48 / 75
第四章 別離?? 決意!? 溺愛!!
47
しおりを挟む「お久しぶりです、キーラ殿下」
「おひさし……殿下?」
ロランが畏まって
「こちらはブルザーク帝国海軍大将、ヨナターン・バザロフ閣下であらせられます」
と紹介をすると、ヨナターンは
「いかにも、海軍大将ヨナターンである。突然の訪問、無粋であったか?」
と目線を国王に向けた。
「ひっ、いやその」
「取込み中のようだな。出直すか? ヤン」
「はっ」
ヤンが、ビシッとヨナターンへ、踵を鳴らした騎士礼をする。その礼は、ヨナターンと同じで、メレランドのものとは違っている。
「任務ご苦労」
「ありがたきお言葉」
「ヤンさん……?」
私が疑問に思っている間に、ヤンは
「閣下。誠に言い難いことではございますが、こちらの輩が、我がキーラ殿下に暴力を振るったため、排除いたしたところであります」
と廊下に突っ伏しているボイドを手で示した。
「なんだと! どういうことか、説明を願う!」
鬼気迫るヨナターンに対して、
「えっ? いやその! その方こそ、どどどどういうことだ!」
開き直れるメレランド国王。ある意味尊敬する。あ、図太さは遺伝か。
はあ、と大げさに息を吐いてからヨナターンは
「そちらにおわすキーラ殿下は、我がブルザーク帝国皇帝陛下の、妹君であらせられるのだ」
と言い切った。
「へはっ!?」
「行方不明でずっと探していた。ようやく見つかったとの知らせで迎えに来てみれば……なんたることか!」
え? 皇帝……妹? え? 私が!?
「えっ、ちょちょ、ヨナさん! じゃない、えっと閣下?」
「殿下、どうぞヨナと」
「いやいやヨナさん! えっと、ぜんぜん! わからないんですけど!」
物事が次から次へと起きすぎて、とても受け止めきれない!
眉尻を下げるヨナターンの代わりに、
「陛下、殿下。明日、アルソス国王陛下がこちらにいらっしゃるとのことです」
ロランが、淡々と言う。
「その時、全てをお聞きになると。どうかそれまで陛下は、お部屋にてゆっくり休まれてください。ただし逃げようなどとはお考えにならぬ方が賢明。陸にはアルソス騎士団、海にはブルザーク帝国軍がおりますゆえ」
がくり、と国王が床に膝を突き、逃げ出そうとしたクレイグは
「甘いっすよ」
ヤンが足を引っかけて転ばせ、味方であったはずの二番隊の騎士たちがその身柄を取り押さえた。
「これこそ、詐欺師であり、売国奴である。即座に収監せよ」
冷え冷えとしたレナートのその発言で、騎士たちは怒りの矛先を全てクレイグへと向けた。
私は茫然としたまま、レナートの騎士服の裾を握りしめていたけれど、
「キーラ……殿下」
と呼ばれてしまったので、思わずその手を――離した。
◇ ◇ ◇
「さあ、まいりましょう」
ヨナターンに促されても、足が全く動かせない。
「せっかくの再会です。積もる話もあり、できれば殿下のお時間を賜りたく。よろしいか、レナート殿」
「はっ」
「貴殿が同席すれば、殿下も安心されよう」
「喜んで」
床にへたりこんでいた国王を、役人のようなおじさんが支えて立たせて、どこかへ連れていく。
気絶したままのボイドは、どうする? と思ったら、ヤンと目が合った。
「あー、閣下。自分はこいつを収監してからいきます」
「わかった。殿下への手出し、本国なら斬首だが――」
「ざ、んしゅ?」
恐る恐るヨナターンを振り返ると
「ええ。例えわずかでも、皇帝のものに危害を加えた者は、即刻首を撥ねられます」
と教えられた。
「そうなんですか」
あ! もしかして、頬を叩いたのも、ざんしゅ?
私は、なにげなく王女の所在を目で探す。
「ひっ!」
――やっぱりまだいたのね。そして、びくっとするってことは、自覚あるっぽいね。
「どうなされた?」
ヨナターンの疑問に答えるのは
「お聞き苦しいと存じますが、そこのアネット王女殿下が、以前キーラ殿下の頬を叩かれたのです」
渋面のレナートだ。
――ここで言っちゃうのね! 相当怒ってたもんね!
「なにゆえそのような」
「あ! の! 私がちゃんと、お辞儀をしなくってそれで」
「は?」
ヨナターンが、心底意味が分からないというように、首を傾げる。
「閣下。僭越ながら、私はその場に同席しておりましたので申し上げます。キーラ殿下の行動になんら問題はございませんでした。突然のご訪問に驚かれただけです」
ロランが一歩進み出て言い、レナートが容赦なく畳みかけた。
「ですから――悪意からではと」
「ほう? ……それは、誠か?」
ぎろり! とヨナターンがアネットを睨むと、彼女は顔面蒼白になって、へなへなと床にへたりこんだ。
「あーとえっと。そうすると、もしかして?」
アネットとヨナターンを交互にちらちら見ると
「キーラ殿下のお望みであれば、この場で首を斬りましょう」
ヨナターンが言い、
「ひいっ!」
王女は短い悲鳴を上げて、お尻を引きずるように後ずさりする。
ざ、とヨナターンがつま先を王女に向けた。
海軍大将の剣は、たくさんの豪華な飾りがついて、キラキラ光っている。
その鍔元を握り、見せつけるように抜こうとすると――しゅわわわ、と音がして、絨毯が濃く染まっていく。
「いえ! いいです! そんなことで斬首なんて!」
「なんと。お心が広くてあらせられる」
カチィン! と大きく音を鳴らして、ヨナターンは刃をひっこめた。絶対、わざとだ。
「ふん。寛大な御心に感謝するんだな。では、参りましょう」
「はい」
好きな人の目の前で、粗相をしてしまったアネット。
ロランが、これでもかと侮蔑の視線を送っているけど、絶対わざとだ(二人して行動が似すぎじゃない? 仲良いから?)。
でもごめん。私、全然同情できないや。だって自分の行動が招いたことだもの。
――レナートにありがとうを言いたくて見上げたのに
「大丈夫です。お側におりますゆえ」
他人行儀に微笑まれたのが……とても寂しかった。
-----------------------------
お読み頂き、ありがとうございました。
ついに判明しました!
0
あなたにおすすめの小説
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉
狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。
「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。
フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。
対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。
「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」
聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。
「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」
そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。
イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。
ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼
そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ!
イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。
しかし……。
「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」
そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
完結·異世界転生したらアザラシ? でした〜白いモフモフでイケメン騎士たちに拾われましたが、前世の知識で医療チートしています〜
禅
恋愛
ネットでアザラシを見ることが癒しだった主人公。
だが、気が付くと知らない場所で、自分がアザラシになっていた。
自分が誰か分からず、記憶が曖昧な中、個性的なイケメン騎士たちに拾われる。
しかし、騎士たちは冬の女神の愛おし子を探している最中で……
※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿しています
※完結まで毎日投稿します
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる