【本編完結】ワケあり事務官?は、堅物騎士団長に徹底的に溺愛されている

卯崎瑛珠

文字の大きさ
17 / 75
第二章 誤解!? 確信! 仕事!!

17 レナート side

しおりを挟む


 俺は、レナート・ジュスタ男爵だ。
 つい最近までは、アルソス王国で騎士団の師団長をしていた。つまり、アルソスの人間だ。

 アルソスとメレランドは、王族同士に直系の繋がりがある、まさに兄弟国だ。
 メレランドが弟、というと響きは良いが……アルソスは、海の向こうの魔法大陸にある『大帝国』からの脅威に備えて、メレランドに防波堤の役割をさせている。表向きは、貿易を任せると言って、それなりの益を渡しているが。
 そのためアルソスは――表立っては言えないが――メレランドを下に見る傾向がある。(メレランドは、アルソスを兄と慕っているため、それには気づいていない。)
 
「レナート。メレランド騎士団の評判がすこぶる悪い。このままでは、帝国に攻め入れられる隙となっても、おかしくはない」
 アルソスの国王陛下から、騎士団長とともに呼び出されたと思ったら、そのような密談だった。
 
 海のはるか向こうにある『魔法大陸の大帝国』ブルザークは、魔道具の開発が盛んだ。
 船にも大量の魔道武器を搭載でき、かつ船足も速い。攻め込まれたらあっという間に負けるだろうが、補給が追い付かないという距離の優位性でもって、なんとか平和を維持している。
 が、メレランドの武力弱体化に付け込まれたら、その平和など蠟燭ろうそくの灯を吹き消すより簡単だ。
 
 不思議と、魔法大陸には(魔法大陸と呼ばれるだけあって)魔力を持つ人間が生まれるのだという。
 こちら側は、魔石を用いた魔道具を使用するのが一般的だが、魔石を使わず「魔力」のみで「魔法」を使われたら……いかなる武力も敵わないだろう。こちらで魔法を防ぐ手段は皆無だからだ。

 そういうわけで、いわば「出向」を命じられてメレランドの騎士団長としてやってきたのが、半年前。
 ――怠惰たいだ傲慢ごうまんな騎士団に、本当に絶句した。

 時を同じくして副団長に任じられたロラン・ビゼーは、メレランド沿岸を治める由緒あるビゼー伯爵家の次男。優秀なので有名で、アルソスに出向してきており、俺の師団で面倒を見ていた旧知の仲でもある。

「レナートが団長になるなら、いいですよ」

 そう言って『銀狐』と言われるほどの策略家であるロランは、嫌々ながら帰国を決めた。
 
「……嫌だったんじゃないのか?」

 ロランは、実は自国も家も、好きではない。小さな王国では、彼の才能は収まりきらないのだろう、と勝手に思っている。

「レナートだけだったら、たぶん無理だからね。入り込んで懐柔かいじゅうして、あとでまとめてたたき斬る役が必要だよ」
「……それほどまで、か」
「うん。腐ったらもう、刈るしかない、てやつだね」
「……それは辛い立場になるぞ、ロラン。裏切り者と呼ばれるかもしれん」
「自分の国のことだし、僕には伯爵領があるし、何ならメレランドに未練もないからね。幸い陛下は期限切ってくれたしさ。それまでやるだけやってみるってだけ」
「わかった。一人で背負うな。俺もだ」
「相変わらずクソ真面目だね」
「クソ言うな、銀狐」
「はは!」

 そして半年。

「我慢してきたけど、聞きしに勝るだったね」
「まったくだ」

 怠け癖のついた暴れん坊ほど、手に負えないものはない。
 厳しいを実行すべき、と思い始めたところだった。
 
「うーん。これから実力行使に出るとして――レナートだけじゃ書類仕事がさばけなくなるね」
「だが」
「外から事務官探してこよう。できれば可愛い子ね!」
「おい」
「裏表がなくて、しゃきんとしてる、明るい子が良いなー。レナートも好きでしょ?」
「ロラン……」
「堅物にも癒しが必要でしょうよ」
「カタブツ言うな」
 

 ――そうして連れてこられたのが。
 
「キーラと申します。一生懸命勤めさせて頂きます。宜しくお願い申し上げます」
 
 肩より少し長いくらいの鮮やかな赤い髪は、少し癖があって跳ねている。
 翠がかった碧眼は大きく、くりくりと良く動き、彼女の感情をそのまま映すかのようだ。
 声も元気で明るくハキハキとしているし、小柄な体にも関わらず、生命力に満ち溢れている気がする。

 本当に連れてくるとはな、という驚きで、しばらく言葉を発することができなかった。隣のロランがどうだ! という顔でこちらを見ているのにも、少し苛立った。
 宣言通りの人材を探してきたというのか……まったく。だからどうしろというのだ!

「んん。彼女を、寮に入れたいのですが。許可願えますか」

 ――お前、今絶対笑うのごまかしただろう!

「ああ。ロランはまたすぐ戻ってくれるか。不在時の申し送りをしたい」

 ――案内するとか言って、逃げるのは許さんぞ。ちょっと文句言わせろ……おい、口角が震えてるぞ!
 

 そして戻ってきたロランは、団長室に入るなり、相好そうごうを崩す。

「奇跡的に、見つけちゃったよ! 僕すごくない!?」
「銀狐の化けの皮、剝がれてるぞ」
「うわっ、それヨナにも言われたんだよね」
「気をつけろ」
「クソ真面目」
「詐欺師」
「言いすぎじゃない!?」
「すまん」
「……大変な境遇でがんばってきたみたい。だから、大切にしてあげないと」
「そうだったのか」
「うん……ここからが、勝負だね」
「ああ」

 
 キーラは、本当にコロコロ表情が変わって(時々うっかり本音が漏れすぎるが)、一日に何度も「可愛いな」と言ってしまいそうになるのが、最近の悩みだ。
 特に豚の鳴き声を「ぶーぶー」と言った時など、あやうく悶絶して変態になるところだった。
 
 ――その度に、「また悪口でしょう!」とふくれるのがまた、とても可愛いのだが。



-----------------------------


お読み頂き、ありがとうございました!
レナートsideいかがでしたでしょうか。
続きが気になると思って頂けましたら、是非ブクマしてくださいね。

恋愛小説大賞エントリー中です!
良かったらそちらも応援宜しくお願い致しますm(_ _)m



 
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

完結·異世界転生したらアザラシ? でした〜白いモフモフでイケメン騎士たちに拾われましたが、前世の知識で医療チートしています〜

恋愛
ネットでアザラシを見ることが癒しだった主人公。 だが、気が付くと知らない場所で、自分がアザラシになっていた。 自分が誰か分からず、記憶が曖昧な中、個性的なイケメン騎士たちに拾われる。 しかし、騎士たちは冬の女神の愛おし子を探している最中で…… ※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿しています ※完結まで毎日投稿します

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

処理中です...