー、セミヌード、セミダブル、セミロング。そうしたもののーー なんか哀しいよ。真夏の切なさが沸き立っていく。ユウに三ヶ月も会えないなんて。
蟻んこにとっては三ヶ月って? 一生もの? いやいや三生もの!
ワタシは全身に蝉しぐれを浴びるし。ユウの愛撫みたいに。もっと、もっとその鳴き声でワタシを励まして。ワタシを癒して。なおも、ユウの愛撫みたいに、蝉ドンのなか、もう抜け切れないし。なのにそんなワタシを放置して、ユウは三ヶ月会わないでおこうって?
なんの実験? なんの下り? テーマはなんなん?
蟻んこたちがいつの間にか一匹の蝉の亡骸へ細かい砂を運んで蝉の墓を作り始めた。蟻んこは自分と同じ背丈ほど、同じ体重ほどの砂を運ぶし。力持ちやね。気の遠くなるような共同作業、社会的に生きるってこういうことなん。アヒルからハクチョウに変わるってこんな地道な作業なん。
神社の横の三角公園に少年ケニアのジャングルジムやらギリシャ彫刻のシーソーやらドミニカ人のブランコやら森末の鉄棒やらがある。遊具の名付け親はユウ。老婆が草をむしっている。
「おはよう」
「おはようございます」
老婆の挨拶にワタシはハクチョウになるための儀式みたいな声で丁寧に答えたし。
ワタシはブランコに腰かける。足元を蝉が羽をバタつかせているし。もう飛べへんのやワ。蝉にとって地上は楽園どころか、もしかして彼岸? じゃ、地中は此岸やし。
ユウに蝉ドンされたワタシ、それでもハクチョウになれ! って、飛べ! って。
「俺は飛ぶ、アイも飛べ」
ハクチョウは渡り鳥やし、アヒルは数メートルしか飛べないし、宿命やし。
≺老婆先生、アヒルはハクチョウになれるの? >
≺生あるででのの意思を超えたところ、そーだそーだクリームソーダ、天の意志が働けばアヒルだってもあさってもないハクチョウになれる。アンドロ・アンドロの宿命だっつー の! >
老婆先生は『阿比留(アヒル)』のなかで答えたし。
ユウ、知ってた? コンビニの出会い、ワタシはハナからユウ目当てで通っていたし。店長に気のあるような素振りで本当はユウよ、そう、あなた、あなた、あなたをユウ、ユウ、ユウワク。だからユウがワタシに粉かけるように仕掛けた。アイはユウが欲しかったし、アイはユウを必要としていたし。アイ、ウオント、ユウ。アイ、ニード、ユウ。そうやん。
新しい傘を買った時、わざと500円玉を2枚渡したんよ。チャリン、チャリンとユウの鼓動が鳴り響くのを確かめたかったんよ。一回目のチャリンはユウがアイマジックの虜になった音、そのあとのチャリンはユウの本当の鼓動。その音はワタシの耳に心地良く響いたし。あとは決まった時間にユウの前に姿を現わすだけ。
バレンタインの日は店長が来ないってーー 知っていたよ。
「明日店長は?」
「休み」
「何人? チョコ持って来るかな?」
[十人は来る」
「ワァ、大変や」
バイト同志でコソコソ話しているの聞いたし。
ワタシはユウに掠われたかったんよ。
「あの、これ、てんちょ」といいかけた時、ユウ、よくぞ掻っ攫ってくれたし。筋書きは、
「あの、これ、店長にーー」
「店長は休みなんです」
「じゃ、あなたに」
「あの、これ、てんちょ」、すかさず「ありがとう」ってさすが脚本家のユウやし。プレミア付きで好きになっちゃった。
しばらくして真っ黒に日焼けした子供たちがやって来た。首からラジオ体操のカードぶら下げてやって来たし。子供たちが飛び回っていくし。
「アイよ、ホップ、ステップ、ジャンプだよ」ユウは言ったし。
「俺はアヒルが好きだ、でもそれ以上にハクチョウが好きだ」
また、ユウの脚本『阿比留(アヒル)』のなかのコトバが静電気をおこしたようにワタシに纏わり付いてくる。ビビビッ、ビビビッやし。
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