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アヒル男とアヒル女
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アヒル男は喫茶店でお茶を飲んでいた。隣に座っていたアヒル女が黄色い飲み物をストローでじゅるじゅると音をたてて飲みほした。その姿はまるで幸せは逃さないよといわんばかりだ。アヒル男は見た。アヒル女は「あら、ごめんなさい」の表情でアヒル男を見た。男は笑った。女も笑った。人ってこんな簡単なことでわかりあえるんやね。ここにもチャーミングな出来事があったんだ。
アヒル男は「彼女に幸せが届きますように」と思わず祈った。アヒル男が見ず知らずの人の幸せを祈ったのは初めてだ。
アヒル女はその日の事を友達にしゃべった。
「おかしな日、喫茶店で、ジュースの残り分を醜いアヒルみたいにストローでじゅる飲みしたわけ、そしたら隣のアヒル男に笑われちゃった。キッショって、思ったけど、そこは外面(そとづら)マジック、ハクチョウみたいに上品に微笑み返しをしてやったら、アヒル男は、でれぇ~として、ダブルでキッショ、アタシそそくさと出ちゃったよ。その日の帰り、何の気なしにスピードクジ買ったら大当り。なんか、幸せ舞い込んだ感じ。誰か祈ってくれたのかな? かな? 」
「アヒル男? まさか! 」
長いツケマツゲにミニスカート、そんなアヒル女の台詞を羅列する。
「アヒルだって微笑みひとつでハクチョウになれる。そうなりゃ、幸せ舞い込んでくるし」
「人生ってチャーミングやね」
「醜い、醜いアヒルさん、女は裸になれば醜いアヒルみたいに可愛いい恰好になるよ」
「醜い、醜いアヒルさん、男は裸になれば醜いアヒルみたいに間抜けな恰好になるよ」
「女はハクチョウになりたいよ、なりたいよ。アヒルみたいによがっていくし」
「醜いアヒルはハクチョウになるまで走る」
「ワタシだって青空を飛べるんだ」
「三ヶ月でワタシはハクチョウになるし」
また、アヒル男とアヒル女の会話を書いていく。
「ボクは怠惰に寝そべって、アドレナリン不足のイカみたい」
「ワタシはアドレナリンいっぱいのクラゲになるし、タコにもなるし」
「クラゲになりゃ、ボクを包みこんでほしいネ。タコになりゃ、ボクに吸い付いてほしい」
「チューチューたこやし」
「何にもやる気がおこらない」アヒル男は言った。
「パワー不足やし、パワーをもらいにいったら」アヒル女が言う。
「どこへ? 」
「ふぅ~ん? パワースポット? I神宮かな? 」
(場面はI神宮の内宮前広場、アヒル男が大きな鳥居を見上げている)
「これがグウのネも出ない内宮か! 」
一礼して大きな鳥居をくぐる。IS川を度胸千両で渡る。また鳥居。一礼やね。本宮で賽銭チャラリ、二礼二拍手一礼。さぁ、パワーをもらったよ。パワーのおまけをもらいたいよ。あった、あった、あったよ。仕上げは神木(しんぼく)、神木だ。二本、三本、仲良く並んで、これがホントの親睦(しんぼく)や。
「大木だ、樹齢何年やろか、えっ、平安時代から、樹齢千年だ」
幹に手をあてる、来る、来る、来る、来る、パワーが来る。来る、来る、くるくるぱー
来る来るパワー。目が年輪みたいになる。でも、おかげさまでパワーをもらったよ。だから、おかげ、おかげで帰り道、I内宮のおかげ横丁へ。
晴れ、大晴れだ。頭に日の丸の扇子をつけた桃太郎さんが踊っているような大晴れだ。
