アヒル

司悠

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花火

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 蟻さんが山を登って行く。せっせ、せっせと登っていくし。人間にとったらお相撲さんのお尻ほどの小山。蟻さんにとったら富士山ほどの大きさやし。修行僧みたいに無口、蟻さんというより蟻んこかな? 
なんかの縮図? 蟻んこの生き様って労働かな? 修業かな? 蟻を見て思う。
人生も労働、人生も修業。
氏神神社の蝉の鳴き声を浴びながら、せっせ、せっせとーー 蟻んこは日本人に似て行列民族やし。
 せっせ、せっせー って、サマーセックスのイメージ。ワタシの身体のうえでユウはせっせ、せっせと汗だく。ワタシは不思議ワールド、ユウの蟻の門渡りを指で辿ったり、舌で舐めつくしたり。ユウはワタシの蝉の穴んなか、セミって死ぬために地上に出てくる。
「蝉は地中で七年間も生きているのに地上に出て一週間で死ぬ」ユウが言ってたし。
蝉の一生ってなんなの。蝉のさだめ! ってなんなの。
地上が余生なら地中が中世?
ハイ、ワタシはユウに忠誠を誓います。笑っちゃったし。
ユウとセックスしながらいろんなことを思うのがワタシは好き、最高の幸せ。
 氏神神社の蝉の穴をワタシは数えていく。蝉の出世の秘密をさぐるように、ひとめ、ふため、みやこし、よめご、いつやのむさし、ななやのやつし、ここのやとーー う~ん、数えられないし。ワタシは時に蝉のように鳴いたり、よがったり、悲しかったんよ、嬉しかったんよ。ホント不思議ワールド、そんなイメージのなかでセックスせっせ、せっせーー せっせ、せっせとセックス。

 八月の初め、花火を見に行ったし。ユウと一緒、いつもの通り。ユウに纏わりついちゃった。まるで犬んこ(わんこ)やし。電車ん中、ユウの書きかけの脚本『阿比留(アヒル)』をワタシは盗み読み、パラパラと断面的に読んだし。なんのこと?
 
ファニィな顔がキレイになっていく。
アヒルだってもあさってもないハクチョウになれるさ。
人なるは遡ればアンドロギュノスだっーの! 皆、アヒルの面とハクチョウの面を持ち合わせている。要なるはどっちが表に出ているかだ。
アヒルだってハクチョウになれるさ。
下品なハクチョウと上品なアヒル、キミはどちらがいいのか?

 その日はあいにく夕立、でも花火が上がる頃には小雨。ワタシの心と一緒でちょっと大気も不安定やし。
どど、ど~ん、1番花火があがったよ。
「わぁ~い、わぁ~い」人々が感嘆の声をあげるし。
「ヒャー」ワタシの声。ユウは笑った。
夜空にパッと咲く、大きく咲く、打ち上げ花火。エネルギーの権化みたいに咲く。
時に百日紅のように咲くし。花火を見ると元気になれるし。
ビールを飲みながら夜空を見上げた人、人、人は何を見つめているのかな。現在、過去、未来、そんな流行り歌あったし。
夜空に紅、黄色、青の花火が輪唱みたいに湧き出たよ。追っかけこ、次から次へと。
「火の玉小僧が上がっていく」
「義賊やし」
「それはネズミ小僧や」ユウがかぶせてくれた。
 爆発音が心まで響く。どん、どん、どん、時にドドドド、ドンドン、さながら市街戦。これでもか、これでもかと胸を打っていくし。ワタシは胸を撃たれた、、、、戦場に赤いバラが咲いていく。ユウ、ユウよ、兵士のようにワタシを優しく抱いて、抱いて。
花火? って? 嗜虐的に。花が咲いて赤青黄色、ワタシは被虐的に光りの滝に打たれていくし。これでもか、これでもかと。光りはいつのまにかしだれ柳みたいに。
カップルがしだれていく。疑似セックス? ワタシもユウにしだれていく。
赤裸々、赤裸々、赤裸々に、セックスのごとく。
「わあ~ 金魚みたい」子供が叫ぶ。そして、留めは白い光りの雨。
「うわぁ、うわぁ、うわぁ」大人たちの歓喜の声。
大人たちは子供たちにかえる。子供たちは少し背伸びして。大人の元気、子供の元気。
老若男女の元気やし、それぞれの元気があったし。
「やぁ、やぁ、やぁ」やっぱり、花火を見ると元気になれるし。
留めの花火はすごい、すごい、どすごい、どすこい、お相撲さん。
「アンコールもいわせないど迫力やし」
「ノンアンコールや」ユウがボケた。
「ファンタジック」
「ブラボー」
「サンキュー」様々な声が飛び交うし。決定的な声は、
「おおきに、おおきに、死に土産や」隣で見ていた爺さんが言ったコトバやし。
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