【本編完結】公爵令嬢は転生者で薔薇魔女ですが、普通に恋がしたいのです

卯崎瑛珠

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第一章 世界のはじまりと仲間たち

〈12〉令嬢だって剣術を習うのです 前

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 剣術や体術の実習に使われている屋外演習場は、簡易的な観客席が木柵の向こうにしつらえてある野球場のような場所である。
 ここで模擬試合が行われる時は、盛り上がるイベントとして学院中の人達が見に来るのだ。
 剣術実習の学生達は、おのおの楽な服装――レオナは、上はシンプルな白いブラウス、下は細身の黒いパンツに黒革のロングブーツ。乗馬術でも同じ格好だ――に着替えており、正面近くにたむろしていた。
 残念ながら、女子はたった一人だ。

「……こんな感じかな?」
 テオが跳ね、右手にナイフを持ったまま、空中でくるりと回転して着地する。
「すごいっ! 素晴らしい身のこなしですわ!」
 レオナは興奮しすぎて、思わず敬語になってしまっている。
 
 テオとは攻撃魔法でペアを組んでいるが、剣術の講義も同じく取っていたらしい。
 公爵令嬢なのに剣術? と話しかけてくれたので、内心嬉しい! と飛び跳ねながら、念のため護身用に、と答えたら。
 
「護身用って……護衛いっぱい居るんじゃないの?」
「ええ。でも不測の事態には、自ら備えるべきでしょう?」
「まぁ……そうかもしれないけど」
 
 確かに、同じ時間の王国史とどちらを取るか迷ったのは事実だが、元々歴史本が好きで、普段から読みまくっていた。
 家族やルーカスは、とっても過保護で武器など絶対に持たせてはくれない。という訳で、あえて剣術を選択したのだ。
 ちなみにフィリベルトは、渋々レオナがやりたいなら、と許可してくれていた。

 講師を待っている間、テオがレオナのリクエストに応えてサクッとデモンストレーションしてくれたのだった。
 レオナは、さすがジャ●ーズJr(違)! ファンサあざーすっ! と心の中でうちわを振ってしまった。
『尊い』と『滾る』が、最近の心の声のマイブームである。
 
「テオは、本当に凄いわね」
「そんなことはないよ。僕はこの見た目通り非力だから、実戦では残念ながら使い物にはならないんだ」
 精々逃げるための時間稼ぎだね、と自虐して彼は言う。
「体術も、向いてないって講師に言われて、強引に攻撃魔法に変えられちゃったし。魔力も少ないんだけどね~」


 ――ちょっと体術の講師に物申したい!
 誰か知らないが、ゼルといいテオといい、学生の扱いに疑問が残る。
 講師としてちゃんと適性あるのか? と問い正したいところだ。
 思春期ぞ? 我々こう見えて繊細なんだぞ!?


「レオナさんも華奢だから、武器はナイフがいいと思うよ。レイピアも軽いけど、長さがあると扱いが大変だし、護身用なら、簡単に持ち歩ける方がいいし」
 
 今日はとりあえずレイピア(細剣)を持参していたのだが、それを見てテオが色々教えてくれるのがまた嬉しいレオナである。
 
「そうね! 小さいナイフなら、どこかに忍ばせて持てそうだわ」
「スカートの中とか、な。大歓迎だぞ!」
 ニヤーッと横でゼルがいやらしい笑みで言う。
 そう、彼もいるのだ。座学ではほとんど寝ていたのを知っているぞ、と毒づきたいところだが
「……」
 とりあえず、しらーっと無視のレオナ。
 セクハラ反対! のスタンスである。
 
「……えーっと、ゼルさんは二刀流なんですね」
 テオは気遣い屋さんだなあ、と感心しながら、レオナはゼルの武器を見やる。
 見事な装飾の、蛇のようにしなった曲刀(練習用で刃は潰してあるらしい)を二本、左右にぶら下げていた。
「ああ、防御は性にあわん」
 


 うん、知ってた。

 

 ゼルも、先程自己紹介代わりだと軽く見せてくれたが、まるで舞のような二刀流はあでやかで、しかも隙がないように見えた。
 あんまり本気出すと、講師が霞んじゃうと思うの……と、すーんとなったのは秘密だ。
 
「今度は骨のある講師がいいなあ」
 パキポキ、と首を回しながらのたまうゼルは、完全に肉食系。
 せめて外されている上三つのシャツのボタンは、閉めて頂きたい、とどうしても目が行ってしまうレオナだ。褐色の胸筋がチラチラとセクシー過ぎなのである。色気まで獰猛! 刺激が強すぎる! と溜息が出てしまう。
 
「そんなに腕に自信がおありなら、王国史を取るべきだったのではなくって?」
 セクハラの仕返しに、わざと高飛車に言ってみた。
 ちなみに、シャルリーヌ、エドガーとユリエ、フランソワーズは王国史を選択している。
「うぐ、レオナ嬢が急に貴族令嬢みたいなこと言う」


 
 こう見えて公爵令嬢なんですけどー?


 
「まー、そんなとこも可愛いけどな」
 とゼルにやり返されるが、ちょっと意味が分からなかった。
 テオも首を捻っている。
「ゼルさんも変わってるね」

 

『も』ってなんだ、『も』って!


 
「まあでも、確かにレオナさんて、時々可愛いよね、令嬢らしくなくって」
「!?」
「うくく、ほら。目がまんまるだ~」
 うくくくく、とテオは腕で顔を隠すようにして、丸まった姿勢で笑う。
 肩が揺れているが、小声だ。
 彼は、決して顔を上げて笑わないし、声も抑えている。いつか満面の笑顔を見てみたい! と密かに思っているのだが。

 

 あれだな、てことは、私のことは動物的な可愛さだよね。
 間違いなくあなたの方が可愛いよ、テオ。
 悔しいけど!


 
「おお、可愛いな……撫でて良いか?」


 
 ちょっとー、ゼルー!

 

「えっ、僕!?」
 ゼルが、ガハハと笑いながら、テオの頭をわしゃわしゃしている。


 
 羨ましいんだけど!


 
 思わずレオナが、両手をワキワキしながら近寄っていくと、テオは
「……ダメ」
 とすごく冷たい声で言ってきたので、ションボリしてしまった。

「ほんとにもう、レオナさんたら……」
 

 ――レオナさんたら、何!?
 わたくし、ちゃんと我慢しましてよ!?
 
 
 そんなこんな、三人で戯れていると
「ちゅうもーく!」
 と誰かが叫んだ。
 

 
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 お読み頂きありがとうございました。

 2023/1/13改稿
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