アッパレだよ、天晴れだよ。空が遠く高い。しかも青が宇宙の果てまで、時間をも超えるかのように。朝と昼の温度差に注意、天気予報がいっていた。
「温度差ってあるもんよ」。アヒル女が言う。
「へぇ、そんな文化あるんだ」。アヒル男が答える。
「価値観の違いやし」
「意味不明! 」
人は人々になって、それ、あれ、これとそれぞれのことを言う。でも空の青はそんなす
べてをも凌駕して。ボクは吸い込まれていきそうだよ。
ボクは思った。歩きタバコはやめよう。ひとつ、ひとつ、律していこう。歩きタバコ? 懐かしの映画スターか! あんまり恰好のいいもんじゃない、秋晴れに申し訳がたたないし。
大地踏み締めて歩こう。力強く生きたい。堂々たる人生でありたい。意気と度胸の男でありたい。上を向こう。野辺に咲いた小ひまわりの群生、上を向いていたもん。
アヒルたちよ、上を向いて、悲しみを生きる勇気に変えよう。
僕はなおも脚本『阿比留』を書いていく。
道端に棄てられた『ゴキブリ・ホイホイ』、なんかおかしい。
猫が見ぃ~つけ、猫が『ゴキブリ・ホイホイ』にじゃれていく。なんかおかしい。
アヒル女はハクチョウになるために走る、走る、走るんだ。いきつくところは氏神神社、公園だ。
「もうすぐだ、もうすぐだ、もうすぐ三ヵ月だ」と、老婆が言いながら歩いて行く。
犬を散歩させる老人の姿が見えた。老人は鎖につながれているようにも見える。犬が先に先にと進んで老人が引っ張られているのだ。
「そのうちお爺さんが電信柱で片足あげたらどうする」
「天地逆さまだ」アヒル男がそんなことを言いながら逆立ちをして見せた。
その後、アヒル男は裸になり仁王立ちになった。
「だらんとしていりゃ、間抜けな恰好やし」アヒル女は言う。
「充実していりゃ、間抜けな恰好じゃないし」言うや否や、アヒル男の下半身は充実の一途になっていく。
アヒル女はアヒル男の前にひざまづき、なんの躊躇いもなくその充実感を味わった。アヒル男は卑屈に笑ってしまう。時は無名のまま悪戯に流れゆく。いつの間にか東の空にオレンジの月が浮かび、晩秋の夜空に星が輝いていた。
アヒル男は「彼女に幸せが届きますように」と思わず祈った。アヒル男が見ず知らずの人の幸せを祈ったのは初めてだ。
アヒル女はその日の事を友達にしゃべった。
「おかしな日、喫茶店で、ジュースの残り分を醜いアヒルみたいにストローでじゅる飲みしたわけ、そしたら隣のアヒル男に笑われちゃった。キッショって、思ったけど、そこは外面(そとづら)マジック、ハクチョウみたいに上品に微笑み返しをしてやったら、アヒル男は、でれぇ~として、ダブルでキッショ、アタシそそくさと出ちゃったよ。その日の帰り、何の気なしにスピードクジ買ったら大当り。なんか、幸せ舞い込んだ感じ。誰か祈ってくれたのかな? かな? 」
「アヒル男? まさか! 」
長いツケマツゲにミニスカート、そんなアヒル女の台詞を羅列する。
「アヒルだって微笑みひとつでハクチョウになれる。そうなりゃ、幸せ舞い込んでくるし」
「人生ってチャーミングやね」
「醜い、醜いアヒルさん、女は裸になれば醜いアヒルみたいに可愛いい恰好になるよ」
「醜い、醜いアヒルさん、男は裸になれば醜いアヒルみたいに間抜けな恰好になるよ」
「女はハクチョウになりたいよ、なりたいよ。アヒルみたいによがっていくし」
「醜いアヒルはハクチョウになるまで走る」
「ワタシだって青空を飛べるんだ」
「三ヶ月でワタシはハクチョウになるし」
また、アヒル男とアヒル女の会話を書いていく。
「ボクは怠惰に寝そべって、アドレナリン不足のイカみたい」
