45 / 75
第三章 疑惑!? 騒動! 解決!!
44
しおりを挟む「出頭命令?」
昼過ぎに、王宮から団長室へ使者がやって来た。
対応したレナートが片眉を上げて、不機嫌を隠さない。
「騎士団長と、専属事務官をお呼びです。今すぐ王宮へお越しください」
「王宮? どこの誰宛に行けばいいんだ」
「とにかく、お越しを」
「明日にはブルザーク帝国の一行が王都へ入る。歓迎式典まで二十日あるとはいえ、警護や親善試合の準備に忙しい。それを分かった上で、だな?」
使者の肩がびくりと跳ねた。
怯えているが、それ以上何も話さない。本当に『伝言』しか持っていないのだろう。
「はあ。仕方ない。行こうキーラ」
「はい」
恐らく呼び出したのは、財務院会計監査人、クレイグ・オルグレン男爵。
王女の嫌がらせを画策した人物(レナートが新手の詐欺師と言っていた)だ。
昨夜の打合せで、ある程度の予測はできていた――
◇ ◇ ◇
「国庫管理人のうちの一人だ。奴が賭け事の胴元だと思う」
レナートが渋い顔をしていた。
「……国庫、お金残ってますかね」
私が問うと、
「鞘とマントだけでも結構な支出だ。騎士団の金庫では賄えないから、財務院に経費申請しているが」
もっと渋い顔になった。
「あー、なるほど。払えないから」
ヤンがとても嫌そうな顔をして
「キーラに罪を着せる気だな」
ロランが言い切った。
「え? 私、ただの事務官ですよ?」
「縛り首にして、代金を踏み倒す算段だろう」
「しし、しば、しばり、っっ」
レナートの発言に、私がショックで言葉を失うと、
「大丈夫だよ、キーラ」とヤンが慌てて
「そんなことにはならないよ」とロランが慰めてくれた。
そしてレナートが、これ以上ないぐらいに怒っていた。
「そいつを、縛り首にしてやる」
◇ ◇ ◇
王宮に来たのは、実は二度目。
初めは、王女発案の騎士団視察後の舞踏会。
そして、今日。
騎士団本部からは歩ける距離だけれど、馬車に乗れ、だって。
別に逃げないし! って思ったけど、素直に言うことを聞いた。
あっという間に着いて、馬車から降りる私を、レナートは丁寧にエスコートしてくれる。
レナートは騎士服だからかっこいいけど、私は事務官の制服替わりのブラウス、ベスト、パンツそしてロングブーツ。全然見合ってないです、て遠慮したけど、レナートが「俺がやりたいんだ」だって。
「ここにはろくな縁がない気がします」
「奇遇だなキーラ。俺もだ」
「団長も?」
「ああ。『騎士団を立て直してくれると聞いた。あとはよろしく』だけだぞ、ここの国王」
「うわあ……」
あんな王女が育つんだもんなあ。お察し、てやつかな。
「え、国王陛下って普段何しているんです?」
「アルソスでは、隣国の役人や商人と頻繁に接見をして情報を仕入れたり、国内の様子を役人から吸い上げて采配したりしているが」
「メレランド……は?」
「知らん」
「へ? 騎士団長ってその、国の警護の要なわけですよね?」
「一度会ったきりだ。興味がないんだろうな」
そしてレナートは声を潜める。
「困るとアルソス国王に『兄者~助けて~』という手紙を出すらしいぞ」
「ぶっ」
前を歩いていた役人が、眉をひそめて振り返る。
「何を笑っているのですか!」
むかっとしたら、
「名乗りもしないやつに払う敬意はない」
先にレナートがやり返してくれた。
「で。どこに向かっているんだ?」
「ふん! 王の間です!」
「「は?」」
思わず二人で、顔を見合わせる。
「国王との接見です!」
ふふん、と鼻を鳴らす彼に、
「理由は?」
とレナートは畳みかける。
「国庫無断使用です! あなた方は、罪人なのですよ!」
――は?
「いや意味が分からん。何もかもの手順をすっ飛ばしているが、正気なのか?」
「失礼な!」
「まず、国庫の無断使用はしていない。罪人に国王陛下はお会いにならない。罪人を裁くのは法務院だがその制服は財務院だな」
「わ、わたしは、国王陛下の勅命で!」
――また、勅命。
レナートからも、また殺気が溢れてきた。
「なるほど……とことん腐っているわけだ。駄々っ子のためにここまでやるとは」
「え!」
まさか、王女の戯言を信じて勅命を出したの!? そういうこと!?
「キーラ。何があっても俺から離れるな。いいな」
「は、はい」
レナートがさり気なく帯剣の柄を確認したのを見て、私は、王の間ではなく死地に向かっている、ということを理解した。
0
あなたにおすすめの小説
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~
雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。
突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。
多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。
死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。
「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」
んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!!
でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!!
これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。
な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)
神の子扱いされている優しい義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました
下菊みこと
恋愛
突然通り魔に殺されたと思ったら望んでもないのに記憶を持ったまま転生してしまう主人公。転生したは良いが見目が怪しいと実親に捨てられて、代わりにその怪しい見た目から宗教の教徒を名乗る人たちに拾ってもらう。
そこには自分と同い年で、神の子と崇められる兄がいた。
自分ははっきりと神の子なんかじゃないと拒否したので助かったが、兄は大人たちの期待に応えようと頑張っている。
そんな兄に気を遣っていたら、いつのまにやらかなり溺愛、執着されていたお話。
小説家になろう様でも投稿しています。
勝手ながら、タイトルとあらすじなんか違うなと思ってちょっと変えました。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉
狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。
「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。
フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。
対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。
「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」
聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。
「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」
そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。
イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。
ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼
そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ!
イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。
しかし……。
「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」
そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる