【本編完結】公爵令嬢は転生者で薔薇魔女ですが、普通に恋がしたいのです

卯崎瑛珠

文字の大きさ
144 / 229
第三章 帝国留学と闇の里

〈閑話2〉 オスカーの秘密

しおりを挟む

 入り切らなかったエピソードを、閑話としました。
 是非、お楽しみください!
 後半は、122話『新天地へ 後』の舞台裏?です。




 ※ ※ ※
 


 ――皇都のタウンハウスにて、ある夜。
 

 
「なー、そこのかわい子ちゃんは、なんなんやろか? ジン」
「へ!?」
「ただの猫ちゃうやろ……?」
「あ」
「そういえば、聞くのを忘れていましたね」
「そうでした。んん、あのですね」

 ぴく、と耳が動くと、なあん、とオスカーはジンライの膝に乗った。けしけし、と後ろ足で耳の裏をかいて、くあ、と一度あくび。
 
「レオナさん、マリーさん、ナジャさん」
 ジンライが、オスカーの背を撫でながら
「雷神トールの加護をもらうずっと前から、俺、オスカーとは友達で。んで、最初は知らなかったんすけど、その……」
 どう説明すべきか、ジンライが言いあぐねていると――
 
「うん。おいら、ただのねこじゃないよ」
 と、が、言った。
「「「!!」」」


 黒猫が! しゃ、しゃ、しゃべったあーーーーー!
 えっ、ジ○!? ○ジなの!?


「えー、おっほん。というわけで、こちら、トールの守護神獣様、です」
 ジンライが頭をかきながら言うと
「ただのオスカーだよ」
 エメラルドグリーンの瞳が、イタズラっぽく瞬いた。
「守護神獣って」
 レオナが衝撃を受けると、マリーも同様で。
「まさか、本当に実在するとは……」
「あー、せやったら、納得やわ」

 そう聞くと途端に、彼の姿が神々しく見えるのはなぜだろうか。

「いまは、そんなにちからはないんだ。アウのもらって生きてるくらいだから」
「えっと……その」
 レオナが躊躇ためらいながら、でも絶対に確認したいことを、聞く。
「なあに?」
「これからも、撫でて良いのかしら?」
「いーよ! りぇおにゃ? のもおいしーから」


 りぇおにゃって、私の名前よね!? くっ、悶えるっ!


「やっぱりよびにくいにゃー……まりーはだいじょぶ……」
 
 くっ! とそこで最強メイドも悶えている。
 
「なんでもよいわよ?」
「じゃ、ニィで」
「はあーい!」


 っくー! かーわーいーいー!


「わいのことは……?」
「なーにゃ」
「くうっ! 最高や……!」
「ナーニャッて!」
「ふ、最高ですね」
 
つかうから、あんまりしゃべんないけど、なにいってるかはわかるよ」
 もう一度くわわ、とあくびをして、ジンライの膝の上で丸まった。
「あ、ちなみに俺は『アウ』って呼ばれてます」
「分かりました」
「アウアウ泣いてたからやろ?」
「……ナジャさん……」
「え! そうなの?」
「たくましくなったのー」
「……オスカーのお陰です。ずっと、寄り添ってくれて」

 そんなオスカーは、ジンライの膝の上で、ぷすーぷすー、と寝息を立て始めた。
 全員が、一瞬で、デレデレになったのは、言うまでもない。


 
 ※ ※ ※



 ――ふんふんふーん。
 ん? なんかアウが、ゴソゴソしてるな?

 

「もー。ゼルさん、いつまで拗ねてるんすか」
「ぐ」
「テオに迷惑かけたら、だめですよ。せめて食べ終わったら、食器は運ぶこと」
「ぐぐ」
「朝は、もう起こせませんからね」
「うう」
「分かりました!?」
「……分かった……」
「くく、寂しいんだよ、ゼルさん」

 テオが、ジンライの荷造りを手伝いながら笑う。
 
「いつ出発するんだ!」
「だーから、レオナさんに頼まれた通り、秘密なんですって」
「なんで秘密なんだ!」
「そりゃー、寂しくて行きたくなくなっちゃうからって、言ってましたよ」
「ジンは、寂しくないのか!」

 闘神とか言われてたのに、ただの駄々っ子だな、とジンライは思わず苦笑してしまう。

「……寂しくないわけ、ないでしょう?」
「寂しい時は、寂しいと言わねばだめだ!」
「ゼルさん……」
「強がっているうちに、会えなく、なるのだぞ!」
「ゼルさん、また会えます。約束します」
「約束だからな! いつ出発するんだ!」
「えーと……ええっ、あっぶな!」
「ちっ」
「(言っちゃうのも、時間の問題だなあ)」

 ――その二日後。

「で、いつ出発するんだ?」
「あ、もう明日っすねー……あ!」
「明日だな! テオ!」
「はいはい。カチッ」
「ちょ、テオそれ通信魔道具、いつの間に!」
「あ、シャルさん? 明日だって」
「ちょおー、もー、俺絶対怒られる!」

 
 ――明日から、アウどっか行くのにゃ?
 んー! おいらの、のみなもとが! よし、あの大きい鞄に入ったら気づかれない……


 
 ※ ※ ※



 ――ある朝、ローゼン公爵邸、馬車止めにて。
 
「もう! 秘密にするなんて!」
「シャルさん、怒ったら眉間にすっごいシワ」
「テオ、なんて言ったの!?」
「だから、怒ったら眉間にすっごい……」
「あーあー、まだ出てこないっすねー?」
「ぐぬぬ、何て言って送れば、こう、ぎゅんとなるのか……なあ、どうすれば」
「ええ……!? 砂漠の王子が、ぎゅんとか言うんすか……?」
「うう、レオナったらもー……うう……」
「もー、シャルさん、鼻水ふこう?」
「なんでテオはそう、いつも冷静なのよっ」
「八つ当たりされるからだよ。ふふ」
「もー! 密かにモテ始めてるわよ、テオ!」
「えぇ? 僕が?」
「そうよ! お陰で私までヒソヒソされるんだから!」
「えぇ……理不尽……」
「そういう、冷静なところが良いんですって!」
「冷静っていうか、ただのオカンですよね」
「うん、オカンだ」
「なによ、オカンって!」
「ヒー兄が言ってた」
「あはは、言ってたねー」
「だからなによ、オカンって!」
「あっ、ほら、出て来ましたよ!」

「もう! 黙って行くなんて、許さないんだから!」


 ※ ※ ※


 よいしょと、今の隙に、アウの鞄に潜り込んで、と。
 意外とおまぬけさんなんだよね、いつも閉め忘れてて。
 どこに行くのかなー? ま、アウと一緒なら、どこでも良いけどね。ほんっとトールって、心配性なんだから。

 アウの魔力が覚醒しちゃったら、暴走して危ないからって、先に加護するなんてさ。おいらが側にいるから大丈夫って、言ったのになぁ。慰めるの大変だったんだよ。まだ修行ちゃんと終わってないとか、ぐすぐすして。

 あ、でも親方が「教えられることは全部叩き込んである!」て背中ばちいん、て叩いたのは、すっごい痛そうだったなー。

 自信持てば大丈夫だよ、アウ。
 おいらが、ついてくから。ね。
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結済】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー 結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!? 王女が婚約破棄した相手は公爵令息? 王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした? あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。 その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。 彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。 そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。 彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。 その数日後王家から正式な手紙がくる。 ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」 イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。 「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」 心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ! ※ざまぁ要素はあると思います。 ※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...