「ワタシはアドレナリンいっぱいのクラゲになるし、タコにもなるし」
「クラゲになりゃ、ボクを包みこんでほしいネ。タコになりゃ、ボクに吸い付いてほしい」
「チューチューたこやし」
「何にもやる気がおこらない」アヒル男は言った。
「パワー不足やし、パワーをもらいにいったら」アヒル女が言う。
「どこへ? 」
「ふぅ~ん? パワースポット? I神宮かな? 」
(場面はI神宮の内宮前広場、アヒル男が大きな鳥居を見上げている)
「これがグウのネも出ない内宮か! 」
一礼して大きな鳥居をくぐる。IS川を度胸千両で渡る。また鳥居。一礼やね。本宮で賽銭チャラリ、二礼二拍手一礼。さぁ、パワーをもらったよ。パワーのおまけをもらいたいよ。あった、あった、あったよ。仕上げは神木(しんぼく)、神木だ。二本、三本、仲良く並んで、これがホントの親睦(しんぼく)や。
「大木だ、樹齢何年やろか、えっ、平安時代から、樹齢千年だ」
幹に手をあてる、来る、来る、来る、来る、パワーが来る。来る、来る、くるくるぱー
来る来るパワー。目が年輪みたいになる。でも、おかげさまでパワーをもらったよ。だから、おかげ、おかげで帰り道、I内宮のおかげ横丁へ。
晴れ、大晴れだ。頭に日の丸の扇子をつけた桃太郎さんが踊っているような大晴れだ。
アッパレだよ、天晴れだよ。空が遠く高い。しかも青が宇宙の果てまで、時間をも超えるかのように。朝と昼の温度差に注意、天気予報がいっていた。
「温度差ってあるもんよ」。アヒル女が言う。
「へぇ、そんな文化あるんだ」。アヒル男が答える。
「価値観の違いやし」
「意味不明! 」
人は人々になって、それ、あれ、これとそれぞれのことを言う。でも空の青はそんなす
べてをも凌駕して。ボクは吸い込まれていきそうだよ。
ボクは思った。歩きタバコはやめよう。ひとつ、ひとつ、律していこう。歩きタバコ? 懐かしの映画スターか! あんまり恰好のいいもんじゃない、秋晴れに申し訳がたたないし。
大地踏み締めて歩こう。力強く生きたい。堂々たる人生でありたい。意気と度胸の男でありたい。上を向こう。野辺に咲いた小ひまわりの群生、上を向いていたもん。
アヒルたちよ、上を向いて、悲しみを生きる勇気に変えよう。
僕はなおも脚本『阿比留』を書いていく。
道端に棄てられた『ゴキブリ・ホイホイ』、なんかおかしい。
猫が見ぃ~つけ、猫が『ゴキブリ・ホイホイ』にじゃれていく。なんかおかしい。
アヒル女はハクチョウになるために走る、走る、走るんだ。いきつくところは氏神神社、公園だ。
「もうすぐだ、もうすぐだ、もうすぐ三ヵ月だ」と、老婆が言いながら歩いて行く。
犬を散歩させる老人の姿が見えた。老人は鎖につながれているようにも見える。犬が先に先にと進んで老人が引っ張られているのだ。
「そのうちお爺さんが電信柱で片足あげたらどうする」
「天地逆さまだ」アヒル男がそんなことを言いながら逆立ちをして見せた。
その後、アヒル男は裸になり仁王立ちになった。
「だらんとしていりゃ、間抜けな恰好やし」アヒル女は言う。
「充実していりゃ、間抜けな恰好じゃないし」言うや否や、アヒル男の下半身は充実の一途になっていく。
アヒル女はアヒル男の前にひざまづき、なんの躊躇いもなくその充実感を味わった。アヒル男は卑屈に笑ってしまう。時は無名のまま悪戯に流れゆく。いつの間にか東の空にオレンジの月が浮かび、晩秋の夜空に星が輝いていた。